あれはもうどれくらい前になるのだろう
私がまだ元気で山に出かけられてた昔の事だけど
今日のように台風のニュースや秋の気配、風が少し冷たさを感じて
何となく、もの淋しさと、何かが満足できていない感情
そう、その年は、雨の多い、台風も夏の台風が多かった
だから、夏山登山が満足できていなかった
このまま秋が来てしまうのだな~
などと、心の中で、もやもやした感情が続いてたのだろう
丁度、仕事が2日ほど暇になって
思い切って八ヶ岳に出かけた
急な事なので、同行者はいない、ひとり山行
朝7時、新宿駅を出る「あずさ」に飛び乗って
茅野~美濃戸口まではバス、
その日の予定は「赤岳鉱泉小屋」に泊まり
次の日、早朝に出て、赤岳をピストンする予定だ
美濃戸口から林道をのんびりと歩いて、
もう、何度も歩きなれてる道だから気が楽だった
たいていは美濃戸山荘の分岐から北のコースを歩く
沢沿いにゆっくりと歩き、何度か沢をわたり
やがて、あの懐かしい「大同心」が見えてくる
山の師である、長谷川さんの手ほどきで真冬の大同心を登らせて頂いた登攀
あの精神状態もバラバラになる感覚を思い出しながら・・・
この八ヶ岳は四季を通じて70回以上は通った山だ!
思い出も数えきれないほどのたくさんの経験を走馬灯のように
浮んでは消えて、喜びも、悲しみも・・・
歩く一歩が思い出と共にその感覚を呼び起こす
そんな思いの中、突然、赤岳鉱泉小屋が見えた!
夏の終わりなのに「ヤナギラン」の花がまるで小屋を覆い、包み込むように咲き乱れて
夢の中の花園にたつ、小さな城のように、
平日の小屋は泊り客も少ない
顔見知りの小屋番の方と挨拶を交わし
明日の予定を告げて、部屋で読書
けれど、本の文字など頭の中に入らないほど
なぜか、言葉に出来ない興奮した思いだった
早朝5時、まだ、外は薄闇の中、寝不足のまま歩き出し、赤岳に向かった
行者小屋を過ぎ、地蔵尾根を登り、岩の感触を楽しみながら・・・
もう、赤岳の山頂に何時ごろに着いたかは忘れてしまったけど
赤岳山頂から、文三郎尾根を下った、
文三郎尾根はだいぶ荒れていて、鉄のはしごがむき出し、宙に浮いてしまうほど
尾根の土が流されていた。
ぐらぐらと動く梯子段を気を付けて下りた
ふと周りの風景を見ると、なんと!
まわり一面、「トウヤクリンドウ」の花が咲いていた
色合いは地味な花だけど
大自然を感じさせて、思わず感動出来た風景だった
赤岳鉱泉小屋に戻り、コーヒーを頂きながら、小屋番の方に、トウヤクリンドウの花の事を話しタラ、今年は、台風が多かったことや、雨の日が多くて、夏の季節が狂っているようだと、笑いながら、話してくれた。
鉱泉から、美濃戸へ下る時、うっかりして、洪水時のための高まき道に入ったりと!
おまけがいっぱいの八ヶ岳、赤岳山行だった、
今は登れない山になってしまったけど
今日のように台風のニュースを見ていて
思い出す、夏の終わりの頃