昔は、楽器の音色や生徒たちの歌声を放ち、賑やかだったろう…と思うが、今はもう、数年間も人が訪れない音楽室は、し…ん…として、かなり不気味だ。
パキパキッ…、3人の足音が室内に響く。
「とりあえず、廊下に出よう」
正人が呟く。
教室と廊下の境目の窓ガラスも割られていて、かろうじて引き戸だけは残っている。
ガリガリ…。
渋いがゆっくりと引き戸を引いた。
「え?足音?」
松田の声に二人が立ち止まった。
「何?」
「上の階から足音が聞こえた…」
「え?まさか…。」
「俺たちの足音だよ。静か過ぎるから反響したんだ。」
「…そうか…。だけど、ちょっと音が違う気がして…」
「気のせいだよ」
「…そうだな。」
松田は、自分に言い聞かせるように呟いた。