藤白坂の三丁の辺りは
かなり山の中の道をゆきます。
そして4丁からは本格的な山道です。
ムシムシ注意報、クモの巣注意報も同時に発令です。
そして五丁ともなると、
両側から木の枝が覆いかぶさり、
クモの巣が我が物顔にはりめぐらされ、
すぐにクモの巣警報に変わります。
先ほどクモの巣の災難騒ぎがあったので、
過敏にならざるを得ません。
ここからは持参していたステッキを、
振り回しながら歩きました。
せっかく苦労して巣を作ったクモにしてみても
それを壊されるのですから災難としか言いようがありません。
もう少し人の通らないところに巣を作れば
丸く収まるのにと、クモにぼやきつつ歩きます。
六丁辺りの道から
キツネノマゴが咲き始めました。
野の花には珍しく腰痛に薬効があるといわれている花です。
まだ試したことはありませんが・・・。
そして七丁。
ここは大変豪華な丁石ポイントでした。
手作りの祠の中に石が7体並び、
賑やかな飾りがいっぱいついています。
いつもさびしげに山道にたたずむ石仏達とちがって、
なんだか楽しそうに見えますね~。
こんな癒しこそが、難渋して熊野詣を
続ける途上に必要でありがたかったんでしょうねえ。
お、よく見ると祠の屋根の下に
「七丁目」の文字があります。
そうかあ、住居表示の「〇〇町7丁目」
という書き方のルーツはこういうところからきてるのかと
ハッと気がつきました。
八丁石の周りには掃除道具が置かれています。
いいですね、地元の皆さんもこの道が好きなんですねえ。
そこを過ぎると、遠くに海が臨める場所に出ます。
思えば一の鳥居の海抜11mから
ずいぶん登ってきたものです。
関電の煙突の向こうには加太も見えています。
紀州街道から大川越えをして紀州に入ってきた人にとっては、
淡島神社を懐かしく思い出すポイントだったんでしょうねえ。
消防関係者が作ったこんなユニークな看板や
思わず叩いて渡ってしまいそうな石橋を超えると、
九丁、
十丁、
十一丁と続きます。
このあたりは黙々と登ることになるので、
さすがに汗が止まりません。
あれ?次にあったのが十三丁です。
どうやらこのあたりはこじんまりした丁石が続いていたので、
十二丁を見逃したようです。
そして十四丁。
そこが筆捨松遺蹟です。
やはりいわれがあります。
天下一の絵師が熊野詣の途中、
ここで童子と出会ったときに
松にウグイスの絵を描いたそうです。
そして童子は松にカラスを描きました。
その二種類の鳥が、
ポンポンと手を叩くと絵から飛び出し、
もう一度ポンポンと叩くと、
童子の絵にはカラスが戻ったのに、
絵師の絵にウグイスは戻らず、
それを無念と思った絵師が
松のところに筆を捨てたそうです。
それが筆捨松のいわれです。
結局、カラスを描いた童子が
熊野権現の化身であったと言われています。
天下一の絵師でも熊野の神様にはかなわない
という、いわば熊野の御霊験を
誇張したいがための話なんでしょう。
そしてもうひとつ、
あの三本足の八咫烏が
熊野権現の神使であることも
この話にあわせて熊野比丘尼ら広めたのかもしれません。
今の時代になって、
その松はもう残っているはずもなく、
話だけが残っているというわけですが、
その松があったところに
形になって残っているものが一つあります。
それが、その横にある「硯石」です。
これ。
筆捨松の伝承を訊いた、
和歌山藩の初代藩主徳川頼宣公が
そこの大石に硯を刻ませたものです。
総じて木の文化に支えられていた
熊野の文化の中で、
仏以外で形を残しているものは少なく、
硯石はその代表といえるかもしれません。
さあ、先を急ぎましょう。
十四丁まで来ましたので
あと一息です。
これが十五丁、
そしてこれが十六丁。
最後の十七丁はどんなだろうと
期待して登ってきたのですが、
さり気ない丁石でした。
まあ、目的地熊野はまだまだ先ですから、
ここで喜んでばかりもいられません。
その先で久しぶりの
熊野ブルーの道標に迎えられ、
すぐそばにはこんな地蔵もありました。
資料によっては、藤白坂の丁石地蔵は
18体あるとも書かれてありますので、
もしかしたらこれが藤白坂最後の丁石地蔵なのかもしれません。
その先の足下には、
これも久しぶりの導き石が埋められ、
見上げると和歌山県下四大宝篋印塔のひとつがお出迎えです。
足下と頭上。
まるで現代のマンふたと
電プレみたいやなと思いつつ
藤白坂を上り終えて
地蔵峯寺に到着です。
続く。
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