2024年度版 渡辺松男研究43(2016年10月実施)
『寒気氾濫』(1997年)【半眼】P146~
参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
362 ぶな若葉風のきみどりさんさんとふいに誰かを抱きたき日照雨(そばえ)
(レポート)
「誰か」と詠っているが、私は特定の君のような気がする。山毛欅の若葉にふりそそぐ陽光が、葉のうすみどりを透かしている。ふいの日照雨に、ある人を抱きたくなる情動が美しい。(真帆)
(当日意見)
★誰かって特定の人ではないですね。(曽我)
★誰かって書いてあるけど、私は特定の人と思ったのです。(真帆)
★ぶな林の中にあっての思いだから、逆に決めたくはない気がしま
す。特定の君だと言い過ぎという気がする。(鈴木)
★ここは私も気分的に不特定な誰かって考えたい。(鹿取)
★そばえがここの気分にとても合っていますね。(慧子)
★濃厚な感じじゃないですね。特定しない方が歌に広がりが出
る。(鈴木)
★ぶな若葉に風が吹いてお日様がさして作者は開放的な気分を味わっ
ていたと思うんです。そこへにわか雨でしょう、ちょっと薄暗く
なって少し人恋しさを感じたということかな。(M・S)
★日照雨はにわか雨とかかなりニュアンスが違います。日照雨は陽光
がきらめきながら雨が降っている。そこにふっと兆した人恋しさ。
(鹿取)
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