かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 1の40

2020-06-26 16:05:38 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究 5(13年5月) 『寒気氾濫』(1997年)橋として
          参加者:崎尾廣子、鈴木良明、渡部慧子、鹿取未放
        まとめ  鹿取 未放

40 秋の雲うっすらと浮き〈沈黙〉の縁(へり)に牡牛(おうし)は立ちつづけたり

★これはニーチェですね。生あるものは自らの力を発揮しようとする、そういう世
 界観をニーチェは持っている。月や太陽は引力とか遠心力によって均衡している。
 それに仏教的な考えを抱き合わせてイメージしていくと分かりやすい。(鈴木)
★すごく魅力的な歌なんだけど、私は解釈しづらかった。この〈沈黙〉というのは
 どこにあるんですか。(鹿取)
★作者が眼前の風景を目にしたときに何の音もしなかった。〈沈黙〉が支配してい
 る。そこにたまたま牛がいて作者が見たときにはたたずんでいるだけ。そういう
 場面に接したとき、風景の力というものを感じたのではないか。(鈴木)
★縁、っていうのは面白いですね。この間鑑賞したところではお父さんの背中が沈
 黙だったんだけど。ここでは風景そのものが沈黙していて、その縁に牛がいる。〈沈黙〉
 の縁(へり)というとらえ方がとても美しくて哲学的。私は秋の雲がうっすらと浮
 く風景の中で〈われ〉が沈黙していて、はるか向こうに立っている牡牛がずっと
 〈われ〉の視野に在り続けているって解釈していたんだけど。(鹿取)
★沈黙に力があるっていうのがすごい解釈だなあ。沈黙の支配力というのは確かに
 感じることがある。(崎尾)



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