数年前、年間計画のプレゼンテーションで「お菓子の家」を提案したのはOさんだった。私には迷いがあり、これから何をしたらいいのか思い浮かばす、すぐにその夢のような案を出したOさんを羨ましく思った。
でも大きく膨らんだ夢は容易には叶わない。計画の段階で、費用がかかり、自分たちの力を総動員しても難しいことが次第にわかってきた。彼女の力に期待をしたのだけれど、一緒に関わっても狭いネットワークだけではどうにもならないと、最終的に断念せざるをえなかった。
あのとき、例えばお菓子やさんであるとか、もっと何か大きな力を借りれば、できたかもしれないという思いが残った。『ヘンゼルとグレーテル』になって喜ぶ子どもたちの姿を思い浮かべ、Oさんの無念さをいつか形にできないかという淡い思いを抱き続けた。
2008年度の計画で「赤ちゃん大学」が公民館との共催で行われた。このとき、子どもとの遊びでSさんがダンボール箱で作った家を持ってきた。私が子どもたちと遊んだものとは大違い。窓にカーテンがあり、ドアも開閉がしやすくきっちりと付いていて、とにかくきれいなのだ。屋根は高くつけられ、子どもが一時ここに住んでいたというほど居心地よくできていた。見事だ。こんなふうに変身するなんて。
そのときふと思ったのは「お菓子の家」だった。これならできるかもしれない。すべてお菓子というわけにはいかないけれど、一面にお菓子を貼り付ければ立派でおいしそうな家になる。ちょうど1か月ほど後にクリスマス会が企画されている。飾りのメインになると思った。
クリスマスの準備をするのは1年で1番楽しい仕事だ。我が家では枝がしなるくらいオーナメントをぶらさげたクリスマスツリーと、ベランダにトナカイや白鳥やりんごなどのイルミネーションを飾る。講座に参加する方が喜んでくれるように、みんなで持ち寄った飾りは「お菓子の家」とともに賑やかに夢を描いていた。
残念ながらOさんは遠方で参加できないが、メールで送った写真を喜んでくれただろうか。その場にいたらどんなによかったか、きっと私よりもっとすてきに飾ってくれただろう。心の奥にあった思いが叶い、講座を締めくくった。