かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 13

2023-03-24 18:37:26 | 短歌の鑑賞
    2023年度版 渡辺松男研究3
      (13年3月)【地下に還せり】
      『寒気氾濫』(1997年)12~
       参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
       司会と記録:鹿取 未放


13 月光に眠れざるもの樹にありて風切りの羽つくろいていん

      (当日意見)
★「ふくろうのごとき月光ほおほおと潤いおびて樹海にそそぐ」
 という前の歌の続きだから主語はふくろうとかを想定すればい
 いのではないの。夜行性の動物は昼間寝て夜活動するので。
 たとえば眠れない〈われ〉がいて、今頃はふくろうも風切りの
 羽をつくろったりして目覚めているんだろうなあと想像してい
 る。(鹿取)
★夜眠らない鳥、と考えると歌が物足りなくなるような気がする
 けど。本来眠れるものが眠れない方が深い。(崎尾)
★私はふくろうの続きの歌とは思わなくて、鳥でも眠れないもの
 がいるのかなあと思った。(慧子)
★そうか、ふくろうは夜行性だから「眠れざる」ではないわけね。
 木にいて風切り羽をつくろうのは明らかに禽類で、何の鳥と言
 わないで「眠れざるもの」と言っているところが松男さんなん
 だけど。まあ、比喩的に読めば眠れずに闘志を燃やして闘いの
 準備をしている人間ともとれないことはないけど、それでは私
 はつまらないな。作者の姿からは遠いものになる。(鹿取)
★なんとなく雰囲気が優しい。絵をみているよう。(曽我)
★童話の挿絵みたいですよね。(鹿取)



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