ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「北帰行」

2010年06月29日 | 書籍関連
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ロシア専門の旅行代理店を営む関口卓也は、美貌の女性タチアナ・クリヤカワ(ターニャ)をアテンドする事になる。だがターニャが日本に来た目的は、自分の妹を殺したヤクザへの報復だった。事件に巻き込まれた卓也はターニャと逃亡を図るが、組長を殺された舎弟・藤倉奈津夫の執拗な追い込みを掛けられる羽目に。一方、事件の捜査を担当する事になった警視庁組織犯罪対策部の寒河江はやがて、全く見えない事件の本質と日本で暗躍するロシアンマフィア動向に注目して行くのだが・・・。
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廃墟に乞う」で、第142回(2009年下半期)直木賞を受賞した佐々木譲氏。そんな彼が「コール・ガールの殺害を巡るロシアン・マフィアと日本のヤクザの対立。」、そして「予想だにしなかったトラブルに巻き込まれてしまい、“暗殺犯”の女性の逃亡に手を貸さなければならなくなった男。」の姿を描いたのが「北帰行」で在る。

「北帰行」というタイトルを目にして、小林旭氏が歌った曲「北帰行」(動画)を思い浮かべる方も居られるだろう。あの曲は「祖国への惜別の念」がひしひしと伝わる名曲だが、この作品の場合は全体に暗さと救いの無さで覆い尽くされている。登場人物が危機的状況に陥っても、其処何等かの救いを求めるのが人情だけれど、その思いが悉く裏切られる。マフィアやヤクザの身勝手さ、そして無辜の民が迎える陰惨な結末には、最後の最後気持ちが晴れなかった。

卓也達の逃亡劇にも、「こんな展開の話を、昔、ドラマで見た様な気がするなあ。」という既視感が在り、“読ませる作家”の一人で在る佐々木氏としては物足りなさを感じたのは事実。「あれだけの作家でも、外れ作品は在るのだなあ。」というのが、自分の素直な気持ちだ。

総合評価は星2.5個

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