がん性腹膜炎とは、腹膜にがん細胞が根をはった状態。
もう少し細かく話すと、
腹膜は、一定の規則正しい構造をした2枚の膜が合わさったものですけれど、
がんが目詰まりを起こさせたり、規則正しい構造が一部破綻したりした状態になり
炎症をともなっている状態。
で、ここから体液がしみ出てくると腹水になるのです。
腹水が沢山たまると、腹壁が引き伸ばされた不快感がまず出てきます。
多くの場合、体の膜は一旦伸びきってしまうとあまり不快ではなくなるのですが、
がんがあるためそれに加えて浸潤した痛みを認めるようになります。
薬物による症状コントロールは、除痛に準じます。
まず、伸展される不快感には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)。
これで取れきれなくなったら、オピオイドを開始。
それでも、不快感が残れば、鎮痛補助薬を併用します。
内服が難しくなっているときはケタミン50mg/24時間を、
持続静脈投与または持続皮下注射とします。
経口が可能ならば、鎮痛補助薬のどれかでいいと思います。
腹膜炎には メキシレチン 300mg 3X が
効く事が多かったので比較的良くつかますが、
ガバペンチン(200mg)2錠 2xを患者さんに十分説明し、
併用することも増えてきました。
ガバペンチンは、鎮痛補助薬として海外ではファーストラインの薬剤です。
日本では、抗てんかん薬として数年前に発売になりました。
(経口で薬が飲めず、中心静脈栄養法のカテーテールが入っているとき)
① ロピオン 1A /生食50ml 2~3回
(すみません、一般名がすぐに思い出せなくて、商品名です)
② 塩酸モルヒネ注 (10mg) 2A /生食48ml 加えて 50ml
1ml/時間 24時間持続静注 疼痛時 早送り 1時間量/回 15分開けて8回/日まで
③ ケタミン (200mg/20ml) 1A /生食30ml 加えて50ml
0.5ml/時間 24時間持続静注 IVHカテーテル側管から
効果を見ながら、0.5→1.0→1.5→2.0ml/時間と増量していきます。
よく効くので、だいたい0.5か1.0で維持量となることが多いです。
少量の初期の腹水なら、ステロイドで消えてしまうこともあります。
抗炎症作用や膜の安定化作用などによるのではないかと思っています。
ベタメタゾンやデキサメサゾン 4~8mgを 数日投与し、
半分ずつ減量してきて 1~2mg程度まで減量できたら暫く維持量とします。
症状にあわせて、もっと、思いっきり量を増やすこともあります。
ただ、基本は十分な量を投与し、次第に減量、維持量とすることです。
この治療のポイントは、オピオイドやNSAIDsの初期治療に併用して
ステロイドとケタミンを用いていくことです。
症状緩和は患者さんの全身状態に合わせて微細な調整を繰り返していくことが重要ですから
あくまでも、一例であり、主治医と十分相談することが大切です。
(以前の記事に書き加え、アップしました。その時いただいたコメントはそのままです)
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情報交換や、励まし合いで繋がる pcでの仲間なのです。ここのブログ公表してもいいですか?
感謝ですね。リレーのこと知りませんでした。調べます。
(とても感動したのでこの場をお借りしました。ごめんなさい)
婦人科がんが・・というより、骨盤底の内臓痛の特徴と言った方が良いように思います。こういう痛みは、鎮痛補助薬はなくても、オピオイドが良く効いてくれます。腹膜炎は体性痛がメインになってくるので、オピオイドの効きがもうひとつという感じになり、ケタミンなどの補助薬を加えると良質の緩和になることが多いようです。
uechanさん
わかりやすいといっていただいてホッとしました。ここは、リンクフリーです。ただ、思ったことをつれづれに書いている範囲なので、個別なご相談はご容赦の程、何卒よろしくお伝えくださいませ。
キャサリンさん
この記事は、06年10月に書いたものを改定したものです。一番最初のコメントを改めて読ませていただき、1年半前に書かれた出来事から、卒業と書かれた今回までを思い巡らしておりました。その間も、体が許すかぎりの活動を続けてこられたのですね。本当に素敵です。
ホ、ホワイト クィーンですか・・・いや~光栄です。(ん、私の事ではない?!)
ゆきんこさん
是非、知識を共有していきましょう。