かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 42

2022-04-04 11:29:05 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の6(2017年11月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【夢監視人】P32~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放
     

42 透りたる尾鰭をみれば永遠はすずしそうなり化石の石斑魚(うぐい)

       (レポート)
 星尾峠から30㎞ほど離れるが、群馬県には神流町恐竜センターがある。化石の発掘体験もできるのだという。薄い尾鰭の部分はべっ甲のように透けているのではないか。「永遠はすずしそうなり」がとても効いている。永遠という言葉から重さや強さやあてどなさやロマンはイメージできても、「すずしそう」には虚をつかれる。壮大な恒久的静けさが広がる。(真帆)


         (まとめ)
 一首には化石になった石斑魚が提示される。それはレポーターがいうように神流町恐竜センターに展示されていたのかもしれないが、どこで見たかは問題ではないだろう。ともかく化石の石斑魚があって、石の中に閉じ込められた尾鰭がくっきりと透けて見える。その透けぐあいからすずしいという語はなだらかに結びつくが、ここで「すずしそう」なのは石斑魚の尾鰭ではなく「永遠」という時間の方であるのがユニークだ。この石斑魚が生きていた遠い時間を思ったのだろうが、想像している時間のベクトルは〈われ〉の死後も続く未来にも伸びているのかもしれない。「すずしい」という語は渡辺松男のキーワードの一つで、たいていは遙かな時間と結びついて感覚的な把握に使われるようだ。(鹿取)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 改訂版 渡辺松男『泡宇宙の... | トップ | 改訂版 渡辺松男『泡宇宙の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事