緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

がん放射線治療の副作用(悪心・嘔吐)のこと

2017年09月10日 | 医療

がんの放射線治療による
悪心嘔吐の発生頻度は
1000名ほどの前向き調査で
約30%と報告されています。
Maranzano E, et al. Radiother Oncol. 2010; 94: 36-41.

放射線治療で悪心発生頻度が最も高い
全身照射では
80~100%と高率です。
Spitzer TR, et al. Bone Marrow Transplant. 2000; 26: 203-10.

その全身照射において、
5-HT3拮抗薬を予防投与したところ、
悪心・嘔吐の完全制御率はで50~90%でした。(!)
Maranzano E, et al. Radiother Oncol. 2005; 76: 227-33.


5-HT3拮抗薬では、グラニセトロンだけだと思いますが、
放射線治療の消化器症状に保険適応があります。

その他では、D2遮断薬の
メトクロプラミドに保険適応があります。

NCCN ガイドライン2015 では、
この5-HT3拮抗薬にデキサメタゾンを併用することを
推奨しています。



しかしながら、放射線治療患者さんへの
制吐剤投与は17%に留まっており
(予防的投与12.4%,発現後投与4.6%)
放射線治療の悪心・嘔吐は薬物療法に比較して
重篤度が低いため、過小評価されている
という報告もありました。
Maranzano E, et al. Radiother Oncol. 2010; 94: 36-41.

また、別の論文では、
投与は39%で
その内訳は、
抗ヒスタミン薬40%,
ドパミン受容体拮抗薬37%,
5-HT3受容体拮抗薬17%

放射線治療で悪心が生じてしまった患者さんの1/3 は
症状緩和が不十分で、
適切な制吐療法を望んでいたと述べています。
Enblom A, et al. Support Care Cancer. 2009; 17: 23-32.

出典;日本癌治療学会がん診療ガイドライン制吐療法 CQ10


放射線治療中の患者さんの悪心・嘔吐・・・

もっと目配り、

気配りが

必要そうです・・

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