ろう者(聴覚障害者)のLGBTQ映画。
全編手話で字幕が出ます。
出演者はほとんど演技未経験のろう者とのことです。
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ろう者でありセクシュアルマイノリティである、
ってことなので情報量が多いんですよ。
登場人物も多いし。
でも、ものすごく手際がいいですね。
セリフで説明するシーンと
セリフ無しでいけるシーンをリズム良く並べているので
テンポよくサクサク進みます。
無言で動作や表情だけで描くシーンも多く、セリフで語るより切ない気持ちにさせられます。
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63分の中で登場人物も多いんですが
バックグラウンドにも強弱をつけているので疲れない。
十分に描けている人物がいるから
バックグラウンド少なめの人物たちも観客が勝手に想像し始めるので、全員が豊かな人物に見えてきます。
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LGBTQのQってのは
クエスチョニング(Questioning)と言い、自分のジェンダーや性同一性、性的指向を探している状態の人々のこと。
(セクシャルマイノリティ全体を表すQueer(クィア)のQでもあったりする)
監督が当事者でいらっしゃるとのことなので
この辺りのことが心配なく描けていますし
端的でもありそれぞれが叙情的です。
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LGBTQとは?
ってのを教科書的に知ることもできると同時に
キュンキュンラブストーリーとしての楽しさあるので
63分ちゃんと楽しめると思います。
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主役2人、とくに長井恵里さんは堂々としていて主演女優としての存在感もありました。
あとはなんと言っても、ゆりママを演じた菊川れんさんが素敵だし面白い。
表情や動作から優しさ暖かさが滲み出てるし、完全に演技としてバーのママになりきっておられて素晴らしいです。
あと、群馬の街の映像も何気ないけど綺麗でした。
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あらすじは以下に
彼氏とオシャレな立ち飲み屋で会話する華。
「ごめん、好きな人ができたの」
「冗談やめろよ」
「その人といると心が温かくなるの」
彼氏、落ち込みながらも受けれる。
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朝チュン。華とあゆみが二つの布団を並べて寝ている。
華のスマホが鳴る(バイブ)。
「お母さんから。帰ってきなさいだって」
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1年前。
華とあゆみがカフェで会話。
「私彼氏と合わないのかな。彼はいつも先のことばかり。私は今を大事にしたいのに」と華。
「華の今を楽しむ姿ステキだと思うよ」とあゆみ。
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家。2人で食事。口元についた食べものを拭いてあげたりしてイチャイチャ。
華を見つめるあゆみ。一緒にお風呂。ホラー動画見て怖がる華。イチャイチャ。
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冬。
「彼と別れたよ。あゆみが男なら付き合ってたよ」と華。
「女同士でもいいでしょう」とあゆみ。
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現在。
あゆみは美容院で働く。見習い?お客さんも先輩美容師もろう者で手話で会話。
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日本家屋。華の家。まだ日が高いうちからすき焼き。
「お父さんおめでとう。三連勝だね」と華。
父はボウリング大会で勝った模様。父と母と華。3人は仲良し。
「あなたの彼、3ヶ月前からサークルに来ないけど」と母。
「別れたわ。今は女の子と付き合ってる。あゆみ。知ってるでしょ」と華。
「あの可愛い子?」「俺の教え子だ」
「もうヤったの?」と母。「うん」と華。
「姉みたいな感じじゃないのか?」と父。「違う」と華。
「出て行きなさい!気持ち悪い!」と母。
華は出て行く。
車を運転する華。車を止めて泣く。
****
車。運転席に華。助手席にあゆみ。
群馬のどこかの沼で止める。車を降りる。「綺麗だね」
「元カレと寄りを戻せ。気持ち悪いって」
「正直に私たちのこと言ってくれたんだね、嬉しいよ」とあゆみ。
泣く華。抱き合う2人。
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美容室。
常連客「こないだ北海道行ったの。じゃがいも美味しかった。ご両親に渡して」
「は、はぁ。。」と華。
*****
華とあゆみの家。スイカ。
「あゆみのお母さんは私のこと反対する?」
「どうだろう。」
「女で一つであゆみを育ててくれたんでしょ。私のことは言わなくていいよ。負担かけるから」
あゆみはノートにLGBTQの解説を書き始める。
心 女 男
体 女 男
恋愛対象 女 男
と書く。
華は心と体は女に丸をし、恋愛対象は「あゆみ」と書く。
あゆみも「華」と書く。イチャイチャ。
***
あゆみの勤め先。ケーキ屋さん。コーヒーを飲む華。
女性店主の息子、学校から帰宅。ドーナツ食べながら華と何気無い会話。
「宿題あるでしょ」と母は息子を二階にあげる。
「これ終わったら東京行かない?私たちみたいな集まりがあるの」とあゆみ。
「ろうの世界は狭いって知ってるでしょ」と華。
「今日3時じゃなくて2時に上がっていいわよ」理解のある女性店主。
***
渋谷。ものすごい喧騒。ナンパされて拒否する華。2人ははぐれる。渋谷のスクランブル交差点の反対側同士で手話で会話。
「もう来なきゃよかった」と華。
バーの店内。10人くらいの男女。
「どこから来たの?」とゆりママ。「埼玉」と嘘つく2人。
「あなたを見たことあるわ」とゆりママはあゆみを見ながら言う。
「この店は店員が全員ろう者なの」とゆりママ。客もろう者。
イチャイチャする女性2人を見てほっこりする。
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【回想シーン】
布団の中でラクダの真似をする華。
「ラクダ?」とあゆみ。からのキス。イチャイチャ。
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店。のびのびした客たち。
「私疲れちゃった」と外に出る華。
華は店の外に飾ってる絵を見る。「これは虹?」
客が一斉に出てくる。あゆみも。
「来てどうだった?」「疲れちゃった」
「ここ9時までなの。」みんな帰る。
「今日は帰るの?」とゆりママ。
「はい、群馬に」とあゆみ。「群馬…?」
嘘がバレた。
「ちょっとだけ飲んで行かない?」とゆりママ。
*****
閉店後の店内でスタッフたちと飲む。自己紹介。
華、あゆみ、ゆりママ、スタッフの優太と翔とあい。
優太とゆりママはFtM。
「2人は付き合ってるの?」と聞かれて「いえいえ」とまた嘘をつく。
翔の彼氏はあゆみの姉の同級生だと判明。ろうの世界の狭さ。
****
【回想シーン】
7年前(翔が中3の頃)。
放課後野球の練習をしてるとイケメン先輩が投球を教えてくれるようになる。
ある日、「好きです」と告白すると
イケメン先輩は無言で立ち去ってしまう。
翔の家。寝てる翔。登校拒否してるらしい。担任が尋ねて来る。
ゲイであることもみんなにバレてしまったようだ。
男性担任
「元気?大丈夫?人を好きになる気持ちはわかる。いまの社会はまだ理解が足りないんだ。いつかぴったり会う女性が現れるはず。先生も結婚してよかったと思ってる。お母さんに感謝の気持ちを忘れないでね」
と独善的な地獄ワードを連発する。
(先生も結婚してよかったと思ってるってこの先生もゲイ?)
遺書を残して川へ飛び込み自殺しようとする翔。
近所に住んでいて顔見知りだったゆりママが偶然発見し、力ずくで取り押さえる。
*****
店。
「ゆりママがいなかったらいまの俺はいない」と翔。
あゆみ「前は女だったって聞いたけど…」と優太に尋ねる。
「俺はね」と優太の回想シーンスタート。
*****
【回想シーン】
中学か高校の入学式当日?
鏡にセーラー服を着た自分。セーラー服をゴミ箱に脱ぎ捨てベッドに突っ伏す優太。
それを見て怒る母(聴者)。「どういうつもり!?」
別の日。優太の部屋を掃除する母。ベッドの下からガーリーな服が隠されていることに気づく母。
***
店。
「母さんは俺の好きにさせてくれた。でも体と戸籍を変えた時」
回想シーンスタート
***
【回想シーン】
食卓で一人泣く母。「どうしたんだよ」
「本当は男に変わることを受け入れられなかった。誰のせいなんだろう。でも優太の人生は一度きり。自分らしくいてね」と母。
****
店。
「カミングアウトするつもりはない。でもパートナーがいるいまは一番幸せ」とあい。
「私たち付き合ってます」と華。
「わかってたわ」とゆりママ。
親のことが不安なのはわかる。でも俺たちがいるから。私たちはあなたの味方よ。
泣く華。
「ただ、あゆみが好き。結婚してる人たちと同じように。二人幸せになりたい」と華。
*****
朝。
そのまま店で寝てしまっていた。「帰ろう」
みんな店を出る。外は明るい。
絵。
「雨が降らなければ虹は出ないの」とゆりママ。
******
橋の上でキスする二人。
空へパン。
おわり。
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