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事件は、何故起こったか?殺されたのは「誰」で、一体「誰」が殺人者で在ったのか?
東京・荒川区の超高層マンション「ヴァンダール千住北ニューシティ」で、凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女の惨殺体。そして、ヴェランダから転落した若い男。ところが、4人の死者は、其処に住んでいる筈の家族では無かった・・・。
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ブログを立ち上げ、レヴューを記し始めてからは、其の年に芥川賞及び直木賞を受賞した作品は全て読む様にしているが、一時期は興味が湧いた作品しか読まなかった時期が在る。今や大御所的存在の宮部みゆきさんだが、実は第120回(1998年下半期)の直木賞を受賞した作品「理由」も、そんな時期の物で未読の儘だった。今回、今更乍ら読む事に。
冒頭の梗概で記した様に、都内の超高層マンションの一室で中年男女と老女の惨殺体、そして其のヴェランダから転落死した若い男という、併せて4つの死体が発見される。当初、其処に住む「小糸(こいと)家」の家族及び其の関係者と見られていた死体だったが、捜査が進む中、全く無関係な人々と判明。「小糸家の人々はどうしたのか?死体は誰なのか?」というのが、ドキュメンタリー的手法で明らかにされて行くというのが、此の小説のスタイル。
ドキュメンタリー的手法が用いられている事で、読んでいる人達に臨場感を与える効果は在ると思う。唯、此れは宮部作品全般に言える事なのだけれど、如何せん文章が冗漫で、読んでいて疲れてしまう。感覚的に言えば、3分の2位の分量にした方が、もっとすっきりして良かった様に感じる。
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「家族とか、血のつながりとか、誰にとっても面倒くさくてやりきれないもんだよ。だけど、本気でそういうものをスパッと切り捨てて生きていこうって人たちがいるんだね。」。
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「家族の形」というのは千差万別で、或る人にとって「好ましい形態」で在っても、別の人にとっては「うざい形態」というケースも在ろう。そういう事を考えさせられる内容では在ったが、仮令面倒臭くて遣り切れないと思ったとしても、此の作品に登場する或る人物の様な“選択”は、自分にとって考えられない。でも、そういう選択をしそうな人が、近年は増えている様に感じたりもした。
“謎解き”という点では、正直魅了されなかった。総合評価は、星3つとする。
後味、確かに悪い作品ですよね。此の手の作品って、読者がどういう家庭環境で育って来たかで、受ける印象が違いそうな気がします。「家族」という物に幻滅を感じる様な環境で育って来たケースだと、もしかしたら我々が受ける程の嫌な感じ、又はショックさを感じないのかもしれないし。
実際に起こった事件をモチーフにした作品というのも在りますが、逆に作品が発表されて以降、似た事件が発生するというケースも在りますね。