蕁麻疹に効く漢方について調べていると、茵蔯五苓散/茵陳蒿湯という方剤が出てきます。
しかし、何となく「黄疸に使う漢方」というイメージが先行し、小児科医の私には馴染みの薄い方剤。
どんな薬なのか、どんなタイプの蕁麻疹に効くのか、調べてみました。
結論から申し上げると、「急性」かつ「熱証」の蕁麻疹に適応になるようです。
一方で、食餌性蕁麻疹に有効、慢性・難治性蕁麻疹で皮疹が広範囲に及ぶ場合にも有効という記述もありました。
★ 茵陳蒿湯と茵蔯五苓散の記述を抜粋;
・茵蔯五苓散は水滞を改善する五苓散という薬と、熱をさばき痒みを抑える効果のある茵陳蒿という生薬で作られている(森原先生)。
・食餌性蕁麻疹には茵蔯蒿湯に小柴胡湯か大柴胡湯を合方する。茵蔯蒿湯と茵蔯五苓散の鑑別は、前者は消炎作用に長け、後者は利水作用に長けていること(栁原先生:山本巌先生から引用)。
・熱性蕁麻疹には,水滞と熱を取ることを目的にした茵蔯五苓散が基本となるが,熱の要素が強ければ黄連解毒湯などの清熱剤を合方するとよい(織部先生) 。
・慢性・難治性蕁麻疹で、紅斑・膨疹などの発疹が広範囲に及ぶ場合は、茵蔯五苓散が効果的(橋本先生)。
・茵蔯蒿湯は大酒家や肝障害をともなう痒みに使用を検討する。大黄を含むため、便秘傾向が無い場合は茵蔯五苓散を用いる(津田篤太郎先生)。
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■ 漢方道場 皮膚科編「蕁麻疹の漢方」
森原 潔 先生(もりはら皮ふ科クリニック)
(Kampo Square 2016 Vol.13 No.5)
これらの方剤(葛根湯、越婢加朮湯、白虎加人参湯、麻黄附子細辛湯)で効果が乏しい場合は、茵蔯五苓散を使ってみても良いかもしれません。 漢方では水の流れが悪くなって起こる病態を水滞と呼びます。蕁麻疹というのはヒスタミンにより起こる皮膚の浮腫ですので、間質に水がたまっていることから水滞ととらえることできます。茵蔯五苓散は水滞を改善する五苓散というお薬と、熱をさばき痒みを抑える効果のある茵陳蒿という生薬で作られます。
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■ 「かゆみ」治療の最新事情/漢方処方の使い分け
栁原 茂人 先生(鳥取大学医学部附属病院皮膚科 助教)
(Kampo Square 2016 Vol.13 No.11)
◇ 乾かす:利湿(浮腫・滲出液をとる)
利湿を要する疾患として蕁麻疹を挙げる。
山本巌は、
・一般型(風熱型)に消風散ベース、
・寒冷蕁麻疹(風寒型)には麻黄剤など
・食餌性蕁麻疹には茵蔯蒿湯に小柴胡湯か大柴胡湯を合方
・心因性蕁麻疹には加味逍遙散合黄連解毒湯
・コリン型蕁麻疹には消風散合温清飲合加味逍遙散
を記載している 。このように、蕁麻疹に対しては、誘因に応じて漢方を使い分ける必要がある。
茵蔯蒿湯と茵蔯五苓散の鑑別は、前者は消炎作用に長け、後者は利水作用に長けていることである。
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■ 漢方診療ワザとコツ:漢方の考え方-その4「難治性蕁麻疹」
織部和宏先生:織部内科クリニック(大分県)
(漢方と診療 Vol.6 No.4,2016)
漢方医学では,急性と慢性のタイプに分け,また寒・熱にもとづいて方剤を決定することが基本である。
熱性の場合は,茵蔯五苓散を基本に黄連解毒湯や三黄瀉心湯・越婢加朮湯や,ときに竜胆瀉肝湯などを合方することが多い。
寒性の場合は,真武湯や人参湯をベースに,ときに麻黄附子細辛湯を単独あるいは合方して使用している。
・・・
熱性蕁麻疹には,水滞と熱を取ることを目的にした茵蔯五苓散が基本となるが,熱の要素が強ければ黄連解毒湯などの清熱剤を合方するとよい。 体の一部, 特に背中などが帯状に熱くなったり,ほてったりする場合には梔子柏皮湯がよく効いている。
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■ 皮膚科診療における漢方治療 アプローチ
JA北海道厚生連旭川厚生病院 診療部長・臨床研修センター長・皮膚科主任部長 橋本 喜夫 先生
(漢方医薬学雑誌 ● 2017 Vol.25 No.1(18))
<慢性蕁麻疹>
慢性蕁麻疹は,私の患者さんにも多い難治性疾患です。 ほとんどの場合、他院で抗ヒスタミン薬を投与しても一向に改善せず、かなりこじれてしまった状態で来院されます。現在使われている第二世代II期の抗ヒスタミン薬は、第一世代、第二世代I期のものとは異なり、抗ヒスタミン薬特有の副作用があらわれにくく、効果もよい薬です。その第二世代II期を多剤併用しても症状が改善しない場合、漢方薬の出番といえます。
・一般的な慢性蕁麻疹の症状で、抗ヒスタミン薬を多剤併用している場合は、十味敗毒湯を使用します。
・紅斑、膨疹などの発疹が広範囲に及ぶ場合は、茵蔯五苓散が効果的です。茵蔯五苓散を加えたことによって蕁麻疹をコントロールできるようになり、抗ヒスタミン薬を徐々に減らし、最後は茵蔯五苓散だけでコントロールしている症例を数多く経験しています。特に尿量減少や浮腫に悩んでいた患者さんは,「茵蔯五苓散を飲むと体調がよい」と、そのまま数年間飲み続けています。
・女性で瘀血があり不定愁訴を訴える慢性蕁麻疹の場合は、加味逍遙散を処方します。
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■ 皮膚科漢方医学「蕁麻疹」
荒浪暁彦(あらなみクリニック)
(ツムラ・メディカル・トゥデイ:領域別入門漢方医学シリーズ)
蕁麻疹には、一時的な急性蕁麻疹と 1 カ月以上症状が継続する慢性蕁麻疹がある。
急性蕁麻疹には麻黄剤や茵蔯加剤が適応になる。 熱感が強く汗の出ない場合は発表作用のある麻黄湯や葛根湯を用い、浮腫性の場合は清熱・利水作用のある麻黄、石膏の配合された越婢加朮湯や麻杏甘石湯を用いる。また、清熱・利胆作用のある茵蔯蒿を配合した茵陳蒿湯や茵蔯五苓散が有効な場合がある。
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■ 「胸のつかえ感と蕁麻疹」
津田篤太郎 聖路加国際病院 リウマチ膠原病センター
(Kampo Square 2017 Vol.14 No.8)
蕁麻疹に対する漢方処方としては黄連解毒湯、茵蔯蒿湯、当帰飲子などがある。黄連解毒湯は熱性傾向が強く、舌候は厚い黄色の舌苔で覆われているといったタイプで、イライラして搔きむしり、夜も寝られないといった激しい痒みに用いる。茵蔯蒿湯は大酒家や肝障害をともなう痒みに使用を検討する。大黄を含むため、便秘傾向が無い場合は茵蔯五苓散を用いる。当帰飲子は寒冷刺激による蕁麻疹に効果的である。
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さて、茵陳蒿湯・茵蔯五苓散という方剤の本来の性質はどんなものでしょう。
まずは東京女子医科大学の佐藤弘先生の総説を。
『傷寒論』の条文を読むと、茵蔯蒿湯は現代医学で言う「A型肝炎」に使ったとしか考えられませんね。原典をたどると、なぜ蕁麻疹に使われるようになったのか、皆目見当がつきません。
<ポイント>
【茵蔯蒿湯】
・本方は急性にきた黄疸で、経過の遷延していない場合に使用する処方。
・漢方医学では黄疸を裏の瘀熱、脾胃の湿熱と捉える。
・茵蔯蒿(カワラヨモギの果穂、上品)は湿熱・黄疸の治療薬、山梔子(クチナシの果実、中品)は心煩を主治、大黄(別名:将軍、下品)は瀉下・駆瘀血・抗炎症作用。
・有持桂里は『校正方輿輗』で「疸を治せんと欲すれば、まず、裏の瘀熱を去るを本とすべし。小便を利するはその次にして、黄を治するはまたその次なり。大黄熱を解し、梔子小便を利し、茵蔯黄を治す。三味相須いて効用ことごとく具わる。しかれば畢竟大黄ありての梔子、梔子ありての茵蔯なり」と、大黄の清熱作用の重要なことを指摘。
・裏に瘀熱(うちにこもった古い熱)があって、その熱が心臓部あるいは胸部に及んで何とも言い難い不快感を覚える場合に使用。
【茵蔯五苓散】
・金匱要略には「黄疸病、茵蔯五苓散これを主る」だけしか書かれていない。
・黄疸,熱状なきものこの方を用ゆべし。熱あるものにはよろしからず。梔子柏皮湯および茵陳蒿湯の熱あるものに用ゆる。これと異なり。
・茵蔯五苓散は,茵蔯蒿湯と比較すると黄疸でも軽症で,熱状がなく,口渇,小便不利のある場合に使用。
・各種の浮腫を伴う疾患で,五苓散より利尿効果を強めたい時に使用、浮腫がなくても蕁麻疹,皮膚掻痒症に使用。
■ 重要処方解説「茵陳蒿湯・茵蔯五苓散」
(佐藤弘先生)
【茵陳蒿湯】
<出典>
茵蔯蒿湯は『傷寒論』および『金匿要略』を出典とする処方で、茵蔯蒿、山梔子、大黄の3味からなっております。原典の条文ですが、『傷寒論』陽明病篇には「陽明病、発熱汗出る者は黄を発すること能わざるなり。ただ頭汗出で、身に汗なく、剤頸して還り、小便利せず、渇して水漿を引く者、身必ず黄を発す。茵蔯蒿湯これを主る」とあります。すなわち「陽明病で熱が出て、汗が出るものは黄疸にはならない。頭にだけ汗が出て、その他の体には汗がなく、すなわち汗は首から上にのみ出るようで、しかも小便の出が少なく、喉が渇いて水分をしきりに欲しがるものは黄疸が必ず出てくるのである。こういう時には茵蔯蒿湯の主治である」ということになります。
同じく陽明病篇には「傷寒七、八日、身黄なること橘子(キツシ)の色の如く、小便利せず、腹微満の者は茵蔯蒿湯これを主る」とあります。「傷寒にかかって、 7,8日たって、体がみかんの実のような色になる。小便の出も悪い。腹が少し膨満する。こういうものは茵蔯蒿湯の主治するところである」ということであります。
湯本求真は『皇漢医学』の中で「本方証の黄疸は、その色沢あたかも成熟せる橘実(キツジツ)のごとく鮮黄にして金色の光沢あり。これ他証の黄疸と異なるところにして、必ず尿利減少、腹部膨満するものなれども、大承気湯証におけるがごとき大実満にあらざれば、これに対して微満というなり」と述ております。本方は急性にきた黄疸で、経過の遷延していない場合に使用する処方といえましょう。
『金匱要略』黄疸病篇には「穀疸の病たる、寒熱食せず、食すれば則ち頭眩し、心胸安からず、久々にして黄を発するを穀疸となす。茵蔯蒿湯これを主る」とあります。ここでは、穀疸と呼ばれる黄疸の一種に使用することが書かれております。この穀疸と呼ばれる病は、『金匱要略』によると「跌陽の脈、緊にして数、数はすなわち熱となし、熱はすなわち穀を消す。緊はすなわち寒となし、食すればすなわち満をなす。尺脈の浮は腎を傷るとなし, 跌陽の脈緊は脾を傷るとなす。風寒相打ち、穀を食すればすなわち眩し、穀気生せず。胃中濁に苦しみ、濁気下流して小便通ぜず、陰その寒を被り、熱膀胱に流れ、身体ことごとく黄なるを名づけて穀疸という」。「陽明病脈遅のものは食するに飽を用い難く、飽すれば煩を発し、頭眩し、小便必ず難し。これ穀疸をなさんと欲す。これを下すといえども腹満もとのごとし。しかるゆえんのものは脈遅なるがゆえなり」という病態であります。
湯本求真は穀疸について「食、水、熱の三毒によって発する黄疸なり。しかして寒熱不食とは悪寒、発熱、食機減少の意なれども、この寒熱は表証のそれと異なり、裏に湿熱あるによるものなれば、同時に不食するなり。また食すれば頭眩するは、食物湿熱を衝動してしからしむるにて、心胸安からざるもまた;れがためなり」と、その病態生理を述べております。
穀疸を現代医学の病名に当てはめてみますと、A型急性肝炎を典型例とする発熱、発黄を伴う急性肝炎が相当するものと思われます。
<構成生薬・薬能薬理>
(茵蔯蒿)
茵蔯蒿はキク科のカワラヨモギの果穂を乾燥したものです。『神農本草経』の上品に収載され、その薬能は「味苦平、風湿、寒熱の邪気、熱厭、黄疸を治す。久服すれば身を軽くし、気を益し、老に耐えしむ」と書かれております。『薬徴』には「茵蔯蒿は発黄を主治するなり」とあります。『古方薬品考』には「気味苦く、辛く、芳散。故によく湿満を潟し、もっぱら黄疸、うつ熱を除く」とあります。すなわち湿熱、黄疸の治療薬といえます。
(山梔子)
山梔子はアカネ科のクチナシの果実を乾燥させたものです。『神農本草経』の中品に収載され「味苦寒、五内の邪気、胃中の熱気、面赤、酒○皶鼻、白癩、赤癩、瘡瘍を治す」とあります。『薬徴』には「心煩を主治するなり。傍ら発黄を治す」とあり、胸部の何とも言い難い苦しさを主として治すと述べております。『古方薬品考』では「その実味苦く涼、芳臭ありて升降をなす。ゆえに生に用ゆる時はよく懊憹を涌吐し、妙り用いる時はすなわちよく、心中煩熱を除く」と、生で用いる時と煎って用いる時とで作用に多少相違があることを述べております。
(大黄)
大黄は別名を将軍とも呼ばれ,『神農本草経』の下品に収載され,「味苦寒、瘀血、血閉、寒熱を下し、○○、積聚、留飲、宿食を破り、腸胃を蕩○し、陳きを推し、新しきを致す。水穀を通利し、中を調え、食を化し、五臓を安和す」とあります。『薬徴』には「通利血毒を主るなり。ゆえによく胸満、腹満、腹痛および便閉、小便不利を治す。傍ら発黄、瘀血、腫膿を治す」とあります。『古方薬品考』には「それ根の性、おのずから下降をいたし、気味苦寒、毒あり。ゆえによく大小腸間の実熱を蕩○す。その効もっとも良将に比すべし」とあります。西洋医学においては大黄はもっぱら下剤としてのみ使用されておりますが、漢方医学においては潟下薬としてばかりでなく、駆瘀血、抗炎症作用などを期待して投与されていたことがおわかりいただけるものと思います。
<古典における用い方>
古典における本方の使用方について調べてみますと,多くは黄疸に使用されております。
『腹証奇覧翼』
ただ和久田叔虎(わくたしゅくこ)の『腹証奇覧翼』には、「この方口舌の熱瘡および歯断、腫痛、熱に属するもの、あるいは眼目痛などに考え用ゆべし」とあり、口内炎、歯痛、目の痛みに応用できることが書かれております。
また、和久田叔虎は『腹証奇覧翼』の 本方上で、「茵蔯瘀熱を解す。梔子心胸の熱煩を解す。大黄これを和して痂瘀熱を大便に潟する時は小便自利することを得て病愈ゆるなり」と述べております。
『勿誤薬室方函口訣』
『勿誤薬室方函口訣』には「この方発黄を治する聖剤なり。世医は黄疸初発に茵蔯五苓散を用ゆれども非なり。先ずこの方を用いて下を取りて後、茵蔯五苓散を与うべし」とあります。黄疸は漢方医学においては、その原因を裏の瘀熱、脾胃の湿熱ととらえております。
『校正方輿輗』(こうせいほうよげい)
したがって、その治療の原則は有持桂里が『校正方輿輗』で「疸を治せんと欲すれば、まず、裡(裏)の瘀熱を去るを本とすべし。小便を利するはその次にして、黄を治するはまたその次なり。大黄熱を解し、梔子小便を利し、茵蔯黄を治す。三味相須いて効用ことごとく具わる。しかれば畢竟大黄ありての梔子、梔子ありての茵蔯なり」と、大黄の清熱作用の重要なことを指摘しております。
<現代における使い方>
まず急性にきた黄疸に使用されます。
また黄疸がなくとも裏に瘀熱(うちにこもった古い熱)があって、その熱が心臓部あるいは胸部に及んで何とも言い難い不快感を覚える場合に使用されます。
具体的に症状を述べますと、首から上の発汗、小便不利、口渇、腹微満、食欲不振、心胸部不快感、便秘などであります。
応用される疾患としては急性肝炎、胆石、胆嚢炎、蕁麻疹、皮膚掻痒症、ネフローゼ症候群、浮腫、口内炎など口腔内の炎症・疼痛、眼目痛などに使用されます。
大塚敬節先生は『金匿要略』の条文にある「心胸安からず」を拡大して、喉の詰まる感じを訴える例にも使用されております。
【茵蔯五苓散】
<出典・古典/現代における用い方>
茵蔯五苓散は『金匿要略』を原典とする処方で、五苓散に茵蔯蒿を加味した処方であります。原典の条文は「黄疸病、茵蔯五苓散これを主る」とあるだけで,これだけでは使用すべき病態が不明です。
香月牛山(かつきぎゆうざん)の『牛山方考』(ぎゆうざんほうこう)には「湿熱により頭汗出で黄を発する者、あるいは黄疸,小便赤渋の者に茵蔯を加えて奇効あり。茵蔯五苓散と名づく」とあります。
『雰誹弊解』(ほうどくべんかい)には「凡そ○常の黄疸,熱状なきものこの方を用ゆべし。熱あるものにはよろしからず。金匱にのるところの主治はただ黄疸とのみありて,寒熱を分かたず。ゆえに今差別せずして熱あるに用いるは非なり。『聖済総録』(せいざいそうろく)にも,この方陰黄,身橘色のごとく小便不利云々を治すといえり。従うべし。陰黄の証,『諸病源候論』にも詳らかに論ぜり。今世に黄疸と称するもの多くは陰黄なり。
『傷寒論』の梔子柏皮湯および茵陳蒿湯の熱あるものに用ゆる。これと異なり」とあります。
先の茵蔯蒿湯と本方との鑑別について,有持桂里が詳しく述べておりますので紹介しましょう。『稿本方輿輗』(こうほんほうよげい)には,「世医黄疸とさえみれば茵蔯五苓を用うれども,この方はいたって軽き者には何の症をも問わずして用いても効あれども,少し重き症になりては茵蔯五苓にてはきかぬものなり。 重き者は茵蔯湯の症あらばまず茵蔯湯を用いて腸胃をすかして,のち茵蔯五苓を用いれば茵蔯五苓もよくのり合うものなり。傷寒中にある黄疸なればますます茵蔯蒿湯がよきなり。これ一つの治験なり。茵蔯五苓の方は茵蔯蒿湯あるいは梔子柏皮湯の類にて病勢挫けたるあとへまわる方なり。黄疸は治法のせまきものにて,黄疸にての聖薬は菌藤蕎湯なり。茵蔯五苓はぬるき薬なり。はじめに茵蔯蒿湯を用いて下に取りておき,あとにて茵蔯五苓を用ゆべし」。「軽症は初発よりもこの方を用いるなり。いずれ小便不利なければこの方は用いざるなり」と述べております。 以上をまとめますと,茵蔯五苓散は,茵蔯蒿湯と比較すると黄疸でも軽症で,熱状がなく,口渇,小便不利のある場合に使用するということになります。さらに便秘の有無も鑑別点の1つとします。薬能につきましては五苓散の項で述べられておりますので,省略したいと思います。
<応用疾患>
浮腫があって黄疸あるいは肝障害を伴っているものに頻用されるほか,各種の浮腫を伴う疾患で,五苓散より利尿効果を強めたい時に使用されます。すなわちネフローゼ症候群,慢性糸球体腎炎,糖尿病,妊娠中毒症などであります。浮腫がなくても蕁麻疹,皮膚掻痒症に,また五苓散が水逆の嘔吐に使用されますので,口渇をしきりに訴え,水を飲むとすぐに嘔吐するという例にも応用されます。
<鑑別処方>
黄疸に用いられる他の薬方との鑑別について述べます。梔子柏皮湯ですが,この方は腹満や胸脇苦満もなく,悪心,嘔吐,口渇,尿不利もないものに使用されます。有持桂里は『稿本方輿軌』本方条で,「これは黄疸は軽症にして発熱のあるものに用いるなり」と述べております。
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「活用自在の処方解説」(秋葉哲生先生)より。
【茵蔯蒿湯】
適応病態は「湿熱」「肝胆湿熱」で、作用は「清熱利湿・退黄」。
藤平健先生はアトピー性皮膚炎に用い、「茵蔯蒿湯は実証で咽の渇きを訴える者の皮膚の異常、ことに皮膚のかゆみに対し、ときに偉功を発揮する薬方である」と述べられている。
【茵蔯五苓散】
適応病態は「脾胃湿熱」で作用は「清熱利水・退黄」。
保険病名に「蕁麻疹」「皮膚掻痒症」があることに今ひとつピンとこなかったのですが、「もともと黄疸に用いられることから、黄疸時の皮膚のかゆみに用いられ、転じて各種のかゆみを伴う病態に対して適用されるようになった」というコメントを読んでようやく腑に落ちました。
【117.茵蔯五苓散】
1 出典 『金匱要略』
●黄疸の病は、茵蔯五苓散これを主る。(黄疸病篇)
2 腹候:腹力中等度かその前後(2-4/5)。ときに胃内停水を認める。
3 気血水:水が主体の気血水。
4 六病位:少陽病。
5 脈・舌:原則として、舌質は紅、舌苔は微黄膩苔。滑脈。
6 口訣:
●湿熱と呼ばれる状態で、熱はさほどでないが、湿の状態が激しいもの。(むくみとか皮膚の腫脹などがあるもの)(『中医処方解説』)
7 本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態:効能または効果
のどが渇いて、尿がすくないものの次の諸症:嘔吐、じんましん、二日酔いのむかつき、むくみ。
b 漢方的適応病態:脾胃湿熱。
すなわち、悪心、嘔吐、食欲不振、口がねばる、油料理や匂いで気分が悪い、口渇、軟便、腹部膨満感、尿量減少などがみられ、甚だしければ黄疸を伴う。
★より深い理解のために
もともと黄疸に用いられることから、黄疸時の皮膚のかゆみに用いられ、転じて各種のかゆみを伴う病態に対して適用されるようになった。皮膚疾患に応用する場合には、レセプトの病名欄に注意してほ しい。 湿潤した皮膚炎などに適用するときは、越婢加朮湯などとの鑑別を要する。
8 構成生薬
沢瀉6、蒼朮4.5、猪苓4.5、茯苓4.5、茵陳蒿4、桂皮2.5。(単位g)
9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説:清熱利水・退黄。
10 効果増強の工夫:
糜爛した皮膚炎などに、
処方例)ツムラ消風散 7.5g
ツムラ茵蔯五苓散 7.5g 分3食前
11 本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より;
1 )黄疸で口渇、小便不利し、或は心下部がつかえ或は発熱するもの。
2 )肝硬変症で、黄疸、腹水のものを治した例がある。
3 )酒呑み・二日酔いで煩悶止まざるものに使つた例がある。
4 )月経困難で、激しい心下痛、嘔吐、煩渇、小便不利するものを治した例がある。
【135.茵蔯蒿湯】
1 出典 『傷寒論』『金匱要略』
●頭に汗出で、身に汗無く、小便利せず、渇して水漿を飲み、瘀熱、裏にありて身に黄を発する証。(『傷寒論』陽明病篇)
●身黄み、橘子の色のごとく、小便利せず、腹微満する証。(同上)
●寒熱して食せず、食すれば即ち頭眩し、心胸安からず、久久にして黄を発する証。(『金匱要略』黄疸病篇)
2 腹候:腹力は中等度以上(3-5/5)。心下痞を認めることがある
3 気血水:水主体の気血水。
4 六病位:陽明病。
5 脈・舌:舌質は紅、舌苔は黄膩。脈は滑数や弦滑数。
6 口訣
●発黄を治する聖剤なり。世医は黄疸初発に茵蔯五苓散を用うれども非なり。まずこの方を用いて下を取りて後、茵蔯五苓散を用う可し。(浅田宗伯)
●本方は梔子鼓湯の去加方とみなす可きなり。(奥田謙藏)
●本方は湿熱に広く用いてよい。(『中医処方解説』)
★より深い理解のために;
湿熱とは、
1 )温病中の 1 つ。症状は発熱、頭痛、身重く痛む、腹満して食少ない、小便少なく黄赤色、舌苔は黄膩で脈は濡数など。
2 )湿邪と熱邪が合わさって起こした病証。例として、湿熱発黄、湿熱下痢、湿熱帯下など。(『漢方用語大辞典』)
7 本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態:効能または効果
尿量減少、やや便秘がちで比較的体力のあるものの次の諸症:黄疸、肝硬 変症、ネフローゼ、じんましん、口内炎。
b 漢方的適応病態:肝胆湿熱。
すなわち、口が苦い、口がねばる、口渇があるが水分を欲しない、頭汗、いらいら、体の熱感、悪心、嘔吐、食欲不振、油っこいものや匂いで気分が悪くなる、胸腹部の膨満感、尿が濃い、便秘あるいは便がスッキリでないなどの症候で、甚だしければ全身の黄疸、発熱などがみられる。
8 構成生薬
茵陳蒿4、山梔子3、大黄1。(単位g)
9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説:清熱利湿・退黄。
効果増強の工夫 肝機能の改善を目的に用いる場合に小柴胡湯を併用することがある。
処方例)ツムラ茵蔯蒿湯 5.0g
ツムラ小柴胡湯 5.0g 分2食前朝夕
( 茵蔯蒿湯は 瀉下作用があるので、便通により茵蔯蒿湯の割合を変更する)
11 本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1 )黄疸で実証、発熱、小便不利し、或は口渇、頭汗、腹満、眩暈、便秘等を伴うもの。
2 )じん麻疹・血清病・その他の瘙痒性発疹でかゆみが強く安眠できず、 口渇、便秘、腹満、或は小便赤き等の裏の瘀熱症状があるもの。
3 )口内炎・舌炎・舌瘡・歯齦腫痛・眼目痛などで、発赤疼痛、時に出血 があり、不眠、煩渇、口躁、便秘、腹満、小便赤きなど裏熱症状を伴うもの。
4 )子宮出血で前記瘀熱症状があるもの。
5 )腎炎・ネフローゼで、浮腫、口渇小便不利し、前記瘀熱症状があるもの。
6 )血の道症・更年期障害・卵巣機能不全・自律神経不安定症・ノイローゼ・バセドゥ氏病等で、寒くなつたり熱くなつたりし、月経不順、不眠、不安、胸中苦悶、食欲不振、小便不利、便秘、手掌又は結膜黄色を帯びるもの。
★ ヒント;
本方は蕁麻疹に対する適応を有するので、しばしば慢性皮膚疾患に応用される。
藤平健先生はアトピー性皮膚炎に本方を活用された。論文中で、「茵蔯蒿湯は実証で咽の渇きを訴える者の皮膚の異常、ことに皮膚のかゆみに対し、ときに偉功を発揮する薬方である」と述べている。
しかし、何となく「黄疸に使う漢方」というイメージが先行し、小児科医の私には馴染みの薄い方剤。
どんな薬なのか、どんなタイプの蕁麻疹に効くのか、調べてみました。
結論から申し上げると、「急性」かつ「熱証」の蕁麻疹に適応になるようです。
一方で、食餌性蕁麻疹に有効、慢性・難治性蕁麻疹で皮疹が広範囲に及ぶ場合にも有効という記述もありました。
★ 茵陳蒿湯と茵蔯五苓散の記述を抜粋;
・茵蔯五苓散は水滞を改善する五苓散という薬と、熱をさばき痒みを抑える効果のある茵陳蒿という生薬で作られている(森原先生)。
・食餌性蕁麻疹には茵蔯蒿湯に小柴胡湯か大柴胡湯を合方する。茵蔯蒿湯と茵蔯五苓散の鑑別は、前者は消炎作用に長け、後者は利水作用に長けていること(栁原先生:山本巌先生から引用)。
・熱性蕁麻疹には,水滞と熱を取ることを目的にした茵蔯五苓散が基本となるが,熱の要素が強ければ黄連解毒湯などの清熱剤を合方するとよい(織部先生) 。
・慢性・難治性蕁麻疹で、紅斑・膨疹などの発疹が広範囲に及ぶ場合は、茵蔯五苓散が効果的(橋本先生)。
・茵蔯蒿湯は大酒家や肝障害をともなう痒みに使用を検討する。大黄を含むため、便秘傾向が無い場合は茵蔯五苓散を用いる(津田篤太郎先生)。
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■ 漢方道場 皮膚科編「蕁麻疹の漢方」
森原 潔 先生(もりはら皮ふ科クリニック)
(Kampo Square 2016 Vol.13 No.5)
これらの方剤(葛根湯、越婢加朮湯、白虎加人参湯、麻黄附子細辛湯)で効果が乏しい場合は、茵蔯五苓散を使ってみても良いかもしれません。 漢方では水の流れが悪くなって起こる病態を水滞と呼びます。蕁麻疹というのはヒスタミンにより起こる皮膚の浮腫ですので、間質に水がたまっていることから水滞ととらえることできます。茵蔯五苓散は水滞を改善する五苓散というお薬と、熱をさばき痒みを抑える効果のある茵陳蒿という生薬で作られます。
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■ 「かゆみ」治療の最新事情/漢方処方の使い分け
栁原 茂人 先生(鳥取大学医学部附属病院皮膚科 助教)
(Kampo Square 2016 Vol.13 No.11)
◇ 乾かす:利湿(浮腫・滲出液をとる)
利湿を要する疾患として蕁麻疹を挙げる。
山本巌は、
・一般型(風熱型)に消風散ベース、
・寒冷蕁麻疹(風寒型)には麻黄剤など
・食餌性蕁麻疹には茵蔯蒿湯に小柴胡湯か大柴胡湯を合方
・心因性蕁麻疹には加味逍遙散合黄連解毒湯
・コリン型蕁麻疹には消風散合温清飲合加味逍遙散
を記載している 。このように、蕁麻疹に対しては、誘因に応じて漢方を使い分ける必要がある。
茵蔯蒿湯と茵蔯五苓散の鑑別は、前者は消炎作用に長け、後者は利水作用に長けていることである。
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■ 漢方診療ワザとコツ:漢方の考え方-その4「難治性蕁麻疹」
織部和宏先生:織部内科クリニック(大分県)
(漢方と診療 Vol.6 No.4,2016)
漢方医学では,急性と慢性のタイプに分け,また寒・熱にもとづいて方剤を決定することが基本である。
熱性の場合は,茵蔯五苓散を基本に黄連解毒湯や三黄瀉心湯・越婢加朮湯や,ときに竜胆瀉肝湯などを合方することが多い。
寒性の場合は,真武湯や人参湯をベースに,ときに麻黄附子細辛湯を単独あるいは合方して使用している。
・・・
熱性蕁麻疹には,水滞と熱を取ることを目的にした茵蔯五苓散が基本となるが,熱の要素が強ければ黄連解毒湯などの清熱剤を合方するとよい。 体の一部, 特に背中などが帯状に熱くなったり,ほてったりする場合には梔子柏皮湯がよく効いている。
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■ 皮膚科診療における漢方治療 アプローチ
JA北海道厚生連旭川厚生病院 診療部長・臨床研修センター長・皮膚科主任部長 橋本 喜夫 先生
(漢方医薬学雑誌 ● 2017 Vol.25 No.1(18))
<慢性蕁麻疹>
慢性蕁麻疹は,私の患者さんにも多い難治性疾患です。 ほとんどの場合、他院で抗ヒスタミン薬を投与しても一向に改善せず、かなりこじれてしまった状態で来院されます。現在使われている第二世代II期の抗ヒスタミン薬は、第一世代、第二世代I期のものとは異なり、抗ヒスタミン薬特有の副作用があらわれにくく、効果もよい薬です。その第二世代II期を多剤併用しても症状が改善しない場合、漢方薬の出番といえます。
・一般的な慢性蕁麻疹の症状で、抗ヒスタミン薬を多剤併用している場合は、十味敗毒湯を使用します。
・紅斑、膨疹などの発疹が広範囲に及ぶ場合は、茵蔯五苓散が効果的です。茵蔯五苓散を加えたことによって蕁麻疹をコントロールできるようになり、抗ヒスタミン薬を徐々に減らし、最後は茵蔯五苓散だけでコントロールしている症例を数多く経験しています。特に尿量減少や浮腫に悩んでいた患者さんは,「茵蔯五苓散を飲むと体調がよい」と、そのまま数年間飲み続けています。
・女性で瘀血があり不定愁訴を訴える慢性蕁麻疹の場合は、加味逍遙散を処方します。
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■ 皮膚科漢方医学「蕁麻疹」
荒浪暁彦(あらなみクリニック)
(ツムラ・メディカル・トゥデイ:領域別入門漢方医学シリーズ)
蕁麻疹には、一時的な急性蕁麻疹と 1 カ月以上症状が継続する慢性蕁麻疹がある。
急性蕁麻疹には麻黄剤や茵蔯加剤が適応になる。 熱感が強く汗の出ない場合は発表作用のある麻黄湯や葛根湯を用い、浮腫性の場合は清熱・利水作用のある麻黄、石膏の配合された越婢加朮湯や麻杏甘石湯を用いる。また、清熱・利胆作用のある茵蔯蒿を配合した茵陳蒿湯や茵蔯五苓散が有効な場合がある。
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■ 「胸のつかえ感と蕁麻疹」
津田篤太郎 聖路加国際病院 リウマチ膠原病センター
(Kampo Square 2017 Vol.14 No.8)
蕁麻疹に対する漢方処方としては黄連解毒湯、茵蔯蒿湯、当帰飲子などがある。黄連解毒湯は熱性傾向が強く、舌候は厚い黄色の舌苔で覆われているといったタイプで、イライラして搔きむしり、夜も寝られないといった激しい痒みに用いる。茵蔯蒿湯は大酒家や肝障害をともなう痒みに使用を検討する。大黄を含むため、便秘傾向が無い場合は茵蔯五苓散を用いる。当帰飲子は寒冷刺激による蕁麻疹に効果的である。
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さて、茵陳蒿湯・茵蔯五苓散という方剤の本来の性質はどんなものでしょう。
まずは東京女子医科大学の佐藤弘先生の総説を。
『傷寒論』の条文を読むと、茵蔯蒿湯は現代医学で言う「A型肝炎」に使ったとしか考えられませんね。原典をたどると、なぜ蕁麻疹に使われるようになったのか、皆目見当がつきません。
<ポイント>
【茵蔯蒿湯】
・本方は急性にきた黄疸で、経過の遷延していない場合に使用する処方。
・漢方医学では黄疸を裏の瘀熱、脾胃の湿熱と捉える。
・茵蔯蒿(カワラヨモギの果穂、上品)は湿熱・黄疸の治療薬、山梔子(クチナシの果実、中品)は心煩を主治、大黄(別名:将軍、下品)は瀉下・駆瘀血・抗炎症作用。
・有持桂里は『校正方輿輗』で「疸を治せんと欲すれば、まず、裏の瘀熱を去るを本とすべし。小便を利するはその次にして、黄を治するはまたその次なり。大黄熱を解し、梔子小便を利し、茵蔯黄を治す。三味相須いて効用ことごとく具わる。しかれば畢竟大黄ありての梔子、梔子ありての茵蔯なり」と、大黄の清熱作用の重要なことを指摘。
・裏に瘀熱(うちにこもった古い熱)があって、その熱が心臓部あるいは胸部に及んで何とも言い難い不快感を覚える場合に使用。
【茵蔯五苓散】
・金匱要略には「黄疸病、茵蔯五苓散これを主る」だけしか書かれていない。
・黄疸,熱状なきものこの方を用ゆべし。熱あるものにはよろしからず。梔子柏皮湯および茵陳蒿湯の熱あるものに用ゆる。これと異なり。
・茵蔯五苓散は,茵蔯蒿湯と比較すると黄疸でも軽症で,熱状がなく,口渇,小便不利のある場合に使用。
・各種の浮腫を伴う疾患で,五苓散より利尿効果を強めたい時に使用、浮腫がなくても蕁麻疹,皮膚掻痒症に使用。
■ 重要処方解説「茵陳蒿湯・茵蔯五苓散」
(佐藤弘先生)
【茵陳蒿湯】
<出典>
茵蔯蒿湯は『傷寒論』および『金匿要略』を出典とする処方で、茵蔯蒿、山梔子、大黄の3味からなっております。原典の条文ですが、『傷寒論』陽明病篇には「陽明病、発熱汗出る者は黄を発すること能わざるなり。ただ頭汗出で、身に汗なく、剤頸して還り、小便利せず、渇して水漿を引く者、身必ず黄を発す。茵蔯蒿湯これを主る」とあります。すなわち「陽明病で熱が出て、汗が出るものは黄疸にはならない。頭にだけ汗が出て、その他の体には汗がなく、すなわち汗は首から上にのみ出るようで、しかも小便の出が少なく、喉が渇いて水分をしきりに欲しがるものは黄疸が必ず出てくるのである。こういう時には茵蔯蒿湯の主治である」ということになります。
同じく陽明病篇には「傷寒七、八日、身黄なること橘子(キツシ)の色の如く、小便利せず、腹微満の者は茵蔯蒿湯これを主る」とあります。「傷寒にかかって、 7,8日たって、体がみかんの実のような色になる。小便の出も悪い。腹が少し膨満する。こういうものは茵蔯蒿湯の主治するところである」ということであります。
湯本求真は『皇漢医学』の中で「本方証の黄疸は、その色沢あたかも成熟せる橘実(キツジツ)のごとく鮮黄にして金色の光沢あり。これ他証の黄疸と異なるところにして、必ず尿利減少、腹部膨満するものなれども、大承気湯証におけるがごとき大実満にあらざれば、これに対して微満というなり」と述ております。本方は急性にきた黄疸で、経過の遷延していない場合に使用する処方といえましょう。
『金匱要略』黄疸病篇には「穀疸の病たる、寒熱食せず、食すれば則ち頭眩し、心胸安からず、久々にして黄を発するを穀疸となす。茵蔯蒿湯これを主る」とあります。ここでは、穀疸と呼ばれる黄疸の一種に使用することが書かれております。この穀疸と呼ばれる病は、『金匱要略』によると「跌陽の脈、緊にして数、数はすなわち熱となし、熱はすなわち穀を消す。緊はすなわち寒となし、食すればすなわち満をなす。尺脈の浮は腎を傷るとなし, 跌陽の脈緊は脾を傷るとなす。風寒相打ち、穀を食すればすなわち眩し、穀気生せず。胃中濁に苦しみ、濁気下流して小便通ぜず、陰その寒を被り、熱膀胱に流れ、身体ことごとく黄なるを名づけて穀疸という」。「陽明病脈遅のものは食するに飽を用い難く、飽すれば煩を発し、頭眩し、小便必ず難し。これ穀疸をなさんと欲す。これを下すといえども腹満もとのごとし。しかるゆえんのものは脈遅なるがゆえなり」という病態であります。
湯本求真は穀疸について「食、水、熱の三毒によって発する黄疸なり。しかして寒熱不食とは悪寒、発熱、食機減少の意なれども、この寒熱は表証のそれと異なり、裏に湿熱あるによるものなれば、同時に不食するなり。また食すれば頭眩するは、食物湿熱を衝動してしからしむるにて、心胸安からざるもまた;れがためなり」と、その病態生理を述べております。
穀疸を現代医学の病名に当てはめてみますと、A型急性肝炎を典型例とする発熱、発黄を伴う急性肝炎が相当するものと思われます。
<構成生薬・薬能薬理>
(茵蔯蒿)
茵蔯蒿はキク科のカワラヨモギの果穂を乾燥したものです。『神農本草経』の上品に収載され、その薬能は「味苦平、風湿、寒熱の邪気、熱厭、黄疸を治す。久服すれば身を軽くし、気を益し、老に耐えしむ」と書かれております。『薬徴』には「茵蔯蒿は発黄を主治するなり」とあります。『古方薬品考』には「気味苦く、辛く、芳散。故によく湿満を潟し、もっぱら黄疸、うつ熱を除く」とあります。すなわち湿熱、黄疸の治療薬といえます。
(山梔子)
山梔子はアカネ科のクチナシの果実を乾燥させたものです。『神農本草経』の中品に収載され「味苦寒、五内の邪気、胃中の熱気、面赤、酒○皶鼻、白癩、赤癩、瘡瘍を治す」とあります。『薬徴』には「心煩を主治するなり。傍ら発黄を治す」とあり、胸部の何とも言い難い苦しさを主として治すと述べております。『古方薬品考』では「その実味苦く涼、芳臭ありて升降をなす。ゆえに生に用ゆる時はよく懊憹を涌吐し、妙り用いる時はすなわちよく、心中煩熱を除く」と、生で用いる時と煎って用いる時とで作用に多少相違があることを述べております。
(大黄)
大黄は別名を将軍とも呼ばれ,『神農本草経』の下品に収載され,「味苦寒、瘀血、血閉、寒熱を下し、○○、積聚、留飲、宿食を破り、腸胃を蕩○し、陳きを推し、新しきを致す。水穀を通利し、中を調え、食を化し、五臓を安和す」とあります。『薬徴』には「通利血毒を主るなり。ゆえによく胸満、腹満、腹痛および便閉、小便不利を治す。傍ら発黄、瘀血、腫膿を治す」とあります。『古方薬品考』には「それ根の性、おのずから下降をいたし、気味苦寒、毒あり。ゆえによく大小腸間の実熱を蕩○す。その効もっとも良将に比すべし」とあります。西洋医学においては大黄はもっぱら下剤としてのみ使用されておりますが、漢方医学においては潟下薬としてばかりでなく、駆瘀血、抗炎症作用などを期待して投与されていたことがおわかりいただけるものと思います。
<古典における用い方>
古典における本方の使用方について調べてみますと,多くは黄疸に使用されております。
『腹証奇覧翼』
ただ和久田叔虎(わくたしゅくこ)の『腹証奇覧翼』には、「この方口舌の熱瘡および歯断、腫痛、熱に属するもの、あるいは眼目痛などに考え用ゆべし」とあり、口内炎、歯痛、目の痛みに応用できることが書かれております。
また、和久田叔虎は『腹証奇覧翼』の 本方上で、「茵蔯瘀熱を解す。梔子心胸の熱煩を解す。大黄これを和して痂瘀熱を大便に潟する時は小便自利することを得て病愈ゆるなり」と述べております。
『勿誤薬室方函口訣』
『勿誤薬室方函口訣』には「この方発黄を治する聖剤なり。世医は黄疸初発に茵蔯五苓散を用ゆれども非なり。先ずこの方を用いて下を取りて後、茵蔯五苓散を与うべし」とあります。黄疸は漢方医学においては、その原因を裏の瘀熱、脾胃の湿熱ととらえております。
『校正方輿輗』(こうせいほうよげい)
したがって、その治療の原則は有持桂里が『校正方輿輗』で「疸を治せんと欲すれば、まず、裡(裏)の瘀熱を去るを本とすべし。小便を利するはその次にして、黄を治するはまたその次なり。大黄熱を解し、梔子小便を利し、茵蔯黄を治す。三味相須いて効用ことごとく具わる。しかれば畢竟大黄ありての梔子、梔子ありての茵蔯なり」と、大黄の清熱作用の重要なことを指摘しております。
<現代における使い方>
まず急性にきた黄疸に使用されます。
また黄疸がなくとも裏に瘀熱(うちにこもった古い熱)があって、その熱が心臓部あるいは胸部に及んで何とも言い難い不快感を覚える場合に使用されます。
具体的に症状を述べますと、首から上の発汗、小便不利、口渇、腹微満、食欲不振、心胸部不快感、便秘などであります。
応用される疾患としては急性肝炎、胆石、胆嚢炎、蕁麻疹、皮膚掻痒症、ネフローゼ症候群、浮腫、口内炎など口腔内の炎症・疼痛、眼目痛などに使用されます。
大塚敬節先生は『金匿要略』の条文にある「心胸安からず」を拡大して、喉の詰まる感じを訴える例にも使用されております。
【茵蔯五苓散】
<出典・古典/現代における用い方>
茵蔯五苓散は『金匿要略』を原典とする処方で、五苓散に茵蔯蒿を加味した処方であります。原典の条文は「黄疸病、茵蔯五苓散これを主る」とあるだけで,これだけでは使用すべき病態が不明です。
香月牛山(かつきぎゆうざん)の『牛山方考』(ぎゆうざんほうこう)には「湿熱により頭汗出で黄を発する者、あるいは黄疸,小便赤渋の者に茵蔯を加えて奇効あり。茵蔯五苓散と名づく」とあります。
『雰誹弊解』(ほうどくべんかい)には「凡そ○常の黄疸,熱状なきものこの方を用ゆべし。熱あるものにはよろしからず。金匱にのるところの主治はただ黄疸とのみありて,寒熱を分かたず。ゆえに今差別せずして熱あるに用いるは非なり。『聖済総録』(せいざいそうろく)にも,この方陰黄,身橘色のごとく小便不利云々を治すといえり。従うべし。陰黄の証,『諸病源候論』にも詳らかに論ぜり。今世に黄疸と称するもの多くは陰黄なり。
『傷寒論』の梔子柏皮湯および茵陳蒿湯の熱あるものに用ゆる。これと異なり」とあります。
先の茵蔯蒿湯と本方との鑑別について,有持桂里が詳しく述べておりますので紹介しましょう。『稿本方輿輗』(こうほんほうよげい)には,「世医黄疸とさえみれば茵蔯五苓を用うれども,この方はいたって軽き者には何の症をも問わずして用いても効あれども,少し重き症になりては茵蔯五苓にてはきかぬものなり。 重き者は茵蔯湯の症あらばまず茵蔯湯を用いて腸胃をすかして,のち茵蔯五苓を用いれば茵蔯五苓もよくのり合うものなり。傷寒中にある黄疸なればますます茵蔯蒿湯がよきなり。これ一つの治験なり。茵蔯五苓の方は茵蔯蒿湯あるいは梔子柏皮湯の類にて病勢挫けたるあとへまわる方なり。黄疸は治法のせまきものにて,黄疸にての聖薬は菌藤蕎湯なり。茵蔯五苓はぬるき薬なり。はじめに茵蔯蒿湯を用いて下に取りておき,あとにて茵蔯五苓を用ゆべし」。「軽症は初発よりもこの方を用いるなり。いずれ小便不利なければこの方は用いざるなり」と述べております。 以上をまとめますと,茵蔯五苓散は,茵蔯蒿湯と比較すると黄疸でも軽症で,熱状がなく,口渇,小便不利のある場合に使用するということになります。さらに便秘の有無も鑑別点の1つとします。薬能につきましては五苓散の項で述べられておりますので,省略したいと思います。
<応用疾患>
浮腫があって黄疸あるいは肝障害を伴っているものに頻用されるほか,各種の浮腫を伴う疾患で,五苓散より利尿効果を強めたい時に使用されます。すなわちネフローゼ症候群,慢性糸球体腎炎,糖尿病,妊娠中毒症などであります。浮腫がなくても蕁麻疹,皮膚掻痒症に,また五苓散が水逆の嘔吐に使用されますので,口渇をしきりに訴え,水を飲むとすぐに嘔吐するという例にも応用されます。
<鑑別処方>
黄疸に用いられる他の薬方との鑑別について述べます。梔子柏皮湯ですが,この方は腹満や胸脇苦満もなく,悪心,嘔吐,口渇,尿不利もないものに使用されます。有持桂里は『稿本方輿軌』本方条で,「これは黄疸は軽症にして発熱のあるものに用いるなり」と述べております。
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「活用自在の処方解説」(秋葉哲生先生)より。
【茵蔯蒿湯】
適応病態は「湿熱」「肝胆湿熱」で、作用は「清熱利湿・退黄」。
藤平健先生はアトピー性皮膚炎に用い、「茵蔯蒿湯は実証で咽の渇きを訴える者の皮膚の異常、ことに皮膚のかゆみに対し、ときに偉功を発揮する薬方である」と述べられている。
【茵蔯五苓散】
適応病態は「脾胃湿熱」で作用は「清熱利水・退黄」。
保険病名に「蕁麻疹」「皮膚掻痒症」があることに今ひとつピンとこなかったのですが、「もともと黄疸に用いられることから、黄疸時の皮膚のかゆみに用いられ、転じて各種のかゆみを伴う病態に対して適用されるようになった」というコメントを読んでようやく腑に落ちました。
【117.茵蔯五苓散】
1 出典 『金匱要略』
●黄疸の病は、茵蔯五苓散これを主る。(黄疸病篇)
2 腹候:腹力中等度かその前後(2-4/5)。ときに胃内停水を認める。
3 気血水:水が主体の気血水。
4 六病位:少陽病。
5 脈・舌:原則として、舌質は紅、舌苔は微黄膩苔。滑脈。
6 口訣:
●湿熱と呼ばれる状態で、熱はさほどでないが、湿の状態が激しいもの。(むくみとか皮膚の腫脹などがあるもの)(『中医処方解説』)
7 本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態:効能または効果
のどが渇いて、尿がすくないものの次の諸症:嘔吐、じんましん、二日酔いのむかつき、むくみ。
b 漢方的適応病態:脾胃湿熱。
すなわち、悪心、嘔吐、食欲不振、口がねばる、油料理や匂いで気分が悪い、口渇、軟便、腹部膨満感、尿量減少などがみられ、甚だしければ黄疸を伴う。
★より深い理解のために
もともと黄疸に用いられることから、黄疸時の皮膚のかゆみに用いられ、転じて各種のかゆみを伴う病態に対して適用されるようになった。皮膚疾患に応用する場合には、レセプトの病名欄に注意してほ しい。 湿潤した皮膚炎などに適用するときは、越婢加朮湯などとの鑑別を要する。
8 構成生薬
沢瀉6、蒼朮4.5、猪苓4.5、茯苓4.5、茵陳蒿4、桂皮2.5。(単位g)
9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説:清熱利水・退黄。
10 効果増強の工夫:
糜爛した皮膚炎などに、
処方例)ツムラ消風散 7.5g
ツムラ茵蔯五苓散 7.5g 分3食前
11 本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より;
1 )黄疸で口渇、小便不利し、或は心下部がつかえ或は発熱するもの。
2 )肝硬変症で、黄疸、腹水のものを治した例がある。
3 )酒呑み・二日酔いで煩悶止まざるものに使つた例がある。
4 )月経困難で、激しい心下痛、嘔吐、煩渇、小便不利するものを治した例がある。
【135.茵蔯蒿湯】
1 出典 『傷寒論』『金匱要略』
●頭に汗出で、身に汗無く、小便利せず、渇して水漿を飲み、瘀熱、裏にありて身に黄を発する証。(『傷寒論』陽明病篇)
●身黄み、橘子の色のごとく、小便利せず、腹微満する証。(同上)
●寒熱して食せず、食すれば即ち頭眩し、心胸安からず、久久にして黄を発する証。(『金匱要略』黄疸病篇)
2 腹候:腹力は中等度以上(3-5/5)。心下痞を認めることがある
3 気血水:水主体の気血水。
4 六病位:陽明病。
5 脈・舌:舌質は紅、舌苔は黄膩。脈は滑数や弦滑数。
6 口訣
●発黄を治する聖剤なり。世医は黄疸初発に茵蔯五苓散を用うれども非なり。まずこの方を用いて下を取りて後、茵蔯五苓散を用う可し。(浅田宗伯)
●本方は梔子鼓湯の去加方とみなす可きなり。(奥田謙藏)
●本方は湿熱に広く用いてよい。(『中医処方解説』)
★より深い理解のために;
湿熱とは、
1 )温病中の 1 つ。症状は発熱、頭痛、身重く痛む、腹満して食少ない、小便少なく黄赤色、舌苔は黄膩で脈は濡数など。
2 )湿邪と熱邪が合わさって起こした病証。例として、湿熱発黄、湿熱下痢、湿熱帯下など。(『漢方用語大辞典』)
7 本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態:効能または効果
尿量減少、やや便秘がちで比較的体力のあるものの次の諸症:黄疸、肝硬 変症、ネフローゼ、じんましん、口内炎。
b 漢方的適応病態:肝胆湿熱。
すなわち、口が苦い、口がねばる、口渇があるが水分を欲しない、頭汗、いらいら、体の熱感、悪心、嘔吐、食欲不振、油っこいものや匂いで気分が悪くなる、胸腹部の膨満感、尿が濃い、便秘あるいは便がスッキリでないなどの症候で、甚だしければ全身の黄疸、発熱などがみられる。
8 構成生薬
茵陳蒿4、山梔子3、大黄1。(単位g)
9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説:清熱利湿・退黄。
効果増強の工夫 肝機能の改善を目的に用いる場合に小柴胡湯を併用することがある。
処方例)ツムラ茵蔯蒿湯 5.0g
ツムラ小柴胡湯 5.0g 分2食前朝夕
( 茵蔯蒿湯は 瀉下作用があるので、便通により茵蔯蒿湯の割合を変更する)
11 本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1 )黄疸で実証、発熱、小便不利し、或は口渇、頭汗、腹満、眩暈、便秘等を伴うもの。
2 )じん麻疹・血清病・その他の瘙痒性発疹でかゆみが強く安眠できず、 口渇、便秘、腹満、或は小便赤き等の裏の瘀熱症状があるもの。
3 )口内炎・舌炎・舌瘡・歯齦腫痛・眼目痛などで、発赤疼痛、時に出血 があり、不眠、煩渇、口躁、便秘、腹満、小便赤きなど裏熱症状を伴うもの。
4 )子宮出血で前記瘀熱症状があるもの。
5 )腎炎・ネフローゼで、浮腫、口渇小便不利し、前記瘀熱症状があるもの。
6 )血の道症・更年期障害・卵巣機能不全・自律神経不安定症・ノイローゼ・バセドゥ氏病等で、寒くなつたり熱くなつたりし、月経不順、不眠、不安、胸中苦悶、食欲不振、小便不利、便秘、手掌又は結膜黄色を帯びるもの。
★ ヒント;
本方は蕁麻疹に対する適応を有するので、しばしば慢性皮膚疾患に応用される。
藤平健先生はアトピー性皮膚炎に本方を活用された。論文中で、「茵蔯蒿湯は実証で咽の渇きを訴える者の皮膚の異常、ことに皮膚のかゆみに対し、ときに偉功を発揮する薬方である」と述べている。