後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔225〕『地域演劇教育論』の表紙を飾ってくださったラボ・テューターの宇野由紀子さんのご逝去に胸が潰れました。

2019年09月04日 | 追悼文
 8月27日(火)、ラボ・テューターの宇野由紀子さんが58歳の若さで亡くなられたという訃報が入りました。ご本人からも闘病中と伺ってはいたものの、まさかこんなに早く逝かれるとは想像もしませんでした。ただただ残念でなりません。
 宇野さんはラボ教育センターのラボ・テューターとして活躍され、指導者的立場にありました。
 私が彼女と親しくお話させてもらうようになったのは、2014年の5月のことでした。ラボ教育センターの言語教育総合研究所の所員としてラボの「テーマ活動」の研究のために、ラボ・パーティの見学を願い出たところ、ラボの事務局から最初に紹介されたのが東京・小平市の宇野パーティでした。事務局の吉岡美詠子さんと2人で3回にわたってパーティ訪問をしました。2時間ほど活動の様子を拝見し、30分以上にわたって意見交換をしました。それぞれの訪問の総括もメールでやりとりしました。我々が訪問できなかった日の様子についてもメールで密に連絡を取り合いました。
 最後の4回目の訪問はパーティでのテーマ活動の発表会でした。
 宇野パーティ訪問の様子は拙著『地域演劇教育論-ラボ教育センターのテーマ活動』(晩成書房、2018年)に18頁にわたって詳しく書きました。行松泉パーティ、高橋義子パーティと合わせて「テーマ活動づくりとパーティづくり」としてまとめています。
 この本の表紙には宇野パーティの日常活動の1つ、クリスマス会でのゲームのスナップを掲載させてもらいました。私のラボでの研究テーマは「創造的なテーマ活動づくり」ということなのですが、その前提としてパーティ内での濃密な人間関係の構築が必須です。日常的な人間関係づくりの上に発表会は成立するということになります。この写真はそのことを見事に表現・活写してくれていると思います。
 宇野パーティの果たした役割については拙著に触れていますので手にしていただければ嬉しいです。

 8月31日(土)お通夜に伺いました。式場は親類の方、ラボ教育センターの人、テューター仲間、ラボっ子たちなどで溢れていました。にこやかな宇野さんの写真は彼女の優しい人柄を伝えていました。
 受付をしていた吉岡さんは亡くなられる前日にお会いになったそうです。2人でのパーティ訪問にも話が及び、故人を偲びました。
 パーティ訪問からしばらくして、宇野さんがテーマ活動の発表会の挨拶に立たれたことがありました。的を射た心に残るいい話だったのでメールで感想を伝えたところ、とても喜んでくれました。そして、拙著を送付したときだったでしょうか、お礼のことばとともに自身の病気についても触れられていたように思います。

 ラボ・テューターとしてはまさに脂がのりきった年齢です。さぞかし無念だったことでしょう。
 宇野さん、いろいろありがとうございました。ご冥福をお祈りします。合掌。



●『地域演劇教育論-ラボ教育センターのテーマ活動』(晩成書房HPより)
〔まえがきより〕
ラボ教育センターという魅力的な教育組織に出合ったのは1998年の夏のことだった。
ラボ付属の言語教育総合研究所での研究活動を通して、ラボの活動が「優れた地域での演劇教育の典型」であることを確信するに至った。
ラボ・テューターやラボっ子は活動のすべてに、私の提起する「ことばと心の受け渡し」を充満させ、他者とシンクロする「からだ」を兼ね備えていたのである。
ここでは、子どもの生理や論理を優先させ、まさに「学びの地平」が拓かれつつあった。
独創的で魅力にあふれたテーマ活動の一端でも紹介できたらという思いで出版を思い立った。

〔目次より〕
まえがき
福田三津夫さんの新著に寄せて=松本輝夫
福田三津夫さんとの運命的な出会い=矢部 顕

第1章 地域の演劇教育─ラボの場合

■ラボ・ワークショップ全国行脚
1すべてはラボ教育センター本部から始まった
2ラボ・テューターとラボっ子から学ぶ
3各地でのワークショップ・アラカルト
4ラボ・テューターとラボっ子の「からだ」

■テーマ活動づくりとパーティづくり─ラボ・パーティ参観記
1研究テーマを設定する
2居場所づくりとテーマ活動─宇野由紀子パーティの巻
3テーマ活動「スサノオ」を創る─行松泉パーティの巻
4ことばとからだのハーモニー─高橋義子パーティの巻
5三つのラボ・パーティから視えたもの

■テーマ活動は地域の演劇教育
1演劇教育とは何か
2演劇教育の育てる力
3テーマ活動は地域の演劇教育
4テーマ活動は限界芸術の一つ
5テーマ活動における表現

■テーマ活動の表現を考えるための本

第2章 新・実践的演劇教育論

*演劇教育の原点を探る1

高山図南雄の「あらためてスタニスラフスキー」
竹内敏晴『主体としての「からだ」』
鳥山敏子の教育実践
副島功の仕事
辰嶋幸夫のドラマ
渡辺茂の劇づくり「LOVE」

*演劇教育の原点を探る2

寒川道夫の光と影
マリオ・ローディと演劇教育
演劇教育としての授業
大学の授業と演劇教育

あとがき
関連資料
初出一覧