少し前に作家・五木寛之さんの「人はみな大河の一滴」の語りおろしCD集を聴きました。
その中で正岡子規の『病状六尺』に触れていました。
病気で体がつらいときも「『病状六尺』を書いていた子規に比べればまだまだマシじゃないかと考えた」というのです。
子規は脊椎カリエス(結核菌が脊髄を侵した状態)で余命わずかの体。寝たきり生活の中でその心情を素直に文章に表したのが『病状六尺』です。
録画してあった番組に正岡子規を扱ったものを見つけたので視聴しました。
子規はその天才的な集中力で、明治時代の文学界を走り抜けた人物です。
東京大学時代の同期には友人でもある夏目漱石がいます。
はじめは文章に賭けましたが幸田露伴に批判され一旦は挫折。
その後新聞社に勤務し俳句欄を担当することになり、俳句の研究に没頭しました。
そして松尾芭蕉批判(技巧に走るのは陳腐である)で一躍注目を集めました。
彼は当時無名であった与謝蕪村に魅せられました。
元々画家である蕪村は、風景を自分の感覚の求めるまま切り取って言葉にします。
その視点がユニークで、絵の定石から無視されそうなものをいとおしく描写します。
これこそ子規が求める俳句であり、彼はそれを実践し「自然句」ブームを巻き起こします。
弟子には高浜虚子がいますね。
しかし、口語と文語がまだ異なる明治時代に、文章の世界でも口語調を普及させられないだろうかという野望が頭をもたげます。
そして書いたのが『病状六尺』というわけです。
彼は34歳の若さで亡くなりますが、彼の遺志を継いだ作家が口語調で小説を書き発表して世間を驚かせました。
その名は夏目漱石、作品は『吾輩は猫である』です。
現代に生きる我々が読むとふつうの文章ですが、その“ふつう”の始まりがこの作品だったのです。
死に至る病と宣告されたとき、①自然句の完成を目指すか、②新しい分野である文章の開拓を目指すか、という問いが番組中にありました。
その中で司会の磯田氏の「②に決まってるじゃないですか、新しい興味を引くことをやらないと生きていけないでしょう」というコメントが印象に残りました。
■ 英雄たちの選択「生きた証か 見果てぬ夢か~近代文学の祖 正岡子規の選択~」
[BSプレミアム]2016年7月21日
【司会】磯田道史,渡邊佐和子,
【出演】ロバート・キャンベル,長谷川櫂,斎藤環,
【語り】松重豊
もし余命わずかと宣告されたらあなたは何をしますか?
多くの若者が立身出世を夢見た明治時代。天性の明るさで俳句の近代化に取り組んだのが正岡子規だ。しかし28歳で当時の不治の病を宣告され絶望の底に突き落とされる。自分の余命を何に使うべきか。これまで進めてきた俳句の近代化を完成させ生きた証しを残すか?誰も成し遂げていない「新しい日本語」を作るという見果てぬ夢に挑むか。激痛と不安の中で下された究極の決断は?
その中で正岡子規の『病状六尺』に触れていました。
病気で体がつらいときも「『病状六尺』を書いていた子規に比べればまだまだマシじゃないかと考えた」というのです。
子規は脊椎カリエス(結核菌が脊髄を侵した状態)で余命わずかの体。寝たきり生活の中でその心情を素直に文章に表したのが『病状六尺』です。
録画してあった番組に正岡子規を扱ったものを見つけたので視聴しました。
子規はその天才的な集中力で、明治時代の文学界を走り抜けた人物です。
東京大学時代の同期には友人でもある夏目漱石がいます。
はじめは文章に賭けましたが幸田露伴に批判され一旦は挫折。
その後新聞社に勤務し俳句欄を担当することになり、俳句の研究に没頭しました。
そして松尾芭蕉批判(技巧に走るのは陳腐である)で一躍注目を集めました。
彼は当時無名であった与謝蕪村に魅せられました。
元々画家である蕪村は、風景を自分の感覚の求めるまま切り取って言葉にします。
その視点がユニークで、絵の定石から無視されそうなものをいとおしく描写します。
これこそ子規が求める俳句であり、彼はそれを実践し「自然句」ブームを巻き起こします。
弟子には高浜虚子がいますね。
しかし、口語と文語がまだ異なる明治時代に、文章の世界でも口語調を普及させられないだろうかという野望が頭をもたげます。
そして書いたのが『病状六尺』というわけです。
彼は34歳の若さで亡くなりますが、彼の遺志を継いだ作家が口語調で小説を書き発表して世間を驚かせました。
その名は夏目漱石、作品は『吾輩は猫である』です。
現代に生きる我々が読むとふつうの文章ですが、その“ふつう”の始まりがこの作品だったのです。
死に至る病と宣告されたとき、①自然句の完成を目指すか、②新しい分野である文章の開拓を目指すか、という問いが番組中にありました。
その中で司会の磯田氏の「②に決まってるじゃないですか、新しい興味を引くことをやらないと生きていけないでしょう」というコメントが印象に残りました。
■ 英雄たちの選択「生きた証か 見果てぬ夢か~近代文学の祖 正岡子規の選択~」
[BSプレミアム]2016年7月21日
【司会】磯田道史,渡邊佐和子,
【出演】ロバート・キャンベル,長谷川櫂,斎藤環,
【語り】松重豊
もし余命わずかと宣告されたらあなたは何をしますか?
多くの若者が立身出世を夢見た明治時代。天性の明るさで俳句の近代化に取り組んだのが正岡子規だ。しかし28歳で当時の不治の病を宣告され絶望の底に突き落とされる。自分の余命を何に使うべきか。これまで進めてきた俳句の近代化を完成させ生きた証しを残すか?誰も成し遂げていない「新しい日本語」を作るという見果てぬ夢に挑むか。激痛と不安の中で下された究極の決断は?