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「百貨店の凋落止まらず ネット通販3社の売上高が全国百貨店の合計を抜く」(2月25日、財経新聞)
ネット通販大手3社(アマゾンジャパン、楽天、ヤフー)の売上高が、2017年に6兆7,000億円となり、凡そ6兆円となる全国百貨店売上高(速報値)を初めて抜いた。百貨店の凋落振りが、改めて鮮明になった。
ネット通販3社の売上高は、対前年比13%の増加になったのに対し、百貨店協会の纏めによる全国百貨店売上高は凡そ6兆円で、稍甘いが前年並みとなった。
経済産業省の纏めによるネット通販の売上高が約15兆円なので、大手3社のシェアは凡そ44%に及ぶ。ネット通販大手3社の売上高が仲良く2桁の伸長を見せたのに対して、百貨店の売上高は都市部の店舗で稍回復の動きが見られるものの、人口の流出が続く地方店では厳しさが増しており、百貨店合計では前年実績値並みを確保するのが漸との状況だった。
往時の百貨店は誇り高き小売業の雄だった。消費者の篤い信頼に応えるだけの、高度なクオリティーに裏打ちされた商品が店頭で覇を競っていた。特に、アパレル企業との強い協力関係で構築されたビジネス・モデルは、他に比較する物が無い当時の商環境で、圧倒的な存在感を示していた。今から考えると、相互依存関係とも言えるビジネス・モデルが略破綻し、百貨店は大きな方向の転換を迫られている。然し、羅針盤に何の航路を使って、目的地を何処に定めるかという明確な進路は示されていない。
百貨店の不振は地方に於てより鮮明で、1999年に311店を数えた百貨店の店舗数は既に230店程となり、200店を割り込む時期も遠くないとの見方に信憑性が高まっている。百貨店は売上の3割をアパレルに依存していた。売り場を預ければ其れなりの結果を出して来たアパレルは、何時の日にか百貨店の屋台骨を背負う迄になっていた。其のアパレルが20億点と言われる商品供給を40億点迄増加させ乍ら、既往の売上を確保するのが漸とという価格破壊に巻き込まれ、百貨店のステータスだった“高級感”をも奪い去ってしまった。そこそこの商品で在れば、ユニクロでも通販でも頓着しない時代になった。既に百貨店のビジネス・モデルは失われてしまったのだ。
百貨店の賑わいは“デパ地下”に名残を留めているが、食品や総菜の分野でも品揃えを充実させてアピールを図る スーパーや商店街の努力は侮れ無い。着飾って百貨店に行き、高級感に浸るマダムは絶滅危惧種になってしまった。交通至便な一等地で巨艦を運営する多大なコストが今、百貨店を苦しめている。
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幼い頃、両親に連れられて行く百貨店が楽しみだった。「マヤ文明展」や「特撮関連の展示」等の面白い催し物、書店や玩具コーナー、屋上のゲーム・コーナー、そして大食堂での食事等が実に魅力的だった。
でも、今は百貨店に足を運ぶ事は殆ど無くなった。面白い催し物は百貨店以外に幾らでも行われているし、ネットで本や玩具は買える。ゲーム・コーナーや食事をする場所は、百貨店以外にも一杯在る。何よりも「百貨店は物が高い。」というのが、貧乏人の自分を百貨店から遠ざけさせている。だから、百貨店の凋落が止まらないのは理解出来る。
「手軽で安く物を買えたりするけれど、実際に商品を手に取って確認したり、試食等は出来ない。」というネット通販の“弱み”を利用し、「期間限定で、全長30mの“回転スイーツ”を設けた百貨店。」が在った。今年のヴァレンタイン・デー前、「目の前で実際にスイーツを色々見て貰い、そしてインスタ映えする写真を撮ってネット上に拡散して貰う事で、より多くの人が百貨店に足を運んで貰いたい。」という思惑が在った様だ。
ネット通販の拡大に伴い、街からは書店や玩具屋が次々と姿を消しているが、今後はスーパー等の領域も例外ではなくなるかもしれない。“リアル店舗”の強みというのは間違い無く在る筈(「店頭で実際に本を手に取り、ちらっと立ち読みした結果、購入する。」等、書店の居心地の良さは、本好きの方ならば理解出来る事だろう。)なので、何とかリアル店舗には頑張って貰いたい。
百貨店の凋落は、屋上のゲームコーナーやイベントといった利益に直結する、サービスが、今や受けなくなっている事を示すものでしょう。ヒルズのような、毛利庭園における公園や、水田や森といった散策できる事、その開拓に参加できること、つまり、農業も公園といった直接消費活動に類さない事が、どれだけの人の満足度を満たすようになったか、という事です。ワンちゃんの散歩が出来るとか、疲れたサラリーマンが休む憩いの場所といった、コミュニティとして、保存され続ける事が、大切なのだと思います。
ネット通販の流行が、消費者が内向きになり、行動しなくなった、という意見もあると思いますが、ヒル然り、コミュニティとして成り立っている事が、行動理由となっただけで、百貨店にブランド力が無くなった、という事だと思います。複合施設は、職住遊が一体化した、歩ける圏内で、仕事も生活も消費活動も行うというもので、対する百貨店はただ消費する場所でしかありません。だから、百貨店がスペシャリティを失い、魅力的なテナントが減る事によって、ブランドの集積地としての威厳を失う事、それが凋落の予兆でしょうね。
複合施設はどうなんでしょうね。百貨店に足を運ぶ事はさっぱり無くなりましたが、複合施設は結構行きます。自分的には“嘗ての百貨店”が“今の複合施設”に置き換わったという感じかもしれません。
百貨店って色々物が揃っているけれど、全体としては“無個性”というイメージが在ります。まあ昔のイメージなので、今は違うかもしれませんが、複合施設の場合は個性が在り、好きなんです。何も買わなくても、ウインドー・ショッピングしているだけで楽しい。
“特別な御客様が来る店”というコンセプト(の様に自分は捉えていましたが)の大塚家具が、娘のクーデターにより“大衆化”を図った。個人的には「成功しそう。」と思っていたけれど、結果的には大苦戦している。商売は難しいですね。