ヤン・ファン・エイクと並んで初期フランドル画家の双璧をなすロヒール・ファン・デル・ウェイデンの生涯と作品を詳述した大著が昨年の秋に出版されました。私の知る限り日本初の快挙です。
本の題名は『ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン-情動と優美のフランドル画家』(岡部紘三、勁草書房)ですが、多くの関連本はロヒール・ファン・デル・ウェイデンと表記しているのでここでは慣れ親しんだ「ファン」を使うことにします。
前述したようにヤン・ファン・エイク(著者はヴァン・エイクと表記)については日本でも多くの出版物を確認できますが、ロヒール・ファン・デル・ウェイデンについては「週刊グレート・アーティスト」の40巻目『ファン・デル・ウェイデン』(1995年3月、同胞舎出版、35頁)に私は発見できるのみです。これはミニ写真集といった趣で私がロヒールを知る手がかりにした本です。
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もう1冊、私が大事にしているロヒールの「写真集」といってもあながち間違いではない本があります。確かミュンヘンのアルテ・ピナコテークという大きな美術館で購入した記憶があります。それは『Rogier van der Weyden』(Stephan Kemperdick、140頁)というドイツ語表記の本です。5.99ユーロですから800円もしないので手にしたときは飛び上がって喜んだものです。これは当然のことながら岡部さんの本には参考文献として巻末に紹介されています。
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さてこのロヒールの本ですが、間違いなくロヒールに関しての基本的文献になる本だと思います。ロヒールの生涯や仕事について、とりわけ1つひとつの作品について克明に解説されています。岡部氏はまさに博覧強記、おそらく複数の外国語を駆使できる方でしょう。
注文を付けるとすればやはり写真でしょうか。ロヒール関連についてネット検索すると良質の写真が目に飛び込んできます。この本は写真集ではないのでどうしても写真が小ぶりになります。それでも口絵のカラー写真は鮮やかですが、本文中のモノクロ写真はデテールが目の悪い私にとっては今ひとつです。
ロヒールの真作、工房作、ロヒール系の作品などがそれぞれいくつあるのか、およその数を大胆に書いてくれると読みやすかったと思います。
いずれにしても、この本はおそらく生涯をかけて書き上げた労作であり、フランドル絵画史の基本的文献として後世に長く残るものだと素人の私なりに合点しました。
■『ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン-情動と優美のフランドル画家』岡部紘三、勁草書房
(勁草書房HPより)
*文豪ゲーテが「この絵画一点でも私の全詩作に優る」と讃えたウェイデンの絵。その生涯と真作および工房作品について解説する。
出版年月 2020年9月
判型・ページ数 A5判・448ページ
定価 本体6,000円+税
*内容説明
個人がアイデンティティを求めるようになり宗教画の他に肖像画も発達した15世紀。細密な写実描写と油彩による輝かしい色彩表現が特徴のフランドル絵画の中でも、内なる感情に訴えるウェイデンの絵画は特に人気があった。緻密な作品解説と周辺の画家との影響関係によって、日本では未だ知られざる初期フランドル派巨匠の魅力に迫る。
目次
はじめに
第1章 謎の前半生
一 画家の素顔
二 トゥルネのカンパン工房
三 「二人のロヒール」をめぐって
第2章 トゥルネ時代(一四二七~三五年頃)
一 対幅画ないし両面画
二 受胎告知の三連画
三 十字架降下
第3章 初期ブリュッセル時代(一四三五~四〇年頃)
一 都市の画家
二 聖母画の諸相
三 聖フベルトゥスの二連画
四 市庁舎の正義図
第4章 中期ブリュッセル時代(一四四〇年代)
一 アーチ枠の活用
二 中期の磔刑画
三 聖会話画の断片
四 ボーヌの祭壇画
第5章 聖年のローマ巡礼
一 ローマ巡礼
二 その成果
第6章 後期ブリュッセル時代(一四五〇~六四年)
一 優美様式の確立
二 聖ヨハネ祭壇画
三 晩年の磔刑画
第7章 肖像画と半身聖母画
一 単身肖像画
二 半身聖母画
三 対幅祈祷肖像画
第8章 工房作品と後継者たち
一 真筆か工房作品か
二 後継者たち
註
参考文献
ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン年譜
あとがき
掲載図版一覧
索 引
本の題名は『ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン-情動と優美のフランドル画家』(岡部紘三、勁草書房)ですが、多くの関連本はロヒール・ファン・デル・ウェイデンと表記しているのでここでは慣れ親しんだ「ファン」を使うことにします。
前述したようにヤン・ファン・エイク(著者はヴァン・エイクと表記)については日本でも多くの出版物を確認できますが、ロヒール・ファン・デル・ウェイデンについては「週刊グレート・アーティスト」の40巻目『ファン・デル・ウェイデン』(1995年3月、同胞舎出版、35頁)に私は発見できるのみです。これはミニ写真集といった趣で私がロヒールを知る手がかりにした本です。
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もう1冊、私が大事にしているロヒールの「写真集」といってもあながち間違いではない本があります。確かミュンヘンのアルテ・ピナコテークという大きな美術館で購入した記憶があります。それは『Rogier van der Weyden』(Stephan Kemperdick、140頁)というドイツ語表記の本です。5.99ユーロですから800円もしないので手にしたときは飛び上がって喜んだものです。これは当然のことながら岡部さんの本には参考文献として巻末に紹介されています。
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さてこのロヒールの本ですが、間違いなくロヒールに関しての基本的文献になる本だと思います。ロヒールの生涯や仕事について、とりわけ1つひとつの作品について克明に解説されています。岡部氏はまさに博覧強記、おそらく複数の外国語を駆使できる方でしょう。
注文を付けるとすればやはり写真でしょうか。ロヒール関連についてネット検索すると良質の写真が目に飛び込んできます。この本は写真集ではないのでどうしても写真が小ぶりになります。それでも口絵のカラー写真は鮮やかですが、本文中のモノクロ写真はデテールが目の悪い私にとっては今ひとつです。
ロヒールの真作、工房作、ロヒール系の作品などがそれぞれいくつあるのか、およその数を大胆に書いてくれると読みやすかったと思います。
いずれにしても、この本はおそらく生涯をかけて書き上げた労作であり、フランドル絵画史の基本的文献として後世に長く残るものだと素人の私なりに合点しました。
■『ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン-情動と優美のフランドル画家』岡部紘三、勁草書房
(勁草書房HPより)
*文豪ゲーテが「この絵画一点でも私の全詩作に優る」と讃えたウェイデンの絵。その生涯と真作および工房作品について解説する。
出版年月 2020年9月
判型・ページ数 A5判・448ページ
定価 本体6,000円+税
*内容説明
個人がアイデンティティを求めるようになり宗教画の他に肖像画も発達した15世紀。細密な写実描写と油彩による輝かしい色彩表現が特徴のフランドル絵画の中でも、内なる感情に訴えるウェイデンの絵画は特に人気があった。緻密な作品解説と周辺の画家との影響関係によって、日本では未だ知られざる初期フランドル派巨匠の魅力に迫る。
目次
はじめに
第1章 謎の前半生
一 画家の素顔
二 トゥルネのカンパン工房
三 「二人のロヒール」をめぐって
第2章 トゥルネ時代(一四二七~三五年頃)
一 対幅画ないし両面画
二 受胎告知の三連画
三 十字架降下
第3章 初期ブリュッセル時代(一四三五~四〇年頃)
一 都市の画家
二 聖母画の諸相
三 聖フベルトゥスの二連画
四 市庁舎の正義図
第4章 中期ブリュッセル時代(一四四〇年代)
一 アーチ枠の活用
二 中期の磔刑画
三 聖会話画の断片
四 ボーヌの祭壇画
第5章 聖年のローマ巡礼
一 ローマ巡礼
二 その成果
第6章 後期ブリュッセル時代(一四五〇~六四年)
一 優美様式の確立
二 聖ヨハネ祭壇画
三 晩年の磔刑画
第7章 肖像画と半身聖母画
一 単身肖像画
二 半身聖母画
三 対幅祈祷肖像画
第8章 工房作品と後継者たち
一 真筆か工房作品か
二 後継者たち
註
参考文献
ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデン年譜
あとがき
掲載図版一覧
索 引