2014年5月に
JCOのがん疼痛特集の
中の一つの総説で知った
chemical coping
ケミカルコーピングの記事を書きました。
それ以来、初めて知りましたという
コメントともに、この記事へのアクセスは
いつも少なくありませんでした。
http://blog.goo.ne.jp/e3693/e/41637a07dff4736d0a2d3784efc3e1e8
先週札幌で開催されたサイコオンコロジー学会で
ケミカルコーピングのシンポジウムの座長で
参加させて頂いた所、
120席位の小さな会場に
その倍の参加者があり、
入りきらず
また、ドアも内開きのため解放もできず、
何とか立ち見の方を前の空いたスペースに
誘導させて頂き、
カーペットに直接座って聞いていただくなどしたという
90分になってしまいました。
ご参加してくださった方で
椅子に座ることができなかった方々、
本当に、申し訳なく思います。
遠目にも、存じ上げた方々のお顔を見つけては、
恐縮でした。でも、お付き合いくださり、
本当にありがとうございました。
質疑応答になると、
最初は、概念の質問だったのですが、
次第に、管理の方向に話が向いていきました。
レスキューの回数制限、
痛いという訴えをどうとらえるか、
在宅では服薬管理ができず、どうすればよいのか、・・
などなど・・
ああ・・こっちに向かってしまっている・・
日本人の麻薬に対する懼れは
根底にありますから、
いかにオピオイドの制約を設けるかという話ではなく、
人の痛みは薬物治療だけでは十分ではないという話なのです。
体の痛みは心の痛みと同時に
表裏一体で存在していて、
非薬物的ケアを併行させていかないと
ケミカルコーピングのような現象が
目立ち始めてしまい、
ひいては、長いがん治療プロセスの中で、
良質のがん疼痛緩和が阻害されてしまう
原因の一つとして
知っておくべき概念と位置付けた方が
有益であると考えます。
ですから、在宅医療の方が、
患者さんにとっては生活空間の中での医療であり、
無機質な病院の病室とは異なり、
ケミカルコーピングのリスクは
より低く維持できるはずなのです。
在宅医療では内服管理ができないから
ケミカルコーピングを招きやすいというのは
医療者目線の管理するという観点からみたものです。
また、こうした便利な言葉が登場すると
除痛が上手くいかなくなった時、
あまり病態を考えず、ケミカルコーピングだから。。といって、
補助薬やNSAIDsやブロックなどを
考えなくなってしまう弊害もあります。
かつての心因性疼痛と診断され、
患者さんの訴えを聞き流してしまうような
医療姿勢を見直してきたわけですが、
そこに戻らないようにしなくてはなりません。
ケミカルコーピングという概念を知ることで、
そうならないよう予防的な関わりを意識し、
しっかりと難治性疼痛としての鑑別、病態評価を実施し、
かつ、非薬物的なケアをどのように平行させるか
カンファレンスなどの共通言語して用いてほしいものです。
(ちなみに、心因性疼痛は、心の痛みで体が痛いこと。
心の痛みが頭が痛い、腰が痛いという体の不調としての表現となること。
ケミカルコーピングは、心の痛みをオピオイドで解決しようとすること。
体が痛いというより、寝られないから、不安だからオピオイドを飲んでおこうというもの)