かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の歌一首鑑賞 201

2022-09-14 10:23:41 | 短歌の鑑賞
     ブログ版 清見糺の短歌鑑賞    
                  鎌倉なぎさの会  鹿取 未放


201 しずかなる花のさかりを夕べより音もせでくる春のあわゆき
  「かりん」01年6月号

 「音もせでくる」は、古歌にたくさんあるバリエーションだろう。本庄小唄の「春の雪音もせで降る」などの一節もあるが掲出歌の下敷きは、岩手の民謡「さんさ時雨」がより有力のように思われる。もっとも時雨と桜の満開は季節が違うけれど。
 「さんさ時雨」は仙台藩に古くから伝わる民謡で全国的にもよく知られている。作者は、母方の実家が仙台で、仙台には子供時代何年か疎開もしているので「さんさ時雨」は身近なうただったと思われる。その一番にいう。
  〈さんさ時雨か萱野の雨か  音もせで来て濡れかかる  ショウガイナ〉
 桜の花の満開の静かな夜、音も立てないで春の淡雪が降っている。「夕べより」だから満開の桜に降る淡雪の気配を味わっている時間の経過が感じられる。ひらかなを多用して優しい調べを作り、豊かな時間を味わっている静謐な歌だ。


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