小児漢方探求

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

呼吸器疾患(風邪・咳)の漢方2024

2024年09月27日 12時51分42秒 | 漢方
WEBセミナーで上記の講演を視聴しました。
解説がわかりやすくよい復習になりました。

また、「芍薬は汗を止めるブレーキであり、これが入っていると虚証用の方剤になる」「太陽病期の虚実を判定する際、咽頭痛の有無がポイントとなる」という目からうろこが落ちる箇所もあり、そういう視点があったかと感心しました。
講師は井上博喜Dr.(飯塚病院)です。

▢ 陰陽と体力・病毒の量的消長関係

経過 初発 →  →  →  →  →  →  →  → 死   
     表  半表半裏   裏
体力   強         弱
病毒   弱         強
     ①   ②     ③④⑤⑥

<陽証> 熱がある
① 太陽病期
② 少陽病期
③ 陽明病期
<陰証> 冷えがある
④ 太陰病期
⑤ 少陰病期
⑥ 厥陰病期

・・・ここで気づいたのですが、③陽明病期は陽証でありながら裏なのですね。
私は開業小児科医なので、診療範囲は①②くらいであり、③以降は病院に紹介するスタンスです。

▢ 表裏
・生体の部位を表す概念
・病気の進行方向は、表 → 半表半裏 → 裏

(体表部):皮膚、筋肉、四肢、頭部
半表半裏:肺、肝、上部消化管など横隔膜周辺
(体深部):臓腑(特に下部消化管)

▢ 太陽病
【病位】表
【脈候】浮
【症候】頭痛、発熱、悪寒、関節痛、筋肉痛、上気道炎症状(咳、咽頭痛)
 実証:自然発汗(ー)
 虚証:自然発汗(+)
【治療原則】発汗
【代表方剤】桂枝湯、麻黄湯

▢ 浮脈=太陽病ではない
・浮脈とは、触れ始めが一番強い脈。
・太陽病以外で例外的に浮脈になる場合;
✓ 食後、運動後
✓ ステロイド内服中
✓ 妊娠中

▢ 太陽病に使用する方剤

(虚実) (方剤)    (自汗)(咽痛)   (特徴)
 実   大青竜湯     ー   +    煩燥、口渇
     麻黄湯      ー   +    関節痛
     葛根湯      ー   +    項背強ばる

 虚   桂枝二越婢一湯  +   +    熱多く寒少なし、口渇
 実   桂枝麻黄各半湯  +   +    熱多く寒少なし、不渇
 間   小青竜湯     +   +    水毒(寒)

 虚   桂枝加葛根湯   ++  ー    項背強ばる
     桂枝湯      ++  ー    上衡(表虚証の代表)

・・・麻黄湯・葛根湯・桂枝湯が代表的ですが、井上先生は上記8つの方剤を使い分ける必要があると仰います。
自汗はわかるのですが、咽痛(咽頭痛)が鑑別ポイントとなるのは初めて知りました。

・・・汗に関しては、肌を触った感覚で鑑別可能:
 実証  → サラサラ
 虚実間 → しっとり
 虚証  → ベトベト

虚実間の方剤(桂枝二越婢一湯と桂麻各半湯)はメジャーではありませんが、小青竜湯はよく処方しますね。
ただ、虚実間を意識するというより、水様鼻汁があれば小青竜湯、という視点ですが。

▢ 太陽病における虚実の判断
① 自汗の有無・・・自汗あり → 虚証、無汗 → 実証
② 脈の力強さ・・・弱 → 虚証、強 → 実証
※ 舌や腹の所見は無視してよい。

・・・漢方的には「汗を出して解熱させる」ことが感冒初期治療のポイントですが、「汗を出さずに熱を上げられる」体力を実証と捉えます。逆に「汗が出てしまい熱が上げられない」人は虚証です。

▢ 桂枝湯
・聚方の祖:いろいろな方剤の元になっている
・ポイント:脈浮弱、自汗、上衡
・構成生薬:桂皮3-4;芍薬3-4;大棗3-4;生姜1-1.5;甘草2
桂皮・・・発汗、気をのびやかに巡らす(上に上がった気を下げる)
芍薬・・・収斂、血をのびやかに巡らす(汗を止める)
甘草、生姜、大棗・・・3つで生姜煎(しょうきょうせん)胃腸を守るトリオ

君薬は汗を出すのに臣薬は汗を止めるベクトルと逆であるが、これ如何に?
 → アクセルとブレーキが入っているので、バランスが取れるという視点で考えるとわかりやすい。桂枝湯は虚証に使用される方剤であり、汗が出すぎるとまずい。

▢ 葛根湯
・ポイント:無汗、後頚部のこり
・構成生薬:葛根4-8;麻黄3-4;大棗3-4;桂皮2-3;芍薬2-3;甘草2;生姜1-1.5
桂皮・麻黄・・・発汗(発表)
芍薬・葛根湯・・・筋緊張(とくに首の後ろ)を緩める
麻黄・葛根湯・・・発汗、頭痛を治す

・・・実証用の方剤ではあるが、芍薬というブレーキが入っているので、実証の中でもやや虚証寄りの構成と考えられる。

▢ 麻黄湯
・ポイント:無汗、関節痛、筋肉痛
・構成生薬:麻黄3-5;桂皮2-4;杏仁4-5;甘草1-1.5
桂皮・麻黄・・・発汗、解表作用
麻黄・杏仁・・・鎮咳・去痰作用

・・・桂皮麻黄の発汗作用にブレーキをかける芍薬が入っていない点がポイントであり、純粋に実証用の生薬構成となっている。また、胃腸薬3兄弟のうち生姜と大棗も消えており、車に例えるなら身軽にしてスピードを追求する「F1カー」。

▢ 大青竜湯(≒麻黄湯+越婢加朮湯)
・ポイント:無汗、口渇、煩燥(熱がこもって身の置き場のない苦しさ、じっと寝ていられない)
・生薬構成:麻黄;桂皮;石膏;杏仁;甘草;生姜;大棗
桂皮・麻黄:発汗・解表作用
石膏:強力に熱を冷ます、口渇・煩燥に対応
麻黄・杏仁・・・鎮咳・去痰作用

・・・桂皮麻黄の発汗兄弟に強力に熱を冷ます石膏が仲間入り、かつブレーキの芍薬なし、と最強の生薬構成になっている。石膏が胃に来るので胃腸薬3兄弟が復活している。麻黄湯でも間に合わないくらい熱がこもっているときに選択。

▢ 太陽病(浮脈、悪寒、発熱)に使用する実証用方剤まとめ

(強い脈+無汗)+(煩燥・口渇)   → 大青竜湯(麻黄湯+越婢加朮湯)
        +(関節痛・筋肉痛) → 麻黄湯
        +(後頚部凝り)   → 葛根湯

・・・より実証の症状があれば強い方剤を選択するそうです。
(例)後頚部凝りを訴えるけど節々も痛い → 葛根湯ではなく麻黄湯を選択

▢ 桂枝二越婢一湯(≒桂枝湯+越婢加朮湯)
・ポイント:自汗、咽頭痛、口渇
・構成生薬:桂皮・芍薬・麻黄・甘草各2.5-3.5;大棗3-4;石膏3-8;生姜1
桂皮・麻黄:発汗・発表
石膏:清熱
芍薬:収斂
生姜・甘草・大棗:胃腸薬3兄弟
蒼朮:おまけ

・・・大青竜湯(麻黄湯+越婢加朮湯)に芍薬(ブレーキ)が入っているイメージ。

▢ 桂枝麻黄各半湯(≒桂枝湯+麻黄湯)
・ポイント:自汗、咽頭痛、不渇
・構成生薬:桂皮3.5;芍薬2;生姜0.5-1;甘草2;麻黄2;大棗2;杏仁2.5
桂皮・麻黄:発汗・発表
芍薬:収斂
杏仁・・・鎮咳・去痰
生姜・甘草・大棗:胃腸薬3兄弟

・・・桂枝二越婢一湯との違いは石膏の有無、つまり、
石膏あり(桂枝二越婢一湯) → 口渇
石膏なし(桂枝麻黄各半湯) → 不渇
で使い分けるとのこと。

▢ 桂麻3兄弟と喉チクの風邪
<陽証期>
桂枝二越婢一湯 ・・・熱>寒、自汗(自覚するかしないか程度)+口渇
桂枝麻黄各半湯 ・・・熱>寒、自汗(自覚するかしないか程度)+不渇
(桂枝二麻黄一湯)
(桔梗湯)   ・・・咽頭痛のみで他の症状に乏しいとき(虚実不問)
<陰証期>
麻黄附子細辛湯 ・・・「直中の少陰」、強い冷え、脈沈細弱、倦怠感

・・・麻黄附子細辛湯だけ陰証で違和感あり・・・どういうこと?

▢ 麻黄附子細辛湯
・高齢者や疲れがたまって弱っている人(直中の少陰)に適応
・陰証(冷え症)の咳嗽
・手足の冷え、顔色不良
・強い倦怠感(座っていたい、寝ていたい)
・沈弱脈
・水溶性喀痰に → +小青竜湯(19)
・慢性期の胃腸障害に → 桂姜棗草黄辛附湯

・・・太陽病期の“悪寒”は熱が上がると解消して逆に「暑い暑い」というが、少陰病期の“悪寒”は熱が上がってもずっと「寒い寒い」と言い続ける、とのこと。

▢ 桂姜棗草黄辛附湯麻黄附子細辛湯+桂枝湯
・陰証(冷え症)の長引く咳嗽
・胃腸が弱い
・心理的ストレス(腰が痛い、痛みがある・・・)
・中脘付近(剣状突起と臍部の間)の抵抗・圧痛
・冷えが強ければ、麻黄附子細辛湯+桂枝加朮附湯

▢ 麻黄附子細辛湯の適応を考える際は“冷え”を見抜く必要がある
✓ いつもより冷えるか?
✓ 冷えるとイヤな感じがするか?
✓ 手足が冷たいか?
✓ 温かい飲み物を好むか?
✓ 強い倦怠感があるか?

▢ 小青竜湯
・ポイント:自汗、水様鼻汁、水様痰
・構成生薬:麻黄2-3.5;芍薬2-3.5;乾姜2-3.5;甘草2-3.5;桂皮2-3.5;細辛2-3.5;五味子1-3;半夏3-8
細辛・桂皮・麻黄:発汗・解表作用
芍薬:収斂
半夏・五味子:鎮咳作用、利水作用
乾姜・甘草・大棗:胃腸薬

▢ 風邪の“漢方的“養生
1.体を冷やさない
・薬は温めて飲む(エキス剤は湯に溶く)
・ふとんなどで覆う
2.しっとり汗が出るまで繰り返し漢方薬を服用
・就寝前まで3-4時間毎に服用
・流れるほど汗をかくのはダメ!
3.胃腸に負担のかかる食事は控える
・エネルギーの無駄遣いを防ぐ

・・・処方箋には「1日3回、食前に内服」と書かざるを得ませんが、この飲み方では十分な効果を期待できません。
「しっとり汗をかくまで3-4時間毎に内服」が一番効果的な飲み方です。
この“しっとり”がポイントで、サウナに入ったときのようにダラダラ流れるほど出るまで飲んではいけません。
脱水になってしまいます。
上記方法に従えば、2日分を1日で飲んでも問題ない、と講師はコメントしていました。

▢ 麻黄 ・・・効果も強いが副作用も出る生薬
【主成分】エフェドリン
【薬理作用】交感神経興奮、中枢興奮、鎮咳、気管支拡張、発汗、抗炎症、抗アレルギー作用
【薬能】
1)発汗:急性熱性疾患初期を改善
2)止咳:咳嗽や喘息症状を改善する
3)利水:浮腫や腫脹を改善
【慎重投与】胃腸虚弱、体力低下、著しい発汗、狭心症・心筋梗塞、重症高血圧、甲上腺機能亢進症、排尿障害
【注意すべき副作用】胃腸障害、不整脈、不眠、尿閉

▢ 太陽病期 → 少陽病期への移行を示すサイン
・悪寒が目立たなくなる
・項部のこわばりなし、頭痛なし、発汗なし
・微熱
・口が苦い(ねばつく)、食欲不振、味覚障害
“咳嗽”は少陽病期の症状
・舌苔(厚い)
・脈が浮 → 弦(ギターの弦を触っているような感覚)

▢ 咳嗽に使用する漢方薬
      急性期  亜急性期  慢性期
        (1-2週間)(3-4週間)
(粘稠痰)  麻杏甘石湯 清肺湯
(湿性咳嗽) 小青竜湯  半夏厚朴湯
(強い咳込み)越碑加半夏湯
(乾性咳嗽) 麻黄附子細辛湯 滋陰降火湯
             麦門冬湯

▢ 麦門冬湯(29)
適応
・空咳、咽頭乾燥感
・少量の粘稠痰
・こみ上げてくる連続咳嗽・顔面紅潮
・咽喉のつかえ感(咽喉不利)
・Sjogren症候群に伴う咽頭乾燥感
作用:末梢性鎮咳作用
コツ:
・炎症が残っているときは効かない → 柴胡剤と併用

▢ 半夏厚朴湯(16)
適応
・湿性咳嗽
・咽喉のつかえ感(咽中炙臠)、梅核気
・神経質、几帳面(メモ魔、マーカー魔)、用意周到
・不安感、予期不安
・胃食道逆流に伴う咽喉・食道部の異物感
作用:嚥下反射の改善作用(サブスタンスPを介する)
応用:
・胃腸障害を合併 → 茯苓飲合半夏厚朴湯
・胸脇苦満・微熱 → 柴朴湯(小柴胡湯+半夏厚朴湯)

▢ 麻杏甘石湯(55)
適応
・ねばりのある痰
・口渇、熱感、自汗傾向
・連続性咳嗽
応用
・水溶性喀痰  →  +小青竜湯
・胃腸虚弱   →  +二陳湯
・激しい咳嗽  →  +桑白皮( → 五虎湯)

・・・石膏が入っているので“口渇”が入る。

▢ 上記3剤使用の際、炎症が残っていたら柴胡剤と併用
(実)  基本処方    鎮咳漢方薬
 ↑   柴陥湯     麻杏甘石湯(55)
 ↓   小柴胡湯 +  半夏厚朴湯(16)
(虚)  柴胡桂枝湯   麦門冬湯(29)

▢ 清肺湯(90)
適応
・色の濃い黄色がかった痰
・粘っこくて痰の喀出が困難なとき
作用
・清熱・滋潤・利水・鎮咳・温剤の生薬が揃って入っている。
・COPD患者の呼吸器症状を改善する。
・下気道病変に対する清熱作用(抗炎症)
応用
・気道の滋潤作用(水分量増加) → 口腔乾燥症に応用可能?
副作用
・黄岑(肝機能障害、間質性肺炎)、山梔子(腸間膜動脈硬化症)、甘草(偽アルドステロン症)

・・・“抗生物質を使いたくなるような汚い痰“がキーワード。

▢ 越碑加半夏湯
適応
・目脱状(もくだつじょう、目の玉が飛び出しそうなほど激しい咳)
・咳嗽後に嘔吐
・百日咳
症候
・脈浮大
応用
激しい乾性咳嗽 → 越婢加朮湯+麦門冬湯
激しい湿性咳嗽 → 越婢加朮湯+半夏厚朴湯

・・・この方剤、結構使っています。
他の治療(抗生物質、抗喘息薬)に反応なく、咳込みがつらい場合に処方しています。
有効率は高く、8割くらいでしょうか。

▢ 滋陰降火湯(93)
適応
・粘稠で切れにくい痰(麦門冬湯様)
・麦門冬湯より乾燥状態が強い
・咳は比較的強め、夜半〜早朝に頻発
・咽頭後壁の乾燥、舌乳頭の消失(鏡面舌)と乾燥
・皮膚は浅黒く乾燥
・やや便秘傾向

・・・まだ使用したことがありません。
“乾性咳嗽ではあるが麦門冬湯でも今ひとつ”の場合に処方してみようと思います。
でもその場合は越碑加半夏湯(越婢加朮湯+麦門冬湯)を使ってしまうかなあ・・・。

▢ 桂枝加厚朴杏仁湯
適応
・通常より咳が残りやすい人に
・ふとんに入ってから咳嗽増強
・キャンキャン、犬の遠吠え様
・虚弱体質
・胃腸虚弱で麻黄を受け付けない人に

・・・小児科医は“犬の遠吠え様”と聞くと「クループ症候群」を想定してしまうのですが、
嗄声・犬吠様咳嗽にも効くのかな?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漢方医学では「こころ」をどう捉えるのかーその2

2024年09月13日 07時00分32秒 | 漢方
前回も同じ題で書きました。
その内容は…

・漢方医学では「脳」という臓器の設定はない。
・その機能「こころ」を五臓に分配した。
・主な機能「怒り」は肝、「不安」は心に振り分けた。
・その他の喜怒哀楽は各臓器に振り分けた。

というもので、なかなか頭の中で整理できませんでした。

こちらの記事に、私が知りたいことが書いてありました。
要約&引用させていただきます。

<ポイント>
・東洋医学では「こころ」の働きを「心」と「肝」の2つに分けて考える。
・心は神志を主り、意識、知性、理性(大脳新皮質)と関係する。
・肝は情志を主り、感情、本能(大脳辺縁系)と関係する。
・心血は虚しやすく(心血虚)、精神神経活動の抑制、低下状態を招く。治法として補う。
・肝気は失調、亢進しやすく(肝気鬱結かんきうっけつ)、精神神経活動の亢進状態を招く。治法として調整する。
・こころの治療に使われる方剤を使い分ける際には、その方剤が心と肝のどちらに作用するのかを覚えておくことが大事である。

(例示)
・心血虚に対する方剤
加味帰脾湯 -心血虚による精神神経活動の低下に対する方剤-
・肝気鬱結に対する方剤
▶ 加味逍遙散 -肝気鬱結による熱証に対する方剤-
▶ 抑肝散加陳皮半夏 -肝気鬱結による肝陽上亢に対する方剤-

この文章を書いた薬剤師さんは「対薬理論」を活用しています。
これは2つの生薬の組み合わせを1つの単位として構成生薬を捉え、
方剤のベクトルを考える手法です。


▢ 臨床での活用対薬理論でみてみましょう!松橋漢方塾
第2章 こころと体の弁証論治 ~分けたらわかる神志と情志~
※ (下線は私が引きました);

「こころ」の考え方
 東洋医学では「こころ」の働きを「心」と「肝」の2つに分けて考える心は神志を主り、意識、知性、理性(大脳新皮質)と関係する肝は情志を主り、感情、本能(大脳辺縁系)と関係する。気血の観点からみると、心血は虚しやすく(心血虚)、精神神経活動の抑制、低下状態を招く。一方、肝気は失調、亢進しやすく(肝気鬱結かんきうっけつ)、精神神経活動の亢進状態を招く。それぞれの治法として心血は虚しやすいので補い肝気は失調しやすいので調整するこころの治療に使われる方剤を使い分ける際には、その方剤が心と肝のどちらに作用するのかを覚えておくことが大事である。それぞれの代表的な方剤について対薬理論を使って解説する。

(例:心血虚に対する方剤)
加味帰脾湯 -心血虚による精神神経活動の低下に対する方剤-
 心血を補う代表的な方剤として加味帰脾湯があげられる。ただし、方剤名の「帰脾」に示されるように、心血だけでなく脾を補う作用が中心にある。このため人参、白朮、茯苓など脾虚に使われる六君子湯や補中益気湯に重なる生薬が多い。
対薬:黄耆と当帰
 補中益気湯の中で黄耆は、気を補う生薬として人参との対薬で考えたが、加味帰脾湯では血を補う生薬として当帰との対薬で考えるとよい。補血を目的とした方剤である「当帰補血湯」は黄耆と当帰の2薬で構成されていることからも分かるように、黄耆は気を補うことで、当帰の補血作用を補う。また潤燥の観点からは、当帰は補血により潤す、黄耆は利水により乾かす、という性質があり、両者で平衡をとっている。
木香
 補う生薬を多く使うと必ず流れが悪くなり、胃がもたれる、腹がはるといった自覚症状が現れやすくなる。補うだけの四君子湯よりも、理気作用のある陳皮と半夏を加えた六君子湯が頻用されているのはこのためである。補気薬に理気薬はつきものである。同じ理由から、多くの補う生薬を配合している加味帰脾湯には理気薬として木香が配合されている。
薬連:竜眼肉と酸棗仁と遠志
 これらは心血を補う薬連である。3薬とも「寧心安神※1」といって心血を補う作用は同じであるが、それぞれ心とともに補う臓が異なる。竜眼肉は「脾」を平補※2する。脾では水穀の気から血が作られる。この血が肝に蔵され、やがて心血を補う。酸棗仁は「肝」を平補する。特に肝が蔵する血を補うことで、心血を補う。遠志は「腎」を平補する。腎は精を蔵する。肝腎同源※3の考えから肝血を補う上で、腎精を補うことが重要である。
 このように、心とともに、脾、肝、腎を分担して平補することで心血を補うのがこれら3つの生薬による薬連である。
※1 こころを穏やかにすること。
※2 穏やかに補うこと。
※3 肝血と腎精は相互滋養の関係にあること。
対薬:柴胡と山梔子
 加味帰脾湯の「加味」の部分の生薬である柴胡と山梔子について解説する。どちらも清熱作用のある生薬であるが、柴胡は「肝」、山梔子は「心」の熱を冷ます。心血虚になると、血が不足するため、相対的に気の機能が過剰になる。気は陰陽で考えると陽に属するため、陽の症状であるほてりや動悸が現れやすくなる(虚熱)。これを冷ますために柴胡と山梔子が配合されている。また五行論の考えから、相生※4関係にある心と肝は互いに熱が移行しやすい。そのため、心と肝を同時に冷やす柴胡と山梔子の対薬が必要となる。また熱証が明らかでなくても、虚熱は潜在的にあると考えられるため、予防目的で用いてもよい。
※4 相生:五行の一つが、相手に対し、促進、助長などの作用をすること。
 まとめると、加味帰脾湯は心血虚とそれに伴う熱証に配慮された方剤で、精神神経活動の抑制、低下状態に用いるとよい。

図2-1. 加味帰脾湯の生薬構成


(例:肝気鬱結に対する方剤)
▶ 加味逍遙散 -肝気鬱結による熱証に対する方剤-
 肝を治療する2つの方剤について解説する。肝の治療方法にはいくつかの原則があり、肝を治療する方剤はその原則に従って構成されている。

肝の治療原則
① 気と血を同時に治療する
② 木克土に配慮し、脾胃を調整する
③ 熱証への配慮をする
 加味逍遙散に配合されている各生薬の役割を対薬理論と肝の治療原則に則って解説する。

対薬:柴胡と薄荷
 どちらの生薬にも疏肝理気、つまり肝の気を流して整える作用があり、対薬として考えることができる。
対薬:当帰と芍薬
 肝の治療原則①を考慮すると、柴胡と薄荷で肝気を調整するだけでなく、同時に血の治療も必要となる。そこで、肝血を調整する生薬として当帰と芍薬が配合されている。当帰には補血と活血作用がある。血虚には必ず血瘀を伴うため、補血するときには活血もする。特に芍薬は補血作用しかなく、流れが滞りやすいので、当帰の活血作用が必要となる。また当帰と芍薬はどちらも補血作用がある一方で、当帰は発散性、温性であるのに対し、芍薬は収斂性、寒性と逆の作用を有しており、互いにその部分の作用を相殺している。つまり、不要な作用は相殺させ、肝の治療で必要となる補血作用だけを増強させ合って取り出す、非常に合理的で、美しい対薬であるといえる。
 このように肝気を調整する柴胡と薄荷の対薬と、肝血を調整する当帰と芍薬の対薬とで、肝に入る2つの対薬がさらに対薬対を構成している。
対薬:白朮と茯苓   対薬:生姜と甘草
 白朮と茯苓、生姜と甘草は肝の治療原則②に基づいた対薬対である。木克土、つまり肝気が失調して亢進すると、五行論の考えから肝と相克関係にある脾が障害されやすくなる。これを防ぐために健脾して脾胃を強めておく必要がある。これに対して、健脾燥湿により脾を補うのが白朮と茯苓の対薬である。また生姜と甘草の対薬は、辛甘扶陽で中焦の気を補い、胃を調整する。
 これら脾に入る2薬と、胃に入る2薬とで対薬対をつくり、木克土から脾胃を守っている。
対薬:牡丹皮と山梔子
 加味逍遙散の「加味」の部分の生薬である牡丹皮と山梔子は肝の治療原則③に依拠している。肝の熱証の要因としては2つ考えられる。一つは、停滞したものは熱をもつため、肝気鬱結で停滞した気自体が熱をもつことである。もう一つは、肝血の不足によって気(陽)を制御していた血(陰)の力が弱まり、陽の過亢進によって、ほてりなどの熱証が現れやすくなることである。
 牡丹皮と山梔子は共に清熱作用があるが、牡丹皮は「肝」、山梔子は「心」を清熱する。この対薬が肝気鬱結から進展した肝の熱証を取り除く。

図2-2. 加味逍遙散の生薬構成


(例:肝気鬱結に対する方剤)
▶ 抑肝散加陳皮半夏 -肝気鬱結による肝陽上亢に対する方剤-
 同じく肝の治療に使われる抑肝散加陳皮半夏は、生薬構成が加味逍遙散とよく似ているが、これはどちらも肝の治療原則に従って作られているからである。
対薬:柴胡と釣藤鈎
 肝気の調整薬として、柴胡は両方剤に共通であるが、加味逍遙散の薄荷は、抑肝散加陳皮半夏では釣藤鈎に入れ替わっている釣藤鈎には「肝陽上亢」、つまり子供の夜泣きや痙攣、感情の高ぶりなど、肝の失調による過亢進を抑える作用がある
対薬:当帰と川芎
 肝血に配慮した生薬も同様に配合されている。当帰は両方剤に共通であるが、加味逍遙散の芍薬は抑肝散加陳皮半夏では川芎に入れ替わっている。抑肝散加陳皮半夏が使われるような病態では、肝気鬱結が強いため、気をより強く流すための生薬が必要となる。そのため、気の流れを停滞させてしまう芍薬ではなく、発散性の生薬で、気を流す作用の強い川芎が用いられている。
 抑肝散加陳皮半夏の肝の調整薬についてまとめると、柴胡と釣藤鈎が肝気を調整する対薬当帰と川芎が肝血を調整する対薬である。これら肝を調整する2組の対薬がさらに対薬対を構成している。
対薬:陳皮と半夏
 肝の治療原則②に基づき、脾胃の調整薬も同様に配合されている。脾に入る対薬として白朮と茯苓は共通している。一方、胃に入る対薬として、加味逍遙散の生姜と甘草は、抑肝散加陳皮半夏では陳皮と半夏に入れ替わっている。胃の降濁作用が低下すると、嘔気や胃もたれなど上向きの症状が出やすくなる。陳皮と半夏は胃の降濁作用、つまり下向きの方向性を助けることで、これらの症状を改善する胃の調整薬である。
 抑肝散加陳皮半夏の脾胃の調整薬についてまとめると、白朮と茯苓が脾を調整する対薬、陳皮と半夏が胃を調整する対薬である。これら脾胃を調整する2組の対薬がさらに対薬対を構成している。
 加味逍遙散と抑肝散加陳皮半夏はどちらも肝気を調整する方剤であるが、両者の違いとしては、加味逍遙散は肝気鬱結からの熱証に配慮された方剤であるのに対し、抑肝散加陳皮半夏は肝気鬱結からの肝陽上亢に配慮された方剤である。肝気(陽)は滞ると上昇し、頭痛、イライラ、手足の振るえ、不眠、眼瞼痙攣、BPSD、精神症状の行動化などの症状を起こす抑肝散加陳皮半夏はこのように肝陽上亢の証がある場合に適した方剤である。

図2-3. 抑肝散加陳皮半夏の生薬構成
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風邪のphaseを考慮した咳の漢方

2024年09月04日 13時55分41秒 | 漢方
前項に引きつづき、風邪の経過(phase)を考慮した漢方を考えてみます。
今回は咳・咳嗽。

それを参照させていただきます。

初期(熱のある急性期:太陽病期)は麻黄湯(26)入りの方剤が適用になります。
代表は小青竜湯(19)。

【小青竜湯】《傷寒論》:麻黄2-3.5;芍薬2-3.5;乾姜2-3.5;甘草2-3.5;桂皮2-3.5;細辛2-3.5;五味子1-3;半夏3-8



その後、咳が止まらずこじれてきたとき(熱が上がったり下がったり:少陽病期)は、柴胡剤を使用します。
柴胡剤とは、柴胡・黄岑入りの方剤です。
代表は清肺湯(90)、竹筎温胆湯(91)。

【清肺湯】《万病回春》:黄芩2-2.5;桔梗2-2.5;桑白皮2-2.5;杏仁2-2.5;山梔子2-2.5;
【竹筎温胆湯】《寿世保元》:柴胡3-6;竹茹3;茯苓3;麦門冬3-4;陳皮2-3;枳実1-3;黄連1-4.5;甘草1;半夏3-5;香附子2-2.5;生姜1;桔梗2-3;人参1-2

初期は麻黄剤、亜急性期は柴胡剤、という原則は鼻汁の項目と共通ですね。

回復期は人参入りの方剤を選びます。
代表は麦門冬湯(29)

【麦門冬湯】《金匱要略》:麦門冬8-10;半夏5;粳米5-10;大棗2-3;人参2;甘草2


風邪のphaseではなく、咳の性質により使い分ける方法もあります。

透明な痰 → 小青竜湯(19)
白色の痰 → 竹筎温胆湯(91)
黄色の痰 → 清肺湯(90)
乾性の咳 → 麦門冬湯(29)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風邪のphaseを考慮した鼻水〜ちくのう症(副鼻腔炎)に対する漢方

2024年09月01日 11時19分58秒 | 漢方
風邪に使われる漢方薬は数多くあります。
西洋医学と異なる点は、
① 風邪の経過(起承転結)
② 症状の性質 
により処方が変わること。

①は漢方独特の「六病位」という考え方ですが、
毎日風邪患者を診療している小児科医の視点から見ても、肯けます。

②については、
例えば咳なら湿性(痰が多い)か乾性(痰が少ない)かで薬が異なりますし、
鼻水でもその性状が水様性か黄色性か粘膿性かで薬が異なります。

そしてそれらを使いこなすと、有効率がぐっと上がります。

小児科開業医である私のクリニックには、
ちくのう症(副鼻腔炎)で抗生物質漬けにされた患者さんが、
耳鼻科から逃げてくる例が時々来院します。

それらの患者さんに対して、
試行錯誤をしながら漢方薬を工夫して処方し続けてきましたが、
最近ようやく解決できる例が増えてきました。

ここでは風邪漢方の解説でわかりやすかった谷川聖明先生のレクチャー内容を紹介します。

まずは、風邪の経過(phase)による使い分けを。
漢方医学では、熱性疾患の起承転結を「六病位」という概念で捉えます。

太陽病期 → 少陽病期 → 陽明病期 → 太陰病期 → 少陰病期 → 厥陰病期

外来では主に最初の二つ(太陽病期と少陽病期)を扱います。
陽明病期以降はこじれて重症化した状態であり、
病院に紹介して要すれば入院治療するレベルです。

さて、最初の二つをより具体的に表現すると以下のようになります;

太陽病期:急性期〜亜急性期:悪寒・発熱、頭痛、咽頭痛、鼻閉・鼻汁
少陽病期:亜急性期〜慢性期:上気道炎・気管支炎、鼻炎・副鼻腔炎、扁桃炎

新型コロナを思い出してください。
咽頭痛から始まり、熱が出てその後に咳が始まりますよね。
マイコプラズマも初めは咽頭痛で数日後に咳が始まることが多いです。

なんとなくイメージできたでしょうか。

そして、太陽病期と少陽病期では使う漢方薬が異なります。

太陽病期 → 麻黄含有製剤
少陽病期 → 柴胡剤

麻黄という生薬は、強力に身体を温める作用があります。
つまり熱を上げるのです。

え、熱が出ているのにさらに上げるの?
それって余計につらくなるのでは?

という素朴な疑問が生まれますよね。

はい、そうなんです。
説明の前に、発熱って何?
という話をします。

風邪を引いて熱が出るのは、
病原体(主にウイルス)に負けて出ているのではありません。

病原体をやっつけるために人の免疫システムが熱を作って対抗しているのです。
熱が上がるときにガタガタ震える悪寒という現象があります。
あれは震える → 運動して熱を作る動作なのです。

熱が上がりきると、悪寒は止まります。
発熱のピークですね。
その後に汗ばんでその気化熱で熱が少し下がりますが、
病原体が生き残っているとまた発熱システムが作動します。

発熱は基本的に人の身体の味方なんです。
そう、漢方薬は人の免疫システムをサポートしてさらに発熱させ、
病原体を追い出すという考え方なのです。

免疫力の低下した高齢者は十分に発熱することができません。
だからこじれやすい、重症化しやすいのですね。
「高熱でなくてもこじれて入院した」
という現象はこういう背景です。

一方の西洋薬はどうでしょうか。
せっかくの発熱を解熱剤で下げてしまい、
病原体をやっつける力を弱めています。
解熱剤を頻繁に使い続けると、発熱期間が長引くという動物実験のデータもあります。
ですからつらくなければ解熱剤で下げる必要はないのです。

太陽病期に発熱を補助して汗をかいて解熱し、そのまま治ってくれればOK。
しかし追い出しきれずに炎症が身体の表面から身体の奥に入り込む phase を少陽病期と呼びます。

少陽病期に移行すると、熱が長引くとともに、鼻水・鼻閉、咳で悩まされるようになります。
診断名もかぜから副鼻腔炎(ちくのう症)、気管支炎と変化します。

西洋医学では、この辺で抗生物質が処方されることが多いですね。
抗生物質(近年、抗菌薬と呼ぶようになりました)は細菌(バクテリア)をやっつける薬です。
残念ながら、ウイルスには効きません。

新型コロナ・パンデミックの始まりの頃を思い出してください。
こじれて肺炎で重症化する人が後を絶ちませんでした。
でも抗生物質で治ったという話も聞かなかったでしょう?
肺炎の原因がウイルスだったからです。

漢方薬では、風邪がこじれつつあるときに柴胡剤を使います。
これは柴胡・黄岑という二つの生薬を含んでいる方剤のこと。

この二つの生薬には抗炎症効果があります。
漢方薬にはウイルスや細菌を直接やっつける力はありません。
でもウイルスや細菌が身体の中で暴れて生じた炎症を鎮める力があります。
病原体ではなくヒトの身体の免疫システムに作用するのです。

パンデミック(新興ウイルス感染症)は新型コロナ以前にもありました。
有名なのはスペイン風邪(1918-1919年)。
これは新型インフルエンザによるパンデミックでした。

当時の日本では、漢方薬で治療しました。
柴葛解肌湯という薬が有効であったと記録されています。
同じ名前の方剤は現在保険収載されているエキス剤にはありませんが、
葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用することにより、
同じ生薬構成となるため、この2剤が使用されて有効であったと報告されて、
一時期、市場からこの2剤が消えました。

葛根湯は麻黄含有製剤で太陽病期の方剤、
小柴胡湯加桔梗石膏は柴胡剤で少陽病期の方剤です。

太陽病期と少陽病期の薬を併用するなんて、邪道では?
という意見もあるかもしれませんが、
これはウイルスの勢いが非常に強く、
身体の奥にすぐに進行して重症化するため、
両者を併用する手段を取ったのです。

・・・前置きが長くなりすぎました。

では具体的な方剤を紹介します。
風邪の初期(太陽病期)に使われる鼻汁・鼻閉の代表薬は小青竜湯葛根湯加川芎辛夷です。


そして少しこじれてくると(少陽病期)、
具体的には透明だった鼻水が白っぽくなったり、青っ洟になった状態ですが、
辛夷清肺湯がよく効きます。
辛夷清肺湯には柴胡剤の生薬“黄岑”が含まれています。


さらに経過が長引くと荊芥連翹湯の出番です。
同じく少陽病期の方剤ですが、
慢性疾患に適応する“四物湯”の構成生薬が入っているのです。


さて、漢方薬には色々な尺度がありますが、
六病位」ではなく、
陰陽虚実」で方剤を分類したイラストを紹介します。


」は弱児のイメージ、
」は体力充した健康児というイメージですね。
こんな使い分けも頭の片隅に入れておくと、有効率がアップします。

さて、急性期〜亜急性期を過ぎ慢性化してしまうと、
耳鼻科では「ちくのう症」という診断名の元に抗生物質が投与されます。
良くならないと数種類の抗生物質を1週間単位でグルグルつなげて処方する耳鼻科医が多いこと多いこと。
西洋医学では他に手段がないので、しかたないのかもしれませんが・・・。
中には下痢したり、抗生物質をずっと服用することが心配になって小児科に駆け込む患者さんが居るのは前述の通りです。

そんな患者さんに私が処方する漢方薬を紹介します。




あれ、一つ前のグラフとほぼ同じですね。
そう、これらの方剤をうまく使い分けると、
ちくのう症の患者さんも治療可能です。

最後に私の風邪の鼻水に対する漢方診療を紹介します。

 小青竜湯、あるいは葛根湯加川芎辛夷
  ⇩ 
(良くならない場合)
  ⇩
 葛根湯加川芎辛夷+小柴胡湯、あるいは辛夷清肺湯
  ⇩ 
(良くならない場合)
  ⇩
 辛夷清肺湯+葛根湯加川芎辛夷

これでだいたいの患者さんが軽快します。
症状がガンコでも、2週間〜4週間投与すると一旦落ちついてくれることが多いです。

一旦よくなるものの、またすぐ風邪を引いて青っ洟になりやすい患者さんには、
荊芥連翹湯の弟分である柴胡清肝湯という方剤を定期内服してもらいます。
(荊芥連翹湯は有効だとは思うのですが、とてもまずいので飲んでくれないのです)
すると不思議、風邪で通院する回数が激減します。

ただし、柴胡剤に含まれている黄岑という生薬は副作用が出ることがあるため、
長期投与を希望する患者さんには血液検査を受けてもらっています。

最後に谷川聖明先生が方剤の特徴をまとめた表を紹介します;


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする