かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 10

2022-02-07 15:05:18 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の2(2017年7月実施)
    『泡宇宙の蛙』(1999年)【蟹蝙蝠】P14~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放


10  体臭ははばかるべからざるものと山を行くなり猪独活(ししうど)を折り

    (レポート)
 猪独活は芹科の植物で、笠状の白い小花をつける。山へ行くと様々な植物の発する匂いに出会うが、その匂いのどれもが、誰に遠慮することもなく己が匂いを発し、調和している。猪独活に強い匂いがあるかどうか私は知らない。たぶん猪独活を手折ろうと腰をかがめる先々で、山の自生植物の匂いが、作者の嗅覚を刺激したのだろう。「べからざるもの」という作者の主張が、きっぱりとしている。
 清潔になった現代社会で臭いものは大抵嫌われ、排除される。中年以降の体臭を加齢臭と厭う風潮すらある。だから自分の発する体臭にも敏感になり、つい遠慮が生じる。しかしどうだ。この山の自然を行くとき、存在を明らかにする固有の匂いを発し、植物は遠慮なんかしていない。作者はあるがままの匂いを美しいと感じたのかもしれないし、己が体臭を憚る行為の小ささに、嫌気がさしたのかもしれない。(真帆)


      (当日意見)
★猪独活は薬用であり食用でも在るらしいです。芹科ですね。猪だから臭いが強いのかもしれませ
 んね。(A・Y)
★シシウドはよく出会う花ですが、植物図鑑を見ると爽やかな匂いとか甘い匂いとかいろいろ書か
 れていてよく分からないですが、セリ科ですし匂いは強くても嫌な臭いではなさそうですね。今
 度折って試してみましょう。(鹿取)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一... | トップ | 渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事