2018年2月3日。女性声優・東山奈央(とうやま なお)としては初の単独ライブが日本武道館で開催され、その一部始終を見届けた直後、当方は2つの感情を抱いた。一つは残雪がまだ消えやらぬ九段下で少し早い春の陽気を錯覚するかのような心の温もり。もう一つは自分の愚かさに嘆く負の感情である。
バラードにおける芸術的な照明演出や、物販のサイリウム(ペンライト)が遠隔操作で自動的に色が切り替わる最新鋭の技術など、書きたいことは山ほどあるのだが、断腸の思いで2点に絞り特筆する。
(1)キレのあるダンス
(2)『Rainbow』を歌う前のMCで語った言葉
まず(1)だが、過去に声優でここまでキレのあるダンスを魅せた人は記憶に無い。一般的なソロ歌手・ソロ声優のライブは歌に集中せざるを得ないことに加えマイクで片手を塞がれる為、踊るほうにまで意識を回せないのが現状だが、東山は『StarLight』などのダンサンブルな3曲において、イントロや間奏など、歌わないパートではマイクを持ちながらも6人のバックダンサーと全く同じ動きで超難関のダンスをこなしていたのだ。デビュー当時からアニソンライブのDVDを繰り返し視聴して振り付けを完コピするほどダンスが大好きだったそうで、『君の笑顔に恋してる』ではサビで観客と一緒に踊りたいという東山たっての希望から、事前にYouTubeで自ら振付をレクチャーする動画を公開する程の気合の入れようだった。
そして最も伝えたい(2)である。「自分は大したこと無い声優」「声優になりたての頃の先輩方は輝いて見えたのに、今の自分は当事の先輩のように輝けていない」などと自己嫌悪する東山は、そんな自分を8年間信じ、ここまで育ててくれた男性マネージャーに対する感謝の言葉を涙交じりで述べ、都会の喧騒で冷え切っていた当方の心を優しく暖めた。中でも「私を見つけてくれてありがとう」は声優の歴史に残る名言だと思う。当然だが、歌とダンスが上手なだけでは声優として大成しない。故に彼女は苦労の連続で、時にはマネージャーに対して八つ当たりさえもしていたと本心を吐露していた。当方は能力の高さゆえに東山を高嶺の花のような存在だと思っていたが、内面はどこにでも居る普通の女の子だったことに驚きを隠せなかった。小さな芽でも、雨ニモマケズ8年間真っ当に生きていれば大輪の花を咲かせられる。それに比べて自分は10年間何をしてきたのだろうか。新宿のカプセルホテルの低い天井を見上げながら、その日はそんなことを考えていた。
そろそろ気持ちを切り替えねばならない。東山は感謝を言葉のみならず、武道館での単独ライブを成功させるという“行動”で示した。当方も数多の人々に対する感謝を言葉のみならず行動で示したい。
と、ここまで書いてきて、おそらく深く考えすぎなのだろうと気付く。まずは肩の力を抜いて、今の自分にも出来ることから、少しずつ。
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