“愛のコリーダ”を訳すには。。。
“愛のコリーダ”という映画を見たことがありますか?
結構、有名な映画ですから、多分見た事があるでしょうね。
見なくても名前ぐらいは知っているでしょう。
見た人にとっては蛇足になりますが次のような映画です。
愛のコリーダ
この作品は「純粋な愛」「真実の愛」を描いたものだと言われてきた。しかし、24年を経てスクリーンを見ても、そこには濃厚な“愛”と“性”と“死”が描かれている。定が欲望のおもむくままに自分の体をむさぼるのをながめる吉蔵の目は、極限のエロスの世界に到達した“死人”の目だ。
二人が閉じこもる旅館の一室に満ちていたのは、初めはエロスであったかもしれないが、途中からエロスの極限を目指す死への欲動にすり替わっていたのではないか?
この作品は、これまでは「軍国主義が台頭する中、社会に背を向け、真実の愛に生きた二人」といった過度に政治的な評論をされてきた。こうした評論に対し、大島監督は「みんな馬鹿ばかりだ」と立腹していたらしい。
意外に男性よりも、多くの女性がこの作品に興味を示したことが取りざたされたが、女性も無関心ではいられない題材を扱っていたのだろう。
『愛のコリーダ 2000年版』より
あなたは、“コリーダ”が闘牛を意味すると言う事を耳にした事があるかもしれません。
「闘牛」を意味するスペイン語は「コリーダ・デ・トロス」と言うんですよ。
この言葉の直接の意味は「牛の走り」と言うんです。つまり闘牛とは「人間と牛との闘い」ではないんですね。
牛の走りがどうして闘牛になってしまったのか?
闘牛士がカポーテ、つまり、ピンク色のマントのような形の布や、ムレタと呼ばれる赤い布を使って牛を走らせるわけです。
牛が赤い色に興奮して突進してゆくと考えている人が居ますが、実は、牛は赤い色に興奮して突っ込んでゆくわけじゃないんですよ。それは迷信なんです。
牛は動く物に反応するんです。だから、赤色の布じゃなくてもいいんです。青でも黒でも何でもいいんです。
見所は、闘牛士(matador)が走り込んで来る牛を自分の体のすぐ脇を通過させる時に見せる技です。
この技は“パセ”と呼ばれます。
このパセをいかに決めるかが闘牛士の見せ所です。
この部分が観客には、いわば闘牛士と牛の闘いとして映るわけです。
それで「走り」が「闘牛」ということになったわけですよね。
スペイン語の会話では次のように使われます。
¿Quiero ir a una corrida de toros?
キエロ イール ア コリーダ デ トロス
闘牛を見に行きたいのですが。
¿Hoy hay corrida de toros?
オイ アイ コリーダ デ トロス
今日、闘牛はありますか?
¿A qué hora empieza la corrida?
ア ケ オラ エンピエサ ラ コリーダ
闘牛は何時に始まりますか?
上の会話で見るように、闘牛のことを “corrida de toros (コリーダ・デ・トロス)” と言っています。
でも、文脈から分かる時には最後の文のように “la corrida” だけを使います。
そう言うわけで、日本では「コリーダ」と言えば、「闘牛」と言う意味に受け取られるようですよ。
でも、厳密には「走り」です。
ところで、“愛のコリーダ” は直訳すれば “愛の闘牛” と言うことになりますよね。
これを英語に訳すと闘牛は “bullfight” ですから、 “bullfight of love” ということになります。
しかし、これでは映画の内容が全く伝わってきませんよね。
闘牛の映画だと思われてしまいかねない。
実際には、この映画のタイトルがどのように英語に訳されたのか?
“In the Realm of the Senses”
英語のタイトルはこのようなものだったのです。
日本語のタイトルとは感じがだいぶ違っています。
僕は日本語のタイトルのほうが好きですね。
英語のタイトルは“愛”が脱落しています。
Realm と Senses は次のような使われ方をします。
Realm: 領域、範囲、分野、部門
realm of art: 芸術の世界
realm of being: 存在領域
He is the leading figure in the realm of modern poetry.
彼は現代詩の分野の第一人者だ。
Sense: (名詞) 意味 (動詞) 感じ取る
Senses: 感覚
Appeal to as many senses as possible.
できるだけたくさんの感覚に訴えなさい。
Thomas has clearly taken leave of his senses if he thinks a computer is going to guide his love life.
コンピュータが恋愛生活を導いてくれると思っているのだとしたら、トーマスは明らかに気が狂ってしまったのだ。
When he wants to raise issues, he senses if the mood is right.
何か問題を提起したいとき、彼は雰囲気がそれにふさわしいかどうかを感じ取る。
John loses his senses of reality
ジョンは現実感を失う。
Mary lost all the senses of her body.
メアリーは体のあらゆる感覚を失った。
This exercise stimulates all the senses of your child.
この体操は、お子さんの持つあらゆる感覚を刺激します。
だから、英語のタイトルを日本語に直訳すると “感覚の世界で” と言う事になります。
意訳すれば “情念の世界で” とか “情痴に落ちて”と訳すことができるかもしれません。
つまり、次の部分が強調されて海外では観客に受け止められたようですよ。
阿部定の嫉妬と情痴
5月16日、吉蔵と情交中刺激を求めるため、同人の頸部を腰紐で絞めたが、同人の顔面が充血したため吉蔵はこれを治療するために帰宅静養したいと被告人に告げた。
被告人はさきに一時吉蔵と別れた間の嫉妬の苦しみを経験していたので到底同人と離れるのに忍びず、さりとて吉蔵には妻子を振り捨て自己と同棲するまでの意思がないことを察知していたため、吉蔵を永遠に独占しようと同人を殺害する事を決意した。
5月18日午前2時頃待合「まさき」の「さくらの間」で熟睡している吉蔵の頸部に腰紐を二重に巻き付け、その両端を両手で強くひきしめて同人を窒息死させた。
吉蔵の死体に痴戯しているうちに、同人を完全に独占したいため、女性は妻といえども死体の局部に指一本触れさせたくないと思い、牛刀で吉蔵の○莖及び○嚢を切り取った。
さらに同人の右上膊部外側に被告人の「定」の名を刻み込んだ。その後、傷口の血を手指につけ吉蔵の左大腿部に「定吉二人」なる文字を書き、その寝床敷布にも「定吉二人キリ」という文字を書き残した。
切り取った○莖及び○嚢を懐に入れて同日午前8時頃同家から姿を消した。
『予審決定書』より
つまり、“愛のコリーダ”という映画が愛と言うよりも情痴の極限を描いているように受け止められたようです。
映画を見終わってから英語のタイトルを見直して、僕はそんな感じを持ちました。
“意外に男性よりも、多くの女性がこの作品に興味を示したことが取りざたされたが、女性も無関心ではいられない題材を扱っていたのだろう。”
上で引用した映画評の中で、このように書いてありますが、感覚的にかなりショッキングな映像が多かったのだけれど、女性が無関心では居られなかったというのは、“真実の愛に生きた二人”という部分ではなかったろうか?
社会的な偏見だとか、道徳的なしがらみだとか、女性にいろいろと課せられた社会的な制約を振り切って、定さんが吉蔵に思いを寄せて、思いのままに愛に生きようとした。
そう言うところが女性の心を捉えたのではないか?
僕はそう思いました。
つまり、映画のテーマは“感覚の世界”ではなく、あくまでも“愛”ではなかったのか?
そういうわけで、僕は英語のタイトルよりも日本語のタイトルの方が映画の内容に近いと思ったわけです。
あなたは、どう思いますか?
映画のタイトルだけでなく、日本語を英語に訳す、あるいはその反対に英語を日本語に訳すという作業は直訳だけしていたのでは、内容がうまく伝わらない場合もありますよね。
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