漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

「漢方診療のレッスン」花輪寿彦先生著

2010年07月20日 22時19分55秒 | 漢方
金原出版、2003年発行

漢方を勉強するヒトは一度は読んでおくべき本・・・と勧められて昔購入しておいた本を最近読んでみました。
前半は基本的なことでそれなりに大切であり勉強になりました。
が、この本の真価は別のところにあります。それは、

LESSON 4 漢方診療の諸注意
LESSON 7 漢方診療の心得-対応の難しい患者の接し方-
LESSON 10 うまくいかない時のために-漢方診療の実際-

などの章。
なんというか、花輪先生の診察風景を側で見学し、疑問点を教えてもらっているような感覚です。
漢方医術はその昔(江戸時代?)、本当に大切なことは書物に残さず、弟子に口頭で伝えたと云います。
これを「口訣」と呼んでいました。
上記箇所はこの「口訣」の雰囲気がプンプン漂います。

「押してもダメなら一歩引いた治療を行う」
「病状が膠着して動かないときは、あえて反対の薬を用いて揺らしてから本治に取りかかる」
など、病気との駆け引きというべき手法が解説されているのです。

その技を使いこなすのは至難の業で、まだまだ私には無理そうですが・・・5年あるいは10年後にまたこの本を読むと「フムフム、これはこういうことだったのか」と理解が深まるような気がします。
その時まで、精進あるのみ。
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木村容子先生の本

2010年07月19日 17時24分04秒 | 漢方
人気漢方医の木村容子先生の本を2冊読みました;

1.女40歳からの「不調」を感じたら読む本 (静山社文庫) 2010年、静山社
2.漢方の知恵でポジティブ・エイジング (生活人新書) 2008年、NHK出版

木村先生はお茶の水女子大卒業後中央官庁に入り、その後イギリスのオックスフォード大学に留学し、そこで漢方医学と出会ったそうです。帰国後は東海大学医学部に学士入学して医師免許を取得したという、ちょっと変わった経歴の持ち主。

さて、私事ですが、40歳代半ばを迎えてとにかく体調が悪いのです。
元々不整脈を抱えたこの体ですが、それだけにとどまらず、明らかな「冷え性」になってしまいました。
男なんですけど、ねえ。
寒い冬はすっかり病人と化しています。
夏も冷房にからっきし弱くなりました。
手足が冷えるだけではなくて、体の中心からゾクゾクするのです。

自律神経失調症とか、男性更年期とか、いろいろ病名が頭の中を巡りました。
いくつか本も読んでみました。

で、一番納得できる本が木村先生の2冊。
私の症状をピタリと抑え、解説してくれています。

1は女性の更年期を扱った内容、2は男女ともに扱った内容です、
50歳前後は男女ともに更年期症状に悩まされます。
西洋医学的にはホルモンの動態で説明されますが、漢方医学的には・・・

「実」→「虚」
「陽」→「陰」

の二つの現象が体の中で起きているとのこと。
「この二つの老化への流れの背景には、)体の臓器そのものの機能が衰えること、)それぞれの調整力が低下することーが関与しており、『以前よりも食が細くなった』『季節や温度の変化に体がついて行かない』などと感じる人は可能性があります。」
・・・漢方をかじっている私には、こちらの解説の方が頷けました。

いろんな不調が出ては消えていきますが、要はまずそれを受け入れること。
そしてそれを和らげる生活(養生)をすること。
主に食生活、適度な運動、ツボ、呼吸法(※)。
要すれば漢方薬を使用。

読んでいて気づいたのですが、疲れ目のツボはいつも私が自分でマッサージしている場所でした。
それから、緊張性頭痛のツボも私が自分でマッサージしている場所でした。
教えられたわけでもないのに、実践していたとは驚きです。

※ 「リラックス呼吸法」
下腹部を意識して、お腹を膨らませながら、鼻から息をいっぱい吸い込み、約5秒間息を止め、口からゆっくりと10秒くらい欠けて息を吐き出します。気持ちが落ち着き、リラックスするまで何回か繰り返してみましょう。心臓の鼓動を意識しなくなった段階が、リラックス状態になったことを知る一つの目安です。

先が見えず、焦っていた気持ちが少し和らぎました。

<メモ>
「おや、これは?」とか「フ~ン、そうなんだ」と頷いた箇所をメモしました(備忘録)。

中国医学の古典「黄帝内経素問」より;

★ 女性の体は7歳毎に節目を迎えるサイクルがある:
7歳:腎気盛んになり、歯が生え替わり、毛髪が伸びる
14歳:月経が始まり妊娠が可能になる
21歳:腎気が充実し、智歯が生えそろい、身長も伸びきる
28歳:筋骨がたくましくなり、毛髪も最も長く、体は盛壮となる
35歳:陽明の脈が衰え、顔がやつれ始め、脱毛が始まる
42歳:三陽の脈が衰え、顔のやつれは広がり、白髪が生え始める
49歳:閉経し、老衰し子どもが出来なくなる

★ 男性の体は8年ごとに節目を迎えるサイクルがある:
8歳:腎気が充実し始め、毛髪は長くなり、歯が生え替わる
16歳:腎気が旺盛になり、精気が充密して射精することができ、男女和合して子を作ることができる
24歳:腎気は充実し、筋骨はしっかりし智歯が成長し、体も伸びて最も盛んになる
32歳:筋肉が強壮となり、肌肉が豊かで逞しくなる
40歳:腎気が衰えだし、毛髪は抜け、歯は痩せて艶がなくなる
48歳:陽気が上部で衰え、顔面がやつれ、髪ともみあげはごま塩になる
56歳:肝気が衰え、筋脉の活動が自由でなくなり、精気も少なく、腎気も衰え、肉体疲労が極まる
64歳:歯は抜け、頭髪も落ちる


・・・わかっちゃいるけど、こうハッキリ書かれると、ねえ(苦笑)。

間違ったダイエット法は、逆に太りやすい体を作る!?
 例えば、食事だけを極端に減らして摂取エネルギーを調整すると、確かに体重は落ちますが、志望と共に筋肉も痩せてしまいます。筋肉が減ると基礎代謝が低下しますから、わざわざ「痩せにくい体」を作ってしまったことになります。しかも、リバウンド現象が起きれば脂肪だけが増えることになり、その脂肪を燃やす筋肉がないまま脂肪が蓄積されていってしまい、さらに太ってしまうという悪循環に陥ることになります。

食事と睡眠の関係
 寝る前の夕食を軽めにして消化できる時間を十分に取るようにしてください。これは、すぐ寝付くことができ、途中で覚醒することもなく、スッキリ目覚めることができるという、質の良い安眠を手に入れるための基本的な養生法です。
 ただ、「疲れが取れない」と訴える患者さんの中には、「食事の痕は眠くなるから、床につく直前に食事をするとよく眠れるのでは?」と考えて、就寝直前に食事をしてしまう人もいます。
 消化が終わらないうちに寝てしまうと、寝ている間も胃腸が活発に働いて体内の温度は上昇しています。人の体は体温が低くなる過程でウトウトするようになっており、床に入っても体温が上がっていては上手く眠りに入ってくことができません。寝付いたとしても、消火活動が活発な間は熟睡ができないので、疲れが取りにくいのです。
 食後に眠くなるのは、エネルギーが不足している「気虚」タイプの特徴的な症状です(私そのもの!)。

日本漢方と中医学
 日本の漢方は、室町時代に伝えられた中国伝統医学が基本となっています。江戸時代の鎖国政策により、日本国内では独自に漢方医学が体系化していきました。今はグローバルには、中国医学をトラディショナル・チャイニーズ・メディシンというのに対し、日本の漢方医学はカンポウ・メディシンと呼ばれています(WHO関連機関発行の用語集)。
 最近、診察していて興味深いのは、中国人の患者さんが増えていること。理由を聞くと「中国よりも日本の漢方薬の法が安全で品質がよいから」とのこと。
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