廊下は月あかりで、ぼんやりと輪郭は見える程度だが、その月も雲隠れしてしまうと漆黒の闇になる。
懐中電灯のあかりは、一点だけを薄ぼんやりと照らすだけなので、かえって怖い。
「もっとすごい懐中電灯を持ってくれば良かった」
「…だな。ナメてたな…。」
…ッツ…。
…ッツ…。
二階からなのか、何かを突っつくような音がする。
「さっきから、なんか音してる…」
松田が気づいてるようだ。
「なんか、引っ掻くような…」
「いや、ひきずるような音だよ。」
正人も気づいてるようだった。
「二階からだよな…」
「うん…」
「あのさ、木の枝が風で揺れて、校舎の壁を突っついたり、引っ掻いたりしてんじゃない?」
「あ、そうか…」
しかし、さっきから風など吹いていない。
…風、吹いてないよ…とは、言えなかった。
…キャ…。
「……悲鳴?」
「え?嘘!」
「たぶん、動物の鳴き声じゃない?」
…キャ…。
「………そうかも…。」