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塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させ様としていた。
其の崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭高範(あきば たかのり)と小笠原真奈(おがさわら まな)。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えて行く。だが・・・。
「大規模テロなんてしてみたくない?」。或る日、唆す様に囁く者が、運命を連れて遣って来る。
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「羽田空港沖に建設中の埋め立て用地基礎に、巨大な塩化ナトリウムの結晶が落下。其の日以降、身体が徐々に塩と化して行き、最後は死に到る人間が続出。関東圏の人口は、3分の1に迄減少してしまった。」、そんな突拍子も無い設定の小説「塩の街」は、今や押しも押されもせぬ人気作家・有川浩さんのデビュー作で在り、「空の中」や「海の底」、そして「空飛ぶ広報室」と続く、所謂「自衛隊シリーズ」の第1弾でも在る。
陸上自衛隊が登場するので、「自衛隊シリーズの第一弾。」というのは強ち間違ってはいないのだが、他の作品と比べると「自衛隊の存在感」は薄い。又、「SF風味の作品」と期待して読み始めたら、ガッカリする人も多い事だろう。中身は「SF風味にコーティングされた恋愛小説」だから。
「図書館戦争シリーズ」も有川作品の人気シリーズで、自分も大好きなのだが、其の主要登場人物で在る堂上篤(どうじょう あつし)と小牧幹久(こまき みきひさ)の“原型”が、「塩の街」に登場する秋庭高範と入江慎吾(いりえ しんご)だと感じた。でも、感情移入出来る度合いで言えば、「図書館戦争シリーズ」の2人の方が断然上。彼等と比べると、秋庭&入江の両人は、今一つキャラ立ちしていない様に思ったから。
「塩の街」はデビュー作で在る“本編”と、“其の後を描いた続編”とで構成されているのだけれど、個人的には“本編”だけの方が良かった。“其の後を描いた続編”は、蛇足にしか感じられなかったので。
デビュー作という事で、全てに於て「拙さ」が見受けられるのは仕方無いにしても、自分には有川作品の持つ魅力が、此の「塩の街」からは感じられなかった。ファンの方には申し訳無いけれど、ハッキリ言って面白く無く、読み進めるのが苦痛な内容。総合評価は、星2つとする。