緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

JCO痛みの特集とchemical coping

2014年05月18日 | 医療

ある方から

「この間のJCO、痛みの特集でしたよ」

すっかり見落としていました。



JCO 最近の雑誌のページから
May 5, 2014 

Jouenal of Clinical Oncology Early Release Articles

<Overview>
Pain in Patients With Cancer

<Review Articles>
Principles of Opioid Use in Cancer Pain

Under- or Overtreatment of Pain in the Patient With Cancer: How to Achieve Proper Balance

Pain and Nociception: Mechanisms of Cancer-Induced Bone Pain

New Opioids
 ・
 ・
 ・

この中に、

Assessment and Management of Chemical Coping in Patients With Cancer
というものがありました。

Chemical Coping ???

なんだろ・・

検索してみました。

Chemical Coping
There is a vast middle ground between generally compliant drug-taking behavior and frequent or severe aberrant behaviors that are likely to be associated with addiction. A large group of patients in the middle fall between these two ends of the spectrum — those who display aberrant behaviors periodically and may have a mixed response to opioid therapy. While most research focuses on the prediction, assessment, and treatment of substance use disorders, little attention has been paid to this group of patients.43 Some of these patients may be termed "chemical copers."

Palliative care specialist, Eduardo Bruera, MD, and colleagues coined the term "chemical coping" to describe a pattern of maladaptive coping through drug use that they observed in patients struggling with the stress of end-stage cancer.43 Building on this notion, Kenneth Kirsh, PhD, and colleagues adapted the notion to patients with pain, in general, and ultimately developed a scale to detect chemical coping. It is important, however, to understand the current definition of this phenomenon.43
(http://www.prescriberesponsibly.com/articles/patient-diversity)


43  Kirsh KL, Jass C, Bennett DS, et al. Initial development of a survey tool to detect issues of chemical coping in chronic pain patients. Palliative and Supportive Care. 2007; 5:1-8.


薬物依存とそうではない真ん中には
大きな-いわばグレーゾーンがあって、
痛みではなく、
がんや死を意識するなどしたストレス
(他の文章では、不眠、
いらいら、不安、せん妄)などに、
オピオイドを使ってまぎらわそうとするような
対処方法をとるようなパターンを
chemical coping というようです。




実際の臨床でも、まれなことではありません。

依頼の中でも、
色々やっているんですが、痛みがとれません。
頻回にレスキューを要しているので、相談にのってください。
痛みで飲んでいるというのはないような気がするんです。

というような場合、
じっと観察すると痛みではない理由で
レスキューを依頼しているケースがあり、
オピオイドではなく、
抗精神病薬などで軽快したようなケースを
経験します。





最近生じるようになった新しい概念ではなく、
今まであった現象に用語をあてはめたようなものです。

ただ、こうした言葉を知らなかった自分に
愕然としました。




この1年間、講座開設に謀殺されていたとはいえ、
でも、本当に、勉強不足だったことを
思い知った週末でした。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
勉強になりました (おがたけんいちろう)
2014-05-19 09:30:44
Chemical Coping 国は違えど思っていることは感じることは同じだということがわかりました。
返信する
おがたけんいちろうさん (aruga)
2014-05-24 22:02:27
ご指摘くださっている通り、コーピングスタイルは、人として共通するところが多いと思いました。ドラック、人によってはアルコールやたばこなどもその要素があるように思います。
返信する
長野北信地区での勉強会にて (miminneko)
2014-06-03 06:07:26
先生ご無沙汰しております。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。。昨日、事例検討会にて、ケミカルコーピングについて医師が紹介して下さいました。オピオイドの不適切使用例としての気づきは重要であると思います。JCOの引用などご紹介くださり有難うございます。さらに理解を深めて行きたいと思います。
返信する
miminnekoさん (aruga)
2014-06-08 22:08:35
こちらこそ、大変ご無沙汰しています。
こうして、ブログに今もお立ち寄りくださっていることに、本当にありがたく感じています。
勉強会でケミカルコーピングの紹介があったとのこと。元々、大変熱心な地区でいらっしゃいましたから、今なお継続されていることに敬服です。
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