『世界遺産で国宝の東大寺大仏殿を耐震補強した明治の建築家』
今回は誰もが知っている世界遺産「東大寺大仏殿」のお話です。
現在の大仏殿は、江戸時代に建てられた建物で、創建当初の大仏殿より小さいです。
創建当初の大仏殿は、源平の戦で焼失しています。
さて、この世界遺産の「大仏殿」が明治時代に「耐震補強」されているのを、ご存知
でしょうか?
日本では、明治になってから、古い木造建築を後世に残す為に、当時ヨーロッパで、
最先端の建築工学を学んだ日本の若者が、「耐震補強」を寺社の建造物に施しました。
「東大寺大仏殿」も耐震診断の結果、屋根の小屋組を補強しないと、大地震の時に
倒壊の危険がある事が判明し、小屋組を鉄骨で補強する事になりました。
ですから、現在も、大仏様の頭の上あたりに、明治の頃の耐震補強で入れた鉄骨が
入っています。(下から見上げても、見る事はできません。)
…実は、その当時に耐震補強した建物は、他にもあって、有名な所では、同じ奈良の
「唐招提寺」などもそうです。
明治時代にこれらの建物が、「耐震性に問題あり」と判定されたのですが、そもそも
日本建築は、地震の力を受け流す様な「柔」の構造になっています。
それに対し、西洋建築は、自然の力に対抗する「剛」の考え方です!
明治の建築家達は、日本建築は遅れていて、西洋建築こそ近代的な建築だと考えて
いました。
ですから、日本建築のスタンダードとも言える寺社建築を見て、「これはいけない!」
と、思ったに違いありません。
…こんな事を言ったら皆さんは不安に思うかもしれませんが…
どんな耐震設計の建物でも、巨大地震が来たらどうなるか、誰にもわからないのです。
…事実、こんな事がありました…
阪神大震災の後、日本政府は地震に強い建物の研究開発に多額の資金を出すように
なりました。
そして、兵庫県三木市に、実物の大きさの建物の耐震実験が出来る施設をつくったの
です。それが「Eディフェンス」と言う実験施設です。
その「Eディフェンス」で、耐震補強していない木造3階建て住宅と、耐震補強金具
でガチンガチンに固めた耐震補強した木造3階建て住宅を二つ並べて、阪神大震災と
同じ震動を与えました。
技術者達は、「耐震補強した建物」は軽い損傷だけで、「耐震補強してない建物」は
完全に倒壊するであろうと、誰もが考えていました。
…ところが…
結果は、全く逆でした!
「耐震補強した建物」は震度6で完全に倒壊し、「耐震補強してない建物」は軽い
損傷だけで済んだのです。
その原因は、今でも検証中だと思われますが、「耐震補強してない建物」の場合は
建物を構成する部材が、がたつき、きしむ事によって、上手に地震のエネルギーを
吸収していたと思われます。いわゆる「柔」構造です。
それに対し、「耐震補強した建物」は金具で部材どうしを拘束した為に、地震の
エネルギーを吸収できない「剛」の構造による事が原因と思われます。
…このように、科学者の理論を超えた現象と言うのも、珍しくないのです!
ですから、東大寺大仏殿を地震から守る為に、もう一度、建物の保存方法を皆で
考え直した方が賢明ではないでしょうか。
明治の建築家の判断が、間違っているとは言いませんが、今は当時はなかった様な
「免震技術」も確率しています。
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