かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の214

2019-11-05 18:48:12 | 短歌の鑑賞
   ブログ用渡辺松男研究2の28(2019年10月実施)
     Ⅳ〈水〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P138~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、鹿取未放
     レポーター:岡東和子    司会と記録:鹿取未放


214 めがねとり顔近づけてゆきたれば沼滲むなりてのひらのうえ

     (レポート)
 眼鏡をとつて顔を近づけてゆくと、てのひらのうえに沼が滲んでいる。作者の手のひらにある「沼」というのは、雨粒だろうか。しかし、「滲む」とあるのだから、これは涙かもしれない。一首全体にゆつたりとした時間の流れが感じられる。(岡東)


      (紙上参加意見)
 何かつらく苦しい思いがあって、作者は眼鏡をはずし手のひらに顔を包もうとした。すると、涙が落ちて手のひらがにじんでみえたのだろう。(菅原)


          (当日発言)
★前回、「てのひらののっぺらぼうにぎょっとせり結んでひらくてのひらは妣(はは)」に
 ついてA・Kさんが名解釈をしてくれたんだけど、このてのひらはいかがでしょうか? 
  (鹿取)
★滲むってなんでしょうね。単なる現象か?それとも暗示なんでしょうか?(A・K)
★後の歌にも沼が出てきますね。「まなうらに波ゆれている沼のあり波しずまりしとき
 さかな落つ」って。涙が出てきたから眼前にあるものが滲むのだと思うのですが。
   (真帆)
★菅原さんの、包もうとするとあるけど包もうとしたら手の平の上にはならない。
  (A・K)


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