緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

ELSI(エルシ)ラグ:遺伝子情報で差別を受けないために

2023年04月23日 | 社会時事
先週終わりから、
4年の一度の医学会総会が
開催され、
参加していました。

2011年は東北震災でしたが、
2015年、2019年、2023年とコロナをくぐりぬけた開催でした。

今回の医学会総会2023
トピックスは、
ビッグデータ、AI、DX、ゲノム!

疾患ではcovit-19、がん、糖尿病などはありますが、それらの華やかさに霞ます・・



ところで・・
ELSI(Ethical, Legal and Social Issues)
エルシ

倫理、法律、社会的問題をまとめて、「ELSI」と呼びます。



ゲノムなど究極の
個人情報に関する
ELSIは、
アメリカいた
1990年代には
すでに、
社会的な話題として
議論が広がっていました。

日本では、
最近になって
耳にすることが
増えてきましたが、
社会的議論はどうなっているのだろう・・と感じていました。



そのELSIが今回シンポジウムに取り上げられていました。




ELSIは、
医学研究にとどまらず、
AI、ロボット、環境科学など
科学研究という広域を対象にします。

今回のシンポジウムでは、
ゲノム、遺伝子検査におけるELSIー
遺伝子情報によって受ける差別について
言及されていました。



様々な遺伝子解析が進んでいます。
遺伝的疾患、体質など、多くの遺伝子のゲノムシーケンシングが行われています。
遺伝子解析というと、がんの治療薬の選択に使われるなど臨床的にはよく用いられています。




疾患のかかり辛さ、
かかりやすさを
遺伝子で見ることは
イメージしやすいと思います。

これが、生命保険の加入などに影響を及ぼすとしたら・・



能力や集中力などが
遺伝子診断で明らかされ
入学、就学、仕事、就職に遺伝子情報が用いられてしまったら・・

子孫のための結婚に、
望む遺伝子を持った
配偶者を求めることはないだろうか・・

逆に、
遺伝的問題によって、
入学の取り消し、
就職の不利益、
結婚の破談など不当な扱いを受ける可能性は・・




海外では遺伝子情報についての法整備がなされています。
日本では法律はありません。



海外で使えるのに
日本で使えない薬剤を
ドラッグ・ラグと言います。


本シンポジウムでは、

海外では整備されているのに
日本では立ち遅れているELSIを
ELSIラグ
と呼んでいました。



ゲノムの法整備について、
早期に実現するよう社会から声を上げていく必要があります。

私達の日常が、究極の個人情報であるゲノムによって、差別を受けることがないように・・・

Jill WellingtonによるPixabayからの画像 

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (e3693)
2023-04-24 19:30:15
ひまわりさん

言葉が届いている…そう感じさせてくださり、感謝です!
コメント、本当にありがたいです!!

aruga
返信する
なるほど (ひまわり)
2023-04-24 19:08:01
こんばんは。
大きな問題提起がされていて、そうだなぁと思いました。
科学も医学も、進歩すればそれを悪用する事態も発生してくるんだろうと思います。
考えておかなければならないことですよね。
また、発信してください。
返信する
Unknown (e3693)
2023-04-24 08:16:25
@harapeconakimusi さん

危機感をご理解くださったコメント、心強いです。
ありがとうございます!!

aruga
返信する
Unknown (harapeconakimusi)
2023-04-24 06:44:22
諸々の個人情報が1枚のカードと紐付けされてゆくその先にもしかしたら…と遺伝子情報もイメージしました。諸々、個人情報を指1本で得ることができる時代へ移行ならそれに伴う法の整備無くして個人情報とは言えないと思います。
返信する

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