君は誰?10

2024-09-26 09:49:18 | 日記
廊下は月あかりで、ぼんやりと輪郭は見える程度だが、その月も雲隠れしてしまうと漆黒の闇になる。

懐中電灯のあかりは、一点だけを薄ぼんやりと照らすだけなので、かえって怖い。

「もっとすごい懐中電灯を持ってくれば良かった」

「…だな。ナメてたな…。」

…ッツ…。

…ッツ…。

二階からなのか、何かを突っつくような音がする。

「さっきから、なんか音してる…」

松田が気づいてるようだ。

「なんか、引っ掻くような…」

「いや、ひきずるような音だよ。」

正人も気づいてるようだった。

「二階からだよな…」

「うん…」

「あのさ、木の枝が風で揺れて、校舎の壁を突っついたり、引っ掻いたりしてんじゃない?」

「あ、そうか…」

しかし、さっきから風など吹いていない。

…風、吹いてないよ…とは、言えなかった。

…キャ…。

「……悲鳴?」

「え?嘘!

「たぶん、動物の鳴き声じゃない?」

…キャ…。

「………そうかも…。」