七十二年間という時間は長いのか短いのか人により違うでし
ょう。私は七十二年間というのを長い時間の経過として受け止め
ています。
というのは、この時間の間にいろんなことが次から次へと起き
て、消えていきました。
七十二年前のこの日、私は小学校(国民学校)三年生でした。
学童疎開先の寺院の裏手にある小高いところで西に傾いた太陽を
みていました。すると飛行機の爆音が聞こえてきました。飛行機
は頭上に近づいてきたかと思うと、大量の何かを印刷した紙をば
らまきました。私たちは当時紙に餓えていましたのでもう夢中に
なって拾い集めました。拾い集めた紙は総て先生にわたすことに
なり、みんなでブツブツ言ったのを覚えています。
その日の正午、私たちは本堂に集められ玉音放送を聞きました。
放送が終わると先生達は自分たちの部屋へ行ってしまいました。
私たちには天皇陛下のお言葉を理解できたものはいませんでした
ので、先生に事情を聞きに行ったのですが、教えてくれませんで
した。先生の中には、拳を目に当てて泣いている方がいました。そ
の様子が伝えられると、何となく何か重大な内容だったのだと思う
ようになりました。
そして、飛行機からばらまかれた紙に書いてあった、"日本の皆さ
ん、戦争は終わりました”と言う字面から、日本はこの戦争に負け
たのだと推測できました。
七十二年前の昭和二十年八月十五日の出来事は、この程度しか
覚えていません。それでも私たちの年代の方々は、不戦を明記し
た日本国憲法を誇りを持って守らなければならないとけついして
います。
それにつけても、近頃の北朝鮮のやっていることを理解するの
は困難です。もし、間違って戦争状態になれば、すなわち人類の
滅亡に繋がる事態になるかもしれません。子供の火遊びから大き
な火災になることもあります。火遊びよりももっともっと有益な
結果をもたらす遊びがあることを知りましょう。
七十二年前のこの日までの数年間のことを繰り返してはいけま
せん。