映画感想(ネタバレもあったり)

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『フランシス・ハ』 ネタバレあり 「ハ」の意味

2021-04-19 | ネタバレあり
フランシス・ハ(2012年製作の映画)
frances ha
監督ノア・バームバック
脚本ノア・バームバック
出演者グレタ・ガーウィグ


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私ってハテナね…


■金なし、恋人なし、家なし、夢はあるけどプランなし


主人公のフランシスは27歳の見習いダンサー。ニューヨークのアパートで親友のソフィーと同居していて、当初は彼氏もいました。
しかしその彼と別れて、親友ソフィーからは別居を言い渡されてしまい、家なし恋人なしの状態に。お金もなくて、あるのは「プロのダンサーになる」という夢だけですが、本気でダンスレッスンをしている感じでもなく……。

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■憧れのオシャレライフ! しかしダンサーに賭ける覚悟いまだなし


その後フランシスは男性2人の部屋に転がり込むことに成功! ここはセンスのいい家具や写真が飾られていて、アート系の仲間たちも集まってくるオシャレライフの象徴のような部屋。
ここでさらにフランシスのモラトリアム癖に拍車がかかります。ダンサー志望だってのに全然練習シーンがない……。
要するにフランシスは、ダンサーという夢に本気で向き合う勇気を持てずにいるのです。結果が出ちゃうのが怖いから。だからモラトリアム仲間との刹那的なオシャレライフに溺れてしまっているのです。

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■さすがに心境の変化が……


親友のソフィーが人生の選択をしたり、プロのダンサーと自分の実力の差を見せつけられて、少しずつ彼女の気持ちは変化していきます。そして、あることをきっかけに「地に足のついた」選択をするのです。初めての人生の選択。※本当に「地に足をつける」シーンがありますのでお見逃しなく。
目標があるならそれに向けてなんかやりゃいいのにやらなかったり、周りには調子のいいウソなんか言っちゃって変な空気にしちゃったり。フランシスを観ているとまるで自分の鏡のようで痛い……。
filmarksのレビューでも「自分と重なる……」という感想が多いのもうなずけます。てことは、みんなフランシス的要素を持っているってことです。
フランシスのキャラクターはかなり痛々しいのですが、なぜか可愛らしく憎めないのは、主演のグレタ・ガーウィグの名演のおかげでしょう(本作の演技が評価され、ゴールデングローブ賞主演女優賞候補)。

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■『ラ・ラ・ランド』との共通点


この映画、『ラ・ラ・ランド』に似てると思いました。“ラ・ラ・ランド”ってのは、スクリーンの中でラララ〜♪と歌って踊りたいというドリーマーが集まるロサンゼルス(L.A.)のこと。憧れと自意識が強くてプロになる覚悟ができていない主人公たちの挑戦と失敗が描かれる映画です。
『ラ・ラ・ランド』も『フランシス・ハ』も最後には覚悟を決めて人生の決断をします。特にフランシスのささやかな(本人にとっては大きな)決断には心揺さぶられるものがあります。

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■フランシス・ハの「ハ」の意味


「ハ」って何だろう?
 珍しい苗字だなと思いながら観ていると、ラストでなぜ「ハ」なのかが明かされます。その理由がちょっとかわいいし感動もします。
この「ハ」の意味は今まで自意識が強かったフランシスが……。おっとネタバレ厳禁。

まずはちっちゃくてもいいから一歩踏み出してみようかなと思える映画だと思いますので、ぜひどうぞ!


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■ネタバレ「ハ」の意味



ラスト、自分を受け入れて地に足つけて頑張ろうと思ったフランシス。
アパートの表札に自分の名前を書いた紙を入れ込みます。
が、サイズが合わない。。
「Frances Ha」までしか見えない。。
今までだったらこんな惨めなこと受け入れられず争っていたフランシスだけど、「私なんてハでいいや」と「Frances Ha」のまま表札を完成させます。
これはけして後ろ向きではなく、やっと「ハ」程度の自分を受け入れられたフランシスはこれから一歩ずつ人生を着実に進んでいくのです。



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