緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

Happy Mother's Day (3)

2007年05月16日 | 家族
マッサージをしたり、音楽をかけたり、声をかけながら
最期の2日間ずっと傍にいることができました。

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夕方の4時ごろ、顔を拭きながら母に言いました。

「お母さん、もう、いいのよ。
 そろそろ、逝った方がいいよ。
 おばあちゃん、待っててくれてるから。
 また、会おうね」

それまで、意識が混濁していた母が
はっきりと、うなずき、「ウン」
と言ったことを覚えています。

物事には、“その時”があります。
それをなすのに、時が満ちているという感覚です。
“It's time to go.” 
そういう会話でした。



それから、次第に意識も血圧も低下していきました。
夜中の2時ごろ
ベットの脇に椅子を並べていた父が

「止まった・・」

そうつぶやきました。

骨髄異型性症候群と診断され
急性白血病化していることがわかり
6ヵ月後のことでした。


母の死は私にとって大きな意味がありました。

母は、死を持って、私に、
私が日々行っている診療が
間違っていないということを教えてくれました。

症状緩和薬の使い方
死に逝こうとしている患者を見守る家族の心情
そこへの関わり

貴方は間違っていないよ
自信を持っていいのよ
そう、母は人生をかけて
私に教えてくれたように感じています。

最期の最期まで、母であり、教師でした。

母の日に寄せて・・・

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます (春野ことり)
2007-05-17 04:26:09
涙が出ました。肉親の死に面して「自分の日々行っている診療が間違っていないこと」を教えられる。そんな医師でありたいと思いました。
ご冥福をお祈り申し上げます。
返信する
私の、今まで言えなかったこと。 (ぴょん)
2007-05-17 09:41:29
私、主人の亡くなる日。
「ねぇ、ねぇ、もう疲れちゃった?疲れたねぇ。」って主人に、耳元でささやいてしまいました。
その後すぐに、主人の呼吸が凄く浅くなり、足には、素人の私にも解るチアノーゼ状態が出て、サヨナラになってしまいました。
言わなきゃ良かった。あんな事。と今まで言えませんでした。1年以上過ぎた、今、3人の友人にしか言えませんでした。良かったのかなぁと、今でも一生の不覚・・・。でも良いのよっと友達は行ってくれているのですが・・・。
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Unknown (たぬくまぞうさん)
2007-05-17 22:33:41
僕の母も骨髄異型性症候群でした、でも年末で大学病院を退院した次の日に意識不明になり、緊急で再入院、数日後に亡くなりました、原因は低血糖による意識不明でした、退院する前にお医者さんは畳の上で死なせてあげなさいとさかんに言っていました、自宅で意識が無くなりそのまま亡くなったので仕方ないかなと思っています。
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コメントありがとうございます (aruga)
2007-05-17 23:26:34
春野先生
いつも電車の中で頂いたコメントを読みながら通勤しているのですが、先生の言葉に思わず涙ぐんでしまいました。周りの人はほとんど寝ていたので、よかったのですが・・・本当にありがとうございました。

ぴょんさん
よかったのかよくなかったのか・・それは、きっとぴょんさんしかわからないような気がします。それまでのお二人の歴史を知っているのは、ぴょんさんに勝る人はいないとおもいますから。

たぬくまぞうさん
そうですか、同じ骨髄異型性症候群だったのですね。ブログにお邪魔いたしました。低血糖、低体温、「どうしてこんな状態で退院させたのか」という救急の医師。大変なことでした。でも、その病態でしたらきっと苦痛はなかったと思います。痛みとせん妄と腎不全の最期だった母を思うと、もしかすると羨ましいと言ったかも知れません。
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