映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『やさしい人』ネタバレあり ギヨーム・ブラック監督 映画の途中に断絶がある

2022-09-20 | ネタバレあり
やさしい人(2013年製作の映画)
Tonnerre 上映日:2014年10月25日製作国:フランス上映時間:102分
監督 ギヨーム・ブラック
脚本 ギヨーム・ブラック エレーヌ・リュオ
出演者 ヴァンサン・マケーニュ ソレーヌ・リゴ ベルナール・メネズ




原題は地名。

邦題『やさしい人』は、「彼ホントはやさしい人なの……」のときの〝やさしい人〟かな。

**

これで今見れるギヨーム(『宝島』以外)はコンプリート。
いやぁやられた、今作。。
おれが知ってるギヨームじゃなかった。。
途中ドン引きしました。。

終盤の展開まで眠くて眠くて眠くて眠くて眠くて。。
油断してたらあれよあれよとトンデモ展開。。
観客についてきてもらおうなんて思ってない展開。。

****

『本気のしるし』に近いと思いました。

『本気のしるし』は〝青年漫画誌のラブコメのヒロイン〟が現実世界にいたら?というホラーコメディなわけですが、
『やさしい人』もドラマチックロマンスを現実でやったら?
という話かな。

****

監督曰く

「途中からフィルム・ノワール、ジャンル映画に変わってしまう、何か映画の途中に断絶がある、そういった映画にしようと思っていました。」
とのこと。
前作『女っ気なし』のヒットを受けて、逆に『女っ気なし』とは違うタイプにしようとも思ったそう。

**

ネタバレは以下に





僕はそもそもマクシムがメロディのことをそんなに好きだったとは思えなかった。
都落ちしたロックスターである自分を褒めてくれる若い娘(メロディ)と出会って
メロディが自己肯定感を上げるのに役立ってくれると期待したんじゃないか。
年齢も上だしこっちがメロディを利用しようと思ってたのに、すぐにメロディは離れてしまったし、1番言われたくない「ロリコン」
と言われてしまった。
マクシムは湧き上がる負のエネルギーを健全に発散できるような、人間関係も趣味も仕事もない。
クズ扱いしてる父に相談したら自分も同じクズだと明かすことになるから言えない。
一向に消えない負のエネルギーと持ち前のネチネチとした粘着質な性格によって、マクシムの犯行はとても計画的に進められる。
まずはクロロホルムの効果を確かめる。
犬で試してみたら成功。
(↑ドン引きシーン。観客を置いていく覚悟。)
イヴァンに銃を突きつけ、メロディを捕獲しクロロホルムで眠らせて、雪山のロッジに軟禁。
もう不幸せしか来ない状況。
イヴァンの通報のおかげ?で優秀なフランス警察がメロディを保護、マクシムは逮捕。
到底ラブコメの主役が入るとは思えない部屋に二重鍵で閉じ込められる。
※前半で昔の監獄?でメロディとマクシムがキスするシーンありましたね
メロディはマクシムは銃を持っていなかったと嘘の供述でマクシムをかばう。
イヴァンは「なんでやねん」と思いつつもマクシムへの告訴?を取り下げる。
マクシムは釈放。
マクシムと父、家に帰る。
犬も無事生きてる。
事件前よりも仲の良さそうな父と息子。
ギターで歌う。
クズ2人。
父は一貫して〝良い人〟。
マクシムに対してずっと優しい。
マクシムも発狂する前は良い人。
2人とも優しいけど弱く傷つきやすい。

映画『スワンソング』ネタバレあり スワンソングの意味 次世代に繋ぐもの 

2022-09-13 | ネタバレあり



****

■トッド・スティーブンス監督

とても良い映画。良い映画作家。

近い将来アカデミー賞作品賞の『Coda コーダ あいのうた』枠でノミネートくらいはされそうなポテンシャルを持った映画作家ですね。

ライトにも見れるし、セリフで語っていないことがものすごく多くて、実は情報量が豊か。
永遠に味のするガムのようにいつまででも噛んでいられる奥行きがある。

しかも軽やか。押し付けがましくない。うっとおしくない。

で、俳優の演技が全員素晴らしいでしょ。
で、さらに現状はB級感もある(かなり低予算映画らしい)。

コーダ枠に入って欲しいわけではないけどその力は絶対にあるし、すでにプロジェクト動いてるはずですよ。

そもそもウド・キア先生を主演に連れてこれる人ですから。相当。

***



■「あまり感情表現をしなかった」

ウド・キア先生のインタビューによると
「あまり感情表現をしなかった」とのこと。

「このような物語や流れに起伏がある場合は演じる側が過剰に表現すべきではない」的な。

だからソファに座ってリタの孫から言葉を聞くときも、パットはノーリアクション。
でも観客は150%わかるわけよ。パットの気持ちが。それが映画よ。

ここで感傷的な音楽流したり涙流して抱き合ったりしねーのよ。



***



■自分にもあったのか

年老いたゲイが「昔の業界は良かったわ。今の業界はつまんないわ」って愚痴を言う映画だったら、まさかこんなに褒めませんよ。

主役のパットにはヘアメイクドレッサーとして華やかな時代もあったけど、パートナーも90年代に失って世間から酷い差別も受けて、その辺のおじいさんと見分けがつかないルックスになってひっそりと暮らしている状態(友達もいなそう)。

楽しかった時代からすると相当な落差。
常に諦めて生きてきた結果の、冒頭のパットのシーンなんだと思いますよ。
そんなに寂しそうだったり辛そうなわけではない。
色々捨ててきた境地なんだろうなという暮らし。

でも、諦めていたものや寂しく感じることがあったわけよね。

それが、元親友の死化粧をするという道中(過程)で、自分達が死の恐怖を味わった時代を知らない若い世代が"のびのびゲイ"として暮らしている様子を見て、
「あぁ自分はそうじゃなかったけど、若い世代が希望を持って生きられる世の中になったことは悪い変化じゃないよな」と思ったわけよね。

で、「自分はそうじゃなかった」と諦めていたけど、パットは若い世代のゲイからある一言を言われたことで「自分にもあったのか」とハッと気づく、という。

ほ〜ら、良い映画じゃん!



ネタバレは以下に



色々語られてないことがある。いっぱいあるので書ききれないし、僕もわかってないとこ多いと思う。
まずパットの彼氏は90年代にHIVに感染しAIDS発症となり亡くなったらしい。
AIDSパニックの時代だし田舎町だったので酷い差別に遭ったのだろう、と。
おそらくその為にパットのヘアサロンは閉店。
親友だったリタも「怖くて」パットの彼氏の葬儀に出席できなかった。
葬儀に出席したらうつると思われていたのかも。
パットと交流があることがバレるとリタも差別に遭うと思ったのかも。
で、以降パットとリタは断絶したしパットは信頼していたのに裏切られた!と思ってリタの印象がどんどん悪くなっていった。
一方でリタはパットに対して罪悪感を持っていただろうし、気性の荒さ(リタの孫のダスティン曰く)もあったけどどうやらリタは地元では人望もある人物だった模様。
リタによる「死化粧はパットに」という遺書によって2人は再会(リタは幽霊として)。
幽霊リタが「あの時は怖かったの、ごめんなさい」と。
「まぁそうか、怖いわな。彼氏を失った自分を支えるどころか見捨てたリタをクソだと思ってたけど、自分も悲しみや怒りをリタにぶつけてただけだったな」とパットが思ったかどうかは知らんけど、パットはリタに死化粧をする。
で、リタの孫のダスティンのセリフ
「祖母にカミングアウトした時、祖母は"自分にはゲイの素晴らしい友人がいる"と話してくれた。あなた(パット)は僕を救ってくれた」
パットが酒に酔って死んだ友人をハッテントイレから引きづり出してきたときに、
「目の前でゲイカップルと子供」の姿を2人で見た。
「良い変化だ」と言いつつも「でも自分は何も次に残せない」と呟いた。
これがパットが諦めたことであり諦めきれてなかったことなんでしょうね。
でも違った。
実はパットの存在が知らないところで若者(ダスティン)を救っていた。
もっと言うと服屋の店主スーもパットに救われた1人。
自分はあたかも「点」のような存在だと思っていたけど、次の世代に影響を与えることができていたのか、と。

スワンソングとは「人が亡くなる直前に人生で最高の作品を残すこと、またその作品を表す言葉」とのこと。
パットにとってリタの死化粧もスワンソングだけど、
ダスティンという存在自体も実はパットにとっての作品の一つだったんだよね、と。
あ〜も〜ほら、いい映画!

映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』 シリーズ初の女性悪役 サヨナ・サントス最高でしたね 

2022-09-03 | ネタバレあり
ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(2021年製作の映画)Jurassic World: Dominion
上映日:2022年07月29日製作国:アメリカ
監督 コリン・トレボロウ
脚本 エミリー・カーマイケル コリン・トレボロウ
出演者 クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード ローラ・ダーン ジェフ・ゴールドブラム サム・ニール ディワンダ・ワイズ マムドゥ・アチー B・D・ウォン オマール・シー イザベラ・サーモン

目次

  1. シリーズ初の女性悪役 サヨナ・サントス最高でしたね〜
  2. 知的層にも安心して楽しんでもらえるパニック映画
  3. これでいい、これがいい
  4. 一番は1。二番は今作。
  5. 以下ネタバレありです
  6. 何にも問題解決してない
  7. 映画として面白い
  8. マルタ島でのチェイスシーン
  9. 悪役サヨナ・サントス
  10. 翻ってマルタ島でのチェイスシーン


シリーズ初の女性悪役 サヨナ・サントス最高でしたね〜






知的層にも安心して楽しんでもらえるパニック映画

先月ジュラシックシリーズの1〜5を見直してました。
ジュラパ・ジュラワまとめ|フクイヒロシ(映画垢)|noteジュラパ・ジュラワまとめnote.com
このシリーズが目指したものは「知的層にも安心して楽しんでもらえるパニック映画」。
パニック映画なんかを見て楽しんでいるようなバカだと思われたくない知識層に「この映画は知的なんですよ〜」という雰囲気を纏わせてあげることで安心してパニック映画を見てもらおう、という映画。
映画の冒頭でDNAとかカオス理論とか高知能的な単語を出したり、白衣来た人たちが実験道具を持ってる映像写したりして、ちゃんと理屈は通ってますよ感を出しておくのがこのシリーズの通例。
実際はDNA操作もカオス理論もただただ言ってるだけ。。


これでいい、これがいい

高尚さや重厚さを出そうなんてこれっぽっちも思っていない、素晴らしいじゃないですか。
恐竜出てきて「ワーッ!」ってなって、生命とか環境の話も出てきてなんかちょっと頭使った気がする感じで映画を終えられる。
作り手がちゃんとこのシリーズのゴールがちゃんとわかってる。素晴らしいのよ、この潔さ。


一番は1。二番は今作。

最高なのは1ですね。壮大なロマンとスリルと夏休みの自由研究レベルの疲れない知的さ。
普及の名作と言っていいでしょうよ。
次に良いのが今作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』。
心配してたんですよ。ラストだから変に気合い入れて高尚さや重厚さ出してきたらどうしようかと。
ごめんなさい、心配無用でした。このシリーズのゴールを続編の中で一番わかっている作品でした。

以下ネタバレありです








にも問題解決してない

この映画始まった時と終わる時で何にも解決してないですからね。
「共存はできるはず」って勝手に言うだけですからね。。
「どのように共存できるようにするか」が重要なのに全くそんな話出てこない。気合いの問題。
屋外の結婚式の最中にプテラノドンが新郎をさらっていく危険性は永遠に続くわけですよ。な〜んにも変わってないの、映画始まった時と。
良いよね、でも。だって恐竜は絶滅したもん。恐竜との共存方法なんて考えなくて良いんですよ。


映画として面白い

スリラーなんですよ。「恐竜に殺されちゃうかも〜」っていうスリルが一番のポイント映画。
その点で言うと(1を除いて)一番スリルがありました。
要因は、マルタ島でのチェイスシーンと悪役サヨナ・サントス。
マルタ島でのチェイスシーン
どうしたっていうくらいに素晴らしいチェイスシーン。
実は、恐竜がすぐそばまで来てる!っていうスリルシーンは上手かったんですが、動きのあるシーンはこのシリーズは苦手だったんです。
あと、トレーラーが落ちちゃう!とかガラスが割れちゃう!とかもハラハラドキドキしたけど、恐竜関係ねーので。
今作のチェイスシーンはちゃんと恐竜(アトロキラプトル四姉妹ちゃん)も絡んでるし、良かったね。


悪役サヨナ・サントス

サントスがかっこいいし面白いし極悪非道でとても良い。
サントスはアトロキラプトル四姉妹ちゃんたちを飼ってまして、サントスが殺したい相手にレーザーを照射するとラプトルちゃんたちが「アイツね!」ってな感じで殺しにかかる、というシステム。
どんなに追い詰められてもサントスはピッてやればいいだけ。卑怯。ずるい。カッコイイ。
で、ほんとに殺されちゃうんだからサントスはマジで極悪なんですよ。
翻ってマルタ島でのチェイスシーン
ここでまたチェイスシーンを褒めます。
このチェイスシーンが緊迫感が強くて、ラプトルちゃんたちも割と強くて賢くてしつこかったのでマジで殺されるんじゃないかとすら思えました。
ジュラシックワールドでダメなとこは、主役側は絶対に死なないと決定しているところ。どんなに危機的状況を作っても「どうせこいつら死なないし骨折さえもしない」とわかっちゃってるからシラける。
ただこのチェイスシーンは素晴らしかった。
で、ここで「殺されるかも!」っていう緊迫感があったからこそサントスの凶悪性(ほんとに殺すつもりだった)ってのがわかって、両者が高め合っている素晴らしいシークエンスなのよ。


女性活躍

ジュラワではブライス・ダラス・ハワードが活躍してますが、実はあまりセリフは多くない。
映画において女性キャラクターのセリフ量が男性キャラクターに比べてものすごく少ない。
という問題があるんですが、今作は女性たちが活躍してますし(パイロットのケイラもカッコよかったね!)、割と喋っていたと思います。


興行成績

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の国内の興行成績は60億弱程度。
ジュラワの中ではだいぶ低い。
シリーズ通しても下から2番目に低い(一番下は3)。
じわじわと「そんなに面白くないよね……」ってのがバレてしまったんですかね。。
ま、しょうがないですよ実際そんなには面白くないから。。



映画『大怪獣のあとしまつ』 ラストネタバレあり 

2022-07-20 | ネタバレあり
大怪獣のあとしまつ(2022年製作の映画)
上映日:2022年02月04日製作国:日本上映時間:115分
監督 三木聡
脚本 三木聡




長い。

こういうカルトコメディは90分以内にして。
**
言いたいことは色々あるけど、
まずは
「これくらいつまんなくて、めちゃくちゃな邦画いっぱいあるのになんでこの映画だけ死ぬほどイジメられたんだろう…」
とは思いました。
**
僕は三木聡監督に対しては甘いと思います。
『いい感じに電気が消える家』←名作っ
『亀は意外と早く泳ぐ』
『時効警察』(2006年版)
とか好きです。
三木聡組の岩松了やふせえり、村松利史らが楽しそうにしてる(どうせ誰も笑わないんだろうなと思いながら勝手やってる)のを見るのは好きです。
トンボや、中華のかぶりものした水着女性が水辺を走ってる映像などはお馴染みのネタなのです。
**
どう考えてもそんなに笑わすつもりはないと思うんです。
たまにプッと吹き出したらラッキーくらいの。
ずっとこうですからね、三木聡は。。
良い悪い好き嫌い合う合わないはどうしようもないので
この映画に憎しみを持つ人を責めるつもりはないですよ。
(あ、僕も西田敏行はハマってなかったしすごく寒かったと思います)
**
全体的には僕はそんなに嫌いじゃないけど、やっぱり何をしたいのかがよくわからないし、
それは計算されたものではなく
「さすがにもうちょっと面白くなるかと思ったんだけど、………ならなかった…」ってことだと思います。

**

怪獣の死体をどうするか。
死体は一級河川上に横たわってるので国交相の管轄だ。
放射能が検出されてないなら地方自治体が処理すべき。
生ゴミなら厚労省だ(なんで)。
文科省が標本保存したら?
動物の死体処理は保健所では?
怪獣を観光資源にすればインバウンド需要で12兆円が期待できる!
怪獣の死体の安全性が証明されると
隣国から「怪獣は我が国の領土から発生したもの」として返却を要求される。
などなど。
↑この辺りは面白かった。
このあたりをリアルに追求する様子が見たかったよね。

**

とくに終盤が何やってるのかが分かりにくかったですね。
何のために何をして一回やめたあの作戦を復活させてそのために何をしてそれにどんな危険があるのか、とか。
話が意外と複雑だしちゃんと説明されないしそもそもそんなに真剣に観てないので、よくわからない。
そんな状況で笑うわけないギャグをやるなで、イラッとする人も多かったのでしょう。
(そりゃそうだ)

**

ま、一番の問題はオチですよね。

ちゃぶ台ひっくり返すようなオチ。
多分ギャグのつもりなんですよ。
上映時間90分以内にしてもっとソリッドでサクサク進む話なら、もしかしたら面白かったかも。
え、結局……みたいな。。

ネタバレは以下に




で、
ラストは山田さんがウルトラマン的なものだったというオチ。
山田さんが怪獣を持ち上げて、宇宙に廃棄してくれた模様。
終わり。
日本人の奮闘を見たかったよね。
縦割り行政の事勿れ主義の日本人による「大怪獣のあとしまつ」を観たかったのに。。
「結局ウルトラマンかいっ!!」っていうギャグだったのかもしれないけど、それまでがうまくいってないのでやはり笑えないし、愛しさを感じることもできなかった。

Netflix イタリア映画 『ターニング・ポイント』身長差萌え ラストネタバレあり

2022-05-11 | ネタバレあり
ターニング・ポイント(2021)La svolta/The Turning Point
製作国:イタリア上映時間:90分
監督 Riccardo Antonaroli
脚本 Roberto Cimpanelli Gabriele Scarfone
出演者 アンドレア・ラッタンツィ ブランド・パシット




話はわかりやすいし

キャラクターもいいし
映像もいいし
何より演技が良かったです。
特に引きこもりの漫画家志望のルドヴィコを演じたブランド・パシット。
目の演技が素晴らしくて、ブランド・パシットの顔が写ってるだけのシーンも結構多い。
彼の表情を見ているだけで何が起きているのか、どんな状況なのかがわかるってのは、相当な技能だと思いますよ。

子役としてキャリアをスタートしてイタリアではドラマで人気の俳優さんのようです。
ルックスもいいですし、小柄で子犬のような可愛らしさは世界的にも人気が出そうです。

***


BL(的なもの)ですよね

僕はBLについて詳しくはないのですが
おそらくこの映画は「BL的」というカテゴリーに入る作品だと思われます。

マフィアから大金を盗んだ窃盗犯の男ジャックと
ほぼ引きこもりの漫画化志望の男ルドヴィコの愛の数日間ですよ。

***


そうじゃないと説明がつかない

窃盗犯ジャックがマフィアから追われて逃げる途中で、ルドヴィコを見つけて、彼のアパートで潜伏生活を始める、という導入。
「ジャック→ルドヴィコ」という支配関係が結ばれなきゃいけないはずなんです。
ルドヴィコが隙を見て警察かマフィアに通報してジャックを売り渡すこともできるし、
ルドヴィコとしてはそれで解決だし
ジャックはそれをやられたらめちゃくちゃ困る。

「ジャック→ルドヴィコ」という支配関係はないんですよ。
2人の間に緊張感もない。

一目惚れです。

2人同時に一目惚れをしてほっこり温かな同棲生活を始めるんですよ。
そうじゃないと説明がつかない。

なんなのあのイチャつき。
す〜ぐイチャつきはじめるんよ。

ボディタッチが多い。


身長差萌え向け作品

身長差もあるし、
わざわざ身長差があることをセリフで言うし、
身長差がわかりやすいカメラの画角も多い。
身長差萌え向け作品。

****


一応、同じアパートにルドヴィコが好きな美女がいる、という設定だけど、女性キャラはことごとく存在感が弱い。
ほぼなんの意味もない。
本当はお互いに向けたい性愛の気持ちを近所の美女に向けてるだけってな感じ。

****


マフィアの怖さはかなり強調されて描かれてはいます。

手下とかすぐ殺しちゃうから。
(でもあんなにすぐ手下を殺したら組織運営できなくなるよね…)
マフィアパートで怖さとか緊張感を演出しているんだけど
ジャック♡ルドヴィコパートがこんな緊迫した状況なのにひたすらにほっこりし続ける。。。

マフィアに見つかったら殺される!っていう緊張感がそんなにないんですよね。。

水道局に扮したマフィアがルドヴィコの部屋を調査に来る、とかのシーンもあって
そう言うシーンはハラハラドキドキしますよ。
(そりゃそういうシーンだもん)

映画全体を通したピリッとした緊張感。
「どちらかが裏切るかもしれない」的な緊張感。

そういうのが必要な映画だと思うんですけど、ない。
でもしょうがない。
ジャック♡ルドヴィコは愛し合っちゃってるから。

****

なので、
とにかくジャック♡ルドヴィコのほのぼの感を楽しむしかないし、
ジャック♡ルドヴィコのほのぼの感だけを楽しみたい方は、映画終わる10分くらいで停止して一生観ない方がいいと思います。


ラストネタバレは以下に。







なんでこんな目に遭うの。。。
マフィアに居場所がバレてしまったと悟ったジャックはルドヴィコの部屋から出ていくことを決意。
荷物をまとめて一旦窓から出ていくも(ここも緊張感なさすぎなのさ。これならいつでも逃げられたよね…)、
ルドヴィコが濡れた子犬のような顔で寂しく見つめるので
結局ジャックは戻ってくる。
その夜、同じアパートの美女2人と4人で食事会。
2Pしてるうちにジャックとルドの2Pに移行するんじゃないかって雰囲気の中、
ルドヴィコがマフィアにボコボコにされる。
ジャックも銃で撃たれる。
ジャックがルドヴィコの銃を乱射してマフィアを殺害するも、マフィアからの弾を受けてしまったらしくルドヴィコは気を失う。
銃撃の音を聞いた美女2人呼んだらしい救急車が到着。
ルドヴィコはおそらく一命は取り留めたのでしょう。
で、ジャックは部屋の外に出てゴミ置き場で倒れる。
バッグの中の大金とルドヴィコのマンガをゴミ清掃員に見つかって、マンガを捨てられそうになるので「それは!」ってな感じで手を伸ばしたところで、ジャック死亡。
なんでこんな酷い目に遭わなきゃいけないんだろう。
ジャックは犯罪者ではあるけど。
ルドヴィコも犯人蔵匿の罪があるから?

***

この突然のバッドエンド(ま、ジャックがサッサと逃げてりゃ良かったんだけど)が来るってことは、
やっぱジャック♡ルドヴィコのほのぼの同棲生活はかなり意図的だったってことですよね。
ジャックとルドヴィコがずっと敵対しっぱなして全然幸せじゃない状況で1人瀕死で1人死亡っていうラストが来たら、「なんの話だったの…?」と意味がわからなくなる。
ジャック♡ルドヴィコを愛でる映画、ってことでいいんじゃないでしょうか。



映画『海に向かうローラ』 ネタバレあり  お母さん散々…… トランス女性当事者が主役を演じた

2022-05-03 | ネタバレあり
海に向かうローラ(2019年製作の映画)
Lola vers la mer/Lola
製作国:ベルギーフランス上映時間:90分
ジャンル:ドラマ
監督 ローレント・ミケーリ
脚本 ローレント・ミケーリ
出演者 ミヤ・ボラルス ブノワ・マジメル



目次

  1. 映像がいいとか、
  2. しかし、
  3. ラストについては以下に。



映像がいいとか、

映画としての語り口もよくできてるとか、
主演のミヤ・ボラルス自身のトランス女性でベルギーのアカデミー賞で有望女優賞を受賞しているレベルに演技も存在感もビジュアルも素晴らしいし、
父親(ブノワ・マジメル)のキャラクターも冒頭では一側面しか見えない古い価値観の男だったのが、じわじわ彼の多面的な部分も見えてくるとこのいいし、
LGBTQへの無理解という問題と同時に
「思春期の子供と親」という問題がそもそも大きいしそれって永久に解決されないよね
さらにそこにセクシュアルマイノリティの問題が絡んで難しくなっちゃってるね
フランスでさえもまだこのレベルなんだね、
ってとこもいいし、
いくらでも広げられる話を「父と子」のみにギュギュッと集約したこともいい。


***


しかし、

こんがらがった問題が解決されていくのが、ずっと
「実は知らないとこでこういうことが行われていた」
「実はこうでした」
「実はこう思ってた」
という事実が羅列されていって
「あ、そうだったんだ…」とお互いに軟化していく、という流れ。

これがいい。だからいい。という人もいるかも。。

***



ラストについては以下に。







お母さんの遺灰がさぁ、半分は下水溝に飲み込まれて行ったし、残り半分も車と一緒に燃えて車の灰と混ざっちゃって「燃えちゃったね」的な感じで、
お母さんがずっと酷い目に遭ってましたね。。。
「遺灰を砂丘に撒く、という儀式自体いらないよね」というメッセージなのかもしんないけど、、
お母さんの希望がなぜこんなにも叶えられなかったのかがわからない。。
***
ローラと父フィリップはラストで急接近してバックハグもしてローラは手術も受けられるくらいにハッピーエンドなだけに、、
お母さん。。。。
遺灰が下水溝に吸い込まれ、砂丘の手間の道路で車の灰と混ざってしまった。
その後は、ゴミ清掃業によって回収されて、焼却もしくは、埋め立て地に埋められますよね。
もしくはリサイクル??
****
なんかあまりにも、父と子が2〜3日一緒に過ごしただけで問題解決しすぎなんですよね。。
お母さんは生きてる間も夫と子供の間に挟まれて苦労したし、死んだ後も散々だし。。


映画『ブラック アンド ブルー』ネタバレ 黒人市民から「白人の犬」と罵られる黒人女性警察官 

2022-04-04 | ネタバレあり
ブラック アンド ブルー(2019年製作の映画)
Black and Blue
監督 デオン・テイラー
脚本 ピーター・A・ダウリング
出演者 ナオミ・ハリス フランク・グリロ リード・スコット マイク・コルター タイリース・ギブソン ボー・ナップ ナフェッサ・ウィリアムズ マイケル・パパジョン



ブラックは黒人のこと。ブルーは警察。(制服の色から)



ブラックとブルーは対立関係にあるけど
では黒人の警察官(ブラック&ブルー)は?
非番の時には白人警官からぞんざいに扱われ、
警官として勤務時には黒人市民から「白人の犬」と罵られる。
どちらにも居場所がない黒人警官という立場。
でもだからこそできることがあるのでは、
という話。

**

黒人女優単独主演のアクション映画としては2000万ドル超えはなかなかのヒットなのでは。
『ムーンライト』でアカデミー助演女優賞候補になったナオミ・ハリスはさすが全シーンで複雑な感情を表現してくれます。
他にも
雑貨屋の店主役の タイリース・ギブソン、
先輩警官役のジェームズ・モーゼス・ブラックなど
黒人俳優たちの素晴らしく存在感のある繊細な演技を楽しむことができます。

**
ところどころ
そんな隠れ方じゃ見つかっちゃうでしょ!とか
そんな雑なカーアクションしたら下手したら市民に死人が出ちゃうよ、などの
大雑把なところがあってサスペンス度が下がっちゃうのですが、、
全体的には面白かったですよ。





ネタバレは以下に。





もともと貧困の黒人住民が多い地区がハリケーンで打撃を受けてしまった。
貧困の黒人居住地区なんて政治家にとってはなんにも旨味がないので、
その地区の復興は遅れ、荒れ果て危険な地区となってしまった。
ここで生きていては未来がないと軍隊に入って抜け出したのがナオミ・ハリス演じるアリシア。
アリシアは軍隊を経て警官に。
エリートコースを歩んでいる。
アリシアの幼馴染の女友達は、その地区を見捨てずにずっと暮らし続けてる。
逃げ出したアリシアを憎んでる。
アリシアが警官になって再び故郷に帰ってきてもまだ荒れ果てたままだった。
「それでも住民は警察に守って欲しがる。警察にとってリスクしかない。だから報酬が必要だった。」
てことで警察は押収した麻薬を横流しすることで利益を得ていた。
結局汚職警官たちは住民たちの協力もあって一掃できた。
アリシアは女友達と仲直り。
パトカーで街を走ると「白人の犬が!」と黒人たちから罵られていだが
ラストでは少女がアリシアに向かって手を振る。
アリシアもサムズアップで応える。
終わり


映画『黒部の太陽』ネタバレあり 日本スゴイ!映画じゃなくてよかった 

2022-04-04 | ネタバレあり
黒部の太陽 1968年2月17日公開196分 
  • 滝沢修
  • 志村喬
  • 佐野周二
  • 三船敏郎
  • 石原裕次郎
  • 辰巳柳太郎
  • 玉川伊佐男



はじめて石原裕次郎の映画見たかも。

写真ではかっこよさがわかんなかったけど、カッコイイ。。。

丸顔だけど整ってて、とにかく足が長いっ!

野生性もあるけど現代っぽさもあって。

(このときはまだ30代だし)

**

無謀なダム工事が戦争と重ねられてるんですね。

戦争の記憶がまだまだギンギンに残る1950年代。

経済成長に伴う電力需要のために黒部にダムを建設することに。

人が行くこと自体が困難で命がけだったその秘境の地でのダム建設計画は、人命の軽視などの批判もあった。

工期中の作業員はのべ1,000万人。

事故死者数は171人、

宿舎の雪崩などでの死者は87人。

「もし地獄というのがあるのなら、ここの工事が地獄でした」

「黒部ではケガはない。ミスしたら死ぬしかない。」

「犠牲者が出ることがわかって工事するんですか。日本のためですか。電力のためですか?」

**

「わしはな、黒部の土手っ腹の中でダイナマイトでぶっ飛ばされて死ぬ男になりてぇんだ」

「親父は、他人の血、他人の命なんてトンネルが通ればどうでもいいって男だ。

腹の中じゃ虫ケラ一匹死んだくらいにしか思ってない。」

「時代が欲求してるんだ。日本の電力需要のため…」

「戦争で懲りてないのか。ズルズルズルズル引き込まれて気がついたら仲間がたくさん死んでいた。」

**

崖から落ちて死ぬシーンが何回かありますが、当然全部人形。

「あ〜人形が落ちているなぁ」と思っちゃうんだけど

これが映画的な意味としても悪くない。

人の命がまるで人形のように軽い、というのが残酷に伝わってくる。

**

映画の中盤あたりでトンネルの落盤事故から大洪水が起きるんですが、、

大スペクタル過ぎて心配。。

それこそ命が人形のように軽く見える大岩と洪水。。

しかもこのシーンは人形じゃないですからね。。

三船敏郎とか石原裕次郎とかが岩と木材と共に洪水に流される恐怖シーン。。

**

中盤ではトンネル掘削で起きた数々の事故を、ナレーションだけではなくいちいち大スペクタルのディザスター映像で見せてくれる。

そしてついに死者が出る事故では、

劇伴もなくなくセリフもなく(実際は喋っているようだけど声が消されてる)ただ水が岩にぶつかる轟音だけ。

**

「人間に金と知恵と金さえあればなんでもできるだと?

人間のすることに不可能ってことはまだ山ほどあるんだ。」

**

熊谷組の崩壊がとくに面白い。

社長とその息子(石原裕次郎)の対立が映画のポイントだけど、

社長と息子が対立してるなんて社員にとってこれほど迷惑なことはない。

石原裕次郎を単なるヒーローとして描いてないとこもいい。

**




ラストネタバレは以下に




ラスト。
破砕帯を通過し掘り続け、 反対側から掘っていた穴とめでたく繋がりトンネル開通! トンネル内では祭りが開催され、200人くらいの男たちが大騒ぎ。 押し潰されてる人いそうで怖い。

日本酒の樽が何個も運ばれて、最初は杓子を回して飲んでたけどめんどくせーってことで ヘルメットで酒を酌んで飲み回す。

今まで散々死人を出した無謀な計画のことなんて忘れて 成功したら全部忘れてイエ〜イッ!おめでとう!良かったよね! ってなんとも日本らしいラスト。。。嫌だ嫌だ。。

と思っていたら 三船敏郎のもとに娘の死を知らせる電報が届く。

石原裕次郎の父は、老いてちょっとボケてしまったようで 自分のせいで長男を殺してしまった事故のシーンを脳内リプレイする。 そのまま死亡。ずっとトンネルに取り憑かれた狂気の父だったが、長男を死なせてしまったことにずっと苦しんでいたんですね。

命を賭した作業員たちを称えつつも、やはり無謀な計画とエネルギー問題を映像のコラージュで表現。 劇伴も陰鬱。

(流石にエンディング曲はめでたい感じのオーケストレーションでしたけど、まぁこれは3時間映画を観てきた観客席たちへの感謝の気持ち、かな。)

人の命の重さをきちんと描くことに注力した良い映画でございました。




映画『ナイル殺人事件 』 全部ネタバレ 1937年の原作 

2022-03-03 | ネタバレあり


この2人(サイモンとジャクリーヌ)が全部仕組んでんじゃねえか?って最初に疑ったし、
それ以降特に「この人が犯人だったらめちゃ意外!」っていう人物も出て来ないし、
誰にも感情移入できなかったし
誰が犯人でもべつにいいし、、、
ってな感じで見てたらそのままあの2人が組んでたって言うラスト。。
**
右頬めっちゃ抉れてたけど口髭で隠せる?
てかあんなに皮膚が抉れてて髭生えるもの?


**
一回もエジプト行ってないんじゃない?っていうCGたっぷりの撮影に違和感。
「実はここはエジプトではない!」っつってグリーンバックが露わになるのかと思った。
それがミステリーなのかと思ったくらいに、CGに違和感強かったぁ。

**
場所がエジプトなのは「ピラミッド≒三角関係」ってことだけ?
ポワロが好きな線対象?
人種問題もそんなにはなかったし、
ヨーロッパとエジプトの関係とか、
古代文明への畏敬の念とか感じなかったんだけど。。
ただ、三角→ピラミッド!ってだけな感じで、それってどうなの?。



**

そもそも連続殺人をエンタメ化してるんだから
もっと開き直ってカラッとやって欲しいんよね。。
いちいちネチネチジメジメやって「命の重さ」を描いた既成事実を並べられても。。
ポワロが無理矢理犯人探し出そうとしなければ
死人は1人で済んだんじゃない?
殺人がこれ以上起きないことに尽力すべきでは。
ポワロが嫌な奴に見えたし、
しかも事件を悪化させたように見えた。

映画『コーダ あいのうた』ネタバレあり ろう者、ろう文化、聴能至上主義、ヤングケアラー 

2022-02-07 | ネタバレあり
コーダ あいのうた(2021年製作の映画) CODA 上映日:2022年01月21日製作国:アメリカフランスカナダ上映時間:112分
監督 シアン・ヘダー
脚本 シアン・ヘダー
出演者 エミリア・ジョーンズ フェルディア・ウォルシュ=ピーロ マーリー・マトリン トロイ・コッツァー ダニエル・デュラン ダニエル・デュラント ジョン・フィオーレ



目次

  1. 字幕では毎回「聾唖者」になってた
  2. Wikiの〝聾唖について〟の「2」がまさにそうだと思う。↓
  3. 「ろう文化」や「オーディズム( 聴能至上主義)」などの言葉から感じられる自由さと力強さ
  4. ヤングケアラーについてもちゃんと問題だというスタンスで描かれていたと思います。
  5. まず、ろうの俳優さん3名。
  6. 兄が囚われるマチズモ(男性優位主義)
  7. ラストネタバレは以下に。



字幕では毎回「聾唖者」になってた

映画自体は良かったけれど、
Deafは「耳が聞こえない」という意味なのに、
字幕では毎回「聾唖者」になってたのはずっっとひっかかりながら観た。。

■「聾(ろう)」は、耳が聞こえない人のこと(医学的な基準では両耳の聴力100dB以上の最重度聴覚障害のことを言うよう)。

■「唖(あ)」は、発声や聴覚の器官の障害によって、言葉を発することができないこと。 音声による話ができないこと。

Deafは唖かどうかを問わない単語のはずなのに、この映画字幕では全編に渡って「Deaf=聾唖者」になっていたのは、どう言う意図なのか。
理由があるなら本当に知りたい。


***


Wikiの〝聾唖について〟の「2」がまさにそうだと思う。↓



***


ろう者に声を出せる人は多い。
この映画でもろうの男性キャラクターは発話してましたよね。
その時点で「唖」ではないじゃん。
なので聾と唖を必ずセットにして「聾唖」と呼んでしまうことは、とても雑。


****

また、
聴者のレベルでしゃべることのみを「しゃべる」と呼び、
そのレベルに達していないことを「しゃべれない」として障がい者認定するのであれば、
ろう者が聴者レベル音声発話ができるような教育環境・社会環境にまずすべきだと思う。

少なくとも、聴者が音声発話を獲得する教育・社会環境と同じくらいのレベルに整えてから初めて聴者レベルでしゃべることをろう者に求めるべき。
(というか求めるべきことではないはず)

****

そもそも手話は言語の一つなので(手話言語条例)、
その言語が使えている時点である意味「しゃべれている」。

「しゃべれてない(発話が聴者レベルではない)」ことを問題視すること自体どうなのだ、という考え方もあるし、理解できる。

「耳が聞こえない=障害者」と言うイメージもろう者の中では違和感を感じる人が多いとのこと。

「耳が聞こえることが正しい」という聴者の価値観で判断されたくない、という気持ちもわかる。

****
「ろう文化」や「オーディズム( 聴能至上主義)」などの言葉から感じられる自由さと力強さ
確かに昔は、耳が聞こえない人のことを聾唖者と呼んでいました。

僕はそう習っていました。

聾は耳が聞こえないって意味で、
唖はしゃべれないって意味で、
ああそうか聞こえない人はしゃべれないもんな、と理解しちゃってました。

それが現在では「ろう者」という言葉が多く使われるようになっています。
また、「ろう文化」「オーディズム( 聴能至上主義)」などの言葉から感じられるのは自由さと力強さです。

ろうにはろうの世界があり、それは聴者の世界と対等だし、そもそも根本的に分けられていない、という力強いメッセージがろう文化から発信され始めてきていると思います。

そんな中またこの映画(の字幕)によって「聞こえない人のことを聾唖者と呼ぶことを初めて知りました」と、、、、古い認識が広がってしまう〝としたら〟大変残念。。


****


ヤングケアラーについてもちゃんと問題だというスタンスで描かれていたと思います。


(もっと明確に問題として扱うべき!という人がいてもおかしくないとも思います)

****


さてさてさて、映画の話。


字幕問題(Deafを全部「聾唖者」にしてた問題)以外は、とても良かったと思います。
まず、ろうの俳優さん3名。


さすがですよね。
聞こえないということ以前の大きな個性を発しているこの3名。
演技もすげーし存在感も、そして人間として愛せる豊かさが尋常ではない。
ろうの俳優が活躍する場がすでにあったから、こうしてバーンと出るときに力のある俳優が3人も出てこれるんですね。
さすがですよ、ほんとに。
マイノリティの俳優にもちゃんと役が回ってきて現場を多く踏んで、脚光を浴びてこれたからこそのこの3名の輝き!!!

特に父親役のトロイ・コッツァーは助演賞を受賞したり、候補になっていたりします。


マーリー・マトリン 


トロイ・コッツァー 



***


兄が囚われるマチズモ(男性優位主義)


耳が聞こえない3人と聞こえる1人が家族で一緒に暮らしている、ということでの摩擦がこの映画の肝ですけど、
個々のキャラクターの個性はそれだけに留まっていない。
それに縛られていない。

父も母も普通にヘンな人だし、
兄もかなり複雑な感情を妹に持っている人。

聞こえる聞こえない関係なくあんな父親が実際いたら毎日イラっとするし(僕はね)、
母親も明るさもありつつも割と毒親感もあるというなかなか怖いキャラ。

お兄さんは、「長男である俺がこの家を支えるべき(なのに聴者である妹に頼るしかない…)」というマチズモに囚われている男。あの筋肉はその象徴に見える。

母親はついに娘から「ママが酷い母親なのは聞こえないからじゃない」と言われる始末。

***


障がい者は大人しく健気な人物像で描かれることが多いけど、3人ともそこそこヤバイってのがとても面白い。
さらに、なのに3人ともとても愛せる人物として描かれているところが素晴らしい。

****

後半大体泣いてました。
ええ、泣きましたとも。
泣くよね、そりゃ。
父親の「GO!」なんか泣かずにいられるわけないじゃんね。

***

ただ、、、僕の好みとしてはあと8分早く終わって欲しかった。。(「GO!」のシーンなくなっちゃうけど。。)



ストネタバレは以下に。






オーディションの歌のまま終わって欲しかった。
あの歌のままエンドロールに入って良かったと思う。
音楽大学に受かるかどうかはどっちでも良くね?
ていうかなんで受かったの??
あれで受かるものなの??
「あぁ受かるパターンなんだ…」と思っちゃった。
ハリウッドっぽいなぁと思いましたよ。
音楽大学以外にも歌の道はあるわけだから、落ちても良かったし、落ちさせるのが嫌だったのならやっぱオーディションの歌でそのまま終わりが、余韻もあって良かったかな〜。

***

ラスト。
娘が居なくなったあと、母も父も長男も外部とうまくコミュニケーションが取れるようになった様子で終わったけれども、、ちょっと都合の良い良すぎない??
「娘がいなくなったら困る」という問題は解決されてないはずなのに。
両親と兄が「壁を作らずに聴者の世界に飛び込もうと気持ちを新たにして飛び込んだ結果聴者ともスムーズにコミュニケーションが取れるようになった良かった」ってことなんだと思うけど、
何のトライ&エラーもなくいきなりそれが実現しちゃうってなかなかのパラダイス描写じゃない??
しかも兄はもともと漁師仲間と飲み行ったりしてて聴者とコミュニケーション取ろうと頑張ってたじゃん。
それまではうまくいかなかったのに、いきなりラストは成功しちゃう。
せめて、ろう者と聴者のコミュニケーションのトライ&エラーがありつつも希望が持てるラスト、なら良かったかなと。
聴者側の反省がなかったのもどうかと思うね。
漁師仲間たちが少しくらい手話覚えててもいいじゃん。
「お前はクソだな」って手話で話してくる漁師仲間に怒りつつもちょっと嬉しい長男の表情とかあってもよかったよね。

映画『偶然と想像』ちょっとネタバレあり 映画に求めてきた体験がここにあった

2022-01-12 | ネタバレあり
偶然と想像(2021年製作の映画) wheel of fortune and fantasy 上映日:2021年12月17日製作国:日本上映時間:121分
監督 濱口竜介
脚本 濱口竜介
出演者 古川琴音 中島歩玄理(玄里) 渋川清彦 森郁月 甲斐翔真 占部房子 河井青葉


目次

  1. ①魔法(よりもっと不確か)
  2. ②扉は開けたままで
  3. ③もう一度
  4. ②扉を開けたままで、のラストネタバレ


①魔法(よりもっと不確か)


古川琴音の役は、同じく橋口監督の『寝ても覚めても』の唐田えりかの役に似てますね。
欲望の動力が無限エネルギーの人。自分や相手が傷つこうがお構いなしで、火の玉のような欲望や自我が、箱も扉もなくガッバガバで暴れまくってる。
スマホ画面長押ししてたらアプリのアイコンがぶるぶる震えて出てきた(−)マークを押すとそのアプリを消せますけど、コイツをそうやってこの映画から消したかったもん。

ほんと消えて欲しかったし、止めてあげたかった。誰も幸せにならない暴走を見てるのが辛かった。
でも同時に痛快でもあった。普通思ってることをあんなにもストレートに言えないし、相手もポンポンリズム良く芯食ったこと言い返してくれないもんね、現実世界では。

ぶつかればぶつかっただけの展開があるのは、映画の中の世界。
そしてさらにこの映画では「if」という現実世界では使えない技も使ってましたね。
ラストの喫茶店のシーンで3人同席するとき「みんな私と同じように不幸にな〜れ!」みたいなノリで幸せそうな新カップルを破壊しにかかったんだけど、あれは「if」でしたね。

しかもifの世界で男は女友達を追いかけた。(こないだ男は私をおいかけてこなかったのに)
ifは終了し、現実世界では彼女は「先帰るね、私はそんなに野暮じゃない」と去ってカップルを2人にしてあげた。

カップルはうまく行きそうな雰囲気。

彼女は生まれ変わろうとする渋谷の街の中で自撮り。(自撮りでしたよね、スマホのアップルマークが渋谷の街並みの方向いてましたよね)
身体的な自傷行為じゃなくても、精神的に自分を傷つけて相手を傷つけることでしか自分の存在を確かめられなかった彼女が、ちょっと成長する「if」という魔法。

現実世界でも使えますね、if。
「もしこれ言っちゃったらどうなるかなぁ」と想像することで。ちゃんと相手を独立した人間だと認識して尊重することで。
映画の中のifよりももっと不確かだけど。



②扉は開けたままで


俳優パワーで言うと三本中1番強い渋川清彦を有り得ないくらいの棒読みにさせている。感情をとにかく抑えた演技体。

面白いのは「扉を開けている」ってことは実は感情は抑えなきゃいけない状況だということ。

外から聞かれ見られるかもしれない状況はむしろ閉じられた状況。
主役の女性には小さな娘も夫もいる。若いセフレもいる。
何かを獲得したくて大学に入った。フラ語を取ってる。どうやら他人を見下しがちな女性らしくて友達ができない。自分の空っぽさにコンプレックスがありそう。

ラストがちょっとね、僕は理解できなかったかな。受け入れられなかったかな。ネタバレは下の方に書きます。



③もう一度


笑ったぁ。最高の一本。
結局この2人は本人とは一切会ってないし1秒も会話してない。

夏子は恋人だった女性と会えてないし質問もしてないし答えも聞いてない。
あやものぞみと会ってない。
でも擬似的に相手がその人物になることで(演じることで)、実際には会ってないんだけど(ifの状態)、この擬似体験を経ることで確実に自分の中に変化は起こる。
セラピーのようなワークショップのような、奇跡のようなシーンでしたね。本人ではない誰かを演じてる人を自分の鏡にすることで自分が少し変化する。ほんとは現実世界は1ミリも動いていなくても。

僕は彼女たちがやってのけた奇跡のような変化を、〝映画を見る〟ということに求めているのかもと思いました。
うまく言葉にできませんが、「演じてるってわかりながら演じている人を見る」「脚本に書かれたセリフを話してるのを聞く」っていう実は結構複雑な何重かの構造の表現。

実際に自分が抱えている問題や過去のトラウマと真正面からぶつからなくても、「演じている誰か」を観ることで何かふわっと好転できるような気がする。それを期待して僕は〝映画〟を観てきた気がする。
それに気づかせてくれた素晴らしい1本。



②扉を開けたままで、のラストネタバレ


②扉を開けたままで、のラストはなんであんなに不幸な展開になったんでしょうか。。
メール誤送信しちゃうわ、離婚しちゃうわ、教授も飛ばされるわって。。
ちょっとほんとにわからなくて、、あんなに不幸にならないで欲しかったなぁ。。

新作映画『さがす』ラストシーンネタバレあり 清水尋也の怪演! 

2021-11-30 | ネタバレあり
さがす(2022年製作の映画)
上映日:2022年01月21日製作国:日本
監督 片山慎三
脚本 片山慎三
出演者 佐藤二朗 伊東蒼 清水尋也

目次

  1. 四コマ映画『さがす』 
  2. 同監督の名作映画『岬の兄妹』(2018)もちょっとそんな感じでしたかね。
  3. 今作『さがす』と『岬の兄妹』の比較
  4. 佐藤二朗のスター感はやはりすごい。
  5. 佐藤二朗の奥さん役が成嶋瞳子。
  6. このラストシーンはすごいですよ。


四コマ映画『さがす』 



「初めて見た。ホントに死にたい人」


ブラックコメディってのは日本ではあんまり浸透していなくて。

思いつく邦画のブラックコメディは『葛城事件』とか『生きちゃった』とか。
目も当てられないほど悪い方へ悪い方へ行ってしまう人物の様子を描いていると、なんか笑けてきちゃう、という映画。


****


同監督の名作映画『岬の兄妹』(2018)もちょっとそんな感じでしたかね。


四コマ映画『岬の兄妹』→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2268


人生詰んだ状況から微かに見えた光明をつかもうとするんだけど、残念ながらどんどん悪い方へ流れていっちゃって…という話。

微かな光明を掴もうとする人間のエネルギー。

そこからさらに堕ちた時に光だす人間の根源のエネルギー。
のようなものを描いた映画で、『岬の兄妹』も名作ですので、ぜひ。

****



今作『さがす』と『岬の兄妹』の比較


前作と比較して
●血のつながりのある男女が主役
●割と人生が危機的状況
●笑っていいのか不安になるコメディ感
●中2男子レベルの下ネタ
●微かな光明を掴もうとするも逆に堕ちていってしまう

などが共通項かと。


佐藤二朗と伊東蒼のダブル主演(と言っていいでしょう)で、ネクストブレイク俳優の清水尋也が重要人物として出てくるわけですから、
かなりの商業映画なわけです。

商業化によって失われたものを確かにあると思います。
『岬の兄妹』のザラザラ感ギトギト感ウ○コ感はちょっと弱まってしまっています。
が、
猟奇サスペンス描写がなかなか残虐で変態チックなので、かなり興奮します。




佐藤二朗のスター感はやはりすごい。


佐藤二朗が演じるとどんなにクソでも愛せるし、「実はめっちゃくちゃ怖い人なのでは…」って感じもあるので、善悪揺れ動くこの映画にはバッチリのハマり役。

****

佐藤二朗の奥さん役が成嶋瞳子。

なんか見たことある女優さんだなと思っていたら、橋口亮輔監督の『恋人たち』に出てた方。
俳優さんって「ただそこにいる演技」っていうものを目指してたりしてますが、成嶋瞳子は「いない」。

そこにいないくらいの演技。だいぶ前に死んでるんじゃないかってくらいの雰囲気。

こんな空気出せる俳優さんっていないんですよ。唯一無二。
今作『さがす』での役は、もうすでに死んでる人感がピッタリで、、、見ていて怖いし、絞り出すような咆哮が悲しすぎる。
悲しすぎると同時に、
生への希求というか人間の根源のエネルギーを見せられたようで、
やはりこの映画が露悪的なだけじゃない、プラスのエネルギーを発した映画になっていると思います。


****



このラストシーンはすごいですよ。

「どうやって撮ったんだろう」というのも含めて結構長く語り継がれる名ラストシーンだと思います。


ラストシーンのネタバレは以下に。



ラストの卓球ラリー。球はCGだそうです。




『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』 実際の判決は?事件の真相と家族の証言。 ネタバレあり

2021-11-19 | ネタバレあり
死霊館 悪魔のせいなら、無罪。(2021年製作の映画)
The Conjuring: The Devil Made Me Do It
監督 マイケル・チャベス
脚本 デイビッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック
出演者 パトリック・ウィルソン ベラ・ファーミガ

四コマ映画『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』











以下時系列順
⓪『 The Nun(死霊館のシスター)』以前
①1952年『 The Nun(死霊館のシスター)』
②1958年『 Annabelle: Creation(アナベル 死霊人形の誕生)』
③1970年『 Annabelle(アナベル 死霊館の人形)』
④1971年『The Conjuring(死霊館)』
⑤1972年『Annabelle Comes Home(アナベル 死霊博物館)』
⑥1973年『 The Curse of La Llorona(ラ・ヨローナ〜泣く女〜)』
⑦1977年『 The Conjuring 2(死霊館 エンフィールド事件)』
⑧1981年『 The Conjuring: The Devil Made Me Do It(死霊館 悪魔のせいなら、無罪。)』

死霊館ユニバースまとめ(2021)
→ 
http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2775




宗教映画


マイケル・チャベス監督(『ラ・ヨローナ~泣く女~』も同監督)も「これ信仰の映画。」と発言している通り、この映画は宗教映画。

さらに「ウォーレン夫妻は悪魔の存在を信じていたと思う」とも言ってるので、この映画はウォーレン夫妻側から一方的に描いたものだとわかります。

  • ❶弁護士「殺人事件を悪魔のせいで無罪にしたいなら法廷で悪魔の存在を証明しなさい」
  • ❷ウォーレン夫妻「悪魔は存在する。なぜなら聖書に書いてあるから。」
  • ❸弁護士「法廷で聖書は通用しない。」
  • ❹ウォーレン夫妻「宣誓する時聖書が使われている。聖書は法廷で信じられている」
↑この流れは面白かった。

悪魔がやったなんて法廷で通用するわけないじゃん、と思っていたら、悪魔が存在している書かれた聖書を法廷も使っているじゃないか、と。

宗教が法に入り込んでいるわけですね。
宣誓には聖書を使っておいて悪魔の話になったらいきなり聖書を否定するなんて通用するのか!?という。

これは面白い。「宗教と法」の正しいあり方とはなんだろうと興味を持ちました。
と思ったんだけどこの部分は解決もされないし、問題提起もされないし、冒頭以外この話は出てきません。。

残念無念。。



やっちまったな!


映画のウォーレン夫妻は実際の夫妻とはかなりイメージが違うようにキャラ設定されています。

そもそも『死霊館』や『死霊館 エンフィールド事件』くらいでしかウォーレン夫妻はしっかり描かれてこなかったわけですが、
この2作ではウォーレン夫妻は冷静でした。

僕はオカルトが別に好きではないのであんまり本気でオカルトを信じさせようとしてきたり、それと商売を結びつけていると、引く。

その点、前作までのウォーレン夫妻はギリ良かったんです。

「本当に悪魔って存在するのかも知れな〜い!」とホラーエンタメとして楽しめていました。




実際の事件「アルネシャイアンジョンソンの裁判」



1980年にアメリカで起きた殺人事件がこの映画の元となっています。

悪魔に取り憑かれたことで殺人を犯したってことで裁判で無罪を主張したという事件。

この事件について書かれたロレイン・ウォーレンと作家のジェラルド・ブリトルによる著作「コネチカットの悪魔」を原作としています。

一番最初に悪魔に取り憑かれたとされたデビッド・グラッツェル(当時11歳)の父と兄はこの「コネチカットの悪魔」を「完全な嘘」と言っています。

父と兄は(息子、弟である)デビッド・グラッツェルはそもそも悪魔に取り憑かれていなかったと主張しています。

さらに、殺人事件が起きたすぐ後からこの事件を書籍化&映画化することを計画していたウォーレン夫妻のことをデビットの父と兄は不審に思っていました。
のちに「ウォーレン夫妻が利益を得るために家族が利用された」と訴えている。

当時映画の制作も始まりましたがそれは頓挫。
しかし1983年に「コネチカットの悪魔」として書籍化。物議を醸す。

2007年の同書が再販れてる時に、デビットの父と兄は、プライバシー、名誉毀損、および「精神的苦痛の故意による精神的苦痛」に対する権利を侵害したとして、著者と本の出版社を相手に訴訟。



「この映画は実話である」


「この映画は実話である」と映画冒頭結構大きな文字で出てきましたね。
This movie is based on true story.のフォントのサイズは法で規定されてないだろうし、
真実と創作のバランスが7:3だったらThis movie is based on true story.って表記していいけど6:4だったらダメとかの決まりもないし、
This movie is based on true story.の日本語訳は「事実を基にした映画」にすべきという決まりもないのでしょう。

This movie is based on true story.の映画を見た後にどこまでが実話だったのかを調べる観客はそう多くないでしょうし、それが義務だとも思わない。
映画がそんなにめんどくさいものであってはいけないと思います。

つまり映画製作者がどれだけ誠実であるかが問われているわけです。

「こんなに創作混ぜといてThis movie is based on true story.とは表記できないよね〜」という誠実さ。

この誠実さを悪意なく越えてくるものがあります。それが信仰。

片方が悪魔に取り憑かれていなかったと主張している状態であっても主役側の意方的な見方で「悪魔は存在する」とした映画にThis movie is based on true story.と表記できちゃうのは、信仰心があってこそ。

それが実行されているので、この映画は極度の宗教映画。




「そのための能力じゃない!」


ロレインに透視能力があることを警察に証明するために、殺人事件で使われた武器を選んだシーンありましたね。
あれがホントだめでしたね。今までのウォーレン夫妻だったらやらなかったと思いますよ。

警察に自分の力を信じてもらうために透視能力を使ってみるなんてことしなかったはず。

それくらい慎重さを持っていたし、その能力の崇高さを本人たちこそが感じていたはず。

警察に透視能力を見せつけて信じて貰えば話が早いけど、それは信念を曲げることになるので、できない!

遠回りしてでも別の手段で問題解決を急ごう!っていう流れだったら、良かったのに。

一応夫が「そのための能力じゃない」と阻止しようとしたけど、
ロレインはサッと透視能力使っちゃったもんね。。

信仰ってそういうことなのかね。信じてもらうためにサッと奇跡を起こしていいものなの?



裁判結果


実際の裁判では「悪魔のせいにするのは流石に無理っぽい」って思った弁護士は「正当防衛」路線に変更。

結果、過失致死罪で有罪判決を受け、10年から20年の刑を言い渡される。
模範囚だったので5年で釈放。

映画では短い刑期で出でられたことがまるで結局悪魔のせいだって認められたからみたいな雰囲気でやってましたけど、実際は模範囚だったから。

この事件を映画化したのは失敗だったと思います。
やめといたほうがよかった。
もしくはもっと公平な視点で描くべきだった。

エンドロールに実際のウォーレン夫妻の写真が出てくるのもどういうつもりだったんだろうか。映画で描かれる人物像と全然違いそうな雰囲気だったけど。。。



エンドロール担当者がせめて一矢報いたかったのかなぁ。。



映画『アナベル 死霊博物館』 ネタバレあり 全部触っちゃう少女ダニエラの謎

2021-10-06 | ネタバレあり
アナベル 死霊博物館(2019年製作の映画)Annabelle Comes Home
監督 ゲイリー・ドーベルマン
脚本 ゲイリー・ドーベルマン
出演者 マッケンナ・グレイス マディソン・イズマン





死霊館ユニバース時系列

この『アナベル 死霊博物館』は
2021年時点の死霊館ユニバース全8作のうち
制作年でいうと【4作目】、
時系列でいうと【5作目】。

【時系列】
⓪『 The Nun(死霊館のシスター)』以前
①1952年『 The Nun(死霊館のシスター)』
②1958年『 Annabelle: Creation(アナベル 死霊人形の誕生)』
③1970年『 Annabelle(アナベル 死霊館の人形)』
④1971年『The Conjuring(死霊館)』
⑤1972年『Annabelle Comes Home(アナベル 死霊博物館)』
⑥1973年『 The Curse of La Llorona(ラ・ヨローナ〜泣く女〜)』
⑦1977年『 The Conjuring 2(死霊館 エンフィールド事件)』
⑧1981年『 The Conjuring: The Devil Made Me Do It(死霊館 悪魔のせいなら、無罪。)』

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四コマ映画『アナベル 死霊博物館」→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2777




全部触っちゃうから、ダニエラちゃんは。


四コマ映画『アナベル 死霊博物館」→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2777



****




アナベル死霊館シリーズの中では
タイトルの中に『死霊館』が入っている死霊館シリーズの方が僕は好き。
タイトルの中に『アナベル』が入っているアナベルシリーズは、
アナベルっていうポップなホラーアイコンが活躍するものとして、
それはそれでまぁそりゃ楽しいわけですが。

****

で、今回は両方入ってる。
『アナベル 死霊博物館』。
つまりはアナベルも出るし、大好きなヴェラ・ファーミガも出るという一作。

****



死霊博物館には呪われた人形やらグッズがたくさん保存されていて
ひとつも触っちゃいけないんだけど
主人公の友達が【全部】触っちゃう。
主人公「どれに触ったの?」
友達「…………全部…」
全部かい!ってのが面白い展開。

結局、封印が解かれた呪いグッズたちが復活して、
子供らを殺しにかかるという楽しい展開ですよ。

****


残念なことに、全部ヴェラ・ファーミガが留守中に起きるんですよね。。

でもヴェラ・ファーミガの霊能力があれば、最初っからこんな事件1ミリも起きなかったわけですから、そりゃヴェラ・ファーミガには留守にしてもらわないと、話にならないから。


***


世界ではメガ大ヒットしてきたこのシリーズですが
『アナベル 死霊博物館』は初登場はシリーズ最低の興行収入だったようです。
とは言え最終的には全世界で2億ドル超えちゃうんだから、、まだまだ続編やらスピンオフは作られますよ。

アナベルシリーズはこんな感じでテーマパークみたいなポップな感じに。
死霊館はオカルト全開のシックな感じでやってもらえると、緩急ついていいかも。


****


ラストネタバレ(なぜダニエラは全部触ったか)は以下に。




ダニエラは父を亡くしていて、その父とのわだかまりを解きたかったということで、死者を復活させようとして、呪いグッズたちを復活させちゃった、という感動ストーリーでした。

死霊館(アナベル)ユニバース(2021時点)まとめ どれがヴァラク?どれが名もなき悪魔?

2021-10-01 | ネタバレあり
死霊館ユニバースまとめ(2021)


死霊館ユニバース(現状全8作品。死霊館のシスターThe Nun、アナベル 死霊人形の誕生Annabelle: Creation、アナベル 死霊館の人形Annabelle、死霊館The Conjuring、アナベル 死霊博物館Annabelle Comes Home、ラ・ヨローナ〜泣く女〜The Curse of La Llorona、死霊館 エンフィールド事件The Conjuring 2、死霊館 悪魔のせいなら、無罪。The Conjuring: The Devil Made Me Do It)

ぶっちゃけ面白いのは、ウォーレン夫妻が活躍する『死霊館』と『死霊館 エンフィールド事件』。

アナベル人形をフィーチャーしたアナベル関連はまぁポップなホラーだし、『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』はほぼ関係ない上につまらないし、
『死霊館のシスター』も大ヒットしたけどアクションホラーでした。

もう追いかけるつもりはなかったんですが、新作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』あるってことでやはり乗りかけた船、最後まで観てみようと思いますよ!
で、正直いまいちわかっていなかったので以下にまとめてみました。ネタバレ全開です。

どれがヴァラクでどれが名もなき悪魔なのかとか。



目次
  1. 死霊館ユニバースまとめ(2021)
  2. ⓪『 The Nun(死霊館のシスター)』以前
  3. ①1952年『 The Nun(死霊館のシスター)』
  4. ②1958年『 Annabelle: Creation(アナベル 死霊人形の誕生)』
  5. ③1970年『 Annabelle(アナベル 死霊館の人形)』
  6. ④1971年『The Conjuring(死霊館)』
  7. ⑤1972年『Annabelle Comes Home(アナベル 死霊博物館)』
  8. ⑥1973年『 The Curse of La Llorona(ラ・ヨローナ〜泣く女〜)』
  9. ⑦1977年『 The Conjuring 2(死霊館 エンフィールド事件)』
  10. ⑧1981年『 The Conjuring: The Devil Made Me Do It(死霊館 悪魔のせいなら、無罪。)』

死霊館ユニバースまとめ(2021)






⓪『 The Nun(死霊館のシスター)』以前

1952年『 The Nun(死霊館のシスター)』の中で語られる。
中世のルーマニア。ある城主が強大な力を手に入れるため悪魔を召喚し悪魔ヴァラクが出てきた。
キリストのちや修道女たちの祈りで悪魔を封印してきたが、第二次大戦で修道院が空爆に遭い、ヴァラク復活!
ヴァラクとの戦いの末、1人生き残ったシスターはヴァラクに体を乗っ取られないように自殺。



①1952年『 The Nun(死霊館のシスター)』

シスターの自殺を調査しにきたバーク神父とシスター見習いのアイリーン、そして村の若者フレンチー(本名はもモリース・ティロー)。
ヴァラクは修道院から出たいが人間の体に乗り移らないと出られない。
そこにちょうどよく現れたのが上記の3人。
3人はヴァラクと戦い、キリストの血を浴びせたり色々努力して、ついにヴァラクを地獄に閉じ込めたぞ!と安心して映画終わったかと思いきや、実はヴァラクはフレンチーの体に乗り移っていた!ガーンッ!



②1958年『 Annabelle: Creation(アナベル 死霊人形の誕生)』

アナベル人形の誕生秘話を描く。
人形作家(マリンズ)の娘が交通事故で死亡。マリンズ夫妻は娘に再び遭いたくて、邪教にすがり、人形に娘を憑依させることに成功させた…と思いきや、それは娘の魂ではなく人間の魂を狙う悪魔だった!
悪魔は孤児院の少女の1人ジャニスに乗り移り、ヒギンズ夫妻に引き取られて「アナベル」と名乗る。(アナベル・ヒギンズとなる)
アナベル人形は教会によって清められた(この時点で人形には悪魔は入ってないハズ)。



③1970年『 Annabelle(アナベル 死霊館の人形)』

フォーム(夫)が妊婦である妻にアナベル人形をプレゼント。
隣に住んでいるヒギンズ夫妻を養子である成長したアナベル・ヒギンズ(元ジャニス)とその恋人が殺害。
アナベル・ヒギンズ(元ジャニス)はフォーム夫妻の家に侵入し、アナベル人形に悪魔を乗り移らせた。
(悪魔側からすると、元ジャニスの体が死にそうになったのでとりあえず隣の家にある懐かしの人形に乗り移ったのかと。)
アナベル人形(含悪魔)はフォーム夫妻の魂を狙う。
ペレズ神父も事態を収束させようと努力。
娘を交通事故で亡くしたエブリンが償いとして犠牲になり、アナベル人形を手にしたまま窓から飛び降り死亡。
平和に。
6ヶ月後、ある女性が娘(デビー)にアナベル人形をプレゼント。



④1971年『The Conjuring(死霊館)』

母からアナベル人形をもらった娘デビーとカミーラと男は、ウォーレン夫妻にアナベル事件について話す。
「霊媒師に人形を見せたところ、人形にはアナベル・ヒギンズという7歳の少女が憑依していると言われた」と。
しかしウォーレン夫妻は、少女のフリをした悪魔が取り憑いていると見抜き、夫妻と神父によって人形は清められた。
それとは別に、ペロン一家が買った家が呪われていた。
結局、魔女が家に取り憑いていて、引っ越してきたペロン一家の母(キャロリン)に憑依。
魔女に憑依されたキャロリンは自分の娘を生贄にしようと模索するも、ロレイン・ウォーレンと夫の説得によって、キャロリンは自分を取り戻し、魔女は地獄へ追い払われた。



⑤1972年『Annabelle Comes Home(アナベル 死霊博物館)』

④の冒頭でデビーからアナベル人形を受け取ったウォーレン夫妻は帰路、色々霊的な事故に遭う。アナベル人形はウォーレン夫妻の家の地下のコレクションルームに保管。
一年後。ウォーレン夫妻は仕事のため家を開けることに。娘ジュディの面倒はシッターのメアリーに頼んだ。
コレクションルームに興味を持った友人ダニエラがこっそりコレクションルームに侵入。
「何一つ触れてはいけない」と言われていたのに、ダニエラは「全部(Everything)」触れてしまい、呪いが封印されていたものが全て呪いが解けてジュディとメアリーとダニエラを襲う。
ダニエラは亡くなった父に会いたかったのだった(かわいそう)。
娘ジュディは両親が悪魔祓いをしている映像を流して悪魔を除霊(それで除霊できちゃうの?)。
アナベル人形はガラスケースに戻された。



⑥1973年『 The Curse of La Llorona(ラ・ヨローナ〜泣く女〜)』

③1970年『 Annabelle(アナベル 死霊館の人形)』のペレズ神父がちらっと出ているだけでほぼ関係ない話。活躍するのはラファエル神父だし。
1673年メキシコ。ヨローナは夫に浮気され、激怒し、夫の宝物である2人の息子(自分の息子でもある)を殺害。しかしその直後後悔し、自分も川に入水自殺。悪霊となって、水辺て自分の鳴き声を聞いた子供をさらう。
↑という中南米に伝わる怪談?伝奇?を元にした映画。



⑦1977年『 The Conjuring 2(死霊館 エンフィールド事件)』

ホジソン一家の子供たちが戯れに降霊術をやってみると、悪魔ヴァラクが降臨。末っ子ビリーンに取り憑く。ポルターガイストを引き起こす。
「ヴァラク!」とロレイン・ウォーレンが叫ぶとヴァラクは支配され地獄に戻された。



⑧1981年『 The Conjuring: The Devil Made Me Do It(死霊館 悪魔のせいなら、無罪。)』

で、新作。
まだ観てません。