以前、風邪のステージに対応して漢方薬を使い分けるという記事をこのブログに書きました。
■ (2021.1.17)風邪のステージに対応した、きめ細かい漢方方剤の使い方
最近、思うんです。
忽那先生がつくった有名な新型コロナの経過図(旧⇩)を眺めていると・・・漢方薬のよい適応ではないかと。
さらにバージョンアップされた(新⇩)をみて、より確信が持てるようになりました。
このグラフの上の方に書いてある、
Stage Ⅰ:感染早期
Stage Ⅱ:肺炎症期(さらにⅡAとⅡBに分かれる)
Stage Ⅲ:過剰な炎症反応
これが漢方理論の『六病位』の前半、
Stage Ⅰ → 太陽病期
Stage Ⅱ → 少陽病期
Stage Ⅲ → 陽明病期
に近いのではないか。
手軽に使える内服薬が存在しない今、
漢方薬をうまく使うと軽症例は開業医でも十分治療できるかもしれない、と。
この漢方理論の原本は『傷寒論』という約2000年前(200年ではありません!)の中国の書物です。
書かれた由来は、
「疫病で著者(張仲景)の一族が短期間にたくさん死んだ。これをなんとかできないかと生薬をいろいろな組み合わせや量で配合した方剤を試し(つまり人体実験)、長い年月をかけて体系づけた」
ものなんです。
つまり、当時のパンデミック対策に造られた医学大系。
2000年の時を超えて、また出番が回ってきたのだと感じるのは私だけでしょうか。
具体的には、太陽病期には麻黄と桂枝という生薬を含んだ方剤を使い分け、長引いてこじれつつある少陽病期には柴胡剤(柴胡と黄岑を含んだ方剤)が適用されます。
肺炎まで進行したら、西洋医学による集中治療に分がありますから、入院可能施設にお願いするとして。
新型コロナに対する抗ウイルス薬がまだ一般使用できない現在、
漢方薬の出番があるはずです。
密かに、抗ウイルス薬登場後も漢方の出番はあると私は考えています。
なぜかというと、抗ウイルス薬はウイルスをやっつけてくれるけど、
ウイルスとヒトの免疫システムの戦いの結果として生じた“炎症”を消してはくれません。
「ウイルスは担当するから、炎症の火消しは自分でしてね」
というのが西洋医学のアプローチです。
漢方医学は、その“炎症”を抑える生薬があります。
それが柴胡です。
なので、「COVID-19に漢方を」という記事や書籍は、
おしなべて柴胡剤を推奨しています。
■ 「COVID-19への漢方治療」東邦大学医療センター 田中 耕一郎
■ 「漢方で感染症からカラダを守る! 」渡辺 賢治 著
■ 「新型コロナと速効! 漢方」井齋 偉矢 著
中国で推奨されている清肺敗毒湯も柴胡剤の一種で、
にわか作りの組み合わせと上記書籍で読みました。
2022年2月に入ってから小児科開業医の私のところにも、
COVID-19患者さんが来るようになりました。
その際、私は西洋医学の薬と共に以下のように柴胡剤を併用しています。
咽頭痛 → 小柴胡湯加桔梗石膏、小柴胡湯(錠剤あり)
全身倦怠感 → 柴胡桂枝湯(錠剤あり)
微熱遷延・食欲/体力が戻らない → 補中益気湯