後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔460〕名取弘文さん編の『ナトセンおすすめ おもしろ学校映画館』(子どもの未来社)が出版されましたよ!

2022年04月15日 | 図書案内


 あの名物教師の名取弘文さんは今年で喜寿だそうです。
 もう今までに何冊の本を出版してきたことでしょう。単著だけでなく編集代表をしていた『日本の教育』(現代書館)などを加えたら30冊を優に越えているのではないでしょうか。
 その彼がこの4月、『ナトセンおすすめ おもしろ学校映画館』を出版されました。子どもの未来社からの映画関連の本は『ナトセンおすすめYA映画館』『ナトセンおすすめシニア映画館』と合わせて3冊目になります。実は、『シネマの子どもに誘われて』(現代書館)も書かれていて、映画本はなんと4冊を数えます。
 名取さんが若かりし頃、演劇に興味を持たれていて、雑誌などに論考を発表していたのを知る人はナトリマニアということになるのでしょうか。私には彼は映画通より演劇通というイメージが強いのです。

 ところで、『ナトセンおすすめ おもしろ学校映画館』は名取弘文編です。全部で100本の映画がそれぞれ見開きで紹介されていますが、執筆者は名取さんを入れると17人です。『おもちゃと遊び』(現代書館)の野上暁さんも数本執筆されていますが、でも圧倒的に多いのが名取さんです。まあ良くこれだけ映画を見て、丁寧に論評しているなと感心します。
 執筆者に岩内博さんの名前を見つけて嬉しかったです。同世代の教師で、東久留米市の児童文化部で同席したことがありました。現在は立川市の東京賢治シュタイナー学校の教師を続けているそうです。

 そもそも5歳上の名取さんとの出会いのキーワードは「男の家庭科先生」です。1979年、名取さんは藤沢市で、私は清瀬市で同時に小学校家庭科専科になりました。以前から名取さんは有名教師で、一方的にこちらが知っているだけで、示し合わせたわけではありませんでした。へえ、名取さんも家庭科専科になったんだ、という感覚でした。
 1982年に「新しい家庭科We」(半田たつ子さん編集、We書房)が発刊され、名取さんが1年目に家庭科の実践を連載します。翌年、私にも声がかかり連載をさせてもらいました。推薦してくれたのが名取さんでした。私もさまざまな新聞やテレビ、雑誌などで家庭科実践を取り上げてもらえたことがきっかけになったのでしょう。

 さてさて、話を『ナトセンおすすめ おもしろ学校映画館』に戻しましょう。
 私はこの本に少しだけかかわっています。
 名取さんは家城巳代治監督作品「ともしび」を取り上げています。「熱血漢の青年教師だが、村のボスたちに追い出されてしまう。」と見出しコメントが付けられています。映画の重要場面で『山芋』(大関松三郎、寒川道夫指導)の詩の朗読が出てくるそうです。
 現在、大関松三郎が書いたとされる『山芋』は、寒川道夫の少年詩だということが定説になっています。太郎良信の『「山芋」の真実』(教育資料出版社)がその決定的な役割を果たしたのですが、そのことを私も興味を持って追いかけていたのです。拙著『地域演劇教育論』(晩成書房2018年)に「寒川道夫の光と影」という20頁ほどの文章を収めています。



 このあたりの事実関係について名取さんが尋ねてこられたので、わかる範囲でお話ししました。「ともしび」ページの後半では拙著も紹介していただきました。寒川や『山芋』のあれこれについて簡潔にまとめています。さすが名取さんといったところです。私としては、少しはお役に立てたかなと喜んでいます。
 実際に本屋で手に取ってみることをお奨めします。映画鑑賞手引きとしてはもってこいの本です。

 もう少し詳しく知りたい人のために子どもの未来社HPを紹介します。

◆『ナトセンおすすめ おもしろ学校映画館』(子どもの未来社HPより)

名取弘文/編集
定価:1,980円(1,800円+税)
判型:A5
○内容紹介
子ども、教師、学校を中心に、環境問題や様々な文化・社会問題、アニメなどにわけて選りすぐりの100本を紹介。原爆の子、転校生、嫌われ松子の一生、ブータン山の教室、夢みる小学校、MINAMATA、小さいおうちなど。
○目次
おさそい 
1 子どもは見つめる 時代と世界の明と暗
風の中の子供/緑色の髪の少年/原爆の子/少年/父パードレ・パドローネ/ブリキの太鼓/典子は、今/転校生/友だちのうちはどこ?/アンジェラの灰/神の子たち/ジョゼと虎と魚たち/幸せの絆/ちいさな哲学者たち/森聞き/三姉妹~雲南の子/悪童日記/やさしい本泥棒/はじまりへの旅/ハウス・イン・ザ・フィールズ/巡礼の約束/はちどり/夏時間/少年の君/スザンヌ、16 歳/海辺の金魚/コラム 山ねこの幻燈会「やまなし」

2 さまざまな教師像 翔んでる先生
嘆きの天使/一人息子/信子/父ありき/カルメン故郷に帰る/日本の悲劇/ともしび/人間の壁/秋刀魚の味/ライアンの娘/おもしろ学校のいち日/鳥山先生と子どもたちの1カ月/子供たちの王様/草ぶきの学校/蝶の舌/初恋のきた道/嫌われ松子の一生/コラム 山ねこの幻燈会「雪わたり」 

3 行きたくなる! こんな学校があった!
山びこ学校/女の園/教室の子供たち/いまを生きる/学校/パッチギ!/銀の匙/モンテッソーリ 子どもの家/GOGO 94 歳の小学生/ブータン 山の教室/屋根の上に吹く風は/夢みる小学校/コラム 山ねこの幻燈会「どんぐりと山猫」 

4 多様な文化・環境・それぞれの生き方
バオバブの記憶/プラスチックの海/人間の汚した土地だろう、どこへ行けというのか/二重のまち/ 交代地のうたを編む/くじらびと/ふたりの桃源郷/カナルタ 螺旋状の夢/モロッコ、彼女たちの朝/東京クルド/神さまこんにちは/アダダ/こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話/インディペンデントリビング/きこえなかったあの日/草の響き/MINAMATA ―ミナマタ―/水俣曼荼羅/さようならCP/コラム 山ねこの幻燈会「雨ニモマケズ」
 
5 時代は語る 戦争・社会問題
僕の大事なコレクション/ル・アーヴルの靴みがき/希望の国/小さいおうち/スズさん〜昭和の家事と家族の物語/サンマデモクラシー/無音の叫び声/タリナイ/菊とギロチン/狼をさがして/きみが死んだあとで/我が心の香港 映画監督アン・ホイ/RBG 最強の85 才/テレビで会えない芸人/コラム 山ねこの幻燈会「夜の林」 

6 よみがえる名作 アニメも注目
戦艦ポチョムキン/メキシコ万歳/カサブランカ/天井桟敷の人々/近松物語/ここに泉あり/裸の島/カトマンズの男/サンダカン八番娼館 望郷/エレファント・マン/死の棘/川本喜八郎作品集/死者の書/コラム 山ねこの幻燈会「大黒座映画館幻燈会」 

あとがき
著者略歴
名取 弘文(ナトリ ヒロフミ natori hirofumi)
1945年東京都荒川区生まれ。早稲田大学文学部卒業。藤沢市立鵠沼小学校などに小学校教諭として勤務し、途中から家庭科専科となる。様々なゲストを呼んでの公開授業など、ユニークな教育実践で知られる。2007年退職。退職後は「おもしろ学校理事長」を名乗り各地で出前授業をしている。 主な著書に『おもしろ学校の日々』(教育出版)、『おもしろ学校開校記念日 ― 好学心とエントロピー』(有斐閣)、『教室から世界へ飛びたとう ― おもしろ学校の特別授業』(筑摩書房) 、『こどものけんり』(雲母書房)、『子ども百面相』(パロル舎)、『シネマの子どもに誘われて』(現代書館)、『ナトセンおすすめYA映画館』『ナトセンおすすめシニア映画館』(子どもの未来社)など。映画・TVに「おもしろ学校のいち日 名取弘文の公開授業」(制作・監督 西山正啓)がある。