漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

「西洋医がすすめる漢方」新見正則著

2010年10月26日 22時50分05秒 | 漢方
2010年発行、新潮社刊。

本屋さんでふと手にとって読みやすそうなので購入しました。
読み進めてみると、日本の西洋医学教育を受けた医師が漢方医学に目覚めるまでの軌跡が記されており、自分の辿ってきた道とよく似ているので共感できました。

まず、自分で使ってみて有効感を得ると、身内に使ってみたくなります。
家族、スタッフに使うと「これは効いた」「これは効かなかった」と忌憚のない意見を聞くことができます。
そこでも手応えを感じると、今度は患者さんに使ってみたくなります。
そして「漢方も使い西洋医学医」が出来上がるのです(笑)。

著者は血管外科が専門で、5年間のイギリス留学で博士号をも取得しているエリート医師。また、「セカンドオピニオン外来」を日本で初めて開設した功労者でもあります。

そのセカンドオピニオン外来で、病気の治療は成功しても体の辛さが取り切れない患者さんがたくさんいることがわかり、西洋医学の限界を思い知らされるに至り、解決する方法を探る過程で漢方医学に出会ったそうです。全て解決できなくても「体が楽になる」という不思議な効き方に驚き、のめり込んでいきました。そして現在は指導的立場になっています。

純粋な漢方専門医ではなく、西洋医学を学んだ医師が漢方を勉強する過程でぶつかるハードルを超えるヒントも書かれており大変参考になりました。
漢方入門書として、益田総子先生の「劇的」シリーズと共にお勧めです。
「自分でも漢方を使えるのではないか・・・使ってみようかなあ」と思わせてくれそう。

著者が漢方を勉強してほんとうに良かったと思うことは、診察室で患者さんに「何か困ることはありますか?」と聞けるようになったことだと記しています。
それまでは専門分野以外の訴えは却下するのが当たり前であり、患者さんも遠慮して細かいことは聞いてこないので、上記の質問は成り立ちませんでした。
でも漢方医学を知るといろんな体調不良に対応可能となり、逆に聞きたくなるのですから不思議です。

小児科医の私のところにも、西洋医学では病気と扱われない夜泣きや寝ぼけ、風邪の反復やお腹のトラブルなどの相談が持ち込まれます。昔の私でしたら「治療の必要はないので様子を見ましょう」とスルーしていた訴えに、今は「漢方薬を試してみましょうか」と相談に乗れるようになり、診療の幅が広がりました。

現在の私の漢方診療を肯定して勇気づけてくれる本です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする