海に佇むロトの妻(PART 1)
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デンマンさん。。。 わたしが海の中に佇(たたず)んでいますけれど「ロトの妻」が見当たらないじゃありませんか?
「ロトの妻」は右上の岩にされてしまったのですよ。
でも、『旧約聖書』では「ロトの妻」は「塩の柱」にされたはずですわ。
ロト
ロトは『旧約聖書』の登場人物である。
『創世記』11章後半から14章、および19章に登場する。
父はテラの息子ハランであり、ロトはアブラハムの甥にあたる。
また、『新約聖書』では義人として紹介されている(『ペトロの手紙二』2:7-8)。
アブラハムに伴って古代エジプトへ、そしてカナンへと旅をするが、アブラハムの牧夫とロトの牧夫との間に争いが起きたため、ロトは肥沃な土地である東方のヨルダン地域へと移動し後にソドムへと移住する。
エラムの王ケドルラオメルによってソドムが略奪されると、ロトの家族は家財もろとも捕虜として連れて行かれるが、そのことを伝え聞いたアブラハムによって救出される。
後に、天使がソドムに派遣され、ヤハヴェがソドムとゴモラを滅ぼすことを決定したことをロトに伝える。
そこでロトは夜が明ける前にロトの妻と2人の娘を伴ってソドムを脱出し、近隣の都市ツォアル(ベラ)へと向かう。
逃げる際に「後ろを振り返ってはいけない」と指示されていたが、ロトの妻は後ろを振り返ってしまい、「塩の柱」となる。
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その後、彼らは山中の洞窟に移住したが、ここで娘たちは父を酔わせ近親相姦し父によって男子を1人ずつ生んだ。
長女の息子は「モアブ(父親より)」と名付けられモアブ人の祖となり、また、次女の息子は「ベン・アミ(私の肉親の子)」と名付けられ後にアンモンの人々の祖となった。
ロトがいた洞窟とされる場所はビザンチン時代はキリスト教徒の巡礼地となり、教会が建造された。
この教会の遺跡(アラビア語: デイル・アイン・アバタ)が死海東南岸に残されている。
教会横には「ロトの洞窟」が存在する。
教会は現代のヨルダン王国カラク県に位置するが、カラク地域は歴史的には「モアブ」と呼ばれていた。
洞窟で生まれたというモアブ人は鉄器時代には同地域に王国を築いていた。
『創世記』ではロトの妻と娘たちの名は明かされていない。
「エシェット・ロット」は「ロトの妻」という、文字通りの意味。
英語表記はEshet Lot で、英訳するとLot's wifeとなる。
出典: 「ロト」
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
さすがにジューンさんは詳しいですね。
キリスト教徒ならば、この話はたいていの人が知っていますわ。
あれっ。。。 ジューンさんも日曜日にはミサのために教会に行くのですか?
気が向いたら行くことにしていますわ。 (微笑)
ジューンさんはキリスト教徒でも、あまり熱心でない教徒なのですね。
デンマンさん。。。 そのような事はどうでもいいのですわ。 それよりも、どうして「ロトの妻」が岩になって海の中にあるのですか? たとえ岩にされてしまっても海の中ではなくて平地にあるはずですわ。
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うん、うん、うん。。。 『旧約聖書』に従えば、確かに「ロトの妻」は「塩の柱」にされて海ではなくて平地か、あるいは荒野にあるのですよ。 でもねぇ、実は、太平洋の中にも岩にされた「ロトの妻」があるのですよ。
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これが、その太平洋に佇んでいる「ロトの妻」なのですか?
その通りです。
そのような事は聞いたことがありませんわ。
無理もないでしょう。 日本人でも知らない人が多いのだから。。。
あらっ。。。 冗談ではなくてマジで「ロトの妻」と呼ばれる岩が太平洋の海の上に写真のように突き出ているのですか?
もちろんですよ。 僕は「でまかせ」を言っている訳ではないのです。
でも、日本語の本を読んでも、そのような話を読んだためしがありませんわ。
無理もありませんよ。 僕自身も、最近になって知ったのだから。。。
またバンクーバー市立図書館で借りた本の中に出てきたのですか?
そうです。
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上のリストの赤枠で囲んだ本の中に出てきたのですか?
そうです。 その箇所を読んでみてください。
船の名はフェーリス号。
船長はジョン・ミーアズ(1756?-1809)という元イギリス海軍大尉である。
ミーアズは、中国在住のイギリス商人ジョン・ヘンリ・コックスが1785年に設立した「ベンガル毛皮商会」に雇われ、北アメリカ西海岸で住民からラッコの毛皮を買いつけ、それを中国で売る、という仕事に従事していた。
ただし、当時のイギリスでは、中国での取引に際してはイギリス東インド会社、アメリカ西海岸での取引に対しては南海会社に、それぞれライセンス料を支払う必要があったのだが、コックスの事業はそれを無視した非合法なものだった。
ミーアズは1786~87年の最初の航海を行い、アラスカ沿岸に到達して交易を行っている。
続いて1788年、コックスらはフェリース号とイフィジェナイア号の二隻を購入し、二度目の航海を行うことにした。
フェリース号にはミーアズ、イフィジェナイア号にはウィリアム・ダグラスがそれぞれ船長として乗り込むことになった。
このとき、イギリス当局の目をかいくぐるため、コックスらはマカオのポルトガル商人たちとの合弁企業をでっちあげ、二隻もポルトガル船籍だということにしている。
ミーアズの航海記によると、フェリース号は1月22日にマカオを出港し、ミンダナオ島に寄航したのち北アメリカへと向かった。
この途中で、彼はグランパス島を“発見”することになる。
問題の島が目撃されたのは、4月5日のことである。
(中略)
この4日後(9日)、フェリース号は、巨大な岩が海中にぽつねんとそそり立っている、という異様な光景に出くわしている。
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その岩に近づくにつれ、我々の驚きはより大きくなった。
船員たちは、なにか超自然的な力がこの岩の形を突然今の形に変えたのだ、と強く信じたがっていた。
その岩は「ロトの妻(Lot's Wife)」という名前を与えられた。 (略)
正午までに我々はこの岩の横に並んだ。
(中略)
ところで、この巨岩は現存しているのだが、ミーアズの報告とは大きく異なっている。
北緯29度47分37秒・東経140度20分31秒、鳥島の南方約75キロの地点に、海中から、標高99メートルの巨大な岩が突き出している。
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(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真と地図はデンマン・ライブラリーより)
72-77ページ 『地図から消えた島々』
著者: 長谷川亮一
2011年8月10日 第2刷発行
発行所: 株式会社 吉川弘文館
。。。で、この巨大な岩は日本の領海にあるのですか?
そうなのですよ。 ウィキペディアには次のように書いてありますよ。
孀婦岩(そうふがん)
孀婦岩は伊豆諸島の島。
同諸島の最南端にある無人島で、所属市町村未定のため東京都の直轄となっており、東京都総務局の出先機関である八丈支庁が管理事務を行っている。
日本の気象庁により活火山(ランク未分類)とされている。
東京の南約650km、鳥島の南約76kmに位置する標高99m、東西84m、南北56mの顕著な黒色孤立突岩。
火道内のマグマが硬化してできた典型的な岩頸であり、したがって岩質は玄武岩である。
頂上付近には水面に対して垂直方向の柱状節理が認められる。
面積は0.01平方km。
カルデラ式海底火山の外輪山にあたり、孀婦岩の南西2.6km、水深240mには火口がある。
その形状のために上陸することは困難であるが、1972年に早稲田大学の学生が上陸、ほか2003年にもロッククライミングで登頂した例などが存在する。
ただし転落事故も記録されている。
周辺は航海の難所ながら、豊かな漁場として伊豆・小笠原漁民に知られる。
また、高い透明度と豊富な魚影からスキューバダイビングの聖地とする人も多い。
海鳥の生息地となっているため、島は鳥の糞で白くなっている。また、頂部にイネ科の植物が生息している。
孀婦岩について初めて確実な記録を残したのは、イギリス人で元海軍大尉のジョン・ミアーズ(John Meares)であった。
彼は交易のため二艘の船団でマカオを出発、ミンダナオ島を経て北アメリカに向かう途上で孀婦岩を目撃した。
出典: 「孀婦岩」
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
つまり、「ロトの妻」が日本の領海にあるということがデンマンさんにとって興味深かったので、こうして記事に取り上げたのですか?
いや、違うのですよ。 ロトは夜が明ける前に妻と2人の娘を伴ってソドムを脱出し、近隣の都市ツォアル(ベラ)へと向かう。 逃げる際に「後ろを振り返ってはいけない」と指示されていたが、ロトの妻は後ろを振り返ってしまい、「塩の柱」になてしまう。 これに似た話が日本の神話にあるのですよ。
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どのようなお話なのですか?
次のような話ですよ。
イザナギ(伊弉諾)は、古事記、日本神話に登場する皇祖神で、イザナミ(伊弉冉)の夫である。
イザナミは、火の神であるカグツチ(軻遇突智)を産むと、あまりにも熱かったために陰部に火傷を負って、それがもとで亡くなってしまう。
夫のイザナギは妻の死を嘆き悲しんだ。
しかし、どうしても諦めきれない。
なんとかして、イザナミに逢いたい。
それで黄泉国(よみのくに)まで逢いに行った。
番人に尋ねると親切にイザナミを呼んできてくれた。
でも、暗くて顔まではよく見えない。
「私もあなたにお会いしたかった」
「それなら、これから一緒に現世に戻ろうじゃないか」
「分かりました。 でも、一つだけ約束してください。 現世に戻る間、振り向いて私をご覧になってはいけません。 この約束を守ることができますか?」
「もちろんだとも。。。 約束するよ」
ところが、現世に戻る道すがら、イザナギは、どうしても妻の姿が気になって仕方がない。
ついに振り返って見てはいけないというイザナミとの約束を破ってしまった。
妻の体は腐敗してウジにたかられ、八雷神(やくさのいかづちがみ)に囲まれたイザナミの姿であった。
その姿を恐れてイザナギは逃げ出してしまう。
追いかけるイザナミ、八雷神、黄泉醜女(よもつしこめ)らに、髪飾りから生まれた葡萄、櫛から生まれた筍、黄泉の境に生えていた桃の木の実を投げて、イザナギは何とか難を振り切って逃げるのだった。
振り向いて妻の姿を見てはダメだと言うのに夫は見てしまう。 すると妻の体は腐敗してウジに覆われていたというのですよ。
つまり、「ふりむいてはいけない」という事が2つのエピソードに共通していると言うのですか?
その通りですよ。
要するに、日本の神話には『旧約聖書』の「ロトの妻」のエピソードの影響があるとデンマンさんは言いたいのですか?
そうですよ。 ジューンさんも、そう思いませんか?
それは偶然だと思いますわ。 第一、「ロトの妻」のエピソードはヨルダンの地域で生まれたものですわ。 日本と何千キロも離れていますわ。 日本の神話が『旧約聖書』の影響を受けるはずがありませんわ。
ところが、聖徳太子の伝説にも明らかに『聖書』の影響を受けているというエピソードがあるのですよ。
まさか。。。?
ジューンさんは信じられないかもしれないけれど、マジなのですよ。 それは、別の機会に話します。 楽しみにして待っていてくださいね。
(すぐ下のページへ続く)