映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『月』 ネタバレあり 僕を殺そうとする人がいる 

2023-10-27 | ネタバレあり

(2023年製作の映画)上映日:2023年10月13日 製作国:日本
監督 石井裕也
脚本 石井裕也
原作 辺見庸
出演者 宮沢りえ 磯村勇斗 二階堂ふみ オダギリジョー 長井恵里 大塚ヒロタ 笠原秀幸 板谷由夏 モロ師岡 鶴見辰吾 原日出子 高畑淳子



四コマ映画『月』




オススメはできない。
どうぞ観に行って!とは言えない。
しかし満点だっ!

**

ある種の〝嘘臭さ〟

ホラー映画のような手法や
すごく不自然なカメラワークや照明が多用されています。
全体的に芝居も大きかったと思います。

↑これらのある種の〝嘘臭さ〟がとても機能してると思いました。
強烈で圧倒的な事実があるからこそできる技法。

所詮映画は嘘(作り物)だよ〜、というのめり込みすぎてない感も良かった。

しかも、ある女性キャラが〝嘘〟をつくんです。
嘘をついて命を守ろうとします。

嘘っぽさってのはそことも繋がると思いました。

「真実を!」「本当のことを!」ってキリキリキリキリ突き詰めてしまうと、見失うこともあるのでは、と。

かと言って「嘘には良い嘘もあるんだよ〜」なんていう短絡的なメッセージなわけもなく。。

だからこの映画は難しい(好き)。

**

僕を殺そうとする人がいる

僕は、
日本のある政治家の言うところの
〝生産性のないLGBTQ〟のうちのGの当事者です。

この映画で描かれる凶器(狂気)は僕にも向いているものです。
終盤のシーンはほんっっっっっっとに怖かった。

見終わったあと手も体も震えたし、今でもドキドキしている。
(もし全容が映されていたら僕は気絶してたかも。そんくらいのことです。)

自分を殺そうとする人がいて、そいつはそれを正義だと考えていて、そいつの背中を押すような言動をする権力者がいる。

その事実をドーーーーンッと力強く、
勇気と誠実さを持って描かれた映画が作られて公開されたことは、
大きな希望に感じました。

**

が、
衝撃が強いのであまりオススメはできない。。

僕はおっさんで図太くもなってるし
映画をそれなりに観てるので映画との距離感も保てている方だと思います。
それでもショックが大きかった。。

で、
そんなに親切な映画でもないので感じ方も難しいと思う。
わかりやすい落とし所に連れて行ってくれる映画でもない。

平和で安静な気持ちにはさせてくれないことでしょう。
ご覚悟っ!

**

誠実って何かね

石井裕也監督に対する信頼感ってのもあったけれども、やはり画面に映っているものから「誠実さ」をなぜ感じていました。

上記の通りのホラー映画っぽい映像技法などが、
この題材をエンタメとして消費しようとしてるんじゃないかと心配にもなったけど、
きっと大丈夫なんだろうと思えたのは、やはり映像から伝わる「誠実さ」があったから。

誠実さって何なのだと自問してみてもわからないのですよ。
ただそう感じるだけ。

でも、全100ページのパンフを読んでみると、事実としてこの映画が誠実さを持って作られたことがよくわかりました。

可能な限り障害者施設へ取材をしたり
俳優が施設に入って障害者の方と温かい関係性を築いたり
音の聴こえない俳優をキャスティングしたり
障害者の方も俳優として出演したり。

しかもこれらが「こんだけやったからいいでしょ」という免罪符のための準備ではないことが映画を見たらよくわかる。

免罪符なんか機能しそうにないくらいにやり尽くした映画になっているという点からも、映画というものへ誠実さも感じました。



相当な心配

観る側にも相当な覚悟が必要な映画ですし、観た後もそれはそれは疲れるわけですが
パンフを読んだり、話を聞いたところによると
本当にこの映画の製作は大っっっっっ変だったみたいです。
想像以上でした。

まずは製作が始めるまでにいろいろ反対されたとのことですし
これだけのキャストが集まっていても途中で止まったらしいですし
「この映画が上映された後は今までと同じようには生きていけないかも」的な言葉も聞きましたし、

それくらいにこの題材ってのはアンタッチャブルなものなのかと。。

***

優生思想を持った犯人を描く映画ですからもしかしたら共感しちゃう観客が出てくるかもしれない。

という心配もあるわけですが、

でもどう考えても「優生思想を持った犯罪者を描いた映画」よりも
優生思想を持ってる政治家が存在していることの方がヤバイでしょうよ。

また、この映画が誰かの都合のいいように切り取られたり
メッセージが湾曲されて便利に使われるかもしれないという心配もあったでしょう。

どちらにしても映画が悪いのではなく、現実社会が悪いのに、その現実社会に怯えて映画が自粛させらてしまうのだとしたら、
もう、目も当てられない事態でした。。

***

が、
この映画『月』はちゃんと誠実さと勇気を持って作られたし、上映されたわけです。

口まで水に浸かってギリ鼻呼吸で生きているような世界ですが、まだ未来を照らす明るい光が、細〜い細〜い三日月くらいに細い光かもしれないけど、まだ光はあるんだなぁと思わせてくれる映画です。

ですし、こういう映画を見たならばちゃんと自分の生活、社会に何かしら落とし込んでいきたいなと自戒しました。




小説『湖の女たち』

偶然数日前に、小説『湖の女たち』を読んでいました。
全然知らなかったんですがこちらも似たような題材が含まれている内容でした。
しかも『湖の女たち』もなかなかに難しい展開でした。。
けして安心したラストに行ってくれない。

読者を「気持ちいい正しい安全な場所」に置いてくれない。

松本まりかと福士蒼汰で映画化もされるわけですが、どちらかというと心配ですね。。。
大森立嗣監督なので大丈夫かとは思いますけど、、小説自体がだいぶ素っ頓狂なので、、一体どうなることやら。。

むしろオミットするなら松本まりかと福士蒼汰の役だと思っていたので。。
まさかそのまま映画化するのかしらん。。




ラストネタバレ






終盤、宮沢りえと磯村勇斗が大量のセリフの応酬をします。
言葉で全部言い合う。

磯村勇斗にぶつけているはずが、途中から向かい合っているのが自分自身になっている。
そして自分自身がめちゃくちゃ言い返してくる。
自分の欺瞞が偽善を自分が暴こうとしてくる。
でもけして負けてはいけない。

↑映画的に上手な(上品な)シーンではないと思うけど、この無骨さや力強さは好きだし、
この映画の根幹だと思います。

***

ラスト、殺人事件が起きる。それをテレビで知る。
所詮、この主人公夫婦にとっては他人事なのだという残酷さ。
逃げようと思えば逃げることもできてしまう残酷さ。
でもこの夫婦は向かおうとする。
原動力は「愛」だ、と。
しかも「がんばろう」っていうとてもとても恥ずかしい言葉。

もはやそれしか残っていないんだもん、しょうがないじゃん。
前作『茜色に焼かれる』でも「ま、がんばりましょ」だった。
情けなかろうが、ダサかろうがしょうがないじゃん、、、それしか残ってないじゃん、、もう。。。


映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』原作も女性!監督も脚本家もプロデューサーも女性! 

2023-09-05 | ネタバレあり


SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)She Said上映日:2023年01月13日製作国:アメリカ
監督 マリア・シュラーダー
脚本 レベッカ・レンキェヴィチ
原作 ジョディ・カンター ミーガン・トゥーイー
出演者 キャリー・マリガン ゾーイ・カザン パトリシア・クラークソン



たまたま『ウーマン・トーキング 私たちの選択』を観た後だったのでとてもシンクロしていました。
ていうかどっちも現代の話なんだけど…。
むしろ1992年から始まる『シー・セッド』の方が古い。。
どうしても『ウーマン・トーキング』が1800年代くらいにしか見えなくて。。

**

MeToo自体はアメリカの市民活動家タラナ・バークさんの活動をきっかけに2007年から地道に「MeToo」が提唱されてきた、とのこと。
世界的ムーブメント#MeTooが起こったのは2017年。
ニューヨーク・タイムズの記者ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーが映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ告発記事を発表したことがきっかけ。

**

映画界がきっかけだったし世界的なニュースでもあったので、もちろん情報はたくさん入ってきてました。
ただ、特に日本では#MeTooを潰そうとする言説も目立っていたし
冷笑系も多かった。

**

ワインスタインの事件の流れが時系列で描かれていたので、とてもわかりやすかった。
ラストでは、問題意識を再認識しつつも
ある種のカタルシスも感じられるので
社会派エンタメ作としても楽しめました。

**

記者が2人とも女性だったのが「彼女たちが話し始めた」という結果に早く結びつけた大きな要因の一つだと思う。
そもそも男はこの問題に取り組めたかどうか疑問だし
同じ女性だからこそ取材する側もされる側も信頼できる部分もあったのでは。
てことは、ニューヨークタイムズで記者としてバリバリ働く女性がいたってことがとても大事なことなんですね。
『ウーマントーキング』での女性には学校に通わせないってのはかなり極端に思えるけど
実際そういう国もまだあるだろうし
受験で女子生徒の点数を低くしていたのは日本だし、
女性の社会進出を邪魔する動きや思想はいまだにある。
だからこそ、女性が働く現場にたくさんいるってことが、女性の声が無視されない社会の形成には大事なんだと思いました。

**

特に
この映画は原作も女性(記者の2人)、
監督も脚本家もプロデューサーも女性。

『ウーマン・トーキング』も原作、監督、脚本家、プロデューサーが女性。

映画『ウーマン・トーキング 私たちの選択』 ネタバレあり 宗教に限らず「考えるな」「疑問を持つな」は一般社会の中でも隷従のための便利な言葉として使われているでしょう

2023-09-05 | ネタバレあり

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)Women Talking
監督 サラ・ポーリー
脚本 サラ・ポーリー
原作 ミリアム・トウズ
出演者 ルーニー・マーラ クレア・フォイ ジェシー・バックリー ベン・ウィショー フランシス・マクドーマンド


戯曲的という批判(?)もあるけど、
こういう閉ざされたシチュエーションなんだし、
彼女たちが「話す」ことが一番のモーション(動作)なわけだし、
話すってことは、「考える」「考えを持つ」ってことで、
それは厳格なキリスト教徒である彼女らにとっては禁忌に近いことだったわけで。
***
「2005年から2009年にボリビアで起きた実際の事件を元に描かれている」っていう説明を何度読んでも、どうしても映像を見ると少なくとも1800年代くらいに見えちゃう。。
映像というよりは、
女性たちが学校に通わせてもらえないとか、
地球儀も見せてもらえないとか、
文字の読み書きができないとか、
性の話ができないとか、
男に隷従しているなどの描写が到底2000年代の話に思えない。。
キリスト教の一派「メノナイト」のボリビアのコミューンでの事件なので相当特殊ではあるけど、
上記の女性差別に関しては、一般社会でもまるっきりありえない昔の差別の話って感じもしないのも事実ですよね。
この映画の製作者であるフランシス・マクドーマンドもそのように考えたことでしょう。
(メノナイトでも都市部で一般的なレベルでの質素な暮らしをしている人も多いとのこと)
***

「なんでそんなこと言うの?
まるで私に選択肢があったかのように!」

「全能の神だというなら何で子供と女性を助けないの?
自分の子供や他の子供達を守るために邪悪な者を殺すことが罪だというなら私はこの命をかけてでも神に抗議する。」

**
6/2(金)公開『ウーマン・トーキング 私たちの選択』特別インタビュー映像【ルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリー】第95回アカデミー賞®脚色賞受賞!!赦すか、闘うか、それとも去るか―― 2010年、自給自足で生活するキリスト教一派の村でwww.youtube.com



以下、衝撃が過ぎるので読まな方がいい場合もあるかと思います


















2010年。自給自足で生活するあるキリスト教一派の村で、
少女に家畜用の睡眠薬で眠っているところをレイプすることが日常になっていた。妊娠することもあった。
知識のない少女たちは自分が何をされたのかもわからないし、
男たちには「嘘」もしくは「悪魔の仕業」だとされた。
しかも薄々勘づいていた大人の女性たちは自分たちも被害を受けつつ全体のために黙ってきたことから、少女たちを黙らせてきた。

しかしある時、
眠らされていたある少女が目覚めてレイプ犯を見て、今までの犯行(レイプ犯は何人もいる)を隠せなくなり、
男たちは村から一時的に追放される。

男たちと闘うか
女たちが去るか
赦すか。
彼女たちはそれをひたすら話し合う。
でも十分な時間はない。

「女性は考えることを許される。
女の子は学校で読み書きを習う。
学校には世界地図を掲示して自分がいるところがわかるようにする」

「自分を疑うよう仕向けられた。それが一番辛かった」

「全能の神だというなら何で子供と女性を助けないの?」

「私は地獄に堕ちてもいい。男が私の4歳の娘の体で欲望を果たそうとするならその前にその男を殺す。」


**

ネタバレは以下に。





ジェシー・バックリーの終盤のセリフ
「私たちには3つの権利がある。
子供の安全を守ること。
私たちが揺らぐことのない信仰を持つこと。
そして、自ら考えること。」
外界を知らず文字の読み書きもできない彼女らが、
人生をかけて守ってきた信仰を捨てることでしか
自分たちの自由や安全が守られないわけではない、ということに気づいていくんですね。
信仰があっても自分で考えていい、と。
「考えるな」「疑問を持つな」ってのは宗教の中ではよく出てくることですけど、
宗教に限らず「考えるな」「疑問を持つな」は一般社会の中でも隷従のための便利な言葉として使われているでしょう。
自分で考えていいし、信念を貫いていい、と。
それが信仰や社会の仕組みを壊すことにはならない、と。


ドキュメンタリー映画『キエフ裁判』 現在のウクライナとロシアを考えると〝正義〟という本当に恐ろしい言葉として聞こえる

2023-08-30 | ネタバレあり

キエフ裁判(2022年製作の映画)The Kiev Trial
上映日:2023年08月12日
製作国:ウクライナ オランダ
上映時間:106分ジ
ャンル:ドキュメンタリー
監督セルゲイ・ロズニツァ
脚本セルゲイ・ロズニツァ







ナチスだけを断罪していれぼ映画として成立する時代はとっくに終わっていました。


とくにソ連、ウクライナの話ですからね、この映画は。。

もう〝正義〟という言葉が怖すぎる。。
(同時期上映の同監督の『破壊の自然史』と併せてドキュメンタリー二選として『戦争と正義』というイベントタイトルがついています)

**

キエフ会議とは


第二次大戦が1945年の9月に終戦し
翌1945年1月に
現在のウクライナ、
当時のウクライナ・ソビエト社会主義共和国の首都である
ウクライナ発音でのキーウ、
ロシア語の発音でのキエフにて行われた
ナチ・ドイツの戦犯を裁く軍法会議のこと。

ナチ関係者の15名を裁判にかけ、
被告人の論告と目撃者・被害者の証言を経て
12名の絞首刑が執行されるまでを
アーカイブ映像を編集して
効果音もつけて
ジリジリジリジリジリジリ見せていく。。

**

アーカイブ映像ってことは記録映像ってことでしょう。
「あとでドキュメンタリー映画作ろっ」と思って撮ってない
ニュース映像くらいの気持ちで撮られているはず。

なので映像はものすごい淡々としている。
悪いけど前半は眠かった。。。

ただ、被告人(ナチ関係者)と通訳者を丁寧に行き来する当時のカメラマンのカメラの動きはその心情が伝わってくるのが面白かった。

ナチ関係者はドイツ語なのでロシア語話者であろうソ連のカメラマンには、いつが話の終わりなのかがわからない。
たまに「あ、まだ証言終わってなかった?」って感じでカメラがサッと戻ったりするのが、
77年前のカメラマンの「あ、やべ」みたいな気持ちがカメラワークから伝わってきて、人間味があって面白い。

**

ナチ関係者の証言がまるで他人事のようだったのも印象的。


アドルフ・アイヒマンの裁判の様子も観たことありますけど、
高校の職員会議みたいな顔して座ってたんですよね。

「命令されたからやりました」「私は下っ端です」っていう。
やらなかったら自分が殺されていたし
自分がやらなくても誰かがやったし
自分よりもっと上手く(早く多く)やっていたかもしれないという謎の言い訳さえ出てくる。

「ホントにこの人たちが何万人も何千にも殺したの?」と信じられないくらい凡庸な男たち。

映画観てて眠くなるんですよ。。
話の内容は凄惨なんだけどあまりにも本人たちに実感がないから。。

**

後半、
目撃者や被害者(逃げることに成功した人)の証言になると突然眠気が吹っ飛ぶ。


『サウルの息子』とか『サラの鍵』とか『戦場のピアニスト』とか『ヒトラーと戦った22日間』とか『シンドラーのリスト』とかたくさん観てきてますが、
それでも本物の被害者や目撃者の証言の衝撃が強すぎる。。

大きな穴の淵に立たされて銃で撃たれる前に穴に飛び降りして
死体の山に着地して死んだふりをして
生きたまま土を盛られて埋められて
息が苦しくなって
息が苦しくて死ぬより撃たれて死んだ方がマシと思って
土から這い出たらもう夜になっていたから
うまくやれば逃げられるかもってことで
ナチに見つからないように土から這い出たけど
照明が当てられて動いてる体は銃撃を受けていて
その銃撃を避けてなんとか逃げた女性の証言とか本当に凄惨。。。

彼女がどれほどの勇気や使命感で証言したか。
思い出したくも語りたくもないはず。
もしかしたら「しゃべりやがって!」と恨みを買うかもしれないし。

その覚悟と話の内容がもう衝撃すぎて。

**

ナチのジェノサイドはユダヤ人だけではない。


混血や精神病者、今作では語られなかったが同性愛者も。

銃殺して穴に放り込む。
まだ動いている場合にはそこに手榴弾を投げ入れる。

その時ナチたちは酒に酔っていたらしい。
そういう時に酒を飲んでいたってのは他の映画でも描かれていた。

逆に酔っ払ってなきゃできないこと。
変な話たけど、ジェノサイドを執行するドイツ軍人の精神的負担も課題だったらしい。

**

そして「裁判最終日」というテロップ。

あ、この映画終わるんだ。
ずっと彼・彼女らの証言を聞きながら俺は死んでいくのかと思ったら、そうか映画なんだから終映の時間が来るわけだ。

当時のウクライナはソ連の一部。
ソ連が正義顔でナチ・ドイツを断罪する。
15名中12名を絞首刑に。

執行当日。
20万人と言われる群衆が見物に集まっている。



ラストネタバレ(?)は以下に。






人が死ぬ映像って初めて観たかも。
戦争のドキュメンタリー映画とか記録映像とかで 銃で撃たれたとか爆撃を受けたとか断崖から飛び降りたとかは観たことあるけど、 銃で撃たれたからって即死してるかどうかはわからないし、 爆撃では光や煙で内部は見えないし 飛び降りた先まで映像で見せられることもなかった。
今作では絞首刑の記録映像を見せられた。
作劇では観たことあるけど、、 これは事実。
さっきまでのらりくらりと言い訳や仲間への押し付けを喋っていた男たちが、自分の首を縄にかけて足を外され、寸前まで生きていたのに死んだ。

**

死刑が執行された瞬間歓声があがる。
そして、20万人の観客が吊られたナチ関係者たちを間近で見ようと集まってくる。
誰か死んでんじゃないかって思うくらいのぎゅうぎゅう詰めの群衆。
ナチに対する恨みもあるでしょう。
キエフの町は建物がいくつも破壊されたままになっているし。
仲間や友達や親戚や家族や恋人が殺された人もたくさんいるでしょう。
「当然死刑だ!」と心から願った人もいるだろうし その人の話を詳しく聞いたら きっと僕も近い気持ちになるのでしょう。
でも、この群衆は不気味に見えました。
戦争を経験して嫌でもたくさんの死体を見てきたからちょっとおかしくなっていたりもしたのでしょう。
それも含めて、やはり不気味でした。

**

「戦争と正義」
ナチだけを断罪しておけば成立する時代は終わっている。
戦争自体を改めて強く否定したい。
そして正義もまた危険。
正義側としてナチ・ドイツを断罪したソ連。
現在のウクライナとロシアを考えると〝正義〟という本当に恐ろしい言葉として聞こえる。


映画『バービー』バービー人形誕生の前にあった西ドイツのビルド・リリ ラストネタバレあり

2023-08-15 | ネタバレあり
バービー(2023年製作の映画) Barbie  上映日:2023年08月11日
 監督 グレタ・ガーウィグ
 脚本 ノア・バームバック グレタ・ガーウィグ 
出演者 マーゴット・ロビー ライアン・ゴズリング



まず僕はマーゴット・ロビーの喋ってない時の演技が本当に好きなんです。本当に表情が素晴らしい。毎回泣きそうになっちゃう。

***


あと僕はとんでもない映画を観るという覚悟で臨んでいたので、実際予想を超えるとんでもない映画だったことは予想していました。

なので『バービー』楽しそう!っつって観に行った方においては、心中お察ししますっていうか、お疲れ様ですっていうか。

でも
『バービー 〜女性差別の過去、現在そして未来、さらに男性差別について〜』っていう日本語タイトルだったら炎上するもんね。。。


◼️「女性が主人公ならラストは結婚させるか、しなせろ」


ピンクの服着て映画館に行ったくらいにグレタ・ガーウィグ&マーゴット・ロビーで『バービー』撮るってニュースを聞いたときから期待しかなかった。


どんなパワフルな映画が観れるんだろう!と?同監督の『ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語』ではラストの編集長のセリフ「女性が主人公ならラストは結婚させるか、しなせろ」からの鬼展開が楽しかったし。


グレタ・ガーウィグ&マーゴット・ロビーとバービーってのが正反対だと思っていたのでどんなエクストリームな展開と結末にするのか、きっと僕には考えつかないレベルのことをしてくるのだろうと。
6時間かと思ったら114分。
そりゃ濃密ですよ。
濃厚&鬼展開。
なのにケンの歌の長いこと長いこと(←いいですよねぇわざとうんざりする程長いんだもん…)。。


物凄くわかりやすい。
終盤なんか説明台詞オンリーですからね。そこがマイナスなくらい。でもここまでわかりやすく噛み砕いて話さなきゃいけないって判断したんでしょうね。


成功かと。現時点で10億ドルのヒット。
そして拒否反応もわんさか!それは〝伝わった〟からこそ。


正直今までの映画たちだってこれくらいのこと言ってきたんですよ。でも『バービー』の直球さ&濃度は異常事態!


痛快!痛&快!今の所〝痛〟が勝ってるけど。




◼️バービーだったマーゴット・ロビー



古い話ですけど、「アリーmyラブ」という海外ドラマがありまして、、、
その中にジョージアという女性キャラがおりました。
彼女はブロンドで高身長で超絶美女で「バービー」とあだ名をつけられていました。
それは誇らしい感じではなく、悪口的なニュアンスで。


ハリウッド映画には”ブロンド役"という役柄があって、それは主役の男性に添えられるセクシー美女のこと。


高身長の美形女優はほぼそのセクシーなブロンド役を登竜門にするしかなく、
その後なんとかして演技に転向しないとキャリアがうまくいかない。


マーゴット・ロビーもブレイク作『 ウルフ・オブ・ウォールストリート』ではブロンド役だった。
しかし女優としてのキャリアを積みながらも、さっさと映画プロデューサーとして自分が主役の(アカデミー賞取る気満々の)『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』を製作。
そして演技が絶賛。


そんで演技賞の常連になりつつも、
自分が出ない『プロミシング・ヤング・ウーマン』の製作製作に入ったり、
ハーレイ・クイン役が当たって単独映画の話が来ても
「スピンオフ映画はハーレイ・クインの単独主演作ではなく、クイン以外の女性キャラクターも複数登場させて欲しい」
っつって実はBIRDS PF PREYというチームの映画で女性キャラの活躍の場も増やした。


『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』もめっちゃ面白かったし。


マーゴット・ロビー大好き。
ノーベル賞あげてほしい。


でそのマーゴットが『バービー』でバービーやるっていう。ブロンド美女役をやるっていう。そりゃ一筋縄でいく映画になるわけないのさ。




◼️「ポリコレ映画め!」と言われているが


まず出だしでギョッとしませんでしたか?
幼女たちが赤ちゃん人形を破壊していくシーンありましたよ。ショックを受ける人多そう(赤ちゃんとは遠い存在の僕でさえちょっと引いた)なシーン。
ポリコレめっちゃ気にしてる映画とは思いませんでした。


ケンやマテル社を中心とした「男性の描き方」もかなり一面的で「そりゃ反感買うわ」っていうシーンが多いし長いしホントに長かった。。
ポリコレめっちゃ気にしてる映画とは思いませんでした。


アジア系、イスラム系の女優をそんなに見かけなかった。ポリコレめっちゃ気にしてる映画とは思いませんでした。


冒頭の赤ちゃん人形破壊のシーンについては「この映画はブラックコメディですよ。
こういう感じで行きますよ。ていうか所詮人形ですよ」というメッセージだと思いました。


男性の描き方については「今まで散々女性を一面的に描いてきて時代が変わって女性を多面的に描き始めたらポリコレだ!ポリコレだ!って騒いで、男性が一面的に描かれると怒り出すってナニソレ?」ってことかと。


アジア系、イスラム系女優少なかったことについては、確かに男性キャストより少なめだったと思う。
同時に「はいはいアジア人も入れときましたよ…」的な表面的なポリコレ配慮にもウンザリしているし、つまりはポリコレめっちゃ気にしてる映画とは思いませんでした。




◼️バービーを描くことは人間を描くこと


「バービーを描くことは人間を描くことになるだろう」とグレダ監督は制作前から思っていたとのこと。


バービーというものを必要とし愛し嫌悪もしてきた人間を描いたのですね。


この映画の冒頭で「女児には赤ちゃん人形しか与えられなかった」と言っていたように、女性と生まれたからには一本道に「お母さん」に向かうものだと刷り込まれていた。


のが、17歳のバービー人形の登場で「自由で楽しい女性としての人生があるんだ」ときっと女児たちはテンションぶち上げだったことでしょう。


とはいえバービー人形誕生の前に「ウーマンリブ」が起きたのだろうと思ったらバービー誕生は1958年でウーマンリブは1960年代後半からってことなのでウーマンリブよりも10年くらい前にバービーは誕生してたんですね。




◼️1955年 西ドイツ ビルド・リリ


さらにそれより早く、1955年の西ドイツのグライナー & ハウサー社がファッションドールとしてのビルド・リリを発売。


ビルドというタブロイド誌で連載されていた漫画『リリ』の主役リリを人形化した商品。
ファッショナブルで見た目はバービー人形と見分けがつかないし、すでに特許を3つ取ったくらいに高性能。


価格は2万円くらいかと(平均月給が200~400マルクの時代に12マルク)。
最初はジョークとして男性向けに販売されていたのが、次第に子供達にも人気になったと。


その頃、
自分の娘バーバラが自分よりも年上の女性になりきって紙人形で遊んでいる姿を見たりして
「それまでは10代や大人になるという基本的な考え方を理解できる女の子向けの人形が欠けていた
」としてバービーの生みの親ルース・ハンドラーはビルド・リリを買ってきた。
ビルド・リリはルースが作ろうとしていた人形と同じコンセプトだった、と。
で夫との会社"Mattel"で製造販売&大ヒット。




◼️今までの映画でも同じメッセージは繰り返し語られてきた


男性社会の歪さとか女性活躍促進会議に女性がいないとか女性にはあらゆるものが押し付けられているとかマチズモうざいとか「あなたであればそれでいい」とか。


ラストでいちいち男女が恋に落ちなくてもいい(落ちてもいい)とか女性差別の裏には男性差別もあるとか


上映時間144分の中でいろんな〜〜〜〜〜〜(ドリカムの「めまい」)〜〜〜〜〜〜メッセージを言ってて、受け取るのも大変だし、
新しいメッセージがあったのかもしれないけど特に新しいのはなかったようにも思うし。。


ただ、
これだけの量と密度と勢いでこれらのメッセージをぶつけてきた映画は初めてなんだと思います。
爆誕です。


「届いた」からこその10億ドルの大ヒットだし、
「届いた」からこその反感の嵐もものすごいことになってる。


◼️わかりやすい。終盤はほとんど説明セリフ


画面が楽しい映画ですけど、説明セリフが多い。
終盤の大事なメッセージとかは全部セリフ。
ある老女との会話のず〜っと説明セリフ。


↑こんなワケないのよ。グレダ&マーゴットの映画で。もっとサラッと映画的な表現で伝えることができるはずなんよ。


でもそうじゃなくて、つらつらつらつらつらべらべらべらべら喋るわけ、特に終盤。


なんでか。そうしないと伝わんないと思ったんでしょうよ。
アメリカ・フェレーラさんがほぼカメラ目線みたいな感じであれだけ捲し立てないとダメだって思ったんでしょうね。


で、やっと伝わった。伝わった証拠としての反感の嵐。


「映画を観たい」と僕は思いましたけど、
そういう映画を観たいならそういう映画を見ればいいだけのことです。
そんなことよりももっと大事な大事な映画です『バービー』は。


この映画を観てあらゆる年代の女性たちがどう感じたのか、パワーをもらったのかを僕が語る資格はありません。


きっと励まされた気持ちになるのではと想像はしますし、僕はとてもうらやましかったです。


僕たちについてもド全力で励ましてくれる傑作&大ヒット映画があったらいいなと。

ラストネタバレは以下に


バービーは人間になりましたね。
まさか人間になるとは。。
『トイストーリー4』では野良おもちゃになってましたが
まさかの人間化。。
グレダ監督は「バービーを描くことは人間を人間を描くことになるだろう」と言ってましたね。
バービーは人形を卒業して人間の女性になりました。
バービーは人形なんだよ、と。
人形はおもちゃなんだよ。
卒業するものなんだよ、と。
冒頭で女児たちが赤ちゃん人形を破壊するシーンを思い出します。
あれは赤ちゃんではなく人形。
人形だし、所詮おもちゃの話だよ、と。
その後婦人科で行くのはまぁブラックジョークでしょうね。。



映画『CLOSE/クロース』ネタバレあり 実際にたくさんいる若者たちへの視線 

2023-08-07 | ネタバレあり
CLOSE/クロース(2022年製作の映画) Close 上映日:2023年07月14日製作国:ベルギーオランダフランス上映時間:104分
監督 ルーカス・ドン
脚本 ルーカス・ドン アンジェロ・タイセンス
 出演者 エデン・ダンブリン グスタフ・ドゥ・ワエル



男らしさへの期待」

是枝監督の『怪物』的なものかと思って、好評は聞いていたものの、二の足を踏んでおりました。
LGBTQ+イシューというよりは
〝男性性〟の方がテーマのようですね。

以下のインタビューで監督は「男らしさへの期待」という言葉を使っておられます。
「男は男らしく!」って言われた時に、
女子同士でなら許される同性同士の距離感が男子だと許されなくなってくる。
(そこにはもちろん同性愛嫌悪という下地があるからこそなのでセクマイイシューでもある)
そうじゃないと輪から外されてしまう。

この映画だと本当に〝輪〟を形成してました。
校庭で喋ってるだけでもいちいち〝輪〟。
ボール遊びでも〝輪〟。

必死にその〝輪〟の円周にいようとするレオの姿が辛いんだけど、
確かにああいう場面は学生生活の中ではマジでたくさんありましたね。。。
一方、レミはその謎の〝輪〟に入るか入らないかについては気にしていないようでした。

ただレオからの拒絶が悲しかったのでしょう。
レミもなぜレオが自分と距離を置こうとしているのかはわかっていたと思うんです。
レミは「期待される男性性」に応えようとする男の子ではなかったようですが、世の中には「期待される男性性」ってものがありそれに応えられないとハブられるっていうのは、レミも気づいてはいたと思います。

「それを理由に僕を拒絶するの…??今までのは何だったの??」という悲しさだったのかなと。

***


映画は現実社会の鏡でして。

女性やセクシュアルマイノリティの権利の平等化が進む中で
ヘテロ男性が「自分を省みる」という作業を現実社会で行われていると思います。

脚本家の坂元 裕二が『怪物』で、
ルーカス・ドンが『CLOSE/クロース』で、過去の自分を省みる作品を作っている。

ちょっと毛色は違うけど『パリタクシー』もそうだと思っていて、
女の〝長い〟話をおじさんが聞き続けるという構造で最初から最後まで貫いた映画はとても珍しいし、
その女性の話っていうのも「有害な男性性に苦しめられた半生」な訳で、それをおじさんがずっと聞き続けるってのはやはりそこには「男の反省」があるだろうし、そもそもこのタクシー運転手(ダニー・ブーン)は有害な男性性はあまり感じられない人物像になっていた。

で、話ちょっとそれますけど、

2020年のドキュメンタリー映画『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』では、ゲイ男性も批判の対象になっています。
ゲイっつっても所詮は男。
ヘテロ男性が社会の変化の中で反省すべきターンに来ているなら、ゲイ男性も同じ。

ネットフリックスの『シングル・アゲイン』では、ゲイの中年男性とシニア女性が友人になって
お互い似たような境遇であると笑い合うけど
シニア女性はゲイ中年男性に「でもあなたは男よ」と釘を刺す。


***

ラストネタバレは以下に。。






おそらく自殺ですよね。。
ご両親辛いですね。。
レミをいじっていたクラスメイトたちが
「まるで被害者かのように」グループセラピーを受けていました。
いじめてた張本人たちが
「レミはいつも笑顔だった。レミはいいやつだった」と2行ずつくらい順番に話していくのを睨むレオ。
レオはおそらく「自分のせいだ」と自分を責めたり
「いや、クラスメイトのいじめのせいだ」と他人を責めたり
もしかしたら言語化できていなくても何となく社会(世間、空気)に責任を押し付けようとしたり
グルグルグルグル頭の中で考えていたはず。
それなのにクラスメイトはのうのうと
まるで自分が心に傷を負ったかのようにペラペラとなんか喋ってる。
せめては自分だけは自分のせいだって思わなきゃって思ったのでしょうか。
レミの母に「僕が追い詰めた」と告白。
「でも仕方なかったんだ!」と言い訳しないレオ。
レオだけのせいではないことは観客は重々承知。
レミの母「降りて」。
息子の親友の成長を息子同様に見届けることを少しの楽しみにしようとしていたかもしれない。
そんな中、「え、コイツのせいなの?」とレミの母はパニックになり森にレオを放置してしまう。
レミの母「やべえ」と思って、すぐにレオを捜索。
昼間で良かったですよね。夕方以降だったらもうレオ遭難してましたよ。
無事にレオ発見。
レオは木の棒を持ってます。
自傷行為なのかレミの母を攻撃するつもりなのか。
僕は自傷行為かなと思いました、最初は。
自分を殴ったりするのかな、と。
でもちょっとレミ母に向けるような感じもあったような。
つまりもどっちもですよね。
レミが死んでからずっと孤独で1人で戦っていて
やっとレミ母に告白(カミングアウト)することで苦しいし賭けだけど世界が開けるかもと思ったのに
「降りて」って言われて、まるで世界から降りろって言われたかのような衝撃。
もちろんレミ母の気持ちもわかりますよ。
「全方位僕の敵かよ」とレオは木の棒を持っていたんでしょうね。
で、レミ母はレオを抱きしめる。
後日(だいぶ経ってから)レミの両親は引っ越ししていた。
産院を訪ねたらもしかしたら引っ越し先を知れるかもしれないけど、レオはそうはしなさそう。
レオの家業である花栽培が佳境。
花畑の中をかけっこする相手はレミではなく兄。
振り返るレオ。
追いかけてくるレミはいない。
けど、いるよね。
いるんよ。
こういう死に方をした若者がたくさん。
レオはその子たちを見たんよ。
たっっっっっくさん実際にいるんよ、こういう死に方をした若者が。
いじられて、いじめられて、明るい未来なんてないって思わされた若者が、ひっそり隠れて大人しく真っ当な幸せなんて求めたらいけないと思わされてる若者がたくさんいるんよ。


 映画『エスター ファースト・キルエスター ファースト・キル』ネタバレあり エスターの男の好み

2023-07-13 | ネタバレあり
エスター ファースト・キル(2022年製作の映画) Orphan: First Kill 上映日:2023年03月31日製作国:アメリカ
監督 ウィリアム・ブレント・ベル
脚本 デイビット・コッゲスホール
出演者 イザベル・ファーマン ジュリア・スタイルズ ロシフ・サザーランド


え、エスターを演じたイザベル・ファーマンは撮影時には24〜5歳??
30歳半ばくらいに見えたんだけど。。。

***

どうしても30歳半ばの女性が子供に見せようと頑張っているようにしか見えなかった。。
基本全身を映さないし、
全身映すときはほんとの子供を使って撮ってるからやっぱそこでも「子供のサイズってこれだよね…」って思っちゃうし。
大人と一緒に映るときは膝立ちしてんのかなと思ったら面白くなってきちゃうし。。
で、やっぱ腕が長いんよ。。
頑張って低身長に見せようとしてるんだけど、腕だけ突然長い。。
まぁ顔も老けてるんだけど。。

***

エスターの好みの恋のターゲットが今作はロッシフ・サザーランドで、前作はピーター・サースガード。


ピーター・サースガード



ロッシフ・サザーランド

眠そうなイケおじがタイプなのかな。

***

今作のポイントは、本物のエスターが兄に殺されていたこと。
それを母(と兄?)で隠蔽して、エスターは失踪した設定になっていた。
そんな中で「はい、エスターです」って感じで出てきたから母はびっくり。
でも娘が帰ってきたことで、夫の精力が復活したので、母はエスターとの共同生活を続けることにする。
映画の半分くらいでこの展開になるので
「あ、これは面白いぞ」と思ったんですが
なんかコメディチックになっていくし
結局お互いどうしたいのかがわかんなくなっていって
サスペンスとしてもイマイチな感じに。
***
ラスト、なぜか屋根に登るエスターと母。
ずるっと落ちて屋根のヘリに2人仲良く並んでつかまる。
(↑ふざけてるでしょ)
そこに帰宅した父。
「軽い方を先に」みたいな感じでエスターを先に助けてると
その間に母は転落し、死亡。
「お〜良かったなぁ助かってぇ」ってエスターのほっぺをグリグリしていたら
エスターの入れ歯的なものが取れてしまう。
エスターは大人の歯に生え変わってしまっていたのを隠すために子供の歯の入れ歯(?)をしていた?
その入れ歯だけで突然全てを把握した父。
「誰だお前は!」っつってドン引きしてると
「愛してるの!」とエスターが近づいてきて
後退りした父も転落。
ちょうど母の横に並んで2人で死亡。
「誘拐されて、今は孤児。可哀想なエスター。でも彼女を養子にもらいたい人はたくさんいるわ」と女医。
終わり。

***

屋根のシーンでは、父は母の方を先に助けて欲しかったかな。
で「えー!ショック!」みたいな感じでエスターが邪魔をして、母は転落死。
「薄々イヤな感じはしてたけどお前なんなんだ!」って父がブチギレてきて
「愛してるの!」っつって父も突き落とす。
ってのが良かったかな。

映画『⻘いカフタンの仕立て屋』ラストネタバレ 同性愛は3年の禁固刑が課せられるモロッコで 

2023-07-09 | ネタバレあり
⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画) Le bleu du caftan/The Blue Caftan 
 上映日:2023年06月16日
製作国:フランス モロッコ ベルギー デンマーク
上映時間:122分 
 監督 マリヤム・トゥザニ
 脚本 マリヤム・トゥザニ 
出演者 ルブナ・アザバル  サレ・バクリ  アイユーブ・ミシウィ


傑作・名作!

カフタンって知らなくてなんとなくカフスボタン的なものを想像してましたが、
トルコの伝統衣装のことなんですね。

シルクっぽい美しい極上の布に
気が遠くなるほど細かい刺繍や
金糸の装飾のついたオートクチュールの高級品。

それの仕立て屋が舞台。

**

既製品の波に追いやられていて
若い人も職人になりたがらない伝統的な世界。

そんな伝統的な舞台で描かれるのは、人間の自由についてのお話。

「伝統イラネ」とか「古いものイラネ」なんて事言わなくても
人間の自由を高らかに描くことはできる。

LGBTQプラスに平等の権利を与えることと
伝統を壊すことはいちいち結びつけて考えなくていい。

**

と・に・か・く・映・像・が・素・晴・ら・し・い!


冒頭の青い生地の滑らかで冷ややかなグラデーションがもうもう素晴らしい。
この映画間違いないわ!と確信できたスタート。

しかもこのクオリティが最後までずっと続く。

夫と若い職人が惹かれあっちゃうわけなんだけど、映像だけでギンギンのビンビンに伝わるわけ。
はっきり言って全シーンエロいのさ。

エロいシーンはぶっちゃけほぼないんだけど
(個室シャワーの足くらい?)
ずっっっとエロエロ。

しかも上品なんですよ。

**

キャラが素晴らしい。
妻は気づいてるんですよ、最初っから。
すぐ気づく。
視線1秒で気づいちゃう。
(おそらくずっと前から気づいていた)

妻がどんな気持ちなのか、
夫がどんな気持ちなのかはわかりません。

想像することはできるし
きっとこうだろうと書くこともそりゃできますよ。

でもしたくない。
せっかく2人が押し殺している、相手を傷つけないようにしているのを、僕が明かしてしまいたくない。。
(なにそれ)

**

女性映画でもある。

けしてよくあるゲイ2人に挟まれた女、ではない。

変に理解があったり
異常に差別的だったり
途中で映画から消えたり
最終的には急に味方になったりと
ゲイ映画の中で便利に使われる女性キャラなんかではない。

ひたすら自分の意思で強く美しく生きる。

**

若い女性客が布を選ぶときに
「このピンクの布はどうですか?」と聞くと
若い女性客は
「ピンクかぁ…」的な感じで結局布を選べずに店を出ていく。

そこでこの映画のタイトル、青いカフタンが効いてくるわけですよ。

**

終盤、僕は「さっさと青いカフタン作れよ!」と思っちゃってました。。

夫が全然青いカフタンを完成させねーわけ。
何をしとるんだ、サッと仕上げて他に大事なことに集中すべきだろーよ、と。

浅はか!俺!

**

ラストネタバレは以下に!







青いカフタンは妻の死装束用でした。 
若い頃に結婚式ができたなら青いカフタンが着たかったって妻は言ってたもんね。

 夫は客に売るようだった青いカフタンを妻の葬式で妻に着せるつもりでずっと手元に置いていたんですね。。
 「もうミシン使ってください!」って思うくらいの繊細で細かい刺繍。
 気が遠くなるほど手間がかかる。
それを妻の死装束に。。

 **

 妻の友人が亡くなったとき 伝統的な葬儀で送られる彼女を見て 「彼女は悔しがってると思うわ。ダンスが好きだったから」と嘆いていた。 
おしゃれで先進的だったのにあんな最後だなんて可哀想だ、と。

 夫はそれをちゃんと聞いていたんですね。

 妻が死んだ後、思考停止したような慣習に沿った葬儀から棺に入った妻を脱出させる。

 白装束を脱がして妻に青いカフタンを着せる。
 そして夫と若い職人のふたりで、棺を担いでいく。

 ** 

妻は死の直前、夫に言っていた。 
「愛することを恐れないで」
 ↑これもどういう意味かは決めてしまいたくはない。

 そりゃきっとこういう意味だろうというのはある
 夫と若い職人の関係を妻はめちゃ気づいていたんだから。 

だけど、この彼女の美しい言葉の意味を、僕が勝手にこうだろうと決めたり予想したりしたくないんよねぇ。
 それくらいにこの妻がめちゃくちゃ1人の人間として自立した存在だった。

 素敵だったぁ。
 素敵すぎるっていう難点もあるんだけど 
ピンクの布がなくなったのを若い職人のせいにしたんだけど実は自分せいだったってのを気づいたんだけど隠していた事件、とかもあって 一点の曇りもない素晴らしい人物ってわけでもないことにしていて上手い。 

ただ、それも後になってちゃんと謝るからね。
 結局全然人間らしいわけ。
素敵なわけよ。 

素晴らしい映画でございました!

映画『怪物』この映画の外にいる観客も薄っぺらい加害者だと言いたいのでは ラストネタバレあり 

2023-07-02 | ネタバレあり
yuzukaさんのこちらの記事(https://note.com/yuzuka_tecpizza/n/n3f54976b4247)と
この記事を広めたドリアン・ロロブリジーダさんのツイートを含めての「5」です。

映画ってここまでのことができてるのか、実は。
と心を強くさせていただきました。

どんなにいい映画が生まれてもそれを観た人が受け取ってないなら、虚しいですからね。
このようなリアクションがあるのは嬉しい。

**

実はちょっとひっかかったのは、
この映画の端っこにいる人たちが割と単純な加害者として描かれていたこと。

先生のカノジョや同僚、先輩。
小学生のクラスメイトたち。
(野呂佳代さんはご本人の好人物ぶりによってそうは見えなかった)

いずれも結構イヤな奴として描かれたままだったのがイマイチだなあと思っていたのですが、

脚本家の坂元さんが反省の気持ちで書いた的なことを言ってらっしゃったので
おそらく坂元さんはクラスメイトのひとりだった?
もしくはモブ的に映画の端にいた人。

その頃の自分を〝言い訳せずに〟加害者として描いたのでは。

**

当然ながら映画の中心人物ほど多面的に色濃く描かれる。
端に行くほど薄くなる。

そのグラデーションで言うと、この映画の外にいる〝観客〟も薄っぺらい加害者だと言いたいのでは。

怪物は誰……っていうことにも繋がるし、
ラストについてもさらに強烈になる。

**

ラストネタバレは以下に!!!





検視シーンも葬式シーンもないし 
頭に三角の布もつけてないので 
あの子供2人が「死んでない」と言うのも自由ですし
 死んでないと思いたい気持ちもとてもわかります。 

「生死については判定不能」という意見なら理解できます。

 が、死んでるでしょうよ。あの子供ふたり。

 母と教師は電車の上部から窓を開けて子供らの名前を叫んでいました。
 あの電車の上部に窓はない。 電車は横転してる。

 あの安藤サクラの叫びからは「あ!動いてる!生きてはいる!」という感情は入っていなかったと思う。
 でもこれは僕の受け取り方。 

子供らは、電車の窓的なものを抜けてトンネルの中に移動しましたよね。(そのあとトンネルから外に出た) 
位置的にさらにおかしいですよね。

 電車がクルクルクルクル横転してトンネルの近くまで動いたってこと? 
それでも窓とトンネルが通じてるのはおかしいし、
 仮にそんだけ横転してたら、、やっぱ死ぬよね。。

 窓が上部にある時点で電車は横転してる。
 てことは怪我はしてるでしょ、めちゃくちゃ。

でもあの2人は怪我などいっさいなく草むらで飛び跳ねてた。
 安藤サクラも瑛太もいない。
 パラダイスみたいな描写でした。
 天国ですかね。 

「生まれ変わったのかな?」 
「そんな感じしないね」
 死んだんですよ。

 死んだら生まれ変わって〝正しい自分〟になれるかも?
 なんていう危険な思想を是枝&坂元コンビが伝えると思います??? 

この映画見て「生まれ変われるなら!」って思っちゃう子供が1人でも増えたらヤバいっしょ。

 あの2人はクソな現実から逃げて2人だけのユートピア(あの電車内)に追いやられた。
 あんな危険な場所をユートピアにするしかなかった。 

外の世界が地獄だから。
 あの2人を受け入れない世界だから。
世界があの2人を拒否してあの2人は追いやられて、死んだの。

 僕に言わせれば〝殺された〟。 

僕がこの映画に出ていたら ラストシーンでカメラ目線で
「てめーらが殺したんだよ!」と叫ぶ謎のおじさん役を演じてました。 
でも是枝&坂元映画なのでそんな役はありませんでした。


映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ネタバレ?あり 可愛くて楽しい! ………だけ 

2023-06-05 | ネタバレあり
ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)
The Super Mario Bros. Movie
上映日:2023年04月28日
製作国アメリカ
上映時間:92分
監督 アーロン・ホーバス マイケル・ジェレニック
脚本 マシュー・フォーゲル



ファミコン用ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』が発売されたのは1985年。
僕が生まれたのが1978年。
7歳か、8歳の時にはウチにファミコンが導入され、同時にスーパーマリオブラザーズも入ってきた。

もう、もう、もう、もう、とにかく何よりも楽しかった。
スーパーマリオブラザーズ。

そっからマリオと共に生きてきた。
と言いたいところだけど、64もDSもギャラクシーもやってない。
New スーパーマリオブラザーズ Wiiが最後。

マリオ世代だと思ってるしマリオ愛もあるけど、そんなに詳しくはない。

**

で、映画について。

あの可愛らしいマリオが、素晴らしい絵と動きと音楽で構築されて、とにかく可愛いくて楽しい!
可愛くて楽しい。
可愛くて楽しい。

………だけ。。。。。。。


ネタバレ?は以下に!!




我々は数えきれないほどのマリオをタヒなせてきたわけでしょ。。
それなのにあまりにもマリオたちが能天気すぎて。。
さすがにもうちょい大人の鑑賞にも耐えうる物語にしてほしかったな。

マリオはピーチに「諦めが悪い」と言われていたけど、
諦めが悪かったのは僕らなんだよね。
マリオを自分として何度負けても諦めずにコツコツジワジワ攻略してきた。

そういう、今までマリオを操作してきた人間たちの思いみたいなのが全然感じられなくて。。

**

幼児向けなのかな?
にしても酷くない?
幼児向けだとしたら、あの青い星のヤツの恐ろしいセリフ(暗闇と僕だけになっちゃった的な…)とかマジなんなの。。

 せめて楽しいだけにしてくれれば諦めつくのに。。
なんなのアイツの存在。。

 色んなキャラやアイテムやら〝面〟を出すことに必死で、そのための脚本でしかなかった。。。 

ピーチ姫像はアップデートされていたけど、このアニメで初めてではなくて、 マリオカートの時点でピーチ姫はだいぶアクティブ化されてましたよね。 なので別にこの映画の成果でもない。。
 

そりゃマリオは可愛いしクッパも面白かったよ。。
 でも話が全然展開しないから、 人間界に移動してきたときに 「あ!やっと映画版の話がスタートするんだ!ここから展開があるんだ!」とか思ったら別にない。。。

 クッパやピーチ姫も「ここが人間界かあ!」みたいなリアクションが全然なかった。。。 

ラストもすでに登場していたスターをマリオとルイージが使って、無敵になってクッパを倒す。

 まず、
一つのスターでマリオとルイージの2人が無敵化するのがルール的に間違ってるし、 スターは時間制限が短いのに割ののんびりと戦っていて、ルールがマジで無視されていた。

 **

 どうやらパート3か4まで作れると思っているらしいんだけど、、 パート2ではもう今作を忘れて捨て去るくらいに、一から構築するつもりで、マジでちゃんと作ってくれないと。。。
 今は盛り上がってるけど次第に評価下がっていくよ。。



ネタバレあり 異能力ヒーロー映画『フリークスアウト』

2023-05-14 | ネタバレあり
フリークスアウト   Freaks Out
上映日:2023年05月12日
製作国:イタリア ベルギー
上映時間:141分
監督 ガブリエーレ・マイネッティ
出演者 フランツ・ロゴフスキ エリック・ゴドン クラウディオ・サンタマリア アンナ・テンタ エミリオ・デ・マルキ



四コマ映画『フリークスアウト』




大人気イタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のガブリエーレ・マイネッティ監督の新作。


『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は2015年ですから満を持してた新作。
そして怪作。
名作。


前作同様こちらもスーパーヒーローもの。

超人パワーを持った主人公たちの苦悩と戦いの物語。
主役はサーカスの団長のイスラエルと団員たち。
●光と電気を操る少女マティルデ
●アルビノの虫使いチェンチオ
●多毛症の怪力男フルヴィオ
●磁石人間の道化師マリオ



そして敵はナチス!

何してもいい相手。なんの擁護もできない悪。
で、さらにナチスに対抗するレジスタンスたちも加わって話はややこしいことに。


さらに複雑な敵の能力

あんまり書くとネタバレになっちゃんですけど、敵(フランツ)が「ジョジョの奇妙な冒険」っぽいと思いました。
危機的状況になるほどに、知られざる能力が開花してくるんですよ。
ジョジョのアイツなんですよ。スマホなんですよ。ナチスなのに、スマホ。


強力な反戦映画

まっすぐな反戦映画であることが嬉しい頼もしい大好き。
「反戦」って言うと「自分勝手」「いい人だと思われたい」みたいに言われる世の中になってきて、本当になんて最悪なんだろうといつまで最悪を更新し続けるんだろうと思っているところに、このエンタメヒーロー映画での力強い反戦メッセージはありがたい。


エンドロールですよ

エンドロールがまた感動。
第二次大戦が終わった後の人間の歴史がイラストで紹介されていくんですが、あれも描いてくれてる、これも描いてくれてると感動してしまうのです。
あのヒーローも出てくるし。






ネタバレは以下に!

■ナチス
兄……?
弟……フランツ
フランツの恋人?……イリーナ
■サーカス団
団長……イスラエル
光と電気……マティルデ
磁石……マリオ
多毛症の怪力……フルヴィオ
虫操り男……チェンチオ
■レジスタンス
リーダー?……オズワルド
女性……サラ
義足……ガンバレット
背曲がり男……ゴッボ
一つ目の狙撃手……グエルチョ
***

サーカス団のショー。それぞれの技能の紹介。
「見えるものだけが真実ではない」byイスラエル
「ローマの聴衆が待っています」

**
ナチス、フランツと恋人。
イリーナ
フランツ「彼を三枝kなければ。そうとうへの贈り物にする。超人的な力の持ち主だ。イリーナ、戦争に勝つにはこれしかない」
イリーナ「戦争に勝者はいません。敗者のみです」
***
サーカス団、ローマに着く。馬車で。
イスラエル「ニューヨークに行く。シチリアから船で。一人300リラが必要。」
フルヴィオ「アメリカに行ったところでサーカスか?戦争はじきに終わる」
イスラエル「私はユダヤ人だ。ドイツでサーカスができると?」
フルヴィオ「あんたは普通でいいな。俺にはサーカスしかないんだ」
マティルデ「私も人に触れられないのに?」
**
ベルリンサーカス。
「ベルリンサーカスへようこそ!」
ナチスお抱えのサーカス団。
フランツが6本指でピアノを弾いている。
**
イスラエル「お前は特別だ、自信を持て」
マティルデ「電球をつけられるのが特別?私は本物の化け物よ」
イスラエル「過去を受け入れろ」
マティルデ「アメリカに行ったらみんなバラバラになる」
イスラエル「戦争も私たちを引き離せない」
**
アメリカに行く旅費(一人300リラ)をイスラエルに渡す。
フルヴィオ「アメリカでサーカスをやる!」
通行証(偽造)を買ってくると言ってイスラエルは帰ってこない。
マティルデ「彼は泥棒じゃない」
フルヴィオ「戦争は善人を悪人にしちまう」
マティルデ「そんなの心がけよ」
フルヴィオ「イスラエルを見つけられなかったらベルリンサーカスに入る」
***
ベルリンサーカス。
エラ呼吸男で人体実験をしている。
フランツ「完璧ではないが水中に20分くらいいることができる」
はずが、呼吸できなくなってフランツがエラ男を殴り殺す。
兄「3年も待ってる!」
フランツ「ヒトラーは死ぬ!拳銃自殺だ」
兄「そいつ人なら威厳を持て。大事な公演まで1週間だ。彼らを連れてこい!」
**
ローラー作戦。ユダヤ人がり。ユダヤ人がトラックに乗せられる。逃げた男が射殺される。
フルヴィオとマリオとチャンチオがトラックに乗せられる。
虫や怪力を使って、ユダヤ人たちと共に逃げることに成功。
そこになぜはマティルデも合流。
フルヴィオ「ベルリンサーカスに行く」
結局男3人はベルリンへ。
チェンチオ「夜道でも安全だ」と蛍入りの瓶をランタンとしてマティルデに渡す。なティルではベルリンに行かない。
***
マティルデがドイツ兵二人に襲われそうになる。心臓あたりが光、マティルデ覚醒!二人を撃退。マティルデも森の中で気絶。
レジスタンスたちに助けられる。
♪パルチザンよ、連れていいてくれ、僕らは死ぬだろう♪
レジスタンスたちの歌。
***
ベルリンサーカスに3人党略。カバやラクダ、たくさんのサーカス団員もいる。大きなサーカスだ。。圧倒される。
フランツ、ピアノを弾いている。オーケストラもいる。
フルヴィオ「これで生活は安泰だ」
3人は大歓迎を受ける。女たちから体を洗われたりセックスしたり。
でも毒ガスで気絶させられる。
***
マティルデ眼を覚ます。森の中で隠れて暮らすレジスタンスたち。
ゴッボ「電気ショックの力があればナチを何人も殺せる。べりらに参加すれば楽しいぞ!これは戦争だ」
マティルデ「人を殺すの?ユダヤ人はどこへ?」
ゴッボ「殺される。電気は遠くに飛ばせる?お前の力は神からの贈り物だ。人さがしに協力してやる。人を殺すのに罪悪感が?すぐ慣れる。」
***
3人は箱に入れられたり、氷漬けにされたり、くるくうr回されたり、人体実験される。
「出しやがれこのやろー」
***
マティルデ、トラックに乗せられているイスラエルを見つける。マティルデ「私もユダヤ人よ」とトラックに乗り込もうとする。
レジスタンスのサラが助けに来る。
レジスタンスたちがナチたちを射殺。
しかしトラックは発車。
イスラエルを含むユダヤ人たちは連れられてしまった。
ゴッボ「役立たずはいらん!」
マティルデ「人殺しはしない!」
ゴッボ「理由をいえ」
マティルデ「母さんを殺したから!」
流石のレジスタンスたち「え……そりゃ無理か」的な神妙な面持ち。
***
グエルチョ「フランツは父や兄みたいに兵士になりたかったが、今は見せ物だ。ヒトラーに自分が率いる超人集団を贈るつもりだ」
***
フランツが未来の映像を見る。
ヒトラーの映像。
「この運動にくらい影が刺している」byヒトラー
スマホが鳴る。この時代におかしい。
フランツの能力発現!! スマホで未来が見える。ナチスが負けて連合軍が勝つ未来。
後光が刺してシルエットになっている4人の映像。マティルデたちか?
***
マティルデもベルリンに来た。
フランツの部屋に入り毒ガスで気絶。元気能力がバレる。
**
フランツ、ヒトラーたちの前で演説。
「私が見たドイツの未来は明るいものではない。3人の男と一人の少女がドイツに明るい未来をもたらします」
檻にマティルデと虎。
フランツ「私の話を証明してみせろ!」
マティルデ、虎を手懐けて仲良しになる。
フランツは退散。
フランツ「4人を殺せ!」
焼却炉に入れられる4人。
マティルデが遠隔操作で施設の電灯を破壊していく。電気エネルギーを右手から発してドアを破壊。逃げる。
フランツ「私はドイルの予言者だ!」
**
人間大砲で3人が飛んで逃げる(何これ)。
フルヴィオはちょっと親しくなったサーカスの女性に助けられる。馬も二頭もらって3人に合流。
**
兄「お前はおしまいだ」
フランツ、兄を殴って気絶させる。首を絞めて殺害。
フランツ、6本指の一本を切り落としてハイルヒトラーのポーズ。
**
4人、イスラエルが乗ってる列車の前方に上から屋根を破って入る。
ドイツの偉い軍人ばかり。力を合わせて全員を倒す。
**
列車を止めてイスラエルたちユダヤ人を列車から降ろす。
そこにナチたち。
フランス「わたしといればより良い未来が開ける!」
レジスタンスたちが火炎瓶や手榴弾を矢で打ってくる。
ナチたち退散。
ナチスとレジスタンスの戦い。
まだ中にユダヤ人が乗っている列車が燃えて、それをチェンチオが虫たちを操って消火。多くの虫が犠牲に。神妙な面持ちのチェンチオ。
イスラエル死亡。レジスタンス側も割と死ぬ。
マティルデ、電気バリアで銃弾を弾き、火の玉みたいになる。
さらに爆発してナチスを焼き殺す。
フランツは戦車に隠れていて無事。
フランツの恋人イリーナもしぼう。
フランツ、ものすごい銃員の長い拳銃で自殺。
フランツ「ゲームオーバー」
マティルデがフルヴィオに触れても抱き合っても電気が発生しない。4人で抱き合う。
救われたユダヤ人たち。
「私たちが命を救ったんだわ」明るい表情。
マティルデとチェンチオは付き合うっぽい。

終わり

エンドロールにモノクロのスケッチイラスト。
戦後のシーン。
ウッドストックとか、終戦を知ってキスする男女(有名なやつ)、ウーマンリブとか、マンデラとかベルリンの壁崩壊とか、キュリーっぽい女性とか、ポルポトとか、ベトコンとか、原発とか、貧富の差とか、モハメドアリとか、天安門事件とか、鋼鉄ジーグとか、カセットテープとか
のイラストが出てくる。
ラストは4人がこっちに向かってくるイラスト。

終わり

映画『帰れない山』ラストネタバレあり ラストのカラス3羽めっちゃ自然の摂理…

2023-05-07 | ネタバレあり

帰れない山(2022)Le otto montagneThe Eight Mountains 上映日:2023年05月05日 
製作国:イタリア ベルギー フランス 上映時間:147分
監督 フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン シャルロッテ・ファンデルメールシュ
原作 パオロ・コニェッティ
出演者 ルカ・マリネッリ アレッサンドロ・ボルギ




■原作は世界的ベストセラー『帰れない山』(原題:「LE OTTO MONTAGNE」八つの山)

本作の原作は、イタリア文学の最高峰「ストレーガ賞」、フランス「メディシス賞」外国小説部門、 「英国PEN翻訳小説賞」などを受賞し、世界39言語に翻訳された国際的ベストセラー小説「帰れない山」。

とのこと。


2022年2月現在は1年の半分をアルプス山麓で、残りをミラノで過ごしながら執筆活動に専念する。
ともあるので、原作者と主人公ピエトロはかなり重なってるんでしょうね。


■小説が原作なだけあって物語が強い。


映像に頼った雰囲気映画ではなくちゃんとキャラクターがあるし
映画化を考えてなかったからだと思うんですけど、結構いろんな国に行くので、、ロケ大変そうでした。。

***

映画予告編の四コマ漫画
■四コマ映画『帰れない山』
https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2934






****

■とはいえやはり山の映像すご

アルプス山脈の2番目に高い、イタリア北部モンテ・ローザの映像がすごい。
夏は気持ちよさそうな風と美しい緑なんですけど
冬は軽地獄ですね。雪地獄。

「やっぱ自然っていいよね」なんて軽々しく言えない。
途中、都会からピクニック気分で若者数人が来るんですけど彼らの異質っぷりが際立つ。

自然からも、自然と同化している主人公のひとりブルーノからも彼らは拒絶されるそりゃそうだ。



■ブルーノとピエトロの友情の物語

話の主題は男二人の友情の物語。
監督が「この友情をラブストーリーのように撮った」と言っているのが合点がいく。
その「愛してる」は友情由来のもの?それとも??
っていうシーンの連続。
どこへ行くの?ふたりはどこへ向かっているの?全然いいんだけど、行っちゃうの?
ってハラハラドキドキしながら観れて、もう本当に楽しかったです!


■都会っ子ピエトロ、自然っ子ブルーノ、それぞれの父

この映画には、ピエトロとブルーノと、存在感の大きいピエトロの父、そして不在のブルーノの父の4人の比重が大きいです。
こう考えると「強い父に押し潰される息子ふたり」の物語な感じがします。
「父との和解」?
父の押し付けてくるものや期待からなんとか逃れようとしたり、飲み込まれたりして大人になって
父の死後、父という存在を受け入れる、受け流す儀式をしたんだろうね。
それを一人ではなく、ふたりですることができたんだ、ピエトロとブルーノは。


■男女の差

性差について原作者や監督がどれほど自覚的に描いているのかわからないけど、、めちゃくちゃ描かれている。
とにかく「母・妻」と「父・夫」の差異が大きい。大きい。大きい。
あ、原作者パオロ・コニェッティ、僕と同い年だ。1978年生まれ。
39歳の時に小説『帰れない山』を発表。
2022年2月現在は1年の半分をアルプス山麓で、残りをミラノで過ごしながら執筆活動に専念してるとのことなので、都会が疲れちゃう人なんですかね。特に人間関係。


■自然は逃げ場ではない

ピエトロとブルーノがある約束を果たすために「家」を作りまして、そこが二人の桃源郷のようになりまして、
そこでの暮らしはロマンチックだしロバは可愛くてほのぼするんだけど
そこに「現実」や「社会」がじわじわと降り積もってくる。
いつまでもビオトープみたいに生きていきたいけどね。。




ラストネタバレは以下に。。






ブルーノは、以前ピエトロが連れてきた友達の中の1人の女性と結婚。
女児も生まれ〝自然と融合した暮らし〟を実践。
動物と自然と人間の理想的な暮らしを追求。

「あ、へぇ、ブルーノって結婚とかするんだ…」と思ったかどうかはわかりませんが、
都会っ子として生きてきたピエトロは路線変更してカトマンドゥ的な場所(どこでしたっけ…??)で観光客向けの通訳ガイドと地元の学校の英語教師をやりつつ、本を書きそれがヒット。
その地で女性と結婚。

お互い結婚し家族を持ち、それぞれの生き方を確立した(っぽい)状態になったものの、
ブルーノの理想的な山暮らしは破綻していく。
借金は増えていく一方だし女児の教育費もままならない。

家族を窮地に追いやっているのに山での理想的な暮らしを捨てられないブルーノを、経理も担当している妻が三行半を突きつける。
妻と娘は出ていく。

自暴自棄になっているブルーノをピエトロが尋ねる。
喧嘩別れをしていた2人だったが次第に打ち解け合う。

家族、社会、金。
自然の中で生きることを難しさを誰よりも知っていたはずのブルーノだったが、結局は〝社会〟の重さに押しつぶされてしまう。

「俺の心配はするな。山が俺を傷つけたことはない」これがピエトロに向けて言ったブルーノの最後の言葉。

ものすごい積雪で心配した従兄弟が救助を要請。
救助ヘリが山小屋に到着。
ブルーノとピエトロが作った屋根をチェーンソーが真四角の穴を開ける。ブルーノはいない。
写真立てには子供の頃のブルーノとピエトロ。

「周囲を捜索したがブルーノは見つからなかった。それ以上探しても無駄だという結論に。雪が溶けたら見つかるだろうと。これはあの人が望んだこと?」by ブルーノの妻

春になり雪が溶けて所々土が露わになる。
そこにカラスが3羽。
「わ〜い♪」みたいな感じで肉をついばんでいる。
めっちゃ自然の摂理。
これがブルーノの望んだことだろうか?

ネタバレあり 映画『EO イーオー』映画音楽も素晴らしくて

2023-05-06 | ネタバレあり

EO イーオー(2022年製作の映画)EO
上映日:2023年05月05日
製作国:ポーランド イタリア
上映時間:88分
監督 イエジー・スコリモフスキ
脚本 エヴァ・ピャスコフスカ イエジー・スコリモフスキ
出演者 サンドラ・ドルジマルスカ  イザベル・ユペール  ロレンツォ・ズルゾロ  マテウシュ・コシチュキェヴィチサヴェリオ・ファッブリ






第95回アカデミー賞国際長編映画賞候補作

『異端の鳥』っぽい作りだと思いました。
戦時下で少年が安住の地を求めて各地を転々としながら大人に保護されては逃げて保護されては逃げて、、という『異端の鳥』。

『EO イーオー』はロバのEOちゃん(オス?)が人間の都合でどっかへ連れて行かれたりEOちゃんの自由意志で逃げたりして各地を転々しながら、
天国のような地獄のような人間たちの様子を映し出していきます。

ロバ視点ではありますけど登場人物が割と多いし、
各地で行われるイベントがなかなかインパクトがあるのでグッと惹きつけられたまま最後まで観れます。


動物愛護だけではない

冒頭かサンドラとの蜜月を引き裂くのは動物愛護団体ですからね、動物愛護だけを言いたい映画ではないでしょう。
人間の性差別の描写も多いし、人間の残酷さや愚かさや冷酷さもあるし、逆に人間の温かさ優しさもある。

単に各地で嫌な目に遭うだけではないので、次の土地ではEOちゃんが何に遭遇するのかがホントにハラハラします。。



映像と劇伴が素晴らしい

主役はしゃべらないわけです、ロバだから。さすがに。

なので全体的にはセリフが少ない。
そうすると映像と音楽の責任が重くなるわけです。
てことで映像は素晴らしく刺激的。

劇伴は特に素晴らしいですね。
EOちゃんの心情に寄り添っているような、突き放しているような、天空から客観視しているような、複雑で美しい音楽。
映画体験として素晴らしいものだと思います。



ユペール先生

イザベル・ユペール先生が突如どアップで登場します。
ちょうどコーラとか飲んでる時だったら吹き出すと思うので注意してくださいね。

顔力。存在感がすごいのよ。
EOちゃんに負けない存在感。命同士の対決(戦ってないけどね全然)でユペール先生の勝利なんですよ。

僕は自宅のPC画面で観ちゃったんですけど、これは映画館で大音量大スクリーンで観ることで価値が何倍にもなる映画だと思います。





以下、ラストあたりネタバレ





街。
商店のディスプレイの水槽の中を見て興奮するEO。
消防の男女に捕獲される。
消防の男女を含めたメンバーがサッカーをやっている時に、おっさんが「かわいそうに」みたいな感じでEOの綱を外す。
でもEOは逃げない。
PKで蹴る前にEOはいななく。ボールはゴールポストに弾かれる。
試合が決まり暴れる男たち。フーリガン。怖い。
負けた方はロバのせいだと言う。
勝った方はロバのおかげという。
女性審判に強く抗議するフーリガン。女性だからと舐めてるっぽい。
バー。
EOを中心にして踊る。EOは酔っ払いたちにキスをされたりタバコの煙を吹きかけられたり、酒を飲まされそうになり、EOは外へ。
敵チームが襲撃に来た。バットで店を壊しまくる。敵チームはさっていく。
EOもバットで何度も殴られる。
「忌々しいロバだ!」

***

AIの四足歩行ロボットの映像。転んでも何度も立ち上がって草むらを進む。

**

獣医。EOは運び込まれる。
獣医「治すのが俺の仕事だ」
治ったEOは動物たちの殺処分場?で働くことに。
怯えて威嚇する狐や犬たち。悲しい。
殺された動物たちを運ぶのがEOの仕事。
EOは後ろ脚で男を蹴って逃げる。
しかし捕まり、馬たちと一緒にトラックに乗せられる。
ヘビメタの男たち。
運転手の男。店の前でお腹を空かせていた黒人の女性に食べ物をあげる。
「セックスもどう?」と女性に言うと
女性は逃げた。
「冗談なのに、いつもこれだ。。」
パーカーの男が現れて、運転手の男の喉をハサミできる。
パトカー来る。殺人事件。警官などがたくさんいる。
帽子の男「どうしたんだ?お前?何かあった?俺と帰るか?家に帰るのは久しぶりだ。旅の仲間だな。よしいくぞ。胴部保護かな?窃盗かな?お前はいい子だな」
EOが連れて行かれる。
「今まで大量の肉を食べていきた。何百キロも。サラミも。ロバの肉ってことだ」

***

イザベル・ユペール先生、ドアップで登場。びっくり。
男は司祭?神父?の修行中。「我らの生贄が届くように」
それをユペールが凝視してる。
ユペールに電話。
「彼が問題を起こすと私の義理の息子と呼ぶのね。あなたの甥でもあるのよ。今日は何をしたの?」
庭にEO。炎の。
ロバのいななき。EO逃げる

***

「ギャンブル?停職処分に?」
ユペールがさらを何枚も割る。
「もう尻拭いはしない。フランスに帰るから。あなたにも相続はあった。賭け事で失うまでは。あなたにもあなたの父にも私は正直だった。なぜ逃げたの?」
ユペールと男がキス。
(唇が触れ合う前に場面転換)
ユペールは男の義理の母なのかな。男の父は死んだのでその遺産相続がどうのという話が出てきてる。電話の主は男の父の兄弟。司祭?神父?の職を継ぐように義理の母であるユペールに頼んだ電話だったのかな。しかしなんとユペールと男には体の関係があったっぽい。複雑!

***

EO、庭にいる。サーカス団でカサンドラと別れた時に映像。
門が自然に開き、EO、外に出る。
ダムの水流。滝壺・水が逆再生される。
(時間が巻き戻った??)
牛たちのお尻。歩いている。そばにEO。どこかの牧場。
牛と共に舎の中に入る。
銃声。画面真っ黒。終わり。
「本作は動物と自然の愛から生まれました。撮影でいかなる動物も傷つけていません。」


映画『ザ・ホエール』リズ、背負わされすぎ ネタバレあり

2023-04-28 | ネタバレあり
ザ・ホエール(2022年製作の映画) The Whale
上映日:2023年04月07日 製作国:アメリカ 上映時間:117分
監督 ダーレン・アロノフスキー
脚本 サム・D・ハンター
出演者 ブレンダン・フレイザー セイディー・シンク ホン・チャウ タイ・シンプキンス サマンサ・モートン



連ドラだったら全14話くらいになりそうな濃密&鬼展開!

登場人物全員のバックグラウンドが濃厚だし
短時間でそれを発露してくるし
さらに粉塵爆発みたいにスパークして
「そんなことする?」みたな鬼っていうか悪魔の展開に。

観客全員がジェットコースター乗らされたかのようにあっちこっち上へ下へ天国へ地獄へ行かされた感覚。

***



内容詰め込み詰め込み入れ替わり立ち替わりでパンパンです
よ。


タル・ベーラ版のじっっっっっっくりとした上映時間7時間半のヤツも観てみたい(ない)。

***


娘の動きだけでも4時間観てられたと思う。


娘の存在・動きが面白くて面白くて。。
まさかこんなキャラだとは。。
〝悪魔〟の象徴ですよね。
でも〝悪魔〟じゃないよと。
ましてやキリスト教でいうところの悪魔なんかじゃないよ(ていうかそんなのいないよ、と)。
セリーヌ・シアマ版の娘主役ver.観たい(ない)。

***

見終わった後は感動に震えて
「5じゃない?ちょっと久々の5だよね」と興奮しました。
が、30分くらいで落ち着いたのでしたぁ。。。






ネタバレ?は以下に


なんで別の監督のバージョンが観たくなっちゃってるんだろうと思うと、、
やっぱ僕はどこか不満に思ってたわけです。


この映画では同性愛を拒否するキリスト教原理主義を完全拒否していて、僕も同じ気持ちではあるけど、
ここまで怒りの矛先を限定されると「気持ちはありがたいけど、映画を観に行きたんだよなぁ」的な気持ちが一切湧き上がらないとは言い切れない。。


②リズに背負わせ過ぎ。
主役のチャーリーの友人であり、
チャーリーの恋人の妹であり、
チャーリーのゲイの側面を受け入れている人であり、
一緒にニューライフに反発してくれる人であり、
近所に住んでるめちゃ良い友人であり、
看護師の技術でサポートもしてくれて、
呼んだらきてくれて、
叱ってもくれて、
笑わせてもくれて、
ゆったりした時間も過ごしてくれて、
しかも娘を優先したい時にはその場からいなくなってくれる人。
そりゃ第95回アカデミー賞で助演女優賞候補になるよ。
↑何人分演じてんのさ。
すごい便利に説明してくれる役なんですよね。
それをアジア人女性がやってるってのもやっぱちょっと引っかかるし。。

むしろ逆にリズの役は要らなかったんじゃないかと思いますよ。
そうすると映画がものすごく長くなっちゃう。
だから7時間半やるか、ドラマとして14話やるか、要素を削るか。

③舞台っぽい。
閉じ込められてる感、海の底にいる感はありましたよ。
意味も効果もわかる。
ただ俳優の位置や動きやミザンスが、どうしても舞台っぽくて、、ちょっと面白くなっちゃった。。
もうちょっと外の様子を映しても良かったのでは。
あの狭い(広い部屋だけどね。。)部屋に閉じ込められているチャーリーを外から映して、外界と断絶してる彼の印象を強めても良いんじゃないかなと思いました。
なんか逆に、チャーリーの元に人間たちが次々と集まってくるから孤独とか断絶感はなかったんよね。。

④「下で待ってる」が決まりすぎ。
チャーリーがいよいよ死にますと。
娘と二人にしてくれって言われて素直にリズは部屋の外に出ます。
「下で待ってる」とリズ。
階段なんて降りられるわけのないチャーリーにとっては死んで運ばれる時が唯一下に降りる方法。
それが今だと。
下で待ってる。
上手いんだけど。。。
言わないであげてそんなこと、、と思った。。
おしゃれなキラーワードだけど、、
チャーリーには言わないであげて。。
せめて閉めたドアの外で独り言のように言うとかね。



映画『パリタクシー』 "有害な男らしさ"完全否定 !!  ネタバレあり 

2023-04-27 | ネタバレあり
パリタクシー(2022年製作の映画) Une belle course/Driving Madeleine
上映日:2023年04月07日
製作国:フランス
上映時間:91分
監督 クリスチャン・カリオン
脚本 クリスチャン・カリオン
出演者 リーヌ・ルノー ダニー・ブーン


観た直後の感想

主役2人とオールディーズにねじ伏せられた感もあるけど素晴らしい演技(人間力)と音楽になら正しいねじ伏せられ方かと。
2人の顔が素晴らしくて、顔だけで人生讃歌になっちゃう。
昨晩2時間くらいしか寝れなかったのもあって冒頭は眠気と戦いましたけど、、まさかの事件が勃発してからは目ランランだしまだまだ終わって欲しくなかった。
でも90分で終了!クール!カッコイイ!セボンッ!
ダニー・ブーン がとにかく渋かった。。。
『ミックマック』youtu.be/aTJJpaTJ5rQ のイメージだったけど、こんな深みと慈愛に満ちた男を演じられるようになってたなんて。。
立ち耳の何が悪いんだと。
立ち耳って可愛いじゃんね。
あ、男にしては可愛く見えちゃうから〝立ち耳〟はいまいちってことかな?だとするとテーマと近いのか。


『パリタクシー』の構造は単純に言うと「男性が女性の話を聞く」というもの。

しかもその話というのは、
上映時間のほとんどが女性の話を聞く時間な訳ですから(実際は回想の映像という形で)、
"長い"話なわけです。

女性の話は長いだの回りくどいだのと揶揄され続けてきたし、
ニュース番組の多くは「中年男性司会者の話を若い女性が聞く」というシステムのものが多かった。
それがここ数年変化してきています。
「話が長いのは男の方だ」という研究結果があったり
ニュース番組でも真ん中に女性が座っているというのも本当に多くなってきていると思います。

そこに来て『パリタクシー』は「男性が女性の話を聞く」構造。

****

最初は違和感がありました。

主役の老女は男性によって苦しんだ人生を送ってきた人なわけです。
その彼女がなぜ男であるタクシー運転手にペラペラと自分の人生を語ったのか。
こんなにいきなり喋るかな、と。
そうしないと映画が進まないってのもあると思いますけど、、、、
ダニー・ブーン演じるタクシー運転手が「有害な男らしさを持たない(が少ない)」男性だったからでは?と推測します。

****

人生の窮地に立たされているこの運転手は冒頭はとてもイラついていました。

しかし老女の話を聞くうちにどんどん柔和になっていく。
それに呼応するように老女もさらに心を開いていく。
"有害な男らしさ"の前では実現し得ないこと。

***

しかも彼女が語る過去の話は、
ひたすらに〝有害な男らしさ〟について。

フランスでさえも50年前はこんなだったのか、、と。
彼女はなかなか壮絶な闘いの半生を語ります。
それを聞いているのは男(運転手)。
女性同士で語り合っているわけじゃない。



ネタバレは以下に



マドレーヌは過酷な半生を経て、女性の権利向上の活動に後世を費やし一般的にもその名を知られるほどになった。
演じたライン・ルノー自身もHIVの研究を支援する団体を設立した人物。

ラスト。
老人ホームに入って自動ドアに阻まれる二人は良いシーンでしたね。
あれもとてもロマンチックでしたが
恋愛的な印象はなく、友情、友愛の気持ちに見えましたね。

彼女の人生は壮絶で、
単純に考えるならマドレーヌは「男」を憎み、嫌悪し、敵とみなして生きてきたと考えてもおかしくない。

なのに、
マドレーヌは男であるシャルルに自分の人生を開示し、
ラストでは101万ユーロ(約1億5千万円ですよ!!)を残した!
↑ま、これは寓話ですよね。リアリティよりもおとぎ話感でふわっと着地させたのでしょう。
(あと、あの豪邸ですから、まだまだ他にもたくさん寄付したんだと思いますよマドレーヌは。)

にしてもなぜシャルルを選んだのかっつったら
次の時代の新しい男性、優しくて話を聞ける男性に
「よろしくね」ってな感じで未来を託したのかな、と。