夕方になって龍神が空低く降りて来たような雨雲が現れ、
雨がパラパラと降り始めました。
外出先(新宿)から帰宅し黒のスーツに着替えると、
いつしか雨は止んで青空が見えていました。
亡き恩人の通夜は長蛇の列が並んでいて、
始まる前から大勢の人たちでひしめき合っていました。
そんなとき、グレーのコート姿の故人が斎場の前に立っていました。
自分自身の葬儀である看板を見上げたり、
参列されている方々を眺めていました。
そして、行列の間を抜けるかのように歩いて行かれ、
ご家族のいる祭壇の前におりました。
その様子を見ていると、
亡くなられたご自身がまだこの事態を呑み込めていない感じでした。
なくなった事を受容できず、放心状態の 様子でした。
お焼香を終えると息子さん(喪主)が私の顔を見て、
「あっ」と何かを言いたそうでした。
私はただ一礼して階段を降りました。
これからゆっくりと時間をかけてご自身の死を理解されていくのでしょう。
そして、かつての同僚たちと再会した日でもありました。