映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

おかえり、ブルゴーニュへ(2017年製作の映画) Back to Burgundy

2018-12-05 | 映画感想
おかえり、ブルゴーニュへ [DVD]



クリス・パインのワイン映画『ボトルドリーム』がなかなか爽やかな佳作だし、ワイン映画が好きなんです。

が、これはちょっと異色ですね。

ワイン映画を期待して観に行くと、観たい映像やエピソードがあんまり見れない。。


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爽やかな葡萄畑や
山場のワインテイスト対決で憎らしい敵をバッサリ倒してくれたり
「この葡萄畑はお前に任すよ」的な親子の和解みたいなシーンもない。。


そもそも父親死んだとこからスタートだし。
だから三兄弟集まったし。

しかも長男と次男はすでに自分の葡萄畑持ってるし。

長女はほっといても大丈夫そうなしっかり者だし。



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なんかこの三兄弟がどういう状況になれば幸せなのかゴールがわからない。。

でもそれは三兄弟たちも同じ。

なにがゴールなのかわかんないまま兄弟で力合わせて、それぞれの問題に立ち向かっていく。



細かいエピードのつながりであっちこっち行ったり、あっちに行きそうで全然行かなかったり。

一筋縄では行かない映画。

でもたしかにそれが人生だわな。

ダウンサイズ(2017年製作の映画) Downsizing

2018-12-05 | 映画感想
長い。

皆さんの演技はいいですよ。
お腹出たパターン(インフォーマント!とか)のマット・デイモンや奥さん役のクリステン・ウィグ、気を抜いたクリストフ・ヴァルツなど何度も笑わせてもらいました。


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人間をちっちゃくする技術が生まれたら?
というifを次々と見せられて
こんないいことが!
しかしこんな最悪なことも!
と驚きつつ、全く予想してなかった方へ連れて行かれるのもいい。


かなり宗教色強くなってきても、
冷静なクリストフ・ヴァルツの一言があるおかげで
「布教映画ではないんだよな、良かった…」と安心するので、
最後までは見ました。


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が、長い。。。


『サイドウェイ』『アバウト・シュミット』『ファミリー・ツリー』とミニマムな話で監督・脚本をしてきたアレクサンダー・ペインのSF。

エコテロリズムへの冷笑なのかなぁ。
キリスト教も笑ってる感じもするし。
なかなかのブラックコメディではありますよ。

ただ、長い。。

他人に期待しすぎなんだよっ! 映画『デッドバケーション』

2018-12-04 | 映画感想
音楽×映画の祭典 [MOOSIC LABO(ムージック・ラボ)2018] の中の一本『デッドバケーション』。
映画監督八幡貴美とロックミュージシャンGALAXIEDEADの組み合わせ。

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GALAXIEDEADのボーカルのデッドさんがかなりのドクロ顔でいらっしゃるので(たぶんそういうことでお名前がデッドかと…)、地縛霊という役はもちろんハマり役。

『普通は走り出す』同様、こちらもデッドさんの歌の良さがまっすぐ伝わってくる。
声がいいなあ、歌詞がいいなぁ、メロディがシンプルだけど聴かせられるってことはやっぱ声がいいんだなぁと。

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劇中で
「他人に期待しすぎなんだよ」とデッドさんが主人公の女の子に言います。

先日観た『真っ赤な星』という女性映画では、
主人公の女性2人が同化しようとしてるんじゃないかってくらいにぶつかり合っていて
「自分と他人の境界線があいまいなんだなぁ」と思いながら、おじさんは観ていました。

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20代前半くらいだと確かに「なぜ他人ってのはこんなにも自分の思い通りにならないのだ!」と苦しんでいる時期かも。

僕は8年くらい前に「この人ってずっと他人なんだ。。自分にはならないんだ。。」と実感したので、
僕はたぶんその時やっとオトナになれたのだと思います。。。

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この『デッドバケーション』の八幡貴美監督が製作したブライダルCM(https://www.youtube.com/watch?v=758erqtnTD4)にも
「結局他人じゃんっ!」と広瀬アリスが発狂するシーンがある。
(その23秒後に薬指に指輪はめるんですが)

他人は結局他人だと〝知る〟ことから実はやっとその人自体が見えてくるんですよね。

自分と同一視するのをやめたところからやっと疲れない付き合いができるようになれる。

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で、この『デッドバケーション』はその前。

主人公はデッドさんに「他人に期待しすぎなんだよ」と叱られるだけあって、
まるで登場人物全員が主人公の成長のために存在しているかのよう。

みんなが主人公を見ている。

こんな世界ないんですよ。
でもこの時期ってそういう風に考えてるたかも。

しかもこの主人公は失恋したばっかで、たぶん「地球で最も不幸なアタシ」状態。

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だから、デッドさん演じる地縛霊も本当に存在したのか疑わしい。。

主人公が自分を救うために自分で作り出した幻影かもよ。
主人公にしか見えないんだし。

隣に恋愛相談相手のゲイが住んでるってのも疑わしい。。

全体的に寓話っぽい。
でも20代前半までって人生自体が寓話っぽいんよね。。

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はぁ、、またおじさん感想になってしまった。。

普通は走り出す(2018年製作の映画)

2018-12-02 | 映画感想
音楽×映画の祭典 [MOOSIC LABO(ムージック・ラボ)2018] の中の一本『普通は走り出す』。
映画監督渡辺紘文とロックバンドのトリプルファイヤーの組み合わせ。

どちらのことも知らなかったのですが、両方好きになりました。

両者の魅力を伝えられたということで
MOOSIC LABOの作品として成功なんだと思います。


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映画としてはかなり破天荒な作りなのですが、
実はちゃんとトリプルファイヤーの楽曲と映画のストーリーとテーマが合致していて、
普通にこういう映画として正しい結果を出せる監督なんだな、という点で驚きました。。


トリプルファイヤーの楽曲『中一からやり直したい』『今日は寝るのが一番よかった』が、とてもとても素晴らしい歌なわけですが、
それがバッチリ映画と合っている。

映画と音楽がどちらも負けてない。


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渡辺紘文監督が自ら主演俳優としてノリノリで出てきてるわけですが、
助手席で1人で喋ってるシーンが忘れられないですね。。

多分本当に普段から思ってることを、
瞳に一切の曇りなく
スラスラと喋り続けるわけですが、

それが本当に内容が薄い。。
おんなじこと何回も言う。。

しかも全く瞳に淀みがない。。

「コイツなんなんだろう…」と精神分析するような気持ちで凝視しました。。

こういう奴いるいるーとも思うし、こういうのが一番やばいんだよな、、とも。


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美人女優松本まりかとお医者さんごっこしたかったから撮りましたみたいなシーンがあるんですが、
映画を撮る理由として「松本まりかとお医者さんごっこしたいからです」ってのはとても正当な理由ですよ。

〝女医に扮した松本まりかに「三食栄養があるもの食べてください」と冷たく叱られてみたい〟

十分すぎる映画の動機。


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渡辺監督演じる主人公は、かなりのファッキンクズ野郎。
だけど同時にキュートでもある。

映画もだらだらと長くてナルチシズムの連続。。


でも、冒頭の件について。

本当は渡辺監督はうまい映画を撮れる人なんだと思う。
真っ当な映画を撮る技術は十分にある人なんだと思う。

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他の作品を観ていないので
どういうことでこういう映画になったのかはわかりません。

トリプルファイヤーの楽曲に合わせた、だけではないと思います。
渡辺監督の特性が思いっきり出てるとは思うんですが。

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謎のシーンがあって、

監督がプロデューサーか誰かに原稿を送信する前に
「これから誤字脱字を直してから原稿送りますね。今日中には送りますんで。」
っていう電話をするんです。

普通の人間は誤字脱字を直して原稿を送信してから「原稿送りましたんで」って電話するんですよ。

誤字脱字直す前に電話しないですよ。。

絶対コイツ今日中に原稿送らないですよ。
数日経ってプロデューサーから催促の電話が来たら「誤字脱字直してたらもっといいアイデア出てきちゃって…」っつってまた締め切りどんどん伸ばすんですよ。



こういうシーンがうまいな〜〜〜と本当に感心しました。