緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

心を開くこと、誠実であること、そして症状緩和

2020年11月22日 | 医療
今年のもみじは、
一本の木で真っ赤にならないようです。
緑から葉先の紅色まで、
グラディエーションが綺麗です。



1997年シシリーソンダース先生が
イギリスから初来日されました。


(写真は、私が勤務していた病院に
 視察にいらっしゃったときのもの)

上智大学の講堂で、緩和ケアに従事する人たちが
固唾を飲んで聴き言っていました。

その中で、
 opennesshonesty症状緩和と共に
三角を作り
それが緩和ケアの根幹にあることを
話されたことが今なお耳に残っています。




私の病院では、緩和ケアチームのカンファレンスメンバーで
ミニ勉強会を毎週順番に担当を決めて10分話をします。

内容は何でも可。

アメリカの小学校の show & tell のような感じです。

12月には私が当たっているので、
この古い記憶にある3つの要素が書かれた
文献などがないか探してみました。

ありました。
それも、丁度、来日されたころ
1997年のトワイクロスの総説。


(前略)

The concept of specialist palliative-care units still elicits a mixture of responses. For most people, however, actually visiting one leads to the strange discovery of life and joy in the midst of death and distress. It is perhaps in this paradox that the secret of palliative care resides. The paradox is the end result of ordinary, down-to-earth activities such as skilled nursing care, good symptom management, and sensitive psychological support–that is, human compassion in action. All are expressions of respect for the patient and of corporate activity in which professional individualism is balanced by multiprofessional teamwork. The house-of-hospice model is a good way of expressing this (figure), with its foundation stones of acceptance (whatever happens, we will not abandon you) and affirmation (you may be dying but you are important to us). Hope, openness, and honesty are the cement. 

Robert Twycross, MD.
The joy of death. SUPPLEMENT| VOLUME 350, SPECIAL ISSUE, SIII20, DECEMBER 01, 1997. The Lancet
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(97)90053-2/fulltext


死や苦痛。その最中にあって、人生の発見や喜びを見出すというパラドックス。緩和ケアにこのパラドックスがあるということがその醍醐味なのであろう。このパラドックスは実際の熟練したケア、優れた症状コントロール、感性の高い心理的支援、人としての思いやりなどに裏打ちされた結果である。これは、患者に敬意を払いながら、個々の専門性がバランスの取れたチームとなって活動し、達成されていく。何が起こってもあなたを見捨てませんという気持ちで医療者が受け止めていること、死に直面したとしてもあなたは私にとって大切で敬うべき存在である言い切ることができること。このような要素を、”希望”と”心を開くこと”、”誠実であること”が膠のようにつなぎ合わせていくのだ。
(筆者の意訳)




このLancetの著者であるトワイクロス先生は、
ソンダース先生の立ち上げの同志であり
がん疼痛緩和をサイエンスにしていった先生です。
(2006年来日された時の写真。
 後ろの腕は・・16年前の私・・)



最後に出てきます。

Hope, openness, and honesty
このことを原点に立ち戻って
少し考えていきたいと思います。

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