ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「理由」

2014年03月13日 | 書籍関連

**********************************

事件は、何故起こったか?殺されたのは「誰」で、一体「誰」が殺人者で在ったのか?

 

東京荒川区超高層マンション「ヴァンダール千住北ニューシティ」で、凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女の惨殺体。そして、ヴェランダから転落した若い男。ところが、4人の死者は、其処に住んでいるの家族では無かった・・・。

**********************************

 

ブログを立ち上げ、レヴューを記し始めてからは、其の年に芥川賞及び直木賞を受賞した作品は全て読む様にしているが、一時期は興味が湧いた作品しか読まなかった時期が在る。今や大御所的存在の宮部みゆきさんだが、実は第120回(1998年下半期)の直木賞を受賞した作品「理由」も、そんな時期の物で未読だった。今回、今更乍ら読む事に。

 

冒頭梗概で記した様に、都内の超高層マンションの一室で中年男女と老女の惨殺体、そして其のヴェランダから転落死した若い男という、併せて4つの死体が発見される。当初、其処に住む「小糸(こいと)家」の家族及び其の関係者と見られていた死体だったが、捜査が進む中、全く無関係な人々と判明。「小糸家の人々はどうしたのか?死体は誰なのか?」というのが、ドキュメンタリー的手法で明らかにされて行くというのが、此の小説のスタイル。

 

ドキュメンタリー的手法が用いられている事で、読んでいる人達に臨場感を与える効果は在ると思う。此れは宮部作品全般に言える事なのだけれど、如何せん文章が冗漫で、読んでいて疲れてしまう。感覚的に言えば、3分の2位の分量にした方が、もっとすっきりして良かった様に感じる。

 

**********************************

「家族とか、血のつながりとか、誰にとっても面倒くさくてやりきれないもんだよ。だけど、本気でそういうものをスパッと切り捨てて生きていこうって人たちがいるんだね。」。

**********************************

 

「家族の形」というのは千差万別で、或る人にとって「好ましい形態」で在っても、別の人にとっては「うざい形態」というケースも在ろう。そういう事を考えさせられる内容では在ったが、仮令面倒臭くて遣り切れないと思ったとしても、此の作品に登場する或る人物の様な“選択”は、自分にとって考えられない。でも、そういう選択をしそうな人が、近年は増えている様に感じたりもした。

 

“謎解き”という点では、正直魅了されなかった。総合評価は、星3つとする。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
« 言うは易く行うは難し | トップ | 独自路線を行くテレビ東京 »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (マヌケ)
2014-03-13 12:43:43
殺人事件の真相を、関係者にインタビューする形式は貫井徳郎の「愚行録」を思い起こしました。 後味の悪さも似ていました。 確か、映画もDVDをレンタルして見た記憶があります。 事件をたどるにつれて闇に引き込まれるような、暗いものに興味がそそられる好奇心というか、人間の習性みたいなものをくすぐられる作品でしたし、この小説からかなり後になりますが現実にも似たような事件がありませんでしたっけ? 主犯格のばあさんは拘置所で自殺してしまったと思いますが。 登場人物が多くて、文章量も多い分厚い本だったのが今ではいちばん記憶に残っております。  
返信する
>マヌケ様 (giants-55)
2014-03-13 12:53:54
書き込み有難う御座いました。

後味、確かに悪い作品ですよね。此の手の作品って、読者がどういう家庭環境で育って来たかで、受ける印象が違いそうな気がします。「家族」という物に幻滅を感じる様な環境で育って来たケースだと、もしかしたら我々が受ける程の嫌な感じ、又はショックさを感じないのかもしれないし。

実際に起こった事件をモチーフにした作品というのも在りますが、逆に作品が発表されて以降、似た事件が発生するというケースも在りますね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。