漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

小児の起立性調節障害に対する漢方薬

2024年07月08日 08時11分56秒 | 漢方
私は診療に漢方を取り入れている小児科医です。

日々の診療で、受診された思春期の患者さんが、
捉えどころのない体調不良(医学的には“不定愁訴”と呼びます)を訴えると、
まずは漢方薬の内服を提案します(カラダの不調メンタルの不調)。
1〜2週間試して手応えがなければ、
総合病院へ紹介して基礎疾患がかくれていないか検査をしてもらっています。

先日(2024.7.7)、日本小児漢方懇話会をWEBで視聴しました。

何人かの医師が、様々な視点から起立性調節障害について語りました。
が、聞き終わっても、全体像が見えないほど内容がバラバラ…。
これは、起立性調節障害という病名がつけられる患者さんの病態が、
単一ではなく多岐にわたっていることも理由の一つと思われます。

参考になるポイントを、備忘録としてメモに残しておきます。


▢ 惠紙 英昭Dr.の講演

■ フクロウ型(山本巌Dr.提唱)
・体がしんどい、疲れやすい、体力がない、頭が痛む、肩がこる、胃が痞える、重ぐるしい、吐き気がある、胃が痛む、めまいがする、手足が冷える。
・体力がなく、粘りがきかず、力仕事に向かない。
・「朝寝の宵っ張り」で寝ていたい。日曜日は昼まで寝ている。
・朝はボーッとしているが、夕方から夜にかけて最も元気。
・朝食は欲しくない。夕食が美味しいし、よく食べられる。
・早く寝ても頭がさえて眠れない。
・階段や山登りで、一番に行くが、すぐに息切れ、ハアハアいって先にへばる。
・女性は結婚して最初の子どもを出産した後に多い。
30歳代が最もつらく、40歳を過ぎるとだんだん訴えが少なくなり、60歳を過ぎればほとんど元気、70-80歳も元気で長生きをする
・スロースターター。
・世の中に2-3割いる。
・器質的疾患なし&不定愁訴だらけ・・・怠け?気分障害と診断されかねない。

■ 現代のフクロウ型体質(症候群)
・西洋医学的病名:起立性調節障害、Meniere症候群、不登校、睡眠障害(睡眠相後退症候群)、自律神経失調症・不定愁訴、気分障害・適応障害、頸椎・脊椎異常

■ フクロウ型の漢方治療

基本処方:
 → 苓桂朮甘湯(39)、あるいは五苓散(17)、あるいは39+17
 …効果が少ないときは増量、桂皮末追加

倦怠感(気虚)が強い、軽度無気力:
 → 補中益気湯(41)、十全大補湯(48)、人参養栄湯(108)、加味帰脾湯(137)、コウジン末追加

不安が強い
 → 半夏厚朴湯(16)、茯苓飲合半夏厚朴湯(116)、柴胡桂枝湯(10)、柴胡桂枝乾姜湯(11)、柴胡加竜骨牡蛎湯(12)、加味逍遥散(24)、柴朴湯(96)、桂枝加竜骨牡蛎湯(26)、等

抑うつ気分
 → 香蘇散(70)、半夏厚朴湯(16)、茯苓飲合半夏厚朴湯(116)

過敏性腸症候群
 → 小建中湯(99)、桂枝加芍薬湯(60)、柴胡桂枝湯(10)、加味逍遥散(24)など

打撲の既往
 → 治打撲一方(89)、葛根加朮附湯(141)など

瘀血・打撲(便秘)
 → 駆於血剤:桂枝茯苓丸(25)、桂枝茯苓丸加薏苡仁(125)、桃核承気湯(61)、通導散(105)などを併用。61と105は少量でよい。

・一貫堂解毒症体質
 → 柴胡清肝湯(80)、荊芥連翹湯(50)、竜胆瀉肝湯(76)

※ 以上の方剤に西洋薬(低血圧治療薬)、向精神病薬なども少量併用

■ 重症度(こじれ具合)による使い分け

軽症
 苓桂朮甘湯(39)、五苓散(17)など

中等症
 苓桂朮甘湯(39)、五苓散(17)、真武湯(30)など
  +
 半夏厚朴湯(16)、補中益気湯(41)、十全大補湯(48)など

重症・こじれた例
 苓桂朮甘湯(39)、葛根加朮附湯、柴胡剤など
  +
 駆於血剤:治打撲一方(89)、一貫堂医学
 西洋薬、眠剤、抗うつ薬、抗精神病薬(アリピプラゾールなど)

<方剤解説>

苓桂朮甘湯
(構成)
茯苓・蒼朮・桂皮・・・利水
桂皮・・・血行をよくする、軽度強心作用、抗不安作用
茯苓・桂皮・甘草・・・心悸亢進(動悸)を鎮める
(ポイント)
・朝起きが苦手、浮腫(体が重い)、めまい、頭痛、立ちくらみ、倦怠感、冷え、神経質など。
(適応)…山本巌Dr.による
・めまい、眼前暗黒、立ちくらみ
・頭痛、肩こり
・心悸亢進
 ✓ 立ちくらみと同時に心悸亢進
 ✓ 不安・驚きなどの精神的原因による心悸亢進
・倦怠感および疲労感
・フクロウ型
・腹診で振水音

【柴胡清肝湯】
(構成)
黄連・黄岑・黄柏・山梔子(=黄連解毒湯)・・・消炎解熱作用、止血作用
当帰・川芎・芍薬・地黄(=四物湯)・・・補血作用、止血作用
桔梗・括楼根・甘草・・・去痰、排膿作用
括楼根・地黄・甘草・・・滋潤、清熱作用
薄荷・柴胡・牛蒡子・・・辛涼解表作用
(ポイント)
・小児の解毒症体質改善(扁桃炎、扁桃周囲炎、咽頭炎、中耳炎など)
・慢性炎症、再発性炎症、腎炎の予防、神経過敏、湿疹


▢ 網谷真理恵Dr.の講演

■ 起立性調節障害は身体症状&不安&生活の乱れ
・身体症状だけに着目するのではなく、生活・行動に着目してゴールを設定する
  ← 症状だけに着目していると、終日ふとんの上から出られない。
・問診は必ず本人から丁寧に(親に内緒の夜の行動)
・子どもたちは自分の「不安」に気づいていない(失感情症傾向)
・親の焦燥感をコントロール(親と子どもは見ている視点が違う…親は“将来”、子どもは“今”)

体位性頻脈症候群(Postural tachycardia syndrome, POTS
・起立性調節障害のサブタイプの一つ。
・起立時の血圧低下はなく、起立時頻脈とふらつき、倦怠感、頭痛などの症状
・起立時の心拍数115以上、または起立10分以内の平均心拍増加が30以上
 (30以上と定義している論文もある)
不安障害パニック障害と併存することが多く、診断がつきにくい。
慢性疲労症候群の40%がPOTSに罹患している。
・米国人口の0.2-1.0%、中央値17歳、最頻値発症年齢は14歳(2019年の調査)

■ POTS臨床症状を漢方的にとらえると…

交感神経過剰型Hyperadrenergic):不安、冷え、四肢の自汗、震え、頻尿
 → 気逆柴胡加竜骨牡蛎湯(12)、抑肝散(54)

神経性Neuropathic):脱力、起立時の足色の変化、神経因性疼痛、頭痛、不眠
 → 気虚補中益気湯(41)、加味帰脾湯(137)

低血液循環量性Hypovolemic):疲労、運動不足、めまい、集中困難・思考困難(ブレインフォグ)
 → 水滞五苓散(17)

・その他;
 気うつ → 半夏厚朴湯(16)
 気虚+水滞 → 半夏白朮天麻湯(37)
 気逆+水滞 → 苓桂朮甘湯(39)

■ 起立性調節障害の漢方治療(講師案)
・・・五苓散を基本に“気”に作用する方剤を併用
苓桂朮甘湯 ← 窮迫しためまい(突き上げられる、引っ張られる)、動悸
苓桂朮甘湯  十全大補湯 ← 疲労とめまい(気虚・血虚・めまい)
半夏白朮天麻湯 ← 冷えて気力がなく頭痛を伴うめまい
五苓散 + 補中益気湯 ← 朝方の疲労感
五苓散 + 柴胡加竜骨牡蛎湯 ← 外や場所に不安(不安障害・パニック障害、教室に入れない)、手が震える、過呼吸を伴う
茯苓飲合半夏厚朴湯 ← 悩みが多く吐き気を伴う
五苓散 + 半夏厚朴湯友人関係に悩む(自分より友人の心配事を優先)、胸のモヤモヤ、咽喉頭閉塞感
五苓散 + 加味帰脾湯 ← ブレインフォグ、集中力低下を伴うとき、Long-COVID
五苓散 + 柴胡桂枝湯 ← 頭痛、腹痛など痛みがあるとき
五苓散 + 抑肝散 ← 朝の癇癪 …対人関係ストレスによる怒り、けんかっ早い
小建中湯 ← 骨格が細く、自己主張苦手、腹直筋緊張緊張・不安 …感受性豊かでIQ高い、予期不安にとらわれる


▢ 小川恵子Dr.の講演

■ 起立性調節障害診断基準を再確認
(11項目中3つ以上が当てはまる場合、起立性調節障害を疑う)
1.立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい       …水滞
2.立っていると気分が悪くなる。ひどくなると倒れる    …水滞
3.入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる …水滞、肝・心の異常
4.少し動くと動悸あるいは息切れがする          …水滞
5.朝なかなか起きられず午前中調子が悪い         …水滞
6.顔色が青白い
7.食欲不振                       …脾虚
8.臍疝痛をときどき訴える                …脾虚?
9.倦怠あるいは疲れやすい                …気虚
10.頭痛                         …水滞
11.乗り物に酔いやすい                  …水滞




■ 主体となる症状で方剤を決めると…
1-5・10・11(水滞)→ 五苓散、苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯
9(倦怠感)→ 補中益気湯、黄耆建中湯
7(食欲不振)→ 半夏白朮天麻湯、六君子湯、四君子湯、二陳湯
8(腹痛) → 建中湯類(小建中湯、黄耆建中湯)、柴胡桂枝湯(心腹卒中痛)、腹痛が強い場合は芍薬甘草湯の頓服
3(心身症の要素)→ 柴胡桂枝湯、四逆散、抑肝散(加陳皮半夏)、甘麦大棗湯、加味逍遥散

■ 江部経方理論の気血津液の定義
・広義の血:拍動する、温かく、流れる水と血
 =狭義の気+狭義の津液+狭義の血
・広義の気:狭義の気+狭義の津液
 温かく流れる水
・狭義の津液
 液体という素材

■ 経方医学における胃と胃気
・気の最大の産生場所として胃が重要
・『傷寒論』における邪正闘争を担う
・「正気」は胃気である。
・脾・肌はいつでも利用可能な形で胃気を蓄えるところである。

■ 「水」の仮想モデル上の分類

湿:陰液とほとんど性質が同じ
(生薬)白朮、蒼朮、茯苓、沢瀉
(方剤)五苓散(17)、苓桂朮甘湯(39)

:湿より粘稠
(生薬)半夏、陳皮
(方剤)二陳湯、半夏厚朴湯

:陰より粘稠で固形化したもの
(生薬)栝呂仁、括楼根、乾姜
(方剤)柴陥湯(73)、柴胡桂枝乾姜湯(11)、猪苓湯(40)

■ 湿を去る生薬
茯苓(作用部位:全身)
…尿や発汗をすることで悪い水を去り、よい津液を運ぶ。
…精神を落ち着ける作用がある。
猪苓(作用部位:膀胱)
…直接膀胱に作用し、利尿する。
沢瀉(作用部位:肌、心下、小腸、膀胱)
…湿を小腸、膀胱から尿として排泄させる。
(作用部位:胃、小腸、心下、肌、腹、肉)
…蒼朮:燥湿中に入り込んだ湿を排出する。
…白朮:気を補う作用が強い。発汗を抑制する。
薏苡仁(作用部位:皮肌肉骨節、血中、肺、胸、腸)
…湿を去る。排膿作用。
滑石(作用部位:皮、肌、肉、小腸、大腸、膀胱)
…尿や発汗をすることで熱を冷ます。
…尿排出を促進し、下痢を止める。

■ 五苓散を頭痛に使うようになったのは江戸時代から
・村井琴山(1733-1815)…「五苓散の煩は頭痛である」
・大塚敬節(1900-1980)… 三叉神経痛に効果のあった症例を報告
・矢数道明(1905-2002)… 頭痛、片頭痛に用いて多くの著効例を報告した。天候変化に伴う頭痛に著効することを報告。

<方剤解説>(江部経方理論)

【小建中湯】
…一般的には「脾を補う」とされているが、経方理論では「腎を補う」方剤として位置づけられている。
① 生気の不足(特に腎気)
・大棗、生姜、甘草で生じた胃の気津を、桂皮、芍薬にて全身に供給
・2倍の芍薬が主に腎に気を供給
② 気のベクトルの異常
・守胃機能失調 → 腎を養えず腎の気陰は不足する。
・第102条 胃気が守られず、過剰に上衡
③ 血絡の不通
・虚労による全身的な気血津液不足
 → 血絡の不通し、絡の多い腹部で「腹中痛」を起こす。

 ①②③に対して…
  ↓↓↓
 大棗、生姜、甘草で気津を産生
 桂皮<芍薬の配合により、腎に気を供給
 気血津液を正しく流す

※ 桂枝(上、外側)
 胃気 → 脈外の衛気、脈中の営血の推進
 胃気 → 肌
※ 芍薬(下、内側)
 脈中の営血を絡 → 肝、心、心下 → 小腸、膀胱
 胃気・熱の過剰な上昇を降ろす
 気津を腎に供給

【五苓散】(江部経方理論)
肌 → 心下 → 小腸 → 膀胱 → 尿
という環流路、三焦の機能を回復させ、
多量の温かい湯で胃津を補う。
・構成生薬の薬効:
 朮、沢瀉ー肌水
 茯苓ー皮水
 白朮、沢瀉ー心下の飲
 猪苓、茯苓、沢瀉ー膀胱の水飲
 猪苓ー直接膀胱に作用し、排尿
 桂枝ー全身の三焦気化作用を高め、残存する表邪を外散

【補中益気湯】
・構成生薬の薬効
人参、黄耆・・・気を補う
升麻、柴胡・・・気を持ち上げる
陳皮、朮 ・・・痰飲を去る
甘草、大棗、生姜・・・消化管機能を改善

※ 升麻
・清熱解毒消腫
・発表透疹 …肌の風邪を散じる
・昇虚陽気 …人参・黄耆・柴胡と組み合わせる
・作用する場所:口、咽喉、胃、皮、肌

【苓桂朮甘湯】
胃の守胃機能の失調、もしくは胃気の不足による胃飲が胃から心下に至り「心下逆満」する。
・さらに心下の飲のため、胃気は心下から上に昇りにくく、下方の腎に多く注ぎ込み、腎の気化の限界を超える。
・そのために腎気は心下の飲を伴って「胸に上衡」したり、頭に上り「頭眩」となる。

【柴胡桂枝湯】
・『金匱要略』第22条『外台』柴胡桂枝湯方治心腹卒中痛者
・痛み=絡不通
・膈の昇降出入が不利
 → 胆の疏泄失調、肝の疏泄不利
 → 心下・腹部の絡の不通
・心下の不利のため心下には飲を生じる可能性もある。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漢方医学では「こころ」をどう捉えるのか?

2024年07月06日 07時13分05秒 | 漢方
漢方理論はいくつかの概念を導入して使い分けています。
初学者にはそれがピンとこなくて混乱するのですが・・・。

急性疾患には「六病位」や「気血水」
慢性疾患には「気血水」と「五臓論」
が使用される傾向にあると思います。
※ 五臓・・・肝・心・脾・肺・腎

漢方を多用する小児科医である私の最近の悩みの一つに、
・発達障害(ADHD、ASD)
・起立性調節障害(OD)
の「こころ」「気持ち」に対する処方があります。

こころは五臓論の「脳」に効く生薬を使えばいいのではないかと考えましたが、
残念ながらなぜか五臓には「脳」がありません。
因みに私が“こころの症状”よく使用する漢方は、
「肝」と「心」に分類されることが多いです。

では人間のこころの働きを、五臓論ではどう捉えてきたのでしょう。
あるWEBセミナーで、
「五臓論では“こころ“の部分部分を各臓器に分配した」
と説明されました。

なるほど!
だからわかりにくかったんだ・・・。

ではどのように分配されているのか、
チェックする必要がありますね。

こちらを参考に、
五臓の“こころ”に関する部分の抽出を試みました。


<総論>
 概要
・『黄帝内経』に「意識・思惟・精神・情緒は脳の機能である」と記載されている。
・五臓の生理機能が正常であってこそ、脳の機能も正常に機能する。
・意識・思惟・精神・情緒は五臓それぞれの生理活動と密接な関係がある。
(例)肝ー魂、心ー神、脾ー意、肺ー魄、腎ー志

<各論>
【肝】
■ 疏泄を主る・・・「情志」の調節
・中医学では人の情志活動は心とともに肝の疏泄とも密接な関係があるとしている。肝の疏泄機能が正常であれば、気機は正常に活動し、気血は調和し気持ちも明るくなる。
・肝の疏泄機能は情志に影響を与える。
・肝の疏泄機能が失調すると情志に変化(抑制と興奮)が現れやすくなる。
・肝気が鬱結すると抑うつ状態になりやすく、わずかな刺激を受けただけでも強い抑うつ状態に陥りやすくなる。
・肝気が興奮しすぎるとイライラしやすくなり、わずかな刺激でも怒りやすくなる。
・外界からの刺激を受けて起こる情志、とくに「怒」は肝の疏泄機能に影響を及ぼしやすく、これにより肝気の昇泄過多という病理変化が生じることもある。

■ 肝と五行との照応関係・・・怒は肝の志
・怒は一般的に生理活動に対して好ましくない刺激を与える感情で、気血を上逆させ、陽気を過度に昇泄させる。
・肝は疏泄を主っており、陽気の昇発は肝のはたらきによるものであることから、怒は肝の志とされている。激しく怒ると、肝の陽気の昇発が度を超すことになるので「怒は肝を傷(やぶ)る」という言い方もする。
・肝の陰血が不足すると、肝の陽気の昇発が過剰となり、わずかな刺激を受けても怒りを覚えやすくなる。

【心】
■ 心は神志を主る(心は神を蔵す、心は神明を主る)
・心には精神・意識・思惟活動を主宰する機能がある。
・「神」には広義と狭義の二通りの意味がある。
・広義の「神」・・・人体の生命活動の外的な現れを指す。
(例)人体の形象および顔色・眼光・言語の応答・身体の動きの状態など
・狭義の「神」・・・精神・意識・思惟活動を指す。
・心の機能が正常であれば精神は充実し、意識や思惟もしっかりしている。
・心が機能失調に陥れば、精神や意識・思惟活動が異常となり、不眠・多夢・気持ちが落ちつかないなどの状態になり、うわごとを言ったり、狂躁の状態になることもある。あるいは反応が鈍くなったり、健忘・精神萎靡となったり、昏睡・人事不省になることもある。
■ 喜は心の志
・外界の事物事象から受ける印象より起こる情緒の変化を「五志」という。
・「喜は心の志」とは、心の生理機能と精神情緒の「喜」との関係を言ったもの。
・「喜」は人体に対して良性の刺激を与える情緒で、心の「血脈を主る」などの生理機能に対してプラスに作用する。しかし過度になると、かえって心身を損傷することもある。

【脾】
■ 思は脾の志
・思とは思考・思慮のことであり、精神・意識・思惟活動の一つ。
・正常に思考する場合には、生理活動に対し悪い影響を与えないが、思慮が行き過ぎた場合、あるいは思念が現実化しないとしばしば生理活動に影響を及ぼす。最も影響を受けやすいのが気の運動で、気滞と気結を引き起こしやすくなる。
・脾の運化機能の失調は、思に悪影響を与え、ひいては生理活動にまで影響を及ぼす。例えば気結があるために、脾の昇清がうまく行えなくなると、思慮過度となり食欲不振・院腹の脹悶感・眩暈などの症状が現れやすくなる。

【肺】
■ 憂は肺の志
・憂と悲はともに肺志とされている。
・優秀と悲傷は、ともに人体に悪い刺激を与える情緒で、これにより人体の気は次第に消耗される。
・肺は気を主っているので、憂と悲は肺を損傷しやすい。
・肺が虚している場合には、憂と悲という情緒変化が起こりやすくなる。

【腎】
■ 恐は腎の志
・恐とは物事に対して恐れおののく精神状態。
・恐と驚は似ている。驚は意識せず突然受けるショック、恐は対象を明確に捉えた精神状態(いわゆるビクビク、おどおどした状態)。
・恐も驚もともに不良な感情で、ともに腎を損傷することがある。
・恐は腎の志であるが、心が主っている神明とも密接な関係がある。心は神を蔵しており、神が傷れると心が怯えて恐となる。恐により腎を損傷し、腎気不固となり遺尿が起こる。


・・・一読してみたものの、やはりよくわかりません。
理解するには「五志」、つまり陰陽五行説の、
 肝ー怒
 心ー喜
 脾ー思
 肺ー憂
 腎ー恐
も視野に入れてかみ砕く必要がありそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生薬(甘草・大黄・山梔子)の副作用

2024年07月06日 06時21分33秒 | 漢方
「副作用が少なそうなので漢方薬を希望」
される患者さんがいます。
でも漢方も“くすり”です。
体に一定の影響を及ぼすのですから、
それが体によいことばかりではありません。
体に不都合な作用を“副作用”と呼びます。

漢方薬を多用する小児科医である私は、
副作用に気をつけながら処方しています。

漢方の診断名である“証”に基づいて使用すれば回避できる副作用もありますが、
患者さんの体質によるアレルギー反応は西洋薬同様、完全回避不能ですし、
長期使用にてジワジワと出現してくる(用量依存性)副作用もあります。

最近私が悩んでいるのは、
・発達症に使用する柴胡剤
・月経前症候群に使用する加味逍遥散(24)
です。

柴胡剤に含まれる黄岑は抗炎症・抗アレルギー効果に優れた生薬ですが、
“効く薬は副作用もある”という暗黙のルール通り、
その生薬自体がアレルギーの原因にもなり、
まれに間質性肺炎や肝機能障害を起こすことが報告されています。
間質性肺炎は「風邪を引いたわけでもないのに咳が止まらない」という症状でチェック可能ですが、
肝機能障害は「だるい、食欲がない」と捉えどころがない症状で始まりますのでやっかいです。

私は柴胡剤を長期使用する場合、開始後1ヶ月以内に1回、
その後は半年〜1年に1回ペースで血液検査をすることにしています。

ここで問題になるのが発達症の患者さんです。
癇癪やパニックを起こす子どもがいるので、採血が大変なのです。
これは、発達症に漢方を使用している小児科医共通の悩みです。

漢方が効いているので止めたくない、でも採血はできない患者さんには、
「ヘンにだるそう、食欲がないときは中止して報告してください」
と指導するしかありません。

月経前症候群に加味逍遥散がとてもよく効いている女子がいます。
月経前のイライラ感が強く、家族も本人も困っていたのが、
この薬を飲み始めてから「とても楽になった」「この薬を手放せない」と報告してくれました。

加味逍遥散には山梔子という生薬が入っています。
この漢方を年単位で使用し、5年くらいすると山梔子による消化器障害「腸間膜静脈硬化症」が出現することが報告されています。
この副作用はアレルギー反応ではなく“使用量依存性”の副作用です。

月経は長い期間つき合っていかなければなりません。
5年以内に休薬する必要があるとすると、
別の漢方薬を探さなければなりません。
今のところ、女神散(67)が候補ですが、
果たして将来、どうなることやら…。

わかりやすい記事が目に留まりましたので、紹介します。

“甘草”という生薬の有名な副作用「偽アルドステロン症」の解説があります。
その中で、「甘草の作用はステロイドに似ている」という表現がありますが、
私は昔からそう感じています。
甘草は天然素材由来の“ステロイド様作用”が得られる貴重な生薬です。
しかし副作用はステロイド薬ほど重くはありませんので、
気をつけながら使用すればとてもよい薬になります。


■ 漢方薬の飲み過ぎで「大腸が真っ黒」になる
…医師が「副作用に注意すべき」と警鐘を鳴らす漢方薬の名前「漢方は副作用が少ない」はウソ
大脇 幸志郎:医師
2024/01/13:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);

…医師の大脇幸志郎さんは「漢方薬に含まれる『甘草』や『大黄』、『山梔子』には頻繁に出会う副作用や重篤な副作用が指摘されている。『漢方薬だから副作用はない』と思って飲み過ぎると思わぬ健康被害にあう」という――。

▶ 本当に漢方薬は副作用が少ないのか?
・・・あるアンケート調査(※)では、回答者の7割以上が「漢方薬は副作用が少ないと思う」と答えていますが、本当に漢方薬は副作用が少ないのでしょうか。
結論から言いますと、残念ながら、漢方薬にも副作用はあります。たいていの副作用は軽い症状にとどまり、飲むのをやめれば解消するのですが、中には深刻な副作用もまれにあります。
この記事では漢方薬の副作用のうち筆者がよく出会うものや特に深刻なものをいくつか紹介します。

▶ 放っておくと大変なことになる「偽アルドステロン症」
漢方薬の副作用として特に代表的なものが「偽アルドステロン症」です。
これは出会う機会も多いし放っておくと大変なことになるので、漢方薬を出す医師は必ず知っておくべきものです。
厚生労働省の資料によると、「偽アルドステロン症」には、高血圧、むくみ、手足のだるさ、筋肉痛などの症状があるとされます(『重篤副作用疾患別対応マニュアル』「偽アルドステロン症」)。

▶ 漢方薬に含まれる「甘草」が副作用を起こす
偽アルドステロン症は、多くの漢方薬に含まれている甘草が起こす副作用です。
より詳しく言うと、甘草の有効成分であるグリチルリチン酸が偽アルドステロン症を起こします。



アルドステロンというのは人体が自然に作っているステロイドホルモンの一種です。グリチルリチン酸はアルドステロンのような作用、たとえば血圧を上げ血中のカリウム濃度を下げるといった作用を引き起こします。

▶ 「ステロイドホルモン」の作用を強めてしまう
ステロイドホルモンという言葉が出てきました。ステロイドというのはあるグループの化学物質を指す言葉で、多くの物質がステロイドに分類されます。医薬品でステロイドと言えばふつう、アルドステロンとは別の、炎症を抑えて熱や痛みなどをやわらげるタイプの薬を指します。
人体内ではコルチゾールというステロイドホルモンがこの作用を持っています。ステロイド薬は、おおまかに言って、コルチゾールの作用をまねるように作られた物質です。
アルドステロンもコルチゾールもステロイドです。それぞれ機能は違うのですが、完全に異なるわけではなく、共通の作用を持っています。それが血圧を上げるとかカリウム濃度を下げるというものなのです。
ただ、体内では、コルチゾールが代謝されてコルチゾンという物質に変わることで、アルドステロンのような作用が抑制されています。
しかし、漢方薬の「甘草」すなわち「グリチルリチン酸」を摂取すると、その代謝産物が、コルチゾールからコルチゾンへの代謝を阻害してしまいます。
するとコルチゾールが過剰になり、アルドステロンのような作用も過剰になります。これが「偽アルドステロン症」です。
簡単に言うと、漢方薬の代表的な副作用は、ステロイドの副作用とも言えるのです。

▶ 認知症に処方される「抑肝散」に注意
甘草を含む漢方薬は、天然のステロイドであるコルチゾールを介した副作用を持っています。とすれば、漢方薬の「効果」も、コルチゾールによる部分があるのではないでしょうか?
ステロイド薬はいろいろな病気や症状に使われる、とても便利でよく効く薬です。ステロイドは炎症を抑え、熱や痛み、アレルギー反応をやわらげます。なんとなく、漢方薬が出される症状に似ている気もします。

甘草を含む漢方薬の公式説明文書(添付文書やインタビューフォーム)には、必ず、グリチルリチン酸が含まれること、偽アルドステロン症に注意すべきことが書かれています。
偽アルドステロン症を起こす漢方薬としてよく目にするのは「抑肝散」です。
抑肝散は、認知症による興奮を抑えると信じられているようです。ただ、これは臨床試験のエビデンスに基づいて承認された効能ではありません。1967年と1976年に多くの漢方薬製剤が臨床試験なしで薬価収載されたため、漢方薬について知るには臨床試験を頼りにできません。
・・・

▶ 下剤として使われる「大黄」の副作用
たいていの薬は服用をやめると効果がなくなります。
ただ、中には急にやめると困ったことになる薬もあります。ステロイド薬はその代表です。
漢方薬の中にも、しくみは違いますが、長く続けるとなかなかやめられなくなるものがあります。
代表的なものが、排便を促す作用のある「大黄」を含む処方です(排便のための漢方薬には大黄を含まないものもあります)。
大黄の有効成分はセンノシドという物質です。いろいろな植物がセンノシドを含んでいて、西洋でも伝統的に下剤として使われてきました。いまでもセンノシド製剤のアローゼンプルゼニドピムロなどがよく処方されています。

▶ 大腸の内側が黒くなる「大腸メラノーシス」
センノシドはよく効きます。スッキリするという感想もよく聞きます。
しかし長期にわたって毎日飲んでいると、だんだん効かなくなってきます。このことは添付文書で注意喚起されています。
困ったことに、センノシドが効かなくなった人は、どんな薬を使っても排便が困難になってしまう場合があります。
この状態の人の大腸を内視鏡で見ると、内側が黒ずんで見える場合があります。
これが「大腸メラノーシス」と呼ばれる状態です。
センノシドの長期服用が、「大腸メラノーシス」をもたらすとされています。

▶ よく分かっていない「いわくつきの薬」
ただ、これにはあいまいな点も残っています。
「大腸メラノーシス」になると腸の本来の機能が弱っているのではないかという説がある一方、それに反対する説もあり、よくわかっていません(『日内会誌』 108:40~45,2019)。
また、センノシドが効かない状態は、別の原因で腸の機能が弱った結果かもしれず、必ずしもセンノシドが原因とは限りません。
センノシドのような刺激性下剤は西洋では比較的人気がなく、研究も進んでいません。
学会のガイドラインなどでは一般に、センノシドのようなよく分からない薬よりも、より素性の知れた薬を優先して使うよう推奨されています。
学会も必要なときだけにしろと言う「いわくつき」の薬が、大黄を含む漢方薬の有効成分なのです。
「漢方だから安全」と単純には言えないのです。
・・・

▶ 特に注意すべき漢方薬「防風通聖散」
最後に、特に注意すべき漢方薬をご紹介します。
それは「防風通聖散」です。
防風通聖散には、ここまで紹介してきた「甘草」と「大黄」に加え、「山梔子さんしし」が含まれています(この記事では紹介しきれませんが、ほかに「黄芩」と「麻黄」も副作用の面で「いわくつき」の成分です)。
山梔子は長期にわたって飲み続けると、「腸間膜静脈硬化症」という副作用をもたらすとされます。
厚生労働省によれば、「腸間膜静脈硬化症」で腸を切り取る手術が必要になった例もあるとのことです。
そのため、長期間にわたり服用する場合は、定期的にCT、大腸内視鏡等の検査を行うこと、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満等が繰り返しあらわれた場合には特に注意すること、とされています。

▶ 「ダイエット目的」で飲む人は注意が必要
防風通聖散の効能・効果は「腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘」とされています。
ダイエット目的の人に人気があるのか、別の商品名のものを含め20種類以上も出ています。
偽アルドステロン症を起こす甘草。大腸メラノーシスを起こす大黄。腸間膜静脈硬化症を起こす山梔子。
副作用をもたらす成分を3つも含んでいる「防風通聖散」は、なんと処方箋なしで買えます(というか、たいていの漢方薬は処方箋なしで買えます)。
まずは、もし「漢方だから大丈夫」とか「市販薬だから大丈夫」と思って名前も確かめずに飲んでいる薬が手元にあれば、パッケージの注意を一度読んでみてください。心配になったら店舗の薬剤師に相談することもできます。
・・・
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かぜに対する漢方薬は2つのパラメーター(経過日数と症状)で選択すべし

2024年07月03日 04時47分46秒 | 漢方
私は漢方を多用している珍しい小児科医です。
風邪患者さんにも希望する方には漢方薬を処方しています。

子どもが飲みやすい工夫も一緒に教えています。
「漢方は苦いから子どもは無理!」
と大人は思い込んでいても、飲んでくれることも結構あります。
中には効果を実感して、
「今日も漢方出してください」
とたどたどしく言う幼児もいたり…。

飲めて手応えがあったときはリピーターになってくれます。
具体的な効果は、
・風邪の治りがよかった
・夜の鼻づまりが楽になった
等の他に、体質改善の薬を使った場合は、
・風邪を引きにくくなり受診回数が減った
・保育園を休み日数が減った
という声もあります。

さて、かぜに対する漢方薬は、
その phase と症状で20種類くらいを使い分けます。
そのことにわかりやすく言及した記事を見つけましたので、
知識の整理がてら読んでみました。


■ “かぜ”の漢方、最適な処方を選ぶ2つのポイント
山内雅史(東条病院[千葉県鴨川市]副院長)
2024/06/27:日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
 ウイルス感染による急性上気道炎だと考えて対症療法を行う場合、漢方薬も選択肢になり得ます。漢方薬は、味や剤型から苦手な方もいる一方で、1種類で治療が完結することが多いというメリットがあります。解熱鎮痛薬、鎮咳薬、去痰薬など複数の薬剤を使用せず、総合感冒薬のように用いることができるのです。
 例えば、麻黄湯、葛根湯などは抗ウイルス作用があるだけでなく熱産生を助けることで発汗を促し、早期に解熱させる作用があることから解熱鎮痛薬を併用する必要がありません。
・・・

▶ エビデンスで見る急性上気道炎への漢方薬の有効性
 急性上気道炎に対する漢方薬の効果を検証した研究を紹介します。

・解熱薬と漢方薬(急性上気道炎で頻用される複数の漢方薬)を比較した試験では、解熱薬群(45人)の発熱の持続時間は2.6±1.7日だったのに対し、漢方薬群(35人)は1.5±1.9日と、有意に短くなっていました1)。さらに、咽頭痛や鼻汁といった症状の持続についても、解熱薬群の6.6±3.6日に対して、漢方薬群では5.1±1.9日と有意差を認めました。

・総合感冒薬と麻黄附子細辛湯の急性上気道炎への有用性を調べた試験もあります。臨床症状の改善度を「著明改善」「中等度改善」「軽度改善」「不変」「悪化」の5段階で評価したところ、総合感冒薬群(88人)で中等度以上の改善を得られたのは60.3%、麻黄附子細辛湯群(83人)では81.9%であり、有意差が確認されました2)。発熱の持続期間も、前者は2.8±1.5日、後者では1.5±0.7日と、有意に短い結果となりました。

・5日以上持続する症状(口内不快[口の苦み、口の粘り、味覚の変化]、食欲不振、倦怠感)を伴う急性上気道炎患者に対する小柴胡湯の有効性、安全性を検討したプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験でも、症状全般の改善度、咽頭痛や倦怠感など症状ごとの改善度のいずれにおいても、小柴胡湯の方が有意に優れていました3)。

・インフルエンザにも漢方薬が使われます。中でも、よく処方されるのが葛根湯と麻黄湯です。葛根湯は、炎症細胞浸潤を増強させる作用を持つインターロイキン(IL)-1αの誘導を抑制すると共に、気道上皮のIL-12などの産生を促進することでウイルスの増殖を妨げ、炎症を軽減させるといわれています4)。麻黄湯に関しては、in vitroで抗ウイルス活性を有することが明らかになっています5)。

▶ 漢方薬選びで注目すべきは「発症からの経過日数」と「症状のパターン」
 漢方薬を選択するに当たっては、患者が受診したタイミングが発症から「3日以内か」「4日以降か」で分けて考えることをお勧めします。ウイルスによる急性上気道炎は日数の経過に伴って症状が変化していくからです。例えば、発症初期は発熱が中心だったものの、解熱後は別の症状が残存したり、増悪したりすることもあります。発症後3日以内/4日以降で区切ると、それらの症状の移ろいに合わせて、より適切な処方がしやすくなると感じています。

発症から3日以内に受診した場合
 発症から3日以内のケースでは、表1のように症状のパターンに応じて使い分けましょう。

▢ 発症から3日以内に受診した場合に選択肢となる漢方薬
(症状のパターン)    (選択枝となる漢方薬)
・悪寒 → 発熱        麻黄湯、葛根湯
・悪寒 → 微熱/発熱なし   小青竜湯、麻黄附子細辛湯
・悪寒も発熱もなし(※)  桂枝湯、香蘇散
※ 発熱後1日程度で自然解熱した例も含む

 「悪寒→発熱」という発症パターンであれば、麻黄湯、葛根湯が適応になります。これは、急性上気道炎に限った話ではなく、インフルエンザでも新型コロナウイルス感染症でも、ウイルスが原因の場合には基本的に当てはまります。いずれも、まずは発汗させて自然解熱を助ける効果に加え、抗ウイルス作用を有するからです。インフルエンザのように高熱が出やすいケースでは、解熱作用のある麻黄、桂皮を多く含む麻黄湯を、発熱に伴う頭痛や筋肉痛が目立つときには、葛根、芍薬といったそれらの症状を緩和する生薬が入った葛根湯を使用します。

 「悪寒→微熱/発熱なし」(高熱は出ないが悪寒が続いている[微熱がないものも含む])のパターンでは、細辛、乾姜といった体を温める生薬が入っており、発汗・解熱に働く小青竜湯を選びます。特に、水溶性鼻汁や湿性咳嗽を伴う場合に効果を期待できます。冷えや悪寒が強く、顔色も悪いようならば、細辛や附子といった体を温める生薬を含む麻黄附子細辛湯が最適です。

 「悪寒も発熱もなし」で適応になるのは桂枝湯香蘇散です。前者は麻黄を含まず発汗・解熱作用は強くないものの、消化器症状によく効きます。そのため、受診時には解熱している、軟便や下痢のある患者などに使いやすい漢方薬です。後者は、最初から発熱がなく、咽頭痛、鼻汁、咳や痰などの症状のみで、胃もたれしやすかったり、高齢だったりする場合のほか、香附子や蘇葉といった気分を回復させる生薬を含むため、体調不良で気分が落ち込みやすい方にも適します。

▶ 発症から4~7日で受診した場合
 受診時点で発症後4~7日が経過しているときに用いる漢方薬は表2の通りです。発熱の有無が使い分けのポイントです。

▢ 発症から4~7日で受診した場合に選択肢となる漢方薬
(症状のパターン)        (選択枝となる漢方薬)

・発熱が続く/           小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏、柴胡桂枝湯
 解熱と発熱を繰り返す
      
・悪寒も発熱もなし 
 +水溶性鼻汁、湿性咳嗽     小青竜湯 
 +乾性咳嗽           麦門冬湯
 +膿性痰を伴う湿性咳嗽     清肺湯
 +喘鳴を伴う咳嗽        麻杏薏甘湯
 +強い咽頭痛          小柴胡湯加桔梗石膏
 +膿性鼻汁           葛根湯加川芎辛夷

 「発熱が続く/解熱と発熱を繰り返す」ケースでは、小柴胡湯が適応になります。解熱・抗炎症作用を持つ柴胡、黄芩のほか、鎮咳作用のある半夏、消化機能を高める生姜や人参などから成るため、長引く急性上気道炎で、発熱と咳嗽、食欲低下を伴うときに有効です。咽頭痛が目立つならば、小柴胡湯に鎮痛・抗炎症作用のある桔梗と石膏をプラスした小柴胡湯加桔梗石膏がより適します。小柴胡湯に桂皮と芍薬を加えた処方として柴胡桂枝湯がありますが、胃腸の調子を崩しやすいタイプや下痢症状を伴う患者に使用します。

 受診時点で「悪寒も発熱もなし」という場合は、中心となる症状に応じて漢方薬を選びます。水溶性鼻汁、湿性咳嗽が主なら小青竜湯、乾性咳嗽が主なら麦門冬湯、膿性痰を伴う湿性咳嗽が主なら清肺湯、喘鳴を伴う咳嗽が主なら麻杏甘石湯、強い咽頭痛が主なら小柴胡湯加桔梗石膏、膿性鼻汁で副鼻腔炎を疑うなら葛根湯加川芎辛夷をそれぞれ処方します。
・・・

<参考文献>
1)本間行彦 日東医誌 1995;46:285-91.
2)本間行彦 他 日東医誌 1996;47:245-52.
3)加地正郎 他 臨床と研究 2001;78:2252-68.
4)白木公康 医学のあゆみ 2002;202:414-8.
5)Masui S,et al. Evid Based Complement Alternat Med.2017:2017:1062065.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

咳の原因になる副鼻腔炎に排膿散及湯をどう使うか?

2024年05月16日 16時15分51秒 | 漢方
私は小児科医ですが、
近年、西洋医学の鼻水止め(※)がだんだん使用されなくなってきていることを実感しています。
※ 抗ヒスタミン薬・・・例:ペリアクチン
理由の一つは「熱性けいれんが起きやすくなる」というデータがあること。

「市販のかぜ薬を飲むと眠くなる」人が一定数います。
これは鼻水止め成分による副作用です。
そして眠くなる状態では、熱性けいれんを起こしやすくなるのです。
ですから、そのリスクをあらかじめ避けようという考え。

もっとも、日本人で熱性けいれんを起こすのは7-8人に1人の割合、
まあ賛否両論あり、添付文書には「子どもに使ってはいけない」とは書いてありません。

代わりに抗アレルギー薬を処方する医師が増えてきました。
つまり、風邪を引いて鼻水が出て医院を受診すると、
もれなくアレルギー性鼻炎の薬が処方されるわけです。

近隣の耳鼻科医院では、抗アレルギー薬の中でも抗ロイコトリエン拮抗薬を一緒に処方しています。
これはもともと喘息の治療薬ですが、鼻閉にも効くとされています。
しかし小児の鼻閉には適応はありません。

というわけで、風邪を引いて鼻水が出て耳鼻科を受診すると、
もれなくアレルギー性鼻炎と喘息の薬が処方されます。
診断名も「かぜ」だけではなく「アレルギー性鼻炎」「気管支喘息」となっているはず。
・・・全国的かどうかは不明です。

さて、私は漢方薬が好きなので、鼻汁・鼻閉には漢方薬の使用を提案しています。
なぜって“効く”からです。
とくに鼻閉への効果は手応えがあり、西洋薬では期待できないレベルです。

私の鼻水・鼻閉に対する漢方処方を大まかに書くと、
(水様鼻汁)小青竜湯
(白色鼻汁)葛根湯加川芎辛夷
(黄色鼻汁)辛夷清肺湯
(緑色鼻汁)柴胡清肝湯
という使い分けになります。
これに随時、喉の炎症を鎮める柴胡剤を併用します。
すると、耳鼻科で抗生物質漬けになっていた子どもの半分以上がよくなります。
(残念ながら全員ではありません)。
効果を100%に近づけるため、日々研究中です。

以前から気になってきたことがあります。
それは「咳の続く子ども」で副鼻腔炎と診断される例。

風邪症状から始まり、
風邪ならふつう1〜2週間で治りますが、
その後も咳が治まらない。
最初はかぜ薬を使用するも手応えなく、
長引くとマイコプラズマを考えてマクロライド系抗菌薬を使用するも手応えなく、
さらに抗喘息薬を使用しても手応えなく…
このタイミングで結核などの病気がないかどうか調べてもらうために病院を紹介すると、
「副鼻腔炎でした」
という返事が返ってくることが少なからずあるのです。
そして治療は「抗菌薬1か月投与で解決した」との報告。
しかし患者さんは鼻汁・鼻閉症状を訴えていません。

症状が治まれば結果オーライですが、
長期の抗菌薬投与は腸内細菌叢を乱します。
ある報告では、
「抗菌薬投与により腸内細菌叢の善玉菌が1/3に減り、回復までに半年かかる」
らしいです。

このような患者を抗菌薬なしで治療できないものか…
そこで思いついたのが排膿散及湯という漢方薬です。

副鼻腔炎(=ちくのう症)とは、
鼻につながっている空洞に炎症が起きて膿がたまる状態です。
その膿を出すことができないだろうか?

ただ、単独で有効とは思えないので、
自分が処方している上記のエキス剤と併用できないかと模索していたところに、
以下の記事が目に留まりました。

私にとってのポイント;

・鼻閉が強いときは葛根湯加川芎辛夷+辛夷清肺湯の併用可
・化膿が強いときは排膿散及湯+辛夷清肺湯の併用可
・鼻汁が前に流れるときは葛根湯加川芎辛夷、後鼻漏が多いときは辛夷清肺湯がベター。
・葛根湯加川芎辛夷は温薬が主、辛夷清肺湯は寒薬が主。
・副鼻腔炎の初期は葛根湯加川芎辛夷+桔梗石膏、慢性期には荊芥連翹湯

一箇所だけ排膿散及湯が登場しました。
辛夷清肺湯との併用が可能とのこと、是非試してみたいと思います。

■ 鼻汁、鼻閉に対する漢方薬の使い方
2024年1月17日:m3.com)より抜粋;
・・・
<Tips>
・花粉症に漢方薬を使用する場合は、冷えの有無、炎症の程度、胃腸の具合を確認する必要がある
<よく処方する漢方薬の詳細> 
(↑:体を温める生薬、↓:体を冷ます生薬、㊟:副作用に特に注意する生薬)

葛根湯加川芎辛夷<出典:本朝経験方>
◆ 構成生薬
葛根(かっこん)↓、麻黄(まおう)↑㊟、桂皮(けいひ)↑、芍薬(しゃくやく)↓、大棗(たいそう)↑、甘草(かんぞう)㊟、生姜(しょうきょう)↑、辛夷(しんい)↑ 川芎(せんきゅう)↑
◆ 特 徴
・葛根湯+川芎・辛夷の構成(葛根以外は熱薬であり冷えによる悪化を改善する)
・感冒に鼻汁を伴う場合は葛根湯よりもこの方剤を選択する
・感冒やアレルギー性鼻炎による鼻閉では即効性が期待できる
・副鼻腔炎による鼻閉・鼻汁にも対応できるが、鼻汁は水様性から軽度粘稠程度である(水様鼻汁が多いときは小青竜湯)
・抗ヒスタミン薬のような眠気の誘発はないため自動車の運転も問題はない
◆ 身体所見(四診)
 肩こり、水様性鼻汁
◆ 各社の漢方薬と適応症
ツムラ、クラシエ:鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎
コタロー:蓄膿症、慢性鼻炎、鼻閉
◆ Tips
・熱湯に溶いて服用すると効果的
・鼻閉が強いときは桔梗石膏や辛夷清肺湯を併用する
 →葛根湯加川芎辛夷3包+桔梗石膏2~3包/日
 →葛根湯加川芎辛夷3包+辛夷清肺湯3 包/日(より効果が強い)
・鼻閉解消のため運動前にも使用できるが、ドーピング検査の対象となるアスリートは服用できない(麻黄のためドーピング陽性となる)
鼻汁は後鼻漏ではなく鼻腔から流れる後鼻漏が多いときは辛夷清肺湯を使用することが多い)
・麻黄を少量含むため胃腸虚弱者や高齢者には注意

辛夷清肺湯<出典:外科正宗>
◆ 構成生薬
石膏(せっこう)↓、麦門冬(ばくもんどう)↓、黄芩(おうごん)↓㊟、山梔子(さんしし)↓㊟、知母(ちも)↓、百合(びゃくごう)↓、辛夷↑、枇把葉(びわよう)↓、升麻(しょうま)↓
◆ 特 徴
・石膏・知母で非常に強力な消炎効果、黄芩・山梔子で消炎効果があり、辛夷以外寒薬で冷やす作用が強い葛根湯加川芎辛夷は温薬が主
・炎症が強い副鼻腔炎に使用する
・後鼻漏が多く、膿性鼻汁(粘稠で黄色い鼻汁)。透明な粘稠痰がある場合に有効。
◆ 身体所見(四診)
・後鼻漏、粘稠痰
・膿性鼻汁、黄色い鼻汁
・口渇
◆ 各社の漢方薬と適応症
ツムラ、クラシエ、コタロー:鼻づまり(鼻閉)、慢性鼻炎、蓄膿症
◆ Tips
・化膿が強いときは排膿散及湯を併用する
 →辛夷清肺湯3包+排膿散及湯3包/日
・鼻閉が強いときは、葛根湯加川芎辛夷と併用する
 →辛夷清肺湯2~3包+葛根湯加川芎辛夷2~3包/日
・鼻茸にも使用できる
・原典の「外科正宗」では甘草が配合されているが、エキス剤では甘草を除いた「浅田宗伯の処方」となっている

荊芥連翹湯<出典:一貫堂創薬>
◆ 構成生薬
黄連(おうれん)↓、黄芩↓㊟、黄柏(おうばく)↓、山梔子↓㊟、当帰(とうき)↑、川芎↑、芍薬↓、地黄(じおう)↓、柴胡(さいこ) ↓ 枳実(きじつ)↓、桔梗(ききょう)、荊芥(けいがい)↑、薄荷(はっか)↓、白芷(びゃくし)↑、防風(ぼうふう)↑、連翹(れんぎょう)↓、甘草㊟
◆ 特 徴
・温清飲〔黄連解毒湯(消炎解熱)+四物湯(補血)〕+連翹で抗化膿炎症効果があり、荊芥で風熱や表の邪を除く
・鼻炎・扁桃炎・中耳炎・上顎洞化膿症に使用できる
副鼻腔炎の慢性期に使用初期は葛根湯加川芎辛夷+桔梗石膏を選択)
・アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患にも使用することが多い
◆ 身体所見(四診)
・手のひらや足底に脂汗をかくことがある
・皮膚が浅黒い印象
・心窩部で腹直筋が緊張
◆ 各社の漢方薬と適応症
ツムラ:蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび
◆ Tips
・飲みにくいときは冷やして飲むとよい
・森道伯の一貫堂医学の解毒体質(やせ型、皮膚は浅黒く乾燥)に使用
・青年のにきびや酒皶にも効果ある
・・・

越婢加朮湯<出典:金匱要略>
◆ 構成生薬
石膏↓、麻黄↑、蒼朮(そうじゅつ)↑、大棗↑、甘草㊟、生姜↑
◆ 特 徴
・麻黄+石膏で炎症と浮腫を改善する(抗炎症効果)
・花粉症で目が痒い(アレルギー性結膜炎)ときに即効性がある
・花粉症の鼻閉にも効果あり
◆ 身体所見(四診)
・アレルギー性結膜炎(眼の痒み)
・胃腸は丈夫、口渇
◆ 各社の漢方薬と適応症
ツムラ:腎炎、ネフローゼ、脚気、関節リウマチ、夜尿症、湿疹
コタロー:腎炎、ネフローゼ、湿疹、脚気
◆ Tips
保険適用病名に注意!
麻黄の含有量が多く(2 g/包)、麻黄の副作用に注意が必要。特に高齢者、心疾患、前立腺肥大症には注意
ドーピング検査の対象となるアスリートでは注意

麻黄附子細辛湯<出典:傷寒論>
◆ 構成生薬
麻黄↑、附子(ぶし)↑、細辛↑
◆ 特 徴
・麻黄・附子・細辛ともに温性であり、冷えによる症状を改善する
・冷えの強い場合のアレルギー性鼻炎に有効
・水様性鼻汁、くしゃみに対して有効
◆ 身体所見(四診)
・脈沈弱、顔色不良
・冷えが強い
◆ 各社の漢方薬と適応症
ツムラ:感冒、気管支炎
※コタローエキスカプセル:ツムラと同じ
◆ Tips
・熱湯に溶いて、1日目は4~5回温服する。カプセル剤は通常の服用で可
・効果は即効性あり(頓用で効果あり)
 →小青竜湯1包+麻黄附子細辛湯カプセル1カプセル、頓用

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

発達障害児への漢方

2024年02月04日 19時32分50秒 | 漢方
発達障害児の治療薬は、西洋医学では承認されたいくつかの薬剤があります。
ただ、小児精神科医のみ処方可能であり、一般小児科医は使えません。

発達障害グレーゾーンの子どもたちもたくさんいます。
はっきりと診断されるレベルではないけど、
特性と言えるレベルでもなく、
生きづらさ、生活困難さを感じながら日々を過ごしています。

そこに漢方薬の出番があると思います。
その子に合う漢方薬が見つかると、つらさをやわらげてQOLを上げてくれます。
困っていた症状がゼロになることはありませんが、
10 → 5になるだけでも生活が変わります。

私は一般小児科医であり、小児精神科医ではありません。
でも、かかりつけの子どもたちのグレーゾーンの相談を受けることがあります。
その際に漢方薬を提案します。
西洋医学では「様子を見ましょう」としか対応できない症状や困りごとに、
打つ手があるのです。

しかし系統立てて解説されている書物は見当たらず、
私は漢方専門医の講演会(最近は主にWEBセミナー)を片っ端から視聴して、
役に立ちそうな情報をかき集め、
患者さんに還元してきました。

今回も題目のWEBセミナー(講師は鈴村水鳥Dr.)を視聴し、
日頃の疑問が氷解する素晴らしい内容でした。

例えば「夜なき」。
私は「泣き虫タイプには甘麦大棗湯、怒りんぼタイプには抑肝散」
を基本に、効果が今ひとつの場合は併用してきました。
ただ、併用でも無効の場合、次の一手がなくて困ることがありました。
今回の講演で大柴胡湯を併用して効果が期待できることを知りました。
ただ、ここまで必要な例では、発達障害の可能性も考慮する必要があり、
逆に言うと漢方の効き具合で発達障害を予見できるとのこと。

例えば「甘麦大棗湯」。
私は泣き虫タイプの夜泣きに処方することがほとんどで、
たまに心因性頻尿に、まれにパニックや過換気症候群の頓服用に処方することがある方剤でした。
今回の講演の中で、
「発達障害児はその特性のために繰り返し叱られ続けるが本人はなぜ叱られるのかわからない」
「その特性が失敗の繰り返しや生きづらさにつながる」
「その悲しみや寂しさが高じて怒りとなり癇癪を起こす」
「怒りの底にあるのは悲しみ・寂しさ」であるためにベース処方とする、
というコメントが心に刺さりました。

以前、川嶋浩一郎Dr.の講演で、
「できるだけ早期から多めの量を長期間服用させる」
と聞いたことがありましたが、その時はピンときませんでした。
今回の解説を聞いて、腑に落ちた次第です。

備忘録としてメモを書き留めておきます。

◆ 発達障害児への早期介入は二次障害を予防する

 発達障害の特性
  ⇩
 無理解・叱責      →  理解・サポート
  ⇩             ⇩
 失敗・生きづらさ      生きやすさ
  ⇩        
 不安・ストレス・逃避
 自己信頼感の低下
  ⇩
 (二次障害)
 うつ・不登校・適応障害 
 暴力・引きこもり

◆ 西洋医学が得意な病気、東洋医学が得意な病気

 (西洋医学)    ・・・中間・・・     (東洋医学)
・手術が必要な病気  アレルギー疾患   ウイルス感染症
・けいれん重積    発達障害      長引く咳嗽
・悪性腫瘍      慢性副鼻腔炎    反復性中耳炎の予防
・細菌感染症     ニキビ       検査で異常がない腹痛・頭痛
・外傷        てんかん      冷え性・虚弱体質
           起立性調節障害   夜なき
           不登校 
           便秘・胃腸虚弱

※ 発達障害に合併しやすい睡眠障害・偏食・便秘症・不登校なども漢方治療の対象となり得る。

◆ ASDとADHDのイメージ

(ASD)
・コミュニケーション障害
・限局された反復する様式の行動・興味・活動

(ADHD)
・多動
・衝動
・不注意

◆ 漢方薬は「困っている症状」に「今」処方できる
・ASD・ADHDとグレーゾーンの子どもたちが困っていること
 ✓ かんしゃく
 ✓ 爪かみ、チック
 ✓ 夜なき
 ✓ 偏食
 ✓ 多動
 ✓ 運動発達の遅れ
 ✓ 言葉の遅れ
・一部の愛着障害に対してもアプローチできる
 ✓ かんしゃく
 ✓ 易怒性
 ✓ 多動

◆ 家族歴・背景への配慮
・親自身も発達の問題を抱えているケースもある。
・育てにくさからマルトリートメントに結びつている場合がある。
・愛着障害・トラウマとは専門家でも鑑別が難しい。
・漢方治療では、母子同服(≒家族療法)という選択肢もある。

◆ 「困りごと」に対する漢方治療の有効性

(効果が高い)
・パニック・かんしゃく
・睡眠障害
・イライラ
・落ち着きのなさ
・怯え・怖がり
・初期のチック
・便秘などの消化器症状

(効果あり)
・社会性やコミュニケーション障害
・自傷行為
・偏食
・フラッシュバック・パニック
・月経前症候群
・言葉の遅れ

(効果が薄い)
・長期化したチック
・多動
・暴言・暴力
・成人例

◆ 乳幼児期の夜なき・かんしゃく・偏食
・低年齢では発達障害との鑑別がつきにくいこともあり、経過を見守るケースも多い。
(発達障害)    → 睡眠障害 ・・・漢方薬が有効
(心身症・愛着障害) → 夜なき ・・・漢方薬が有効

◆ 発達障害児の場合は内服が長期に必要になるケースが多い
・睡眠障害としての夜泣きでは、単剤では無効・やめると再発傾向あり
(例)甘麦大棗湯あるいは抑肝散加陳皮半夏単剤 → 甘麦大棗湯+大柴胡去大黄湯
 → 漢方薬に対する反応性から発達障害の背景を考慮することもできる。

◆ ASD・ADHDに対する漢方治療報告例
・甘麦大棗湯(72)
・抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏(83)
・大柴胡湯(8)、大柴胡去大黄湯
・柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
・黄連解毒湯(15)
・酸棗仁湯(103)
・四物湯(71)、十全大補湯(48)

◆ 発達障害の漢方治療のイメージ
(一階)睡眠の問題
(二階)胃腸の問題(小児は二余三不足)
(三階)癇癪・パニック
 → 土台となる睡眠の問題から手をつける。それが改善するとよい方向に進むことが多い。

◆ 年齢別問題と漢方治療におけるポイント
(乳児期)夜なき
(幼児期)睡眠障害、癇癪・こだわり、パニック、落ち着きのなさ
(学童期)対人トラブル、不登校
 → 乳児期〜学童期は、睡眠・胃腸をしっかり整える
 心・肝の気を増やし流す(例:大柴胡去大黄湯、甘麦大棗湯、抑肝散加陳皮半夏) 
(思春期)不登校、自傷行為、PMS
 → 補血を意識(例:四物湯、神田橋処方:四物湯+桂枝加芍薬湯)

◆ 発達障害児における身体所見のまとめ(自験19例)
(舌診)紅点(12/19)、舌尖紅(10/19) → 黄連・黄岑
(腹診)腹直筋攣急(18/19)、胸脇苦満(8/19)、心下痞鞕(4/19)、痒証(3/19)
  → 補脾剤、柴胡剤

◆ 東洋医学的こころの捉え方(山口英明Dr.)

1.怯え・不安状態(主に心神不寧証)
・心配性、不安、悲哀感、怖がり(ビクビク)など:存在が脅かされているような感情が主体
(処方)甘麦大棗湯(72)、帰脾湯(65)、酸棗仁湯(103)、桂枝加竜骨牡蛎湯(26)

2.緊張・易変動状態(主に肝気鬱結証)
・緊張、不安、イライラ、ヒステリックなど:体の緊張が強く気分が変動しやすい
(処方)四逆散(35)、柴朴湯(96)、加味逍遥散(24)、香蘇散(70)

3.興奮・怒り状態(主に化火証)
・イライラ、怒りっぽい、落ち着きがない、焦燥感など:主に興奮的な症状が主体
(処方)黄連解毒湯(15)、三黄瀉心湯(113)

1+2 → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
2+3 → 大柴胡湯(8)、大柴胡去大黄湯

◆ ASD・ADHDの臨床像と漢方の証・処方

・癇癪、パニック、不機嫌、多動、衝動性、自傷行為、他害行為、易怒
 → 肝・心・気逆・化火
(処方)大柴胡湯(8)、大柴胡去大黄湯、黄連解毒湯(15)

・落ち着きのなさ、不安、自信のなさ、怯え
 → 心・胆・気虚・血虚・気うつ
(処方)甘麦大棗湯(72)、柴胡加竜骨牡蛎湯(12)、酸棗仁湯(103)、四物湯(71)

・過緊張・不機嫌・落ち着きのなさ・チック
 → 心・肝・気滞
(処方)大柴胡湯(8)、大柴胡去大黄湯、抑肝散(54)・抑肝散加陳皮半夏(83)

◆ 癇癪・パニック・睡眠障害などに対する処方の流れ
甘麦大棗湯+大柴胡去大黄湯で効果が不十分なとき
(改善しない) → 抑肝散加陳皮半夏(83)+大柴胡去大黄湯 → 黄連解毒湯(15)少量追加
(怯え・不安が強い) → 甘麦大棗湯(72)+柴胡加竜骨牡蛎湯(12) → 四物湯追加

【大柴胡湯(去大黄湯)】
構成:柴胡・芍薬・半夏・大棗・生姜・枳実・黄岑・(大黄)
・柴胡剤の中で、体力の充実したものに適用。季肋部の苦満感、肋骨弓下部に抵抗・圧痛(胸脇苦満)、腹部は堅く緊張している(廣瀬滋之Dr.)。
・小柴胡湯証にして、腹満拘攣し嘔劇しき者を治す(藤平健Dr.)。
・柴胡・芍薬・枳実が肝気欝血を改善し、黄岑で清熱。

【甘麦大棗湯】(72)
構成:小麦・大棗・甘草
・一次障害(対人関係、コミュニケーション、こだわり)の改善(岩間正文Dr.)
・一次障害の改善例は乳幼児に多く、5歳以前のできるだけ早期に開始すべき(川嶋浩一郎Dr.)。
・小麦蛋白にトリプトファンが含まれ、セロトニンやメラトニンの原料となる(川嶋浩一郎Dr.)。
・ASD児におけるセロトニン合成能発達のプロセスが阻害されているため、セロトニンの補充が有効。

【抑肝散(加陳皮半夏)】(54)(83)
・易刺激性・多動性の改善
・攻撃性・自傷行為・癇癪の軽減

◆ 小児発達障害児への漢方薬処方量
・病態が複雑な疾患、長期に続く症状に対しては通常の2倍量(0.4g/kg/日)が必要なことが多い。
・2剤併用処方(生薬の観点から)が多い;

(例)大柴胡去大黄湯に何を足すか?
+ ASDの低年齢・怯える様子あり → 小麦のセロトニン作用を期待して、甘麦大棗湯(72)
+ 不安感・怯える症状が強い → 竜骨・牡蛎の安神作用を期待して、柴胡加竜骨牡蛎湯(12) 
+ 癇癪・易怒作用が強い → 釣藤鈎・柴胡の作用を期待して、抑肝散加陳皮半夏(83)
+ 興奮作用が強い →黄連・黄岑の清熱作用を期待して、黄連解毒湯(15)

◆ 黄岑による肝機能障害
・8割が3ヶ月以内に起こり、特に50歳代の女性に多い。
・無症状のことも多く、定期採血や健診にてはじめて肝障害に気づくケースが50%強、後発時期は内服開始後3ヶ月以内。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

PMS(Premenstrual syndrome、月経前症候群)の漢方治療

2023年10月01日 09時29分41秒 | 漢方
PMS(月経前症候群)とは、
生理前に心身の不調を来し、
生理が始まるタイミングで治まる病態です。
PMSを自覚している女性は従来、
成人女性に多いとされてきましたが、
近年、思春期女子も多くが経験していることが明らかになってきました。

ポイントは「心身の不調」です。
体だけではなく精神的にも不安定になります。
つまり月経周期に伴い分泌されるホルモンは、
体だけではなく心にも影響するという事実。

西洋医学では、身体症状に対する薬と精神症状に対する薬が別々に処方されます。
ホルモン療法は両方に有効です。

一方の漢方医学では、身体症状と精神症状をまとめて一つの方剤で治療します。
心と体は影響し合っているという「心身一如」という考え方が根底にあるのです。
ですから、自分の体質に合う漢方薬に出会うと、
生理関係トラブルが軽減するので、一生幸せに過ごせます。

月経前症候群の漢方的捉え方は、
血液がたまって血の巡りが悪くなる「お血」という病態概念を用います。
それを解消する薬を「駆お血剤」と呼び、
血の巡りをよくすることにより、諸症状が軽減します。

生理関係トラブルには、
・月経痛(月経困難症)
・月経不順
・月経前症候群
・更年期障害
などがありますが、
実はこれらに用いる漢方薬は共通しています。
「血の異常」に対する方剤を使い分けるのですね。

今までに私が集めた情報をまとめると以下の通り;

当帰芍薬散(23):陰虚:水毒4/血虚4/お血3
加味逍遥散(24):陽虚:お血4/気逆3
桂枝茯苓丸(25):陽実:お血5/気逆3
桃核承気湯(61):陽実:お血4/気逆4
温経湯(106)   :陰虚:血虚4/お血3/気逆3
当帰建中湯(123):陰虚:お血3/血虚3
柴胡桂枝乾姜湯(11):陽虚:気逆3
半夏白朮天麻湯(37):陰虚:水毒4/気虚4/気滞3

「陰虚」とか「陽実」とかは、
漢方の「陰陽虚実」という概念による分類です。
その後ろの単語と数字は、
漢方の「気・血・水」という概念による特徴と、
5段階評価でどの程度の強さを持つかという指標です。

さて、PMSに関してはなかなかまとまった記述に出会えません。
漢方薬のきぐすり.com」というサイトの記事が詳しいので、
私なりに読み解いてみたいと思います。

私が書いたリスト以外にも、複数の方剤が登場します。

 抑肝散(54)
 抑肝散加陳皮半夏(83)
 半夏厚朴湯(16)
 香蘇散(70)
 六君子湯(43)
 苓桂朮甘湯(39)

…これらの方剤は主に“気”の異常に対するものですね。
つまり、このサイトの記述者は、
PMSに対して血の失調に対する方剤と、気の失調に対する方剤を併用する方針のようです。 
しかし併用の具体例、注意点については言及していないので、
現場では困ってしまいそう。

一方、私が書いたリストは、血と気の失調の両方をカバーする方剤で、
一つの方剤で何とかしようという方針です。


<メモ・備忘録>

PMSの定義
・月経の数日から10日前に生じる多様な精神・身体症状。
・従来は「月経前緊張症」と呼ばれてきた。

 PMSの症状
① 疲労感、抑うつ感、引きこもり、(集中力低下)、喉元や胸のつかえ感、腹部膨満感、神経過敏、イライラ
② 頭重感、頭痛、立ちくらみ、手足のむくみ、冷え、冷えのぼせ、嗜好の変化、食欲不振や過剰摂取

 PMSの症状に対する漢方医学の気血水の病態
1.気の失調
(気滞)抑うつ感、喉のつかえ感(→ 柴胡、薄荷、川芎)
(気逆)神経過敏、イライラ、のぼせ、動悸( → 桂皮、山梔子)
(気虚)疲労感、集中力低下、食欲不振( → 朮、甘草、茯苓)
2.血の失調
(お血)頭痛、冷えのぼせ、暗赤色の歯肉( → 川芎、桃仁、牡丹皮)
(血虚)顔色が悪い、めまい、動悸、冷え症( → 当帰、芍薬)
3.水の失調
(水滞)頭痛、めまい、むくみ( → 朮、茯苓、沢瀉)

 PMSの精神神経症状には加味逍遥散(24)
・気うつ感、イライラ感、怒りやすさは気滞・気逆に相当する。
・柴胡を中心とする理気剤の加味逍遥散(24)が適する。

イライラ感・怒りの顕著なPMSには抑肝散加陳皮半夏(83)
・気うつ傾向と攻撃的な症状を持つ場合。
・加味逍遥散(24)はどちらにも用いられるが、主に気うつ傾向に適する。
・イライラ感や怒りなど攻撃的な症状(月経前不機嫌症状)が顕著な場合は、抑肝散(54)や抑肝散加陳皮半夏(83)が適する。

加味逍遥散(24)と抑肝散加陳皮半夏(83)の比較
・24と83は精神神経症状(気滞)に用いる柴胡と、貧血傾向(血虚)に用いる当帰を共に含む類似処方。
・24は柴胡と芍薬が主薬で、精神的に弱い状態(陰証)に適する。
・83は柴胡と釣藤鉤が主薬で、精神的に強い状態(陽証)に適する。

PMSの予防・養生
1.症状を軽減する工夫
・温める:温かいものを食べる。ゆっくり入浴する。冬は腰をカイロで温める。首筋を温める。夏場のオフィスの過剰冷房対策を考える。
2.控えた方がよいもの
・体を締めつけないようにする(ガードル、ボディースーツ)。
・(むくみを増悪させる)塩辛い食品を控える。

 気うつの顕著なPMSには半夏厚朴湯(16)・香蘇散(70)
・両処方は蘇葉を含み、気分が優れない病態が適応。
・気うつ感・気分がすぐれない・胃腸が丈夫でないことは共通。
・半夏厚朴湯(16)は喉・胸・胃のつかえ感を軽減する。
・香蘇散(70)は頭重感を伴い、半夏厚朴湯(16)より体力のない人が適応。

「もの悲しい印象」の人に合う香蘇散(70)
・気うつの頭重感に用いる香附子と、食後の停滞感を軽減する陳皮が主薬。
✓ 焦り気味
✓ 頭重感、頭痛
✓ 虚弱者の初期感冒

「几帳面・おしゃれ」な人に合う半夏厚朴湯(16)
・むかつきや食後の停滞感を軽減する半夏、茯苓と、気うつ感を軽減する厚朴が主薬。
✓ 咽喉頭異常感
✓ 動悸、めまい感
✓ 嘔気、胃部停滞感
✓ 腹部膨満感

気うつ感&胃腸虚弱には六君子湯(43)
・PMSに伴う気うつ感や胸のつかえ、冷え症には、胃腸虚弱で少食が関与している場合があり、六君子湯(43)が有用。
・43は薬用人参を含み、胃の停滞感を軽減する半夏、生姜、茯苓は半夏厚朴湯(16)と共通。

PMSに用いられる漢方
 加味逍遥散(24)
 桂枝茯苓丸(25)
 香蘇散(70)
 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
 当帰芍薬散(23)
 半夏厚朴湯(16)
 抑肝散加陳皮半夏(83)
 苓桂朮甘湯(39)

使い分けその1:体力
(実証)胃腸が丈夫、食欲旺盛、脂っこいものも食べる、声が大きい、夜更かしをしても大丈夫。
 桂枝茯苓丸(25)、柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
  ⇧
(中間証)
 加味逍遥散(24)、抑肝散加陳皮半夏(83)
  ⇩
(虚証)少食傾向、淡白な野菜食を好む、疲れやすい、風邪を引きやすい。
 当帰芍薬散(23)、半夏厚朴湯(16)、
 苓桂朮甘湯(39)、香蘇散(70)

使い分けその2:のぼせと冷え
(体力あり)
 ⇧ (のぼせ、頭痛、下肢の冷え)桂枝茯苓丸(25)★ 
 ⇧ (顔面紅潮、焦燥感、頭痛)黄連解毒湯(15)
 ⇧ (のぼせ、めまい、頭痛)女神散(67)
   (冷えのぼせ、不安、多様な症状)加味逍遥散(24)★ 
 ⇩ (発作性の動悸、のぼせ、めまい)苓桂朮甘湯(39)
 ⇩ (冷え症、むくみ、貧血傾向)当帰芍薬散(23)★  
 ⇩ (顕著な冷え、頭痛、嘔気)呉茱萸湯(31)
(体力なし)

使い分けその3:イライラと気うつ
(体力あり)
 ⇧ (動悸、不安、不眠、驚きやすい)柴胡加竜骨牡蛎湯(12)★ 
 ⇧ (イライラ、顔面紅潮、焦燥感)黄連解毒湯(15)
 ⇧ (頭痛、気難しい)釣藤散(47)
   (多様な愁訴、冷えのぼせ、イライラ)加味逍遥散(24)★ 
   (怒り、神経過敏、筋肉緊張)抑肝散加陳皮半夏(83)
 ⇩ (喉のつかえ感、嘔気、腹部膨満感)半夏厚朴湯(16)★ 
 ⇩ (胃腸虚弱、頭痛、気うつ)香蘇散(70)
(体力なし)

使い分けその4:腹痛・生理痛
(体力あり)
 ⇧ (のぼせ、頭痛、下肢の冷え)桂枝茯苓丸(25)★ 
 ⇧ (のぼせ、頭痛、便秘)桃核承気湯(61)
 ⇧ (冷え症、腰痛、関節痛)五積散(63)
   (多様な愁訴、冷えのぼせ、イライラ)加味逍遥散(24)★ 
   (疲労感、貧血傾向、痔)当帰建中湯(123)
 ⇩ (顕著な冷え症、頭痛、腰痛)当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)★ 
 ⇩ (冷え症、むくみ、頭重)当帰芍薬散(23)
(体力なし)

 PMSに用いる漢方薬服用のコツ
1)標治
・PMSは月経前3-10日に認められるので、症状の出現する数日前から服用する。
・痛みが強い場合は芍薬甘草湯(68)を併用する。
・胃腸虚弱を伴う場合は安中散(5)を併用する。
2)本治
・お血、水滞、気虚、気滞を改善する治療も必要。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パフォーマンス漢方?

2023年09月12日 13時09分29秒 | 漢方
ってどういう意味?
という気持ちで某セミナーをWEB聴講しました。
講師は耳鼻科医の五島Dr。

漢方関連セミナーとしては型破りというか、異色の内容でした。
で、そのパフォーマンスとは…
「プラセボ効果を存分に使う」という意味でした。

同じ漢方方剤を処方する際に、ただ処方するより、
「あなたに合った特別な薬を処方して上げますよ」
と思い込ませることにより、有効率が上がるというのです。

まあ確かに、一般臨床で感じていることではありますが…。
私も今一つ乗り気でない患者さんには、
モチベーションを上げるために、
「こんなに効いた患者さんがいましたよ」
と例示することがしばしばありますね。

では五島Drから口伝されたポイントを。
といっても、彼は「パフォーマンス耳鼻科漢方」という電子書籍を出版しており、
私はすでに購入していたことに気づきました。
読んだはずなのですが…中身を全然覚えていません。

<ポイント>
・プラセボ効果とは、薬理作用のない薬が効果を示すこと。
・プラセボ効果は信頼関係によって高まり、それを最大限に高めるのがパフォーマンス、漢方の応用することを「パフォーマンス漢方」と命名。
・患者さんとの距離感は近すぎず遠すぎず~お仕事だから~
・めまいの患者さんへの使い分けは、地味(陰証)には半夏白朮天麻湯、派手(陽証)には苓桂朮甘湯
・五苓散合苓桂朮甘湯は利水効果アップでメニエール病重症例に適用するが、基本的には単剤が望ましい。
・めまい漢方の使い分け
+「暗い」患者には半夏白朮天麻湯
+「暗い不安」は分心気飲(苓桂朮甘湯+半夏厚朴湯)
+「明るい不安」には苓桂朮甘湯
+「明るい」「不安なし」は治療の必要なし?
・めまい漢方の投与期間の目安
       (効果発現まで)   (症状消失まで)
(五苓散)    1~7日       14日(2w)
(苓桂朮甘湯)  1~14日      28日(4w)
(半夏白朮天麻湯)数日~28日     84日(12w)
・めまい漢方の口訣
(古典)「立てば苓桂、回れば沢瀉、歩くめまいは真武湯」
(五島)「派手は苓桂、天気は五苓、幽霊めまいは半夏白朮天麻湯」
・小柴胡湯はPSL、桔梗湯はトラネキサム酸に相当


放送禁止用語がバンバン出てくるので書きにくい…
以降は備忘録としてのメモ書きです。


漢方処方の5段階パフォーマンス
1.まずは傾聴
2.共感、興味、承認(そなたテクニック)
3.息継ぎに集中して話を止める。
4.少し特別扱いして承認する(お仕事だから)
5.とどめの一言

(冬の)そなたテクニック
1.反応する 「そう・・・」
2.興味を示す「なるほど・・・」
3.理解を示す「たしかに・・・」

処方時に加えることで治療効果がアップする名言集
(苓桂朮甘湯)不安な時は甘いものが欲しくなりますね、この薬はシナモンロールのようなものですよ。
(呉茱萸湯)美人に効く漢方です。良薬は口に苦し。
(当帰芍薬散)美人に効く漢方。
(半夏白朮天麻湯)じっくり効かせる漢方
(牛車腎気丸)じっくり効かせる漢方
(補中益気湯)倦怠感(苦労人)、疲れた人に効く漢方
(加味帰脾湯、加味逍遙散)神(加味)処方です!

めまいの漢方治療
といいつつも、めまい治療の基本は「リハビリ」だそうです。
以下の3方剤を使い分ける。
・五苓散
・半夏白朮天麻湯
・苓桂朮甘湯

めまいの模擬患者ーその1
・静かに診察室に入室。
・こちらから話しかけてようやく話し出す人。
・下を向いていてやせ型。
・服やカバンが単色系、グレー系の人。
→ 半夏白朮天麻湯…上げる薬(時間かかる)

めまいの模擬患者ーその2
・診察室に入った瞬間、聞いてもいないのに話し出す人。
・神経質
・中肉中背でやや小太り
・服やカバンが派手な人。
→ 苓桂朮甘湯…下げる薬(早い)

めまいと(印象の)明暗による使い分け
・めまい+「暗い」患者には半夏白朮天麻湯
・めまい+「暗い不安」は分心気飲(苓桂朮甘湯+半夏厚朴湯)(中島紀一Dr)。
・めまい+「明るい不安」には苓桂朮甘湯
・めまい+「明るい」+「不安なし」は治療の必要なし?

投与期間の目安(佐藤公輝Dr2019年漢方と最新治療より)
       (効果発現まで)   (症状消失まで)
(五苓散)    1~7日       14日(2w)
(苓桂朮甘湯)  1~14日      28日(4w)
(半夏白朮天麻湯)数日~28日     84日(12w)

苓桂朮甘湯と五苓散の使い分け(佐藤Dr:岐阜県の産婦人科医)
・苓桂朮甘湯は、桂皮+甘草の組み合わせで抗不安効果がある。
→ 不安を伴った水毒には苓桂朮甘湯
・苓桂朮甘湯は甘草のため水を体内にためてしまう可能性がある。
・水毒に普遍的に、頓服的に使えるのが五苓散。
・水毒症状があるときは、五苓散を2包頓服させて効果をみる(五苓散テスト)。

▢ めまい漢方の口訣(の変遷)

(古典)
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
 ↓
立てば苓桂、回れば沢瀉、歩くめまいは真武湯
・立ちくらみには苓桂朮甘湯
・回転性めまいには沢瀉湯(五苓散で代用)
・歩く時、浮動感があるようなめまいは真武湯
・なんとなくフラッとしたり、立ちくらみがしたり両方の症状があるときには真武湯と苓桂朮甘湯を併用することもある(稲木一元Dr)。

(現代 by 五島Dr)
派手は苓桂、天気は五苓、幽霊めまいは半夏白朮天麻湯
・苓桂朮甘湯
・五苓散
・半夏白朮天麻湯

頭痛の漢方
・五苓散:低気圧の影響を受ける
・呉茱萸湯:胃腸が弱く、胃部が冷える。血色が悪く、手足が冷える人の発作性の片頭痛、嘔吐。

頭痛漢方の使い分け
・苓桂朮甘湯:うざい患者
・半夏白朮天麻湯:幽霊
・五苓散:気象病
・呉茱萸湯:美人
・真武湯:冷えた老人
・補中益気湯:苦労人 

扁桃炎には小柴胡湯加桔梗石膏
小柴胡湯加桔梗石膏=小柴胡湯+桔梗湯
小柴胡湯は代表的な柴胡剤(急性炎症)=PSL
桔梗湯は桔梗と甘草の二剤からなる、咽頭痛・咽頭炎の漢方(トラネキサム酸


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

更年期のメンタルヘルス(更年期指導士レクチャー4)

2023年09月09日 16時18分06秒 | 漢方
「更年期指導士」のWEBセミナー、4つ目はメンタルヘルスです。
小児科医の私にとっては、ピンとこない分野ですが…
講演を聞いてもやはりピンときませんでした。

わからないなりに、ポイントを拾ってみました。

<ポイント>
・心身症とは「身体疾患の中で、その発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与し、
器質的ないし機能的障害が認められる病態」であり、精神疾患ではない。
・意外な心身症:本態性高血圧、心筋梗塞、糖尿病、甲状腺機能亢進症、腰痛症…
・「更年期におけるメンタルヘルス対策として、日頃から日常のストレスに対処できる生活環境の改善や社会的な要素にも注目した包括的な対応が求められている」って言われても何のことやら…。
・心理的ストレッサーでやっかいなのは「デイリーハッスルズ」。
・更年期障害の心理的症状と更年期うつ病とは別の病気、しっかり鑑別することが必要。


以降は、備忘録としてのメモ書きです。

▢ 更年期とは?
・閉経(12か月以上の無月経)の前後5年間が関与
・閉経の前5年間を「閉経移行期」、後5年間を「閉経後」と呼ぶ。

▢ 更年期症状と更年期障害
・更年期症状:多種多様な症状で器質的な変化に起因しない
・更年期障害:日常生活に支障をきたす

▢ 心身症とは?
・身体疾患の中で、その発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与し、
器質的ないし機能的障害が認められる病態。
(代表的な心身症)
✓呼吸器系:喘息、過換気症候群
✓循環器系:本態性高血圧、狭心症、心筋梗塞、不整脈
✓消化器系:過敏性腸症候群、胃・十二指腸潰瘍
✓内分泌・代謝系:糖尿病、甲状腺機能亢進症
✓皮膚科系:アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、円形脱毛症
✓整形外科系:腰痛症、頚肩腕症候群
✓婦人科系:月経前症候群、月経異常、更年期障害

▢ 更年期症状・障害の増悪因子
・更年期症状の増悪に、心理社会的因子が87%関与。
・多くの更年期障害の発症・症状の強さに心理社会的因子が関与。

▢ メンタルヘルスのイメージ
・日本の一般的な認識は、メンタルヘルス=心の健康、メンタルへする対策=うつ病などの病気を予防
・WHOの定義では、メンタルヘルス対策=a state of well-being、メンタルヘルスが良好な状態とは“健康な状態”(自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる)
・更年期におけるメンタルヘルス対策として、日頃から日常のストレスに対処できる生活環境の改善や社会的な要素にも注目した包括的な対応が求められている。

▢ ストレスとは?
・ストレッサーを考えてみる
→ 分自身にとって何がストレッサーになっているのかに気づくこと。
・ストレス状態を考えてみる
→ 自分の中で、ストレス状態があるときにはどんな心身への反応が起こるのかを今一度フル返って考えること。

▢ ストレスと心身への影響
(第一段階)警告反応期→ 神経系活動上昇
(第二段階)抵抗期  → 抵抗力大
(第三段階)疲弊期  → 慢性化・再発
…ストレス耐性には限界がある。

▢ 主な心理的ストレッサー
・カタストロフィ:強い衝撃をもたらす出来事
(例)地震、津波、等
・ライフイベント:生活環境から受ける刺激
(例)家族との離別、引っ越し、等
デイリーハッスルズ:日常のちょっとした出来事
(例)流しが汚い、トイレの便座が上がっている、等
…注意すべきは「デイリーハッスルズ」で、意識しないと気付くことができない種類のストレス。

▢ 更年期障害で見られる諸症状
(血管運動症状)寝汗、ホットフラッシュ、発汗、冷や汗、暑さ/寒さの感覚、睡眠困難
(心理的症状)抑うつ、不安、イライラ、興奮しやすい、集中困難、気分の揺れ
(身体症状)肩こり、疲労感、頭痛、めまい、腰痛、胃腸の不快
(性的症状)性への興味消失、性交疼痛、膣の渇き
…「心理的症状」は「更年期うつ病」と鑑別することが重要

▢ 更年期うつ病の原因
・うつ病は神経伝達物質異常による症候群。
・卵巣機能(エストロゲン)低下により神経伝達物質の代謝に影響を与える。
・更年期の諸症状からうつ病の発症につながる。
・家庭や社会での環境変化、心理社会的ストレス
(例)子どもとの関係性の変化、夫婦の関係性の変化、同世代の友人の大病、
 親の介護・看取り・死別、定年後の経済・生活の変化
  ↓
 喪失感、人生への不満、老年を迎える実感、身近となる死、将来の生活不安

▢ リスクファクター
・女性ホルモン関連の既往/依存症:PME/PMDD、周産期うつ病、子宮摘出術
・生活習慣・健康:うつ病の既往、身体疾患の存在、喫煙、運動不足
・心理社会的:パートナーがいない、一人っ子、社会的ストレス

▢ うつ病の診断:D-SIGECAPS 5
D:Depression
S:Sleep
I:Interst
G:Guilt
E:Energy
C:Concenytation
A:Appetite
P:Psychomotor
S:Suicide
5:9項目中5項目以上
…診断項目があること、2週間以上続くことを認識すべし

▢ 更年期うつ病のtips
・更年期にはうつ病が発症しやすい。
・更年期障害の症状を合併していることが多い。
・薬物療法や精神療法が治療の中心。
・HRTは抗うつ効果があり、抗うつ薬の効果増強も見込める。
・閉経後の中高年女性にはSSRIよりもSNRIの方が効果があるという報告あり。

▢ Bio-psycho-social model
(身体的問題)頭痛、食欲不振、関節痛、動悸、等
(心理的問題)抑うつ、イライラ、不安感、不眠、等
(社会的問題)借金、留年、失業、離婚、引っ越し、人間関係トラブル、周りの理解、等

▢ 心理・社会的因子として取り上げるべき項目
1.受診の動機(本人の意思か、家族による勧めか)
2.身体症状に対する患者と家族の受け止め方・対応
3.それまでの治療・経過に対する患者と家族の反応
4.環境、家族構成、生活内容、経済状態の変化(発病時、現在)
5.適応様式(心理的防衛機制を含む)
6.幼児期からの親子関係、友人関係、性格、学歴、職歴、結婚生活など
7.精神的発達段階における出来事と対応
8.ストレスの解消のための方法(趣味、娯楽、スポーツなど)

▢ 心療内科における薬物療法の位置づけ
・ストレス状況場面を乗り越えサポートする。
・身体症状と精神症状の悪循環を断つ。
・心理療法の導入を容易にする。
・使用される薬剤:抗うつ薬、抗不安薬、漢方薬

▢ 更年期障害の精神症状に対する薬物療法
・SSRIやSNRIはホットフラッシュへの効果もある。
・Paroxetine は米国FDAでホットフラッシュに対する非ホルモン療法として認可され、HRT不能例や使用困難な例に対しても使用を考慮することができる。
・更年期女性にはSNRIの方が有効。

▢ まとめ-1
・心身症とストレス、メンタルヘルス→ストレス、心理社会的な影響を考慮
・更年期に認められやすい精神症状→更年期におけるうつ病との鑑別
・精神症状の評価の仕方→医療面接、質問紙などを活用
・女性の生涯におけるメンタルヘルストラブルの相関→PMSや周産期うつ病との関連性
・更年期障害への心身医学的マネージメント→包括的な治療につながる

▢ まとめ-2
・更年期症状/更年期障害としての形でストレスからの影響が出ているのではないか。
・その反応が出たときに、どのようにして対処するのか自分なりの方法を見つけておく。難しい場合には、遠慮せずに周囲に助けを求める。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

更年期障害の漢方治療(更年期指導士レクチャー3)

2023年09月09日 07時47分38秒 | 漢方
「更年期指導士」(日本女性心身医学会主催)
という資格取得のためのセミナー3つ目はいよいよ漢方の出番です。

…しかし期待したほどの内容ではなく、
“広く浅く”知識を得る、程度でした。

<ポイント>
・婦人科三大処方:当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸
・それぞれの方剤の特徴により使い分ける:
(血虚・水滞)当帰芍薬散
(血虚・お血・気逆・気滞・気虚)加味逍遙散
(お血)桂枝茯苓丸


以降は備忘録としてのメモ書き;

▢ 更年期障害の治療法
1.薬物療法
・ホルモン補充療法(HRT)
・漢方薬
・向精神薬(抗うつ薬、抗不安薬)
2.非薬物療法
・生活習慣の改善
・サプリメント
・心理療法

▢ 更年期に使用される三大漢方(処方薬)
(23)当帰芍薬散
(24)加味逍遙散
(25)桂枝茯苓丸

▢ 更年期に使用される市販漢方薬
・当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、抑肝散
・命の母A、ルビーナ、中将湯…

▢ 更年期症状の出現順序
1.月経不順
2.自律神経失調症状
3.精神神経症状
(ここらへんで閉経)
4.泌尿生殖器の萎縮症状
5.脂質異常症・高血圧
6.骨粗鬆症

▢ 婦人科三大漢方の使い分け(その1)
血虚(→補血) 当帰芍薬散>加味逍遙散>桂枝茯苓丸
お血(→駆お血)桂枝茯苓丸>加味逍遙散
水滞(→利水) 当帰芍薬散>加味逍遙散>桂枝茯苓丸
気逆(→降気) 桂枝茯苓丸>加味逍遙散
気滞(→理気) 加味逍遙散
気虚(→補気) 加味逍遙散

▢ 婦人科三大漢方薬の使い分け(その2)
(23)当帰芍薬散:血虚水滞
(24)加味逍遙散:血虚お血・水滞・気逆気滞気虚
(25)桂枝茯苓丸:血虚・お血・水滞・気逆

▢ 更年期症状による漢方の使い分け例
冷え   → 温経湯、人参養栄湯、十全大補湯
多汗症  → 防已黄耆湯
肥満・便秘→ 防風通聖散
イライラ → 抑肝散
不眠   → 加味帰脾湯、抑肝散
不安感・不眠・動悸→柴胡加竜骨牡蛎湯
頭痛   → 呉茱萸湯、五苓散、戦中茶趙さん
肩こり  → 葛根湯、二朮湯、桂枝茯苓丸
腰痛・関節痛・指の痛み→桂枝か朮舞踏、牛車腎気丸
むくみ  → 五苓散、柴苓湯、防已黄耆湯
倦怠感  → 補中益気湯、人参養栄湯、十全大補湯

▢ 漢方の副作用の注意点(とくに併用の場合)
・甘草:偽アルドステロン症、高血圧、低カリウム血症、むくみ
・麻黄:不眠、多汗、動悸、脱力感
・附子末:心悸亢進、舌のしびれ
・大黄:下痢

▢ 更年期症状への効果が期待される食品・栄養素(サプリメント)
・イソフラボン、ポリフェノール、ビタミンE…
・有効性が明らかなものは存在しない(NCCIH)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする