前項で紹介したBLW(BabyLedWeaning)はいいことずくめのように聞こえますが、
果たしてそうでしょうか?
今回はその“影”の部分として、リスクとデメリットを扱います。
これを知った上で導入を考えた方が安全・安心です。
まずは前項目の最後の方で触れたリスクについて。
こちらの本によくまとまっていました。
なお、「従来法」とは離乳食を保護者がスプーンであげる方法を指します。
周囲の理解を含めた環境整備も大切ですが、
窒息事故に直結するリスクとして食材と調理法が大きなポイントだと感じました。
以前、すりおろしリンゴによる乳児の窒息死亡事故がありました。
内閣府のガイドラインでは「果物は生ではなく加熱して柔らかくして与えましょう」と書いてあるそうです。
すりおろしても大きめの破片が残っていれば、のどに詰まる可能性はあります。
また、ブドウやミニトマトも与えていいことになっていますが、「四等分」するように書かれています。
「この食材は安全、この食材は危険」だけではなく、
「安全な形で出す」まで気をつかう必要があるということ。
では本の要約を備忘録として残しておきます。
Q. BLWと従来法でアレルギーの発症率に違いがありますか?
A. ありません。
〜BLWは初めから固形食なので、大量のアレルゲン食材が一気に胃の中に入ることはありません。だからアレルギーを引き起こす可能性は少ないと言えます。
Q. BLWでは初期から固形物を与えますが、のどに詰まりませんか?
A. 窒息のリスクは従来法と同じレベルです。
〜BLW中には「オエッ」とえずいたり、「ゴホッ」と咳き込んだりすることはあります。これは窒息を防ぐ防御反応(※ 咽頭反射、咳反射)で窒息そのものではありませんので、不安になったり過度に心配する必要はありません。
本当に窒息すると、胃気ができず声が出なくなります。つまり赤ちゃんは静かになってしまいます。ちょっと目を離したとき「妙に静かだなあ・・・」というパターンで発見されることがあります。このため、BLW中は保護者が見守る必要があります。離乳食を与えているときは保護者が側にいる必要があることは従来法と変わりません。
※ 咽頭反射:飲み込めないくらい大きな食べ物を前方に押し出して吐き出そうとする動き。窒息しないための安全装置。
窒息ではなく正常な防御反応です。大人の咽頭反射は舌の奥の方で起きますが、赤ちゃんでは大人に比べて舌の前の方でこの反射が引き起こされる傾向があります。そのため、生後6〜7か月に食事を始めたばかりの赤ちゃんにはよく見られることです。咽頭反射を繰り返すことで、赤ちゃんは安全に食べるスキルを学習していきます。
・しっかり噛むこと
・詰め込みすぎないこと
・奥まで入れすぎないこと
月齢が進めば起こりにくくなっていきます。
※ 咳反射:何かの拍子で食べ物などが気道に入ってきたり、詰まりそうになったとき、侵入を防ぐために起こる反射。
赤ちゃんがむせているとき、それが咳反射かどうかは、
✓ 顔が赤くなっている
✓ ゲホゲホッと何かを吐き出そうとしている
✓ 涙目になっている
などで見分けることができます。咳反射は咽頭反射同様、窒息を防ぐための自然な反射です。
咳反射が起きているときは、赤ちゃんの口に指を入れて無理に取り出そうとする必要はありません、見守ってください。
Q. 窒息の判断とその対応方法を教えてください。
A. 「オエッ」「ゲホゲホッ」などのえずきや咳込みはなく、赤ちゃんが静かになってみるみる顔色が青くなったときは窒息の可能性大です。119番に電話して救急車を呼び、背部叩打法・胸部突き上げ法で詰まっているものを吐き出させる必要があります。これを吐き出すまで何回も繰り返します。
吐き出せず、途中で赤ちゃんの意識がなくなった場合は心肺蘇生法に切り替えます。
(いわき市消防本部HPより)
Q. 窒息のリスクが高くなる状況・食べ物はありますか?
A. あります。
(赤ちゃんが窒息しやすい状況)
✓ 椅子にもたれて座っている(背筋が伸びていない)
✓ 気が散っている(TVや動画を見ている)
✓ のどに詰まらせやすい食べ物を与えられる
✓ 息を吸って食べる
(窒息しやすい食べ物)
✓ 小さくて固いもの
✓ 丸くて小さいもの(ミニトマト、ブドウ)
✓ 皮付きのもの(サツマイモ、バナナなど)
✓ 気道の中で圧縮されやすいもの(食パンなど)
✓ 粘着性のあるもの
(窒息の基本的な安全対策)
✓ 背筋が伸びるよう真っ直ぐ座らせる
✓ 絶対に赤ちゃんを一人にしない
✓ 小さくて丸いものは与えない
✓ 赤ちゃんの口に突然食べ物を入れない
★ 日本BLW協会HPより;
(窒息の危険性がある食材)
(窒息の危険性がある食材の工夫の仕方)
Q. 初めから固形物を与えて赤ちゃんは消化できるんですか?
A. はい、できます。
生後5か月になる頃には、赤ちゃんの消化機能・腎臓機能は食事を受け入れられるまでに成熟するとされており、問題ありません。
赤ちゃんのウンチに食べ物のかたまりが出てくることがありますが、消化しきれなかったものが出てきているだけで、すでに栄養分は吸収されており、心配する必要はありません。
Q. 自宅でBLWをしている赤ちゃんを保育園に預けるときはどうすればいいですか?
A. 保育園側にBLWをしていることを伝えましょう。園の規模や方針により、どこまで受け入れてもらえるかはケースバイケースです。言葉だけではわかってもらえないときは、実際にどのようなものをどのように食べているかの写真や動画を見てもらうのも理解を助けます。
★ 日本BLW協会のHPからBLWのリーフレットが無料でダウンロードできますので、これを利用するのも一つの方法です。
さて次にこちらの動画からBLWのデメリットを拾ってみました。
1.片付け&洗濯が超大変
・きれい好きのお母さん、汚れる・散らかるとイライラするお母さんには向いていないかも。
・毎食後、着替えが必要になる。
・床の汚れは掃除機で済むレベルではなく、毎日(毎食後?)ぞうきんがけ。
(対策)
・食事と着替え(とシャワー)はセットと開き直る。
・袖付きエプロンの使用もあり(本人が嫌がらなければ)。
・床には新聞紙を敷いたりで対応は可能ですが・・・。
2.正解がわからず不安
・日本ではまだ普及しきっていないので情報収集に限界あり。
・食材選び、硬さや大きさ、量、出し方などで悩むことが多い。
( → 加熱してピューレ一択、っていうのはかなり楽!)
・予想外の反応も楽しいので「当たったらラッキー」くらいのスタンスがよい。
3.最初の数ヶ月のメニューが難しい
・野菜や肉類は柔らかくしてなんとかできた。
・でも主食(ごはん)と汁物が悩みの種。ごはん粒はとにかく散らばるし、散らばると赤ちゃんの気が散る。汁物はスプーン以外でどうやって食べる?
4.外出先での食事が難しい
・散らかし放題の初期は難しい。
・玄米パンとか干し芋はお勧め。
5.周囲に理解されにくい
・生後6か月の赤ちゃんに固形物をあげることにたいていの人はビックリする。
・「ヤバい母親」と思われる可能性あり。
・初めてBLWを実践する場合、不安になる時期が必ず来るが、そうなったとき一人で悩むのは厳しい。
「片付け面倒〜」「食べないな〜」「栄養足りてるかな〜」
・子育てに口出ししがちな姑と同居とか、理解のない旦那だったら従来食(ペースト離乳食)の方がいいかも。
→ 動画や本を見せて説明して理解してもらうことをお勧めします。
<参考>
▢ BLW(赤ちゃん主導の離乳)をはじめよう! (日本BLW協会 著、原書房、2020発行)
▢ 子どもの窒息対応(日本BLW協会)
▢ 食品による窒息〜子どもを守るためにできること〜(日本小児科学会)
▢ 気道異物除去(乳児・幼児)(日本赤十字社)
▢ 消防士が教える!誤飲対応・心肺蘇生法~こども編~(大和市公式チャンネル)