子育ての話。三十年以上昔の話だが、長男が産まれ、妻が出かけ、長男の世話を任されたときがあった。話の分かる亭主を装って、妻を送り出したものの、長男は妻がいないことを感じ取り、不安になるのだろうか?それまで上機嫌で遊んでいた長男が、妻がいなくなると、ぐずりだす。私はどうしたら良いかと途方に暮れ、喜んで妻を送り出したはずなのに、苛々してくる。もうそうなると、悪循環の連鎖は止まらなくなる。抱っこしてやっても、泣き止むことはない。困ったもんだ。
まずは、自分が気持ちを落ち着かせないと、長男が大人しく寝るようにはならないと思った。さて、どうしよう!そこで長男を抱っこしながら、子どもの頃に覚えた歌を歌い始めた。すると、不思議に長男は泣き止んで、眠りにつくことに気付いた。
それからというもの、長男を寝かしつけるときには、子守唄を歌うようになった。それも、四拍子のゆっくりした歌が一番効果があることも分かった。歌を歌うことによって、私の呼吸が整えられ、それが長男に安心感を与えるのだろう。そんなこんなで、私は、長男を抱っこして、子守唄を歌って寝かしつけるようになった。
しばらく経ったあるとき、長男が歌うのを聞いたとき、愕然とした。何と、長男は音痴で調子外れになっていたのだった。私は、かなりの音痴で、調子外れの歌しか歌えない。それが長男に移ってしまったのだった。罪の意識は非常に強く抱くようになっていた。
あるとき、職場の人からエレクトーンをもらうことになった。さっそく幼稚園でやっているエレクトーン教室に入れることにした。長男が小学校の高学年になったとき、長男の合唱を見学することがあった。そこで、長男の歌う声を聞いた。一番声が出ていたし、音程も外していなかった。音痴、調子外れが見事に解消していて、私は心からほっとした。下手な子守唄がこんなに出費になるとは、考えもしなかった。
子育てに、子守唄は非常に便利なアイテムですよ。ただし、音痴の人は気を付けましょうね!