2017年冬クールのアニメで良くも悪くも話題になっている作品として『バンドリ!』を挙げずにはいられない。ライブハウスで女子たちのバンド演奏に感銘を受けた高校1年生の主人公・戸山香澄が未経験のエレキギターに挑戦し、校内で他のメンバーも集めてバンドを結成する物語である。
ガールズバンドがテーマのアニメと言えば8年前に放送され社会現象となった『けいおん!』が記憶に新しいが、この作品はそれとは明らかに異なる点が3つある。
(1)王道展開
(2)リアルとのリンク
(3)上達の過程を丁寧に描写
まず(1)だが、主人公が「バンドやろう」と言い出しメンバーを集め、練習してライブを行う。これは同一クールで放送中の『風夏』にも同様の展開が見られるし、『ラブライブ!』もバンドをスクールアイドルに置き換えただけでフォーマットは似たようなものである。まさに王道の展開と言っても過言ではないだろう。
(2)は公式が売りにしている要素である。『けいおん!』も出演声優によるライブを開催したが、アニメとのリンクの度合いは薄かった。
それに対し『バンドリ!』は、声優が“PVのCGアニメと同じように演奏”することが前提となっており(ラブライブ方式)、既に6回も開催された単独ライブは大盛況で評価も高い。なんと日本武道館での公演も決まったという。
(3)は当方が最も言いたいことである。
放課後にお茶ばかり飲んでいたらいつの間にか上達していた『けいおん!』に対し、
『バンドリ!』はギターのチューニングから弦の押さえ方、ピックの持ち方まで丁寧な解説の描写が入り、香澄が少しずつ成長していく過程をじっくり見ることができる。
そしてバンド名すら決まっていない彼女たちは5話のラスト、観客が身内数名のみとはいえ初めてのライブを決行する。細かな練習の描写の数々が、全てこの本番のシーンに結びつくのだ。楽曲自体も心に響くクオリティーとなっており、5話のライブシーンで感動した人は当方だけではないと思いたい。
ここまで読むと単なる王道のガールズバンド物語にしか見えないのだが、残念ながらネット上では批判の声も多い。その最たる理由は『3話』である。
ちゃんとした理由はあったにせよ、ライブハウスで香澄が勝手にステージに上がり『きらきら星』をアカペラで熱唱、それを3回以上も繰り返すのだ。ライブハウスが神聖な場であることを作中で説明したのにも関わらず、3話で早くも汚してしまった。しかも、オープニング曲をカットしてまでこのシーンに相当な時間を費やしたのだ。物語の構造としても、香澄がギターを上達させる過程においてアカペラで歌うシーンなど不要である。
多くの視聴者が視聴継続か断念かを3話で判断するというのに、その大事な3話でやらかしてしまったのだ。こればかりは当方も擁護できず、本当に勿体無い。今後あるであろう5人揃っての演奏シーンで更に感動させて欲しいところである。
(#17:1199字)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます