あの夏のアダム ADAM
監督:リース・アーンスト
出演:マーガレット・クアリー ボビー・サルボア・メネズ
アメリカ/原題:ADAM
今のところイメージフォーラムで1週間限定上映(4月22日〜4月28日)!
限定上映ってのが勿体無いっていうか、全く不釣り合いなほどの良い映画!
これだけの材料を(バカコメディにすることもなく)甘酸っぱいひと夏の青春映画になってることが奇跡。
面白かったぁ。
田舎の高校生男子アダムが、レズビアンの姉の住むニューヨークでひと夏を過ごす。
のびのびとクィアカルチャーを楽しむ姉にひっぱられて、自身も大人の階段を登るべくビアンやトランスのコミュニティに潜入していく。
すると、アダムはあるレズビアン美女(ジリアン)に一目惚れ。
さらにジリアンはアダムのことをトランス男性だと勘違いし好意を持ち、訂正する機を逸し(ていうか嘘ついたよねついたよね気を引くために)、ビアンとトランス男性というカップルとして付き合い始めてしまうが。。。
というスタート。
色んな属性を持った人物(主に女性)が出てきて情報量は多いし展開もいっぱいあるんだけど、難解ではないし、全体として甘酸っぱい青春映画になっているところが、何度も言うけどビックリなんです。。
色んな属性出しときゃいいんだろ感がない。
あらゆるところを丁寧且つ端的に拾い上げて、しかも説教くさくなく教科書的でもなく、さらにドッキドキするようなオトナな描写もバンバン入れてきて、結局は青春映画なんですよ。。
こんなことできます????
できたんだよね。
監督は、Amazonプライム製作のドラマ『トランスペアレント』のプロデューサーで自身でも映画制作を続けてきたリース・アーンスト。
リース・アーンスト自身もトランス男性。
原作はドラマ「Lの世界」で脚本を担当したこともあるアリエル・シュラグ。
このふたりが原作をさらにアップデートさせ、
「現場のスタッフの50%をトランスの人たちでした」というほど気使いまくって気合い入りまくった作品。
教科書的ではない、複雑であいまいな
この映画が教科書的でもないし説教くさくもない、とても複雑であいまいな、しかも「2006年のニューヨーク」という、今よりももっと当事者自身も混乱していた〝居心地の悪い〟時期を描いている映画。
95分の映画だけど、観た後それ以上に考えさせられる映画だし、それは映画として素晴らしいものだと思います。
が、それは同時にとても危険なことで映画の中のある部分を切り取って炎上するポイントも多い、ということになってしまう。
まさにアメリカでは「観てもいない人たち」によって大炎上したとのこと。。
それくらいセンシティブなことを扱っているし、
それくらいトランスの人たちが現実世界で苦しんでヒリヒリとした気持ちで暮らしているということでもあると思います。
僕は「この映画はそうではない!!!」と言い切れる立場にないのですが、
この映画が当事者を含めた多くの観客に見られ語られることで
観てもいない人たちからのマイナス評価だけではなく
映画を95分観た正直な感想が増えたり
多く論じられることで「『あの夏のアダム』の価値」を観客たちが見出していけるような状態になったらいいなぁと願います。