緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

在宅訪問診療の思い出(1)

2007年10月31日 | 医療

まだ、大学病院にいた頃のこと・・
他のクリニックから在宅医療に出向いていました。
大学病院は急性期病院で
三次医療を担っていますから
一次医療の在宅医療は大学病院からはできないのです。
ですから、勉強させてもらうために
わざわざ在宅診療所の非常勤医師となって
訪問診療を行っていました。

あきさん(仮名)は、胃がんの60代の女性でした。
都内のある大学病院に入院されていましたが
ご本人の希望で退院したと聞いていました。
症状緩和が必要だろうからと
私に訪問診療の依頼がきました。

初めてお目にかかったとき
あきさんはこうおっしゃいました。

「私、外科病棟に入院していたんです。
 がんはお腹に広がっていて
 手術も抗がん剤も難しい状態だと
 聞かされていました。
 治す治療のない私は
 外科病棟で、誰も相手にしてくれないのです。
 主治医はいました。
 手術が忙しいからと、来ても5分といてくれません。
 看護師さんだって、そりゃあ私なんかより
 手術をした後の患者さんに手が取られますから
 ナースコールを押しても中々来てくれません。

あんなところ、いたくないって
 我侭言って家に帰ってきました。」

(続きます)


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