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「米最高裁、49年振りに中絶の権利認める判例覆す 州による制限を容認」(6月24日、毎日新聞)
米連邦最高裁は24日、1973年に女性が人工妊娠中絶を選ぶ憲法上の権利を認めた歴史的判例の「ロー対ウェイド判決」を49年振りに覆し、州による中絶の禁止や制限を容認する判断を下した。中絶容認派やバイデン政権が判決に強く反発するのは必至で、今年11月の上下両院選や州知事選等の中間選挙でも大きな論点になる。
訴訟では、「妊娠15週より後の中絶を原則禁止する南部ミシシッピ州法の合憲性。」が争点となっていた。最高裁は24日の判決で「中絶は、深い道徳上の問題だ。中絶の権利は憲法に明記されておらず、歴史や伝統に根差している訳でも無い。憲法は州が中絶を規制したり、禁止したりする事を禁じていない。」と結論付けた。
ミシシッピ州法に付いては、「胎児の生命を保護する事等、州側の正当な利益が在り、州法には合理的な根拠が在る。」と判断。州法を「違憲だ。」とした連邦控訴裁(高裁)の判決を破棄し、審理を差し戻した。
米メディアによると、ミシシッピ州で唯一開業していた中絶専門の診療所は、憲法判断が覆った場合に他州へ移転する事を検討しており、同州では中絶が事実上行われなくなる見通しだ。
中絶反対派が優勢な他の州でも、判例が覆る事を条件に中絶を禁止する州法が準備されている。中絶容認派のNGO「ガットマチャー研究所」によると、南部ケンタッキー、ルイジアナ、中西部サウスダコタの3州では、母体にリスクが在る場合を除いて中絶を禁止し、中絶を施した医師等に刑事罰を科す州法が発効する。同研究所は、「4州を含む計26州で、近く中絶が大幅に制限される。」と分析している。
一方、中絶容認派が優勢な州では、中絶を選ぶ権利を保護する州法を定め、今後も中絶の権利は認められると見られる。宗教観や生命観が絡んで国論を二分するテーマで、州毎に対応が全く異なる状況に陥り、米国の「一体性」が損なわれる事を懸念する声が在る。リベラル派は、「性的少数者等の『個人の選択』に関する権利を巡っても、最高裁が制限する方向に転じる可能性が在る。」と警戒している。
最高裁判事(定員9人)は、トランプ前大統領がリベラル派の判事の死去に伴って、保守派の判事を後任に指名した事で「保守化」が進み、保守派6人、リベラル派3人の構成となっている。保守派の多数が中絶を憲法上の権利と見る事に懐疑的で、中絶容認派は「判例が覆る。」との懸念を強めていた。今年5月には、「中絶規制の是非を州に委ねる。」とする内容の判決原案が、米メディアで報道されていた。
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「多様性を一切認めず、自身と少しでも異なる考えは、力尽くで排除する。」というトランプ前大統領の出現により、アメリカは様々な面で分断化されてしまった。彼がリベラル派の判事の後釜に保守派の判事を据えた時から、今回の事態は予想出来ていたが・・・。
様々な意見や考え方が在って良いとは思う。人工妊娠中絶に関しても同様で、賛否両論在って当然だ。唯、「快楽を求める目的だけで性行為に及び、子供を身籠ってしまった結果、安直に人工妊娠中絶を選択する。」というのは大反対だが、「止むに止まれぬ理由から、人工妊娠中絶を行う。」場合には、「認めるべき。」と、自分は考えている。
後者の場合になるが、例えば「レイプ等、無理矢理に性行為をされ、結果として妊娠してしまった。」なんていう際、「人工妊娠中絶を行ってはならない!」というのはおかしいだろう。「どんな理由が在るにせよ、胎児には何の責任も無いのだから、産むべきで在る。」というのは、道徳的には「在り。」だけれど、現実的な主張とは思えない。
レイプ犯の子供として産まれ親に愛されないで育つことになるなら、それは子供にとっても不幸だし、それが原因で新たな犯罪を生じかねない、と考えることもできますね。
ただ、15週以前の人工中絶は規制されていないのであれば、妊娠に気づいてすぐに処置するという選択もあるのかなあ、と。
レイプによって産まれた子供自身には、迫害されたり差別されたりする筋合いは全く無く、産まれたからには幸せに育って欲しいと思います。唯、“被害者女性”の立場からすれば、レイプというのは非常に忌まわしい記憶で在り、其の結果として身籠った胎児に対し、愛情を注げないというのも非常に理解出来ます。
「15週以前の人工妊娠中絶は規制されていない。」というのは飽く迄も今回の「ミシシッピ州法」に関してで在り、“極端な方向に走り易い彼の国の国民性”を鑑みると、「どういう状況で在れ、人工妊娠中絶は一切罷りならん。」という法律だって出て来兼ねない(乃至は、既に存在している可能性も。)。個人的には、そういう事を危惧します。