まだ、大学病院にいた頃のこと・・
他のクリニックから在宅医療に出向いていました。
大学病院は急性期病院で
三次医療を担っていますから
一次医療の在宅医療は大学病院からはできないのです。
ですから、勉強させてもらうために
わざわざ在宅診療所の非常勤医師となって
訪問診療を行っていました。
あきさん(仮名)は、胃がんの60代の女性でした。
都内のある大学病院に入院されていましたが
ご本人の希望で退院したと聞いていました。
症状緩和が必要だろうからと
私に訪問診療の依頼がきました。
初めてお目にかかったとき
あきさんはこうおっしゃいました。
「私、外科病棟に入院していたんです。
がんはお腹に広がっていて
手術も抗がん剤も難しい状態だと
聞かされていました。
治す治療のない私は
外科病棟で、誰も相手にしてくれないのです。
主治医はいました。
手術が忙しいからと、来ても5分といてくれません。
看護師さんだって、そりゃあ私なんかより
手術をした後の患者さんに手が取られますから
ナースコールを押しても中々来てくれません。
あんなところ、いたくないって
我侭言って家に帰ってきました。」
(続きます)